2018年04月19日 (木)
【18/04/18 ギー
ケトン体数値について
江部先生大変お世話になっております。 タイトルと違うのですが、誠に申し訳ありません。本日、知人の病院にケトン体の血液検査の結果をききにいったのですが、江部先生位の数値になっているとてっきり思っていたのですが、数値は100でした。完全、糖質制限食にして 約半年なるのですが、前回12月は220ぐらいでした。100に落ちてしまって残念です。自分でも思い浮かばないのですが、なぜだと思われますか?糖質も主食はもちろんのこと、ほかの糖質もきをつけてました。脂質も結構とっていましたし、まさか仕事のストレスや筋トレで、ケトン数値が下がるほど血糖値が上がることもあるのでしょうか?また、自分でも結構脂質はとっていたのですが、足りなかったのでしょうか?】
ギー さん
ケトン体の上昇には、かなり個人差があります。
<スーパー糖質制限食>
通常スーパー糖質制限食(糖質12%、脂質56%、タンパク質)でも、
400~800~1200 μM/Lくらいになる人が多いですが。
200 μM/Lくらいの人もいます。
私自身も同じような食事(スーパー糖質制限食)をしているつもりなのですが、
総ケトン体値は、
200~400~800~1200と結構ばらつきます。
理由は、ギーさんと同じくよくわかりません。
ココナッツオイルやMCTオイルなど中鎖脂肪酸を摂取すると
ケトン体は上昇しやすいです。
またケトン体の日内変動もあるようですが、
私もしっかり把握はしていません。
一方、ケトン食レベルの食事だと
ケトン体は確実に上昇します。
<Ketogenic Diet(ケトン食)>
<脂肪>:<非脂肪(炭水化物+たんぱく質)>の重量比がケトン比です。
基本のケトン食はケトン比が3:1です。
例えばわかりやすく
<脂質90g:非脂肪(炭水化物+たんぱく質)30g>
で、ケトン比が3:1です。
脂肪が810kcal、非脂肪(炭水化物+たんぱく質)が120kcalなので
脂質摂取比率は約87%と高値です。
ケトン食は小児難治性てんかんの治療食として、確立しています。
ケトン食実践だと、
血中総ケトン体値は
4000~5000 μM/L(基準値26~122)レベルとなります。
ケトン体はこのように高値となりますが、
インスリン作用があるていど保たれていれば、安全なものです。
ついでに
ケトン食とスーパー糖質制限食の違いについて考えてみます。
<ケトン食とスーパー糖質制限食の違い>
ケトン食だど、脂質摂取比率87%で、
血中総ケトン体は、4000~5000μM/Lレベルとなります。
これくらいケトン体が高値だと、尿中ケトン体も常に陽性です。
つまり、体内で利用しきれない血中ケトン体が尿中に出続けるということであり、
難治性てんかんの治療には、それほど高濃度のケトン体が必要となります。
このレベルの高濃度のケトン体値は、人類のご先祖もあまり経験していないと思われます。
従ってケトン食はあくまでも治療食であり、人類本来の食事ということではありません。
一方、スーパー糖質制限食は脂質摂取比率が56%くらいです。
たんぱく質は32%くらい、糖質は12%くらいです。
これらは、高雄病院給食一週間のメニューの平均値ですから、
個々の食事ではそこそこのバラツキはあります。
スーパー糖質制限食の場合は、
当初は尿中ケトン体が陽性となりますが1~3ヶ月くらいで陰性となります。
血中総ケトン体は、400~800~1200μM/Lレベルですが、
心筋や骨格筋や体細胞がしっかりケトン体を利用して、
腎臓の再吸収の効率も良くなるので、尿中には排泄されなくなります。
つまり血中ケトン体は全て体内で利用されています。
スーパー糖質制限食は、狩猟・採集時代700万年間の人類の食生活が目安であり、
糖尿病の治療食ではありますが、
その本質は人類本来の食事、人類の健康食と言えます。
