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【医師が教える】 運動する人こそ糖質制限するべき決定的裏付け
おはようございます。
ダイヤモンド・オンラインに以下の記事が掲載されました。
ブログ読者の皆さん、詳細は記事をご覧いただければ幸いです。

江部康二


【医師が教える】
運動する人こそ糖質制限するべき決定的裏付け

https://diamond.jp/articles/-/326969

江部康二
ライフ・社会
内臓脂肪がストンと落ちる食事術
2023.8.27



TBS系『金スマ ~中居正広の金曜日のスマイルたちへ~』で
「番組史上最も楽して痩せる食事術」として紹介され、
爆発的な反響をみせた『内臓脂肪がストン!と落ちる食事術』(ダイヤモンド社)。

美味しいものをお腹いっぱい食べて、なんならお酒も飲めるのに、
運動なしでも痩せられるという驚きの食事術。
この食事術を、やはり運動なしで半年間実践して10kg痩せた経験があり、
現在70代にして20代の頃の体重をキープしている著者・江部康二医師が、
もう2度と太らない医学的に正しいダイエット法を伝授!

ひもじくなるようなカロリー制限は一切ナシ
お腹いっぱい食べていいし、筋トレもジョギングもしなくていい。
その体脂肪、運動ナシで落とす方法を教えましょう!

※本稿は、『内臓脂肪がストン!と落ちる食事術』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。




糖質は体内にどれだけ
蓄えられているか?



脂質は桁違いのエネルギー源


糖質制限でパフォーマンスUP


無酸素運動は例外的




がんのリスク、飲酒と喫煙、どっちがより悪い?
こんにちは
新型コロナウイルス感染症の位置づけが、令和5年5月8日以下の如く変更になりました。

厚生労働省
【新型コロナウイルス感染症の位置づけは、これまで、「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」としていましたが、令和5年5月8日から「5類感染症」になりました。 法律に基づき行政が様々な要請・関与をしていく仕組みから、個人の選択を尊重し、国民の皆様の自主的な取組をベースとした対応に変わります。】


それで、私の宴会も3年ぶりに復活しています。
お店では、今の季節は、暑いので、もっぱらハイボールです。

私は、お酒は、外でも中でも、比較的よく飲みます。
糖質制限OKのお酒を、雨の日も風の日も晴れの日も雪の日も・・・、
ほぼ毎日、律儀に飲んでいます。

しかしながら、定期的に検査している肝機能は全く正常であり、
人生で一回も肝機能障害を経験したことはありません。
万一、肝機能障害が発症したら、きっと酒を減らすと思います。

家では、糖質ゼロのビール(350ml缶)をまず一缶のんで、
そのあとは、焼酎が多いです。
25%の焼酎をオンザロックで、チビチビ呑みます。
37%とか40%とか濃い酒は、咽頭・食道粘膜に刺激過剰となり、
発がんリスクとなるので、避けています。

辛口の赤ワインも飲みますが、ほぼピノ・ノワールです。

一方、タバコは人生で一回も吸ったことはありません。
ですから、患者さんを診察するときには、
酒飲みには優しく、喫煙者には厳しい傾向があります。

このように、私は、
酒とタバコに関してかなりバイアスの入った診療をする医師ということになりますが、
さて、「飲酒」「喫煙」と、どっちがより悪いのでしょう?

とりあえず、一番懸念される「がん」について
国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)を調べて見ました。

<お酒も量が過ぎれば将来がんになりやすい>
 時々飲酒しているグループと比べると、男性において、
アルコール摂取量が日本酒にして1日平均2合未満のグループでは、
がん全体の発生率は高くなりませんでした。
 一方、飲酒の量が1日平均2合以上3合未満のグループでは、
がん全体の発生率が1.4倍、1日平均3合以上のグループでは、1.6倍でした。
 要するに、お酒をたくさん呑むほど、
単純にがん発症リスクが増えるということであり、
左党にはとても頭の痛いお話しです。
なお、日本酒1合と同じアルコール量は、焼酎で0.6合、泡盛で0.5合、ビールで大ビン1本、ワインでグラス2杯(200ml)、
ウイスキーダブルで1杯です。
 女性では、定期的に飲酒する人が多くないためか、
はっきりした傾向がみられませんでした。

