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インフルエンザ流行とインフルエンザワクチン。
こんにちは。
インフルエンザが流行っています。

国立感染研究所のインフルエンザ流行レベルマップによれば、
2023年 第46週 (11月13日~11月19日) 2023年11月22日現在

 2023年第46週の定点当たり報告数は21.66(患者報告数106,940)となり、
前週の定点当たり報告数17.35よりも増加しました。
43都道府県では前週の報告数よりも増加し、
4都道府県では前週の報告数よりも減少しました。
つまり、9割以上の都道府県で増加しています。

インフルエンザワクチンを既に接種した人もまだの人もおられると思います。
さて、それでは、インフルエンザワクチンの効果はどの程度あるのでしょうか?
今回は、インフルエンザワクチンについて考察してみます。


<インフルエンザワクチンに関する考察>

ワクチン接種後、抵抗力がつく まで2週間かかるとされ、
効果が持続する期間は約5か月間ですので、
10月初めに接種すれば、翌2024年の3月初めまではカバーできます。

まず、インフルエンザワクチンに関して、是非、知っておいて欲しいことは、
インフルエンザワクチンは万能ではないということです

すなわち感染防御力は基本的になくて、
重症化を防ぐことが期待されるていどの効能
です。
ワクチンを打っている人も打っていない人も、
手洗い、うがい、マスクがインフルエンザ予防の基本ですね。
特に、手洗いが思った以上に有効です。
ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、 
自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。
外出先から帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。
咳やくしゃみで飛んだ飛沫が服についても、
数時間で感染力を失うとされています。
外出から帰宅したら着替えすることも予防に役立ちます。

以下の青字は、厚生労働省サイトの記載です。
インフルエンザの予防にはみんなの「かからない」、
「うつさない」という気持ちが大切です。
手洗いでインフルエンザを予防して、かかったら、
マスク等せきエチケットも忘れないでください。
インフルエンザにかかった人は、
必ずマスクをして他人にうつさないように配慮が必要です



<インフルエンザワクチンの有効性>

インフルエンザワクチンは、A型にもB型にも対応しています。
しかし、実は現行のインフルエンザワクチンには、
水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。
感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので、
過信するのは禁物です。

理論的に考えても、ワクチンを接種することにより
IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
従って、インフルエンザウィルスが、
咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体が駆けつけて戦うことになります。
鼻への噴霧ワクチンで、粘膜面のIgA抗体をつくる試みもされていますがあまり上手くいっていません。
IgA抗体を充分量増やす技術が難しいようです。

下記の青字は国立感染研究所のホームページからの抜粋です。

【7.インフルエンザワクチンの問題点
(2)「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、
ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、
この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。
従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を
完全に阻止することは難しいと考えられます。」

(6)「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。
しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、
インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる
気道の粘膜免疫や、
回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。
これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では
大きな短所であると考えられています。
しかし、この様な欠点を持ちながらも、先に述べたように、
ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。
また、ワクチンの皮下接種でも血中の抗体産生は十分に刺激できるので、
インフルエンザに続発する肺炎などの合併症や
最近問題となっているインフルエンザ脳炎・脳症の発生を抑えることには
期待出来ると考えられています。」】



<集団感染>
石川県のホームページに、「インフルエンザ様疾患及び新型コロナウイルス感染症による集団感染事例」が記載されています。
それによると、2023/11/13~11/19で、
26の施設で集団感染が発生していて、そのうち学校が20施設です。
これらの中で、多くの施設において、インフルエンザワクチン接種済みと
思われます。
このように、インフルエンザワクチンは、水際での感染防御により
集団感染を防ぐことに関しては、
ほとんど無力だと思われます。

そもそもインフルエンザワクチンは
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。
感染を防ぐためには、「手洗い、うがい、マスク」が必須です。


<誤解>

ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、ワクチンを接種していれば、
水際で感染防御できると誤解しておられるのです。
私は、過去10年間以上、友人の医師などに、
感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、
皆なかなか信じてもらえませんでした。
どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。
ここ数年、新聞などでもやっと、
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。
逆に言えば、過去10年以上、
あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、
そのことに関して自己批判も反省もないのは如何なものでしょう。

インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、
私はこのことを説明して、
「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、
ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」

と付け加えます。

<必要性>
別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。
65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、
糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、
インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、
生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。
若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、
接種する意味はありますね。

<感染防御>
①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
 診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
 マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクをして乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクをする。
  その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
 できればノンタッチごみ箱に廃棄すること

ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、
感染防御効果はないことをしっかり認識して、
上記①~⑦を励行してくださいね。

これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。

<終わりに>
インフルエンザワクチン接種に、賛成の人も反対の人もあると思います。
ブログ読者の皆さんには、
インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて記事にしました。

そして、日頃、自分の自然免疫を高めるような生活習慣を心がけることも大切です。
例えば、私はスーパー糖質制限食を実践して、8000歩/日(そのうち過半数は速歩)歩いています。

あとは、自分の頭で考えて、接種するか否かを選択して頂ければ幸いです。

江部康二
糖質制限食による体重減少効果について。
こんにちは。
中西健一郎 さんから
「糖質制限時の体重が落ちる仕組みについて」
コメント・質問を頂きました。

糖質制限食実践による体重減少効果に関して、
よく質問がありますので、復習を兼ねて考察してみます。

スーパー糖質制限食なら、
運動量不変で、体脂肪が減ります。
例えば、血中総ケトン体の基準値は、
26~122μM/Lですが、スーパー糖質制限食実践中は、
400~1000~2000μM/Lくらいに上昇します。
肝臓で脂肪酸の分解物のアセチルCoAからケトン体を作ります。
ケトン体の上昇は、まさに脂肪が燃えている証拠ですね。

かくいう私も、52歳のとき、167cm、67kgから、スーパー糖質制限食実践で、
運動量は不変で、半年で57kgに減量し、学生時代の体重に戻りました。
階段は駆け上がるし、週1テニスは普通にしてましたので、
筋肉量は維持できていて、脂肪が燃えて減量できたと考えられます。

73歳現在も57kg前後で維持していて、階段は駆け上がります。
但し、4階くらいまでですが・・・。(^^;)
現在も筋肉は年齢相応ていど以上はあると思いますし、
歩く速度もかなり速いほうです。
スポーツジムなどで鍛えているわけではありませんが、
73歳としてはかなり体力はあるほうだと思います。

筋肉量を増やすには通常は筋トレが必要です。
しかし、毎日<インターバル速歩(3分間の速歩×5セット)>を、5セット以上実践しているので
筋力も少しは増えていると思います。
日常の歩行は、ほとんどが早歩きで、家では<ながらジョギング>もしていますので、
下肢の筋力は、73歳にしては、あるほうだと思います。


<インスリン>
それではまず、インスリンについて考えて見ます。

◇インスリンは脂肪細胞内の中性脂肪分解を抑制。
◇インスリンは血中の中性脂肪を分解し脂肪細胞内に蓄える。
◇インスリンは筋肉細胞に血糖を取り込ませるが、
  余剰の血糖は脂肪細胞に取り込ませて中性脂肪として蓄える。
◇肥満のメカニズムはインスリンによる脂肪蓄積。


このようにインスリンには脂肪を蓄える作用があるので、
別名肥満ホルモンと呼ばれています。
そしてインスリンを大量に分泌させるのは、糖質のみです。
たんぱく質もインスリンを少し分泌させますが、脂質は分泌させません。

『糖質摂取→血糖上昇→インスリン分泌→脂肪蓄積』
このシステムは、狩猟・採集時代には、飢餓に対するセーフティーネットとして
おおいに役立っていたのですが、皮肉なことに現代では肥満の元凶となっています。


<スーパー糖質制限食の4つの利点>


◆<糖質制限食による体重減少効果>
①インスリン(肥満ホルモン)の基礎分泌はあるが、追加分泌は最小限である。
②食事中も含めて常に体脂肪が燃えている。
③食事中も含めて常に肝臓で糖新生が行われ、それにかなりのエネルギーを消費する。
④高タンパク食により、食事誘発熱産生(DIT)が亢進する。