<結論>
1、ケトン食は「治療食」である。
2、スーパー糖質制限食は、「人類の健康食」である。
江部康二
ケトン体数値について
江部先生大変お世話になっております。 タイトルと違うのですが、誠に申し訳ありません。本日、知人の病院にケトン体の血液検査の結果をききにいったのですが、江部先生位の数値になっているとてっきり思っていたのですが、数値は100でした。完全、糖質制限食にして 約半年なるのですが、前回12月は220ぐらいでした。100に落ちてしまって残念です。自分でも思い浮かばないのですが、なぜだと思われますか?糖質も主食はもちろんのこと、ほかの糖質もきをつけてました。脂質も結構とっていましたし、まさか仕事のストレスや筋トレで、ケトン数値が下がるほど血糖値が上がることもあるのでしょうか?また、自分でも結構脂質はとっていたのですが、足りなかったのでしょうか?】
ギー さん
ケトン体の上昇には、かなり個人差があります。
<スーパー糖質制限食>
通常スーパー糖質制限食(糖質12%、脂質56%、タンパク質)でも、
400~800~1200 μM/Lくらいになる人が多いですが。
200 μM/Lくらいの人もいます。
私自身も同じような食事(スーパー糖質制限食)をしているつもりなのですが、
総ケトン体値は、
200~400~800~1200と結構ばらつきます。
理由は、ギーさんと同じくよくわかりません。
ココナッツオイルやMCTオイルなど中鎖脂肪酸を摂取すると
ケトン体は上昇しやすいです。
またケトン体の日内変動もあるようですが、
私もしっかり把握はしていません。
一方、ケトン食レベルの食事だと
ケトン体は確実に上昇します。
<Ketogenic Diet(ケトン食)>
<脂肪>:<非脂肪(炭水化物+たんぱく質)>の重量比がケトン比です。
基本のケトン食はケトン比が3:1です。
例えばわかりやすく
<脂質90g:非脂肪(炭水化物+たんぱく質)30g>
で、ケトン比が3:1です。
脂肪が810kcal、非脂肪(炭水化物+たんぱく質)が120kcalなので
脂質摂取比率は約87%と高値です。
ケトン食は小児難治性てんかんの治療食として、確立しています。
ケトン食実践だと、
血中総ケトン体値は
4000~5000 μM/L(基準値26~122)レベルとなります。
ケトン体はこのように高値となりますが、
インスリン作用があるていど保たれていれば、安全なものです。
ついでに
ケトン食とスーパー糖質制限食の違いについて考えてみます。
<ケトン食とスーパー糖質制限食の違い>
ケトン食だど、脂質摂取比率87%で、
血中総ケトン体は、4000~5000μM/Lレベルとなります。
これくらいケトン体が高値だと、尿中ケトン体も常に陽性です。
つまり、体内で利用しきれない血中ケトン体が尿中に出続けるということであり、
難治性てんかんの治療には、それほど高濃度のケトン体が必要となります。
このレベルの高濃度のケトン体値は、人類のご先祖もあまり経験していないと思われます。
従ってケトン食はあくまでも治療食であり、人類本来の食事ということではありません。
一方、スーパー糖質制限食は脂質摂取比率が56%くらいです。
たんぱく質は32%くらい、糖質は12%くらいです。
これらは、高雄病院給食一週間のメニューの平均値ですから、
個々の食事ではそこそこのバラツキはあります。
スーパー糖質制限食の場合は、
当初は尿中ケトン体が陽性となりますが1~3ヶ月くらいで陰性となります。
血中総ケトン体は、400~800~1200μM/Lレベルですが、
心筋や骨格筋や体細胞がしっかりケトン体を利用して、
腎臓の再吸収の効率も良くなるので、尿中には排泄されなくなります。
つまり血中ケトン体は全て体内で利用されています。
スーパー糖質制限食は、狩猟・採集時代700万年間の人類の食生活が目安であり、