<飲酒と喫煙が重なるとがんの発生率が高くなる>
 ところが、この結果を、たばこを吸う人と吸わない人とに分けてみてみたところ、
たばこを吸わない人では、飲酒量が増えても、がんの発生率は高くなりませんでした。
この事実は、左党には大変嬉しいことと言えます。
 一方、たばこを吸う人では、ときどき飲むグループに比べて、
飲酒量が増えれば増えるほど、がんの発生率が高くなり、
1日平均3合以上のグループでは2.3倍、がん全体の発生率が高くなりました。
 このことから、飲酒によるがん全体の発生率への影響は、
喫煙によって助長されることがわかります。
 げにタバコの害、恐るべしです。
 もちろん、口唇・口腔・咽頭・(食道)・肝・喉頭など、飲酒と特によく関連していると考えられているがんだけでみてみると、
喫煙していなくても飲酒量が増えればがんの発生率が高くなるので、油断は禁物です。
  ともあれ、そうすると、口唇・口腔・咽頭・(食道)・肝・喉頭など特殊な部位のがんを除けば、飲酒単独で喫煙なしなら、飲酒量が増えてもがんのリスクにはならないと言えます。
私など左党(酒飲み)には大変嬉しいJPHC研究報告であり、
国立がんセンターの方角に足を向けて眠れないですね。

なお、とても嬉しいことに
「酒飲みでも、タバコ(-)なら食道がんのリスクなし」
です。
2018年05月01日 (火)の本ブログ記事
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4547.html

をご参照頂けば幸いです。


<飲酒と喫煙が重なるとなぜいけないのか>
 アルコール(エタノール)の分解物のアセトアルデヒドが、がんの発生にかかわるようです。
そして、喫煙者では、エタノールをアセトアルデヒドに分解する酵素が、
たばこの煙の中に含まれる発がん物質を同時に活性化してしまっているとも考えられています。

<やはり多量飲酒はよくない>
がんを含めて、いろいろな生活習慣病をまとめて予防しようと考えると、
お酒は日本酒換算で一日1合程度までに控えておいた方が安全なようです。
大量の飲酒は、シンプルに肝臓や膵臓にダメージを与えます。


結論です。
アルコール依存症の問題はありますが、総合的に飲酒と喫煙のどっちがより悪いのかと言えば、喫煙と結論できます。
しかし、当たりまえではありますが、大量の飲酒は厳禁です。

本日のブログ記事、グラフや図も含めてより詳しくは
多目的コホート研究(JPHC研究)
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/269.html

をご参照頂けば幸いです。


江部康二



多目的コホート研究(JPHC研究)
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/269.html

飲酒とがん全体の発生率との関係について
―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―
私たちは、いろいろな生活習慣と、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。
平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県柏崎、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2004年現在)管内にお住まいの方々に、アンケート調査の回答をお願いしました。そのうち、40~59歳の男女約73,000人について、その後平成13年(2001年)まで追跡した調査結果に基づいて、飲酒とがん全体の発生率との関係について調べた結果を、専門誌で論文発表しましたので、紹介します(British Journal of Cancer 2005年92巻182-187ページ)。

お酒も量が過ぎれば将来がんになりやすい
調査開始時には、男性の70%はほぼ毎日飲酒していると回答していましたが、女性ではほぼ毎日飲酒しているのは12%でした。調査開始時の飲酒の程度により6つのグループに分けて、その後のがん全体の発生率を比較してみました。調査開始から約10年間の追跡期間中に、調査対象者約73,000人のうち約3,500人が何らかのがんにかかりました。
時々飲酒しているグループと比べると、男性では、アルコール摂取量が日本酒にして1日平均2合未満のグループでは、がん全体の発生率は高くなりませんでした。一方、飲酒の量が1日平均2合以上3合未満のグループでは、がん全体の発生率が1.4倍、1日平均3合以上のグループでは、1.6倍でした。(なお、日本酒1合と同じアルコール量は、焼酎で0.6合、泡盛で0.5合、ビールで大ビン1本、ワインでグラス2杯(200ml)、ウイスキーダブルで1杯です。)
この結果をもとにして、平均1日2合以上のような多量飲酒に起因してがんになる、すなわち、多量の飲酒を避けていれば何らかのがんにかからなくてすんだ割合を推計したところ、13%でした。
女性では、定期的に飲酒する人が多くないためか、はっきりした傾向がみられませんでした。