高蛋白食は、摂食時の食事誘発熱産生(DIT)が通常食に比べて増加します。
DITによる消費エネルギーは、実質吸収エネルギーの、糖質では6%、脂質では4%、タンパク質で30%です。

食事誘発熱産生(DIT)を、もっと簡単に説明すると、食事において
100キロカロリーの糖質だけを摂取した時は、6キロカロリーが、
100キロカロリーの脂質だけを摂取した時は、4キロカロリーが、
100キロカロリーのタンパク質だけを摂取した時は、30キロカロリーが
熱に変わり、消費エネルギーとしてカウントされるということです。


◆<糖質を摂取した場合>
A)血糖値が上昇してインスリン(肥満ホルモン)がたっぷり分泌される。
B)体脂肪は燃えなくなり、血糖値が中性脂肪に変わり蓄積される。
C)肝臓の糖新生はストップする。
D)高タンパク食よる亢進した食事誘発熱産生(DIT)はなくなる。

①②③④とA)B)C)D)両者を比べてみれば、高糖質食より糖質制限食の方が、
体重減少効果が高いことが一目でわかると思います。

たとえ低脂質食でカロリー制限していても、
糖質を摂れば体重減少への利点がすべて消えてしまうわけです。
これは食べ物に含まれるカロリーとは無関係の生理学的な特質であり、
あくまで糖質を摂るかどうかがカギとなります。


<摂取エネルギーと消費エネルギー>

1)摂取エネルギー > 消費エネルギー   → 体重増加
  摂取エネルギー = 消費エネルギー   → 体重不変
  摂取エネルギー < 消費エネルギー   → 体重減少

2)通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
  「消費エネルギー=基礎代謝量+身体活動量(運動や家事)+食事誘発熱産生(DIT)

3)糖質制限食なら、高糖質食の時には無い
 「肝臓の糖新生でエネルギーを消費」→基礎代謝の増加
 「高蛋白食摂取」→食事誘発熱産生(DIT)の増加
 が認められる。

1)は生理学的事実です。
2)3)を比較すると糖質制限食の方が高糖質食に比し、
体重が減少しやすいことは明白です。


<推定エネルギー必要量と糖質制限食>

減量を目指す時に、日本糖尿病学会推奨のように

男性:1600~2000kcal/日
女性:1400~1800kcal/日

といった、厳しいカロリー制限は必要ありません。
「日本人の食事摂取基準」(2020年、厚生労働省)
に示す推定エネルギー必要量の範囲、
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf

推定エネルギー必要量/日
                  男性               女性
15-17才         2500 2850 3150      2050 2300 2550kcal
18-29才         2300 2650  3050     1650  1950   2200
30-49才         2300 2650  3050      1750  2000  2300
50-69才         2100 2450  2800      1650  1900 2200 
70才           1850 2200  2500       1500  1750  2000

身体活動レベル    低い 普通 高い         低い  普通  高い

くらいが目安です。

このように、冷静に理論的に考えると、
糖質制限食以外で減量することは極めて困難であることがわかると思います。


上記の推奨通りに糖質制限食を実践しているのに、体重が減少しない場合は
以下のように、「基礎代謝が低い」とか「大食漢」とかがあります。


<基礎礎代謝が低い場合は?>
基礎代謝が低いタイプの人は
「糖質制限+カロリー制限」が必要です。
基礎代謝が低い人は、「推定エネルギー必要量」
が、通常より少なくなるということです。
女性に時にあり、数%くらいの比率です。



<大食漢タイプの場合は?>
大食いの方々が時におられます。やはり数%の比率です。自分は大食いなのに、それに気がついてないことがあります。例えば家族が皆大食いなのでそんなものと思っている場合です。他人と自分の食事摂取量を比較することも必要です。このタイプは「糖質制限食+人並みの摂取カロリー」が必要です。
人並みの摂取カロリーとは、すなわち「推定エネルギー必要量」です。