糖尿病の治療食ではありますが、
その本質は人類本来の食事、人類の健康食と言えます。
<結論>
1、ケトン食は「治療食」である。
2、スーパー糖質制限食は、「人類の健康食」である。
江部康二
2018年04月18日 (水)
【18/04/17 にゃんこ
初めまして
いつも江部先生のブログを拝見させて頂き勉強させていただいてます。
コレステロールの話ではなく、
お話を聞いていただきたく勝手ながらコメントさせて頂きました。
私は30歳の肥満女です。去年の5月に身長167cm体重85キロ。
その後10月には78キロと自然に体重減少があり、
その頃喉の乾き、多尿などの症状がありました。
今年の2月末に献血をしてグリコアルブミンが24.9と高値を出し、
2018年3月中旬に内科を受診し血液検査の結果
空腹時血糖 108
HbA1c 9.4
AST 17
ALT 29
ガンマGT 25
ALP 168
ChE 345
TSH/ECLIA 0.168
FT4/ECLIA 1.59
という結果で糖尿病と診断されテネリア20mg(1T1X朝)が処方されました。
献血の血液検査結果が届いてからはショックのせいか食事を摂るのも嫌になり途方に暮れていた時に江部先生の糖質制限をネットで拝見しすぐにスーパー糖質制限を実践させて頂きました。
主食をカットしローソンのブランパンや糖質ゼロ麺に置き換え、野菜・肉を中心に食事をとり、からだすこやか茶wなどのトクホお茶を飲み、夜に軽い筋トレと30分のウォーキングを1ヵ月間実践した結果、体重も71キロまで減らしました。
病院での採血から1ヵ月たった先日、再度血液検査をした所
空腹時血糖107
HbA1c7.0
と1ヵ月でHbA1cを2.4%も下げてしまい担当医も驚いて「頑張りましたね、なにをしたの?」と言われたので糖質制限とは言わず、炭水化物を控えて運動をしたと伝えました。内服薬もグラクティブ50mgに変更となりました。
HbA1cを急激に下げると糖尿性網膜症などの進行が早まると言われ眼科受診を勧められたので来週受診予定です。
そこでなのですが、私はもともと視力が悪くコンタクトレンズを使用していたのですが、あまり適切な使用をしていなかった為、鏡で見ていても白目部分が全体的に新生血管が目立ちます。また1年くらい前から右目に小さな飛蚊症の様な症状があります。
これは既に糖尿性網膜症を発症してしまっているのでしょうか?
糖尿病の診断を受けてからはコンタクトレンズをやめてメガネで生活をしています。
まだ30歳でこの先失明や四肢切断、
人工透析になってしまうのではと不安で動悸がするほどです。
このまま糖質制限を続ければ来月の血液検査では6%を切ると思うのですが
2ヵ月でHbA1cを4%近くも下げてしまって大丈夫なのでしょうか?
今のところ血糖値とHbA1c以外は血液検査も正常値なので
担当医も特になにも言わず合併症の話や説明もありません。
むしろ、初診の時も食事療法や運動療法の話も無く内服薬を処方されました。
拙い長文で大変失礼しました。内容も相談になってしまいましたが
ご多忙とは思いつつもご意見をお伺いしたくコメントさせて頂きました。】
こんにちは。
にゃんこ さんから、
糖質制限食で、体重減少、HbA1c改善という
とても嬉しいコメントと質問を頂きました。
2018年3月中旬
空腹時血糖 108
HbA1c 9.4
AST 17
ALT 29
ガンマGT 25
ALP 168
ChE 345
TSH/ECLIA 0.168
FT4/ECLIA 1.59
体重78kg
4月中旬
空腹時血糖107
HbA1c7.0
体重71kg
にゃんこさん、素晴らしい改善で良かったです。
担当医が、眼科受診を薦められたのは、
一般的に従来の治療<カロリー制限・高糖質食+SU剤やインスリン注射>により
急速にHbA1cが改善した場合に、糖尿病網膜症が悪化する事例が