図1.飲酒とがんの発生率.男

飲酒と喫煙が重なるとがんの発生率が高くなる
この結果を、たばこを吸う人と吸わない人とに分けてみてみたところ、たばこを吸わない人では、飲酒量が増えても、がんの発生率は高くなりませんでした。ところが、たばこを吸う人では、飲酒量が増えれば増えるほど、がんの発生率が高くなり、ときどき飲むグループと比べて、1日平均2-3合以上のグループでは1.9倍、1日平均3合以上のグループでは2.3倍がん全体の発生率が高くなりました。このことから、飲酒によるがん全体の発生率への影響は、喫煙によって助長されることがわかります。
もちろん、口唇・口腔・咽頭・食道・肝・喉頭など、飲酒と特によく関連していると考えられているがんだけでみてみると、喫煙していなくても飲酒量が増えればがんの発生率が高くなりますが、喫煙が重なることにより、さらに発生率が高くなるという結果になりました。

図2.喫煙習慣別に見た飲酒とがんの発生率.男

飲酒と喫煙が重なるとなぜいけないのか

お酒に含まれているエタノールは分解されてアセトアルデヒドになりますが、これががんの発生にかかわると考えられています。そして、喫煙者では、エタノールをアセトアルデヒドに分解する酵素が、たばこの煙の中に含まれる発がん物質を同時に活性化してしまっているとも考えられています。

やはり多量飲酒はよくない
この研究からは、何らかのがんになりにくくするには、日本酒換算で一日平均2合以上の多量飲酒は慎んだ方がいいといえます。しかし、同じ多目的コホート研究からの結果では、最近増加している糖尿病や大腸がんなら、一日平均1合を超えると危険性が高くなるという結果となっています。いろいろな生活習慣病をまとめて予防しようと考えると、お酒は日本酒換算で一日1合(ビールなら大びん1本、ワインならグラス2杯)程度までに控えておいた方がよいといえるでしょう。




糖質制限食は、言いかえれば脂肪・蛋白無制限食です。
【23/08/23 挑戦中
高脂肪食について
江部先生

いつもブログで勉強させていただいております。ありがとうございます。
以前ブログにて相談させて頂いて以来、順調に糖質制限生活を楽しんでおります。
今日はコレステロールの事でお知恵を拝借できないかと思いメッセージさせていただきました。
先生の過去のブログ記事やYoutubeを拝見したのですが、理解が及ばずにおります。

今回、居住地イギリスの医師から動物性たんぱく質を減らすよう指示が出ました。
私としては動物性たんぱく質を取ることでBMIが安定し、血糖値も安定したので、悩みどころです。

2019年7月出産(妊娠糖尿病になりました)
2020年5月(日本・糖質制限開始前)
身長:155㎝ 体重:44.5㎏
総コレステロール:236MG/DL
HDL-C: 99MG/DL
中性脂肪:69MG/DL
non-HDL :137MG/DL
LDL-C : 123 MD/DL
HbA1c(NGSP) : 6.0

2023年4月(日本・糖質制限約2.5年経過)
身長:155㎝ 体重:45.5~46㎏
総コレステロール:239mg/dL/DL
HDL-C: 87mg/dL
中性脂肪:58mg/dL
non-HDL :152㎎/dL
LDL-C : 140 mg/dL
HbA1c : 5.5