<減量できないときは?>

1)
いつのまにか、糖質制限が緩くなった可能性があります。

2)
何らかの理由で、基礎代謝が低下した可能性があります。

3)
大食いタイプ、或いは知らぬ間に、摂取カロリーが多くなった可能性があります。

4)
すでに、BMI20以上~25未満で適正体重になっていることがあります。



江部康二





「人類は本来、一日三食か二食かはたまた、一食か?」。朝食は?
こんばんは。
「人類は本来、一日三食か二食かはたまた、一食か?」
興味ある問題です。

かく言う私は、1984年の第一回目の断食(34歳のとき)以降は、
朝食抜きの一日二食で、間食は、チーズとかナッツとか摂る日もあれば、摂らない日もあります。
朝は、コーヒーと生クリーム10mlとしています。
たまに間食として、少量の果物も食べていたこともありますが、ここ3年は果物の摂取は止めました。
現代の果物は糖度が高く、大きさも大きいので、糖質制限NG食品なのです。
ご先祖が食べていた「野イチゴ」と現代の「アマオウ」を比べてみれば明らかですね。

一日一食で三ヶ月くらいやったことがありますが、欲望に負けてしまいました。

欲望に負けたといっても、空腹感とか食欲に負けたのではありません。

そもそも糖質制限食だと腹が減って動けないというような強烈な空腹感はありません。

糖質を食べていると、この強い空腹感が生じるのですが・・・。

それで一日一食でお腹が空いてかなわないからギブアップしたのではなくて、
一日一食だと、何といっても食事回数が減りますから、一生で味わう食べる楽しみの回数が減ることになります。
一日一食だと、二食に比べたら食事を楽しむ回数が半減ですから、
34才から100才?までだと、ざっと24000回くらいの食事の楽しみが消滅します。(-_-;)

また団体旅行に行った時など、一日一食だと周囲の人々とのコミュニケーションとか間が持ちません…。
なんか、いろいろと言い訳してますが、まあ実は、肉、魚、貝、蟹、海老、ナッツ類、豆腐、納豆、野菜、果実などなど、
何でもいろいろ食べたいという欲望がすべてなのです。

それで、キャッチコピーとしては、「清く正しく」よりは「美味しく楽しく」 糖質制限食ということで、
一日一食とはとはおさらばして、一日二食に戻しました。

日本の歴史をみても、長い間、一日二食が普通でした。
佐伯栄養専門学校の星屋英治氏によれば、江戸時代まで日本人は一日二食で生活していたそうです。(*)
歴史的にも、一日二食の習慣は貴族社会で一般的でした。
鎌倉時代以降、武士の間では一日三食で過ごす者も現れましたが、庶民や貴族は一日二食でした。
後醍醐天皇撰の『日中行事』は、宮中における日々の行事や毎月の月奏祭・祓などを記した書ですが、「朝の御膳は午(うま)の刻なり。(中略)申の刻に夕の午前まいる。」との記載があります。(**)
後醍醐天皇(ごだいごてんのう1288-1339)は、
鎌倉時代後期から南北朝時代初期にかけての第96代天皇で、南朝の初代天皇です。

このように平安時代や鎌倉時代の貴族は一日二食であり、朝食が午(うま)の刻(正午)で、夕食が申(さる)の刻(午後4時)です。
庶民が1日に3回食事を摂るきっかけとなったのは、江戸時代の明暦の大火(1657年)という説もあります。
幕府は、焼失した江戸を復興するため全国から大工や職人を集めて、朝から夕方まで一日中、働かせました。
この時に朝食と夕食だけでは体力が持たないため、昼にも食事を出すようになり、
一日三食の習慣が広まっていったという説です。

三食が定着していったことには、明治維新後に陸軍ができたことが大きな役割を果たしました。
陸軍が一日三食を提供して、「白米が毎日3回食べれる」というキャッチコピーで
貧しい農家の次男や三男を勧誘したのが実態のようです。
これにより全国的に一日三食が普及していきました。
狭義の明治維新は、1867年の大政奉還から1868年の明治政府の成立までの流れを、いいます。

1920年に、国立栄養研究所が開設され、佐伯矩博士が初代所長に任命されました。
佐伯博士が栄養士制度を発展させるため1924年に設立した“世界初の栄養学校”が、佐伯栄養専門学校です。
日本で一日三食が積極的に奨励されるようになったのは、
1935年、国立栄養研究所の佐伯矩医学博士が提唱したことに始まります。