かんり報告されているためと思います。
高糖質食を摂取して、SU剤やインスリン注射でHbA1cの改善を目指すと、
食後高血糖と空腹時低血糖が必ず生じています。
例えば<食後血糖値250mg/dl、空腹時血糖値50mg/dl>といった具合で
平均血糖値を反映するHbA1cは6.8%くらいでコントロール良好になっても、
極めて質の悪いHbA1cです。
食後高血糖と空腹時低血糖により、「平均血糖変動幅増大」を生じ
酸化ストレスリスクが高まり、眼底出血など糖尿病網膜症の悪化の可能性も高まります。
テネリアやグラクティブは、DPP-4阻害剤ですので低血糖は起こしにくい薬です
SU剤やインスリンなしで、<糖質制限食+DPP-4阻害剤>でHbA1cが改善した場合は、
「食後高血糖」「空腹時低血糖」「平均血糖変動幅増大」が生じず、
糖尿病網膜症の悪化はありませんので、安心です。
また糖尿病を発症後、1~2年では、糖尿病網膜症を起こす可能性は低いと思いますので
こちらも心配は少ないと思います。。
このまま、美味しく楽しくスーパー糖質制限食を末長く続けられて
血糖コントロール良好を保てば、今後合併症が出現することもありません。
しかし、今までの、
血糖コントロールの悪い時期の『高血糖の記憶』が少しはあるかもしれませんので、
速やかに眼科検診には行きましょう。
江部康二
初めまして
いつも江部先生のブログを拝見させて頂き勉強させていただいてます。
コレステロールの話ではなく、
お話を聞いていただきたく勝手ながらコメントさせて頂きました。
私は30歳の肥満女です。去年の5月に身長167cm体重85キロ。
その後10月には78キロと自然に体重減少があり、
その頃喉の乾き、多尿などの症状がありました。
今年の2月末に献血をしてグリコアルブミンが24.9と高値を出し、
2018年3月中旬に内科を受診し血液検査の結果
空腹時血糖 108
HbA1c 9.4
AST 17
ALT 29
ガンマGT 25
ALP 168
ChE 345
TSH/ECLIA 0.168
FT4/ECLIA 1.59
という結果で糖尿病と診断されテネリア20mg(1T1X朝)が処方されました。
献血の血液検査結果が届いてからはショックのせいか食事を摂るのも嫌になり途方に暮れていた時に江部先生の糖質制限をネットで拝見しすぐにスーパー糖質制限を実践させて頂きました。
主食をカットしローソンのブランパンや糖質ゼロ麺に置き換え、野菜・肉を中心に食事をとり、からだすこやか茶wなどのトクホお茶を飲み、夜に軽い筋トレと30分のウォーキングを1ヵ月間実践した結果、体重も71キロまで減らしました。
病院での採血から1ヵ月たった先日、再度血液検査をした所
空腹時血糖107
HbA1c7.0
と1ヵ月でHbA1cを2.4%も下げてしまい担当医も驚いて「頑張りましたね、なにをしたの?」と言われたので糖質制限とは言わず、炭水化物を控えて運動をしたと伝えました。内服薬もグラクティブ50mgに変更となりました。
HbA1cを急激に下げると糖尿性網膜症などの進行が早まると言われ眼科受診を勧められたので来週受診予定です。
そこでなのですが、私はもともと視力が悪くコンタクトレンズを使用していたのですが、あまり適切な使用をしていなかった為、鏡で見ていても白目部分が全体的に新生血管が目立ちます。また1年くらい前から右目に小さな飛蚊症の様な症状があります。
これは既に糖尿性網膜症を発症してしまっているのでしょうか?
糖尿病の診断を受けてからはコンタクトレンズをやめてメガネで生活をしています。
まだ30歳でこの先失明や四肢切断、
人工透析になってしまうのではと不安で動悸がするほどです。
このまま糖質制限を続ければ来月の血液検査では6%を切ると思うのですが
2ヵ月でHbA1cを4%近くも下げてしまって大丈夫なのでしょうか?