2023年8月(英国・糖質制限3年経過)
身長:155㎝ 体重:45.5~46㎏
総コレステロール:5.8mmol/l (約225mg/dL/DL?)
HDL-C: 1.74mmol/L (約67mg/dL?)
中性脂肪:計測なし
non-HDL :4.1mmol/L(約159㎎/dL?)
HDL ratio : 3.3
total protein: 74g/L
HbA1c : 5.6

英国では中性脂肪は測っていません。
両国でカリウムやクレアチニン、ALT、アルブミン、eGFRなど他も調べましたが、
特に何も問題はありませんでした。
また計測値や項目名が異なり申し訳ございません。

この状態ですとやはり脂質制限は考慮した方が良いのでしょうか? 】


こんにちは。
挑戦中 さんから、高脂肪食について、コメント・質問を頂きました。

2019年7月出産(妊娠糖尿病になりました)
2020年5月(日本・糖質制限開始前)
身長:155㎝ 体重:44.5㎏
総コレステロール:236mg/dl
HDL-C: 99mg/dl
中性脂肪:69mg/dl
non-HDL :137mg/dl
LDL-C : 123 mg/dlL
HbA1c(NGSP) : 6.0


2023年4月(日本・糖質制限約2.5年経過)
身長:155㎝ 体重:45.5~46㎏
総コレステロール:239mg/dL/DL
HDL-C: 87mg/dL
中性脂肪:58mg/dL
non-HDL :152㎎/dL
LDL-C : 140 mg/dL
HbA1c : 5.5


糖質制限食を2.5年実践されて、
HbA1c(NGSP)が、 6.0から5.5%に改善しています。

HDL-Cはもともと良かったのですが、 99mg/dl⇒87mg/dlです。
中性脂肪も元々よかったのですが、69mg/dl⇒58mg/dlです。

いつも本ブログで、述べていますが
HDLコレステロールが、60mg/dl以上あり
TGが 60mg/dl以下であれば、
悪玉の小粒子LDLコレステロール、酸化LDLコレステロールは皆無であり、
LDLコレステロールは全て標準の大きさの善玉なので問題ないです。



①標準の大きさのLDLコレステロール:
 肝臓から末梢組織にコレステロールという細胞膜の原料を運ぶ善玉。
②小粒子LDLコレステロール:
 コレステロール輸送という本来の仕事をほとんどせずに、血管壁の傷などに入り込んで
 活性酸素に触れ、酸化して酸化LDLコレステロールになりやすいので危険。
③酸化LDLコレステロール:
 異物であり血管壁にこびりついて動脈硬化の元凶となる真の悪玉。


つまり、危険なのは②と③であり、
①はなくてはならない大切なものなのです。


http://promea2014.com/blog/?p=1101
ドクターシミズのひとりごと

に掲載してある、図を見て頂ければ上記が確認できます。
(図はAtherogenic lipoprotein phenotype. A proposed genetic marker for coronary heart disease risk.M A Austin, M C King, K M Vranizan and R M Krauss Circulation. 1990;82:495-506より抜粋)
清水先生、ありがとうございます。


【今回、居住地イギリスの医師から動物性たんぱく質を減らすよう指示が出ました。
私としては動物性たんぱく質を取ることでBMIが安定し、血糖値も安定したので、
悩みどころです。】


スーパー糖質制限食を継続されて、何の問題もありません。
問題がないどころか良いことばかりです。

糖質制限食は、言いかえれば脂肪・蛋白無制限食です。
しっかり動物性たんぱく質や動物性脂肪を摂取して、
血糖値を安定させ、体重を<44.5kg⇒46kg>を維持しましょう。
BMIも、もうすこし増やしてよいです。
体重47~48kgなら、BMIは、19.56~19.98
となります。


日本列島にヒトが居住し始めたのは、38000年前の旧石器時代からです。
当時はウルム氷期でとても寒い時期でした。
日本の旧石器時代は22000間と非常に長期にわたり続きました。
寒さのため、基本、針葉樹しかありませんでした。
ナウマン象、イノシシ、シカなど肉食が主でした。
北海道ではマンモスも食べていました・
植物食は、自然薯かコケモモくらいしかありませんでした。
広葉樹がないので、ドングリ、クリ、果物などはありませんでした。