イギリスやフランスなどヨーロッパの国々でも、
15~16世紀頃に、二食から三食になっていったので三食の歴史は意外に浅いのです。
英語の朝食はbreakfastですが、
一日の最初の食事(断食を破る)を意味していたのが転じて朝食になりました。
当初のbreakfastは、一仕事終えたあと、正午頃食べていたのかもしれませんね。
世界的に見ても、伝統的なライフスタイルを保っている部族は、一日二食のことが多いようです。

特に、朝起きて何の活動もしていないのに、
すぐ食事を摂るという現代人のような「変な?習慣」は、人類の歴史上ほとんどなかったと考えられます。  


ちなみにエビデンスとは言えませんが、
私は、34歳(1984年)から、朝食抜きの1日2食ですが、
玄米魚菜食のころは、40歳ごろから太り始め、
52歳で、167cm67kg、メタボ・糖尿・高血圧を発症しました。
そこからは、朝食抜きの1日2食でスーパー糖質制限食を開始して
半年後には57kgと減量できて学生時代の体重に戻り、
メタボ・糖尿・高血圧もすべて改善しました。
73歳の現在も57kgを維持しています。
体重減少には食事の回数や朝食抜きは関係なくて、
糖質ありかなしかが一番関与するということですね。
なお、身長も167cmで、20歳の頃から縮んでいません。

さてそれでは糖質セイゲニストの食事回数ですが、どうなのでしょう?
また、朝食摂取に関してもあり?なし?

まずは食事回数ですが、
一日一回でも問題ないと思います。
この場合は、夕食がベストです。
夕食で摂取したタンパク質で夜寝ているときに筋肉が修復され、
トレーニングなどしていれば筋力アップになります。

一日二食の場合は、夕食は確保として、あと一回は朝食でも昼食でもどちらでもいいと思います。
しいて言えば、前の日の夕食から連続して絶食で昼食摂取の方が、ミニ断食効果が期待できます。
すなわち、朝食抜きの一日二食ですね。

子供達は、学校生活の観点からみて、バトルをしても仕方ないので、
一日三食でも仕方ないと思います。
糖質セイゲニストの大人は、朝食抜きの一日二食が推奨です。


(*)Sports Graphic Number Do 2014 Early Summer 太らない生活 2014
(**)生活習慣病に克つ新常識―まずは朝食を抜く! (新潮新書 ) 小山内博著 2003年


江部康二



たんぱく質の摂取量、筋肉、利用の上限、食事回数。
こんにちは。
今回は、 <たんぱく質の摂取量、筋肉、利用の上限、食事回数>などについて考察してみます。


たんぱく質の摂取量と筋肉への取り込みの上限

たんぱく質の人体への吸収

食事回数とたんぱく質摂取

 
①②③について
筋肉博士・石井直方東大教授の

やさしい筋肉学
タンパク質の摂取を増やせば増やすほど、筋肉が増えるわけではない!
第63回 解明されつつある最新知識
2017/12/19 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/column/15/040200001/113000064/?P=3
筋肉を太くするのに有効なタンパク質の量には上限がある

などを参考に考察してみました。

①一回のたんぱく質の摂取量20gくらいが筋肉合成に役立つ量である。
②それ以上のたんぱく質(30~40g)を摂取しても、体内に吸収されるけれど
筋肉合成には利用されずにエネルギーとして使用される。
ここまで、石井直方教授のご見解です。
 
そうすると日本人の普通の食事で、
三食とも、たんぱく質20gくらいは摂取できそうです。

『ごはん・納豆・生卵を食べるだけでも15gほどのたんぱく質を摂取することができますし、それにシャケの切り身を一切れも加えれば20gに達するので、普段の食事で十分ということになります。』

 
そうなるとプロテインも不要ということになりますが、
たんぱく質は筋肉合成を増加させるスイッチでもあります。
従って、たんぱく質20~30gを
一日に複数回摂る手段として、プロテインは便利で効果的だそうです。