今のところ血糖値とHbA1c以外は血液検査も正常値なので
担当医も特になにも言わず合併症の話や説明もありません。
むしろ、初診の時も食事療法や運動療法の話も無く内服薬を処方されました。
拙い長文で大変失礼しました。内容も相談になってしまいましたが
ご多忙とは思いつつもご意見をお伺いしたくコメントさせて頂きました。】
こんにちは。
にゃんこ さんから、
糖質制限食で、体重減少、HbA1c改善という
とても嬉しいコメントと質問を頂きました。
2018年3月中旬
空腹時血糖 108
HbA1c 9.4
AST 17
ALT 29
ガンマGT 25
ALP 168
ChE 345
TSH/ECLIA 0.168
FT4/ECLIA 1.59
体重78kg
4月中旬
空腹時血糖107
HbA1c7.0
体重71kg
にゃんこさん、素晴らしい改善で良かったです。
担当医が、眼科受診を薦められたのは、
一般的に従来の治療<カロリー制限・高糖質食+SU剤やインスリン注射>により
急速にHbA1cが改善した場合に、糖尿病網膜症が悪化する事例が
かんり報告されているためと思います。
高糖質食を摂取して、SU剤やインスリン注射でHbA1cの改善を目指すと、
食後高血糖と空腹時低血糖が必ず生じています。
例えば<食後血糖値250mg/dl、空腹時血糖値50mg/dl>といった具合で
平均血糖値を反映するHbA1cは6.8%くらいでコントロール良好になっても、
極めて質の悪いHbA1cです。
食後高血糖と空腹時低血糖により、「平均血糖変動幅増大」を生じ
酸化ストレスリスクが高まり、眼底出血など糖尿病網膜症の悪化の可能性も高まります。
テネリアやグラクティブは、DPP-4阻害剤ですので低血糖は起こしにくい薬です
SU剤やインスリンなしで、<糖質制限食+DPP-4阻害剤>でHbA1cが改善した場合は、
「食後高血糖」「空腹時低血糖」「平均血糖変動幅増大」が生じず、
糖尿病網膜症の悪化はありませんので、安心です。
また糖尿病を発症後、1~2年では、糖尿病網膜症を起こす可能性は低いと思いますので
こちらも心配は少ないと思います。。
このまま、美味しく楽しくスーパー糖質制限食を末長く続けられて
血糖コントロール良好を保てば、今後合併症が出現することもありません。
しかし、今までの、
血糖コントロールの悪い時期の『高血糖の記憶』が少しはあるかもしれませんので、
速やかに眼科検診には行きましょう。
江部康二
2018年04月17日 (火)
【18/04/15 中嶋一雄
スタチンは危険
高齢者脂質異常症 診療ガイドライン2017
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/pdf/guideline2017_03.pdf
P11
高齢者においてスタチン治療は
糖尿病の新規発症を有意に増加させるので注意を要する(推奨グレード B)
Sattarらによる13RCTのメタ解析の結果,
スタチンにより糖尿病の新規発症が9%増加することが示され(95% CI=1.02~1.17),
加齢とともに糖尿病の新規発症が増える傾向が示されている1)(エビデンスレベル1+)
1)Sattar N, Preiss D, Murray HM, WelshP, Buckley BM, deCraen AJ, etal: Statins and risk of incident diabetes: a collaborative meta-analysis of randomised statin trials. Lancet 2010;375:735-742.