我々のご先祖は、22000年間、肉食が主であり、動物たんぱく・動物脂肪をしっかり食べて
日本人の身体は形成されていった
と考えられます。

挑戦中 さんも、しっかり動物たんぱく・動物脂肪を摂取して、
美味しく楽しく末長く、健康ライフを送って頂ければ幸いです。


江部康二
1型糖尿病と食事療法 その2
こんにちは。
今回の記事は、1型糖尿病と食事療法 その2です。
 
成人で糖質制限食がつらくなければ、
バーンスタイン医師と同様にスーパー糖質制限食が、一番のお奨めです。
 
人類約700万年間の歴史で、農耕以前の700万年は、人類みんな糖質制限食ですので、
本来の食生活に戻るということです。
 
スーパー糖質制限食だと、「毎食前の超速効型インスリン(追加分泌インスリンの代わり)」は量的に1/3以下に減らせることが多いです。
 
「約24時間持続型インスリン(基礎分泌インスリンの代わり)」は同量の場合もあれば、
1/2程度まで減らせることもあります。 
 
ただ1型糖尿病は小児期の発症が多く、学校での給食等もあり、
糖質制限食が困難な場合もあります。
その場合は糖質管理食で良いと思います。
糖質管理食では、摂取する糖質量に応じて、食前のインスリンの単位を調整します。
 
小児の1型糖尿病は、家にいる時は、糖質制限食でインスリンの量を減らす、
給食時はインスリンの量を増やして糖質管理食的に摂取する、
というようなパターンも有効かと思われます。
 
インスリンの量は、少なくてすむほど血糖コントロールも良くなりますし、
身体への影響は少ないので、工夫してみる価値はあるでしょう。
過剰のインスリンは酸化ストレスとなり、
がん、老化、動脈硬化、肥満、アルツハイマー病などのリスクとなります。
 
カロリー計算だけに頼って、インスリンの量を決めるのは、
食後血糖値の予測が不可能ですので危険です。

1型糖尿病は、血糖値が乱高下するというように言われていますが、
これは血糖値を直接上昇させる糖質摂取量の計算をしないからそうなるのです。
 
糖尿病専門医の先生方も1型糖尿病患者さんに対して、
血糖値乱高下を避けるために糖質制限食は無理でも、
せめて糖質管理食は導入して欲しいものです。


江部康二


以下の青字の記載は、中嶋一雄先生の、糖尿病学会誌に掲載された論文です。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/61/11/61_787/_article/-char/ja/
編集者への手紙
1 型糖尿病患者における糖質制限について
中嶋 一雄

Key words:1 型糖尿病,食事療法
〔糖尿病 61(11):787~788,2018〕

近年糖尿病の食事療法に糖質制限食が注目され,米国のジョスリン糖尿病センターでは,2004 年より食事療法勧告において炭水化物を 40 %エネルギーと定めている1).
米国糖尿病学会は 2013 年 10 月より,食事療法においてあらゆる栄養素比率を選択することが可能であるとの見解を出した2).

本誌 60 巻 6 号に「厳密な糖質制限と持効型溶解インスリン 1 回法を約 15 年継続している罹病歴 33 年の 1型糖尿病の 1 例」と題する症例報告3)が掲載された.日本糖尿病学会により推奨される食事療法(炭水化物 50-60 %)を摂取し必要なインスリンを追加することが標準的な糖尿病の治療であり推奨することを説明したとある.一方,1 型糖尿病における糖質制限については統一見解には至っていないと思われる.

1 型糖尿病とてんかんの合併例に,超低炭水化物食であるケトン食療法を実施して,血糖維持と痙攣発作がいずれも改善し安定した状態を得られたと,すでに複数の症例が報告されている4~6).

2018 年になり,1 型糖尿病と低炭水化物食との研究について系統的レビューが発表された7).炭水化物を45 %エネルギー以下とした論文のレビューを実施したが,HbA1c の低下がみられた論文とみられなかった論文とが混在しており,エビデンスとしては限界があるため全体として結論は下せず,さらなる臨床研究をすすめる必要があると記載されている.