1800kcalの高雄病院スーパー糖質制限給食の平均が、
脂質:56% たんぱく質:32% 糖質:12%
たんぱく質が144g/日となります。
従って筋肉量維持には充分過ぎるたんぱく質摂取量なので
余った分はエネルギーに使われている分も多いと思います。

またたんぱく質は、食事誘発熱産生(DIT)がとても多いです。
 高蛋白食は、摂食時の食事誘発熱産生(DIT)が通常食に比べて増加します。
DITによる消費エネルギーは、実質吸収エネルギーの、糖質では6%、脂質では4%、
タンパク質で30%です。
食事誘発熱産生(DIT)を、もっと簡単に説明すると、食事において
100キロカロリーの糖質だけを摂取した時は、6キロカロリーが、
100キロカロリーの脂質だけを摂取した時は、4キロカロリーが、
100キロカロリーのタンパク質だけを摂取した時は、30キロカロリーが
熱に変わり、消費エネルギーとしてカウントされるということです。つまり、体重減少効果は、高タンパク食(糖質制限食など)が一番あるということになります。

グリーンランドのイヌイットですが、 
バング、ダイアベルグらの試算によりますと、
伝統的食生活の頃(1855年)のイヌイットは、3202kcal/日
蛋白質:377g・・・47.1%・・・1508kcal
炭水化物:59g・・・7.4%・・・236kcal
脂質:162g・・・45.5%・・・1459kcal

すごい量のたんぱく質ですね。

なお、たんぱく質摂取量に関して、
米国糖尿病学会は、2013年の声明以降は、「糖尿病腎症に低たんぱく質食を推奨しない」としています。

 また、厚生労働省によれば、現時点では、
正常人がたんぱく質をたくさん食べて健康障害を生じたという
報告は十分にないとしています。
結果として、タンパク質の耐容上限量は設定していません。



江部康二

糖質量と血糖値の変動について
こんにちは。
以前、西村典彦さんから、
摂取糖質量と血糖値の変動について、コメント・質問を頂いたことがあります。
ありがとうございます。
西村さんの場合は、朝昼夜でかなりの違いがあり、日によっても違いがあるそうです。

いつも私がブログで言っている
『1gの糖質が、2型糖尿人において約3mg血糖値を上げる』
というのは、体重が64kgくらいの人のお話です。
また3mgというのは、かなりアバウトな話で、個人差があります。
体重が40kgくらいだと、<3mg × 64kg/40kg>で、4.8mg上げる計算です。

個人差があるので、体重50kgくらいの2型糖尿人で
1gの糖質が7~8mgくらい血糖を上げた人もいますが、まれです。

おそらく8~9割の人は、
『1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿人において約3mg血糖値を上げる』
といった範疇で大きな誤差はないと思います。

『1gの糖質が、体重64kgの1型糖尿人において約5mg血糖値を上げる』
『1gの糖質が、体重32kgの1型糖尿人において約10mg血糖値を上げる』

というのも、多くの場合、そんなに誤差はないと思います。


次に朝食・昼食・夕食における
糖質量と血糖値の変動ですが、
一般には、朝食が一番上昇しやすいです。
一日のうちで、最初の食事において、同じ糖質量でも
血糖値が上昇しやすい傾向があると言えます。

多くの人は、朝食が一番上昇しやすいと思いますが、
私は、朝・昼・夕とあまり差はありません。

また、同じ糖質量の『バターライス』と『白米』では
血糖上昇速度は、白米が大分速いです。
つまり、食後血糖値は白米のほうが「高く急な山のグラフ」になり、
バターライスのほうが「緩やかな山のグラフ」となります。
急な山のほうが、活性酸素の発生が多くなり、酸化ストレスのリスクとなります。
最終的に吸収される糖質量は一緒なので、グラフ下の面積は同一です。


また、体調によっても食後血糖値上昇にはバラツキが出る場合もあると思います。
寝不足や心理的不安定があると食後血糖値にも影響があると思います。

まあ、それやこれやで、
食後血糖値にもいろんな要素が影響を与えると思います。


江部康二