一方,近年に使用開始された Flash glucose monitoring(FGM)とインスリンポンプを併用して,1 型糖尿病患者にそれまでの 1 日量 100-150 g から,30-50 g 迄に減量した低炭水化物食を実施した症例報告も行われている8).
本例ではインスリンの 1 日量が 50 単位から30 単位に減量でき,FGM により記録された毎日の平均血糖値は改善し,脂質異常等の合併症も生じなかったとある.FGM による血糖変化の観察と適切なインスリン調節が安全な血糖維持をもたらしたと考えられ,頭痛は減少し睡眠も良好化し情動面が改善するなど,本人の QOL も向上した.1 型糖尿病患者における糖質制限についてさらなる臨床研究が望まれる

著者の COI(conflicts of interest)開示:特になし

文 献
1)Chalmers KH (2004) Medical Nutrition Therapy: Joslinʼs Diabetes Mellitus 14th Edit. Kahn CR, et al (eds)
Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, p 611-631
2)Evert AB, Boucher JL, Cypress M, Dunbar SA, Franz
MJ, Mayer-Davis EJ, Neumiller JJ, Nwankwo R, Verdi
CL, Urbanski P, Yancy WS Jr (2013) Nutrition Therapy Recommendations for the Management of Adults
With Diabetes. Diabetes Care 36: 3821-3842
3)長谷川夕希子,春日崇臣,奥山尚美,三浦順之助,大
屋純子,内潟安子(2017)厳密な糖質制限と持効型溶
解インスリン 1 回法を約 15 年継続している罹病歴 33
年の 1 型糖尿病の 1 例.糖尿病 60:449-455
4)Dressler A, Reithofer E, Trimmel-Schwahofer P, Klebermasz K, Prayer D, Kasprian G, Rami B, Schober E,
Feucht M (2010) Type 1 diabetes and epilepsy: efficacy and safety of the ketogenic diet. Epilepsia 51 :
1086-1089
5)Roxana L. Aguirre Castaneda, Kenneth J. Mack, Aida
Lteif (2012) Successful Treatment of Type 1 Diabetes
and Seizures With Combined Ketogenic Diet and Insulin. Pediatrics 129: e511-e514
6)Aylward NM, Shah N, Sellers EA ( 2014) The Ketogenic Diet for the Treatment of Myoclonic Astatic
Epilepsy in a Child with Type 1 Diabetes Mellitus.
Can J Diabetes 38: 223-224
7)Turton JL, Raab R, Rooney KB ( 2018 ) Lowcarbohydrate diets for type 1 diabetes mellitus: A systematic review. PLOS ONE 13: e0194987
8)Eiswirth M, Clark E, Diamond M (2018) Low carbohydrate diet and improved glycaemic control in a patient with type one diabetes. Endocrinology, Diabetes
& Metabolism Case Reports 03 2018, EDM180002

医療法人稲門会いわくら病院精神科(〒606-0017 京都府京都市左京区岩倉上蔵町 101)
連絡先:中嶋一雄(〒606-0017 京都府京都市左京区岩倉上蔵町 101 医療法人稲門会いわくら病院精神科)
受付日:2017 年 10 月 22 日╱採択日:2018 年 8 月 8 日
アルツハイマー病新薬「レカネマブ」承認へ。  糖質制限食の役割は。
こんにちは。
2023年7月21日(月)のヤフーニュースに

【アルツハイマー病新薬「レカネマブ」承認へ 
原因物質を除去、国内初
https://news.yahoo.co.jp/articles/e7eb2c37be2d65777cd024052cdbe0412953de77

8/21(月) 21:36配信

日本の製薬大手エーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の新しい治療薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」について、
厚生労働省の専門家部会が21日、国内での製造販売承認を了承した。
正式に承認されれば、認知症の原因物質を除去する初めての治療薬となる。
今後、厚労相が正式承認する。】


という記事が掲載されました。
軽度認知症など早期アルツハイマー病に関わる適応を対象としています。
同新薬は2013年1月6日、米国で迅速承認を取得しています。
症状の進行を遅らせる効果が確認できたとしています。
しかし、正式承認までに、かなりの期間を要しました。
今回やっと日本でも承認されて、発売開始となるようです。

アルツハイマー病に有効な藥が開発されたのはよいことです。
しかし、アルツハイマー病に罹らないことはもっとよいことです。

高齢化の進展とともに、認知症患者数も増加しています。
2012年時点で約462万人に上ることが厚生労働省研究班の調査で明らかになっています。
65歳以上の認知症患者数は2020年に約602万人です。
そして、その数が2025年には730万人へ増加し、
65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると推計されています。


今日は認知症が糖質制限食で予防・改善できるというお話です

 「認知症」という言葉には、ほとんどの人が不安を感じると思います。
 認知症とは「いったん正常に発達した知能が、後天的な脳の障害によって低下した状態」と定義されています。

 知能の低下とは、たとえば「さっき人と会ったことを覚えていない」「食事をしたことを忘れる」などの記憶障害
「文字を読んでも意味がわからない」「簡単な計算ができない」といった判断力の低下
「見えないものが見える」という幻覚、「財布を盗まれた」という妄想に至るまで
記憶や判断力に障害が起こることを指します。

 認知症の患者とその予備軍は65歳以上では4人にひとりであり、これは大変な数といえます。
 さて、この認知症ですが、ひとつの病気のことを指すのではなく、いくつかの病気の総称として用いられています。
つまり、知能を低下させる病気はひとつに限定されるわけではないということです。
その代表的なものとしては4つあり、
それぞれ「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」と呼ばれています。

 さて、この認知症のなかで、圧倒的に多いのが、アルツハイマー病で、およそ70%を占めています。
 70%というのはすごい数字ですが、逆に言えばアルツハイマー病に気をつけておけば、
認知症に対する不安は大きく軽減されることになるわけです。
そしてアルツハイマー病をはじめとする認知症の予防に絶大な効果を発揮するのが、糖質制限食です。

 認知症は、日本のような高齢化社会において、もっとも重要な病気の一つです。
2012年時点でわが国には約 462 万人の認知症患者がいます。
また認知症予備軍とされる軽度認知障害(MCI)を呈する高齢者は約 400万人存在すると考えられています。

MCI は、アルツハイマー病を含む認知症のリスクを増加させる
老化の一般的な障害とされています。
MCI と判定された場合は、年率 10 ~15% で認知症に進行することが知られています。
認知症患者数は 、2020年で631万人にのぼり、
今後さらに増加していくと予想されますが、
これまで認知症の根治につながる治療法は確立していません。


 近年認知症との関連で注目されている糖化ストレスマーカーとして
終末糖化産物(advanced glycation endproducts: AGEs)があります。
   AGEs の産生増加は糖尿病にともなう炎症や酸化ストレスの亢進など多くの病態と関連し、
加齢動脈硬化もその一つです。
そして、アルツハイマー病のような認知症では正常老化のそれに比べてAGEsの蓄積が加速されているのです。
AGEsの蓄積という糖化ストレスが、酸化ストレスも招きアルツハイマー病の元凶となっていますし、
他の型の認知症にも関与していると思われます。
また、動脈硬化や老化も同様にAGEsのせいです。

 アルツハイマー病を改善させる治療法も治療薬もない現状では、
可能な限り早期に認知症および MCIを発見して何らかの介入を行うことが必要です。
そしてその唯一の解決法が『糖質制限食』です。
糖質制限食なら、蓄積するAGEsを最小限に抑えることができるので
MCIや認知症の予防・改善が可能です。

 本ブログに、よくコメントを頂いている『らこさん』の場合も、
釣り銭が計算できなくなるといったアルツハイマー病発症の段階から
糖質制限食開始してわずか1週間足らずで正常に復活しておられ、
その後現在まで10年間以上元気に過ごしておられます。

 ブログ読者の皆さんも、是非糖質制限食を実践されて、
将来のMCIやアルツハイマー病の予防を心がけて頂ければ幸いです。



江部康二