www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(09)61965-6/fulltext
スタチンによる糖尿病発症の危険因子~日本のPMSデータ
http://www.carenet.com/news/general/carenet/45572
低用量スタチンでの糖尿病リスク~日本のコホート研究
http://www.carenet.com/news/general/carenet/45627 】
こんばんは。
コレステロール値を下げるために、よく使用されるスタチン製剤には、
糖尿病発症リスクがあります。
いままでも、それなりのエビデンスがありましたが、
今回さらに、中嶋一雄先生から、新しい情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。
結局、スタチンが糖尿病発症リスクとなることは、確実のようです。
『コレステロール値は高い方が長生き』
という主張の日本脂質栄養学会と
『コレステロール値は低いほど良い』
という主張の日本動脈硬化学会のバトルは
記憶に新しいです。
バトルに決着がついたわけではなく、世界でもバトルが続いています。
私は、糖質セイゲニストのコレステロール値は下げる必要はないという立場です。
さて、脳は脂質に富み、ヒト脳の乾燥重量の65%が脂質です。
脳脂質の半分がリン脂質、コレステロールが1/4、糖脂質が1/4です。
コレステロールは、生体のあらゆる細胞膜の構築に必須の物質であり、
肝臓で合成し腸肝循環によって制御・調節されています。
コレステロールは、細胞膜や男性ホルモン、女性ホルモンなどの原料であり、
人体に必要不可欠な大切な物質です。
ヒトだけではなく、約2億2500万年前に哺乳類が誕生して以来、
生命現象の根幹をなす細胞膜などの原料として一貫して利用されてきたのです。
そのため血清コレステロール値は、
摂取された食物のコレステロールが少ない場合は肝臓での合成が高まり、
一方、摂取コレステロールが多い場合は、肝臓での合成が徐々に減少して、
一定量を必ず確保するよう調整しています。
このように、人体にとって大切なコレステロールが、少々高値だからといって
害をなすとはとても思えません。
あくまでも、『小粒子LDLコレステロール』と『酸化LDLコレステロール』だけが
悪玉であって、肝臓から末梢組織に細胞膜の原料であるコレステロールを運んでくれる
標準の大きさのLDLコレステロールは、当然どうみても善玉なのです。
糖質セイゲニストは、HDLコレステロールが多くて、中性脂肪値が低めなので、
『小粒子LDLコレステロール』と『酸化LDLコレステロール』はほとんどなくて
善玉の標準の大きさのLDLコレステロールばかりです。
従って、糖質セイゲニストのコレステロール値が高くても問題はなく
スタチン内服も必要ないのです。
一般社団法人 日本老年医学会
「高齢者脂質異常症診療ガイドライン 2017」11ページ
CQ3 スタチンは高齢者において,有害事象を増加させるか?
【要約】
●高齢者においてスタチン治療は糖尿病の新規発症を
有意に増加させるので注意を要する(推奨グレードB).
13RCTのメタ解析の結果、スタチンにより糖尿病の新規発症が9%増加とのことです。
スタチンによる糖尿病発症の危険因子~日本のPMSデータ
http://www.carenet.com/news/general/carenet/45572
ケアネット、2018/03/05の記事です。
以下、抜粋、要約です。
慶應義塾大学薬学部の橋口 正行氏らが、
日本の市販後調査(PMS)データベースを使用したコホート内ケースコントロール研究で検討した結果、
スタチン使用により、糖尿病や高血糖症の発症が増加する可能性が示唆されたそうです。
低用量スタチンでの糖尿病リスク~日本のコホート研究
http://www.carenet.com/news/general/carenet/45627
こちらもケアネット、2018/03/08の記事です。
以下、抜粋、要約です。
秋田大学医学部附属病院薬剤部の加藤 正太郎氏らが、低用量スタチン服用患者を、
高力価スタチン群と低力価スタチン群に分けて糖尿病新規発症リスクを評価しました。
その結果、高力価スタチン群では低力価スタチン群と比べ有意に発症リスクが高かったとのことです。
江部康二
スタチンは危険
高齢者脂質異常症 診療ガイドライン2017
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/pdf/guideline2017_03.pdf
P11
高齢者においてスタチン治療は
糖尿病の新規発症を有意に増加させるので注意を要する(推奨グレード B)
Sattarらによる13RCTのメタ解析の結果,
スタチンにより糖尿病の新規発症が9%増加することが示され(95% CI=1.02~1.17),
加齢とともに糖尿病の新規発症が増える傾向が示されている1)(エビデンスレベル1+)
1)Sattar N, Preiss D, Murray HM, WelshP, Buckley BM, deCraen AJ, etal: Statins and risk of incident diabetes: a collaborative meta-analysis of randomised statin trials. Lancet 2010;375:735-742.
www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(09)61965-6/fulltext
スタチンによる糖尿病発症の危険因子~日本のPMSデータ
http://www.carenet.com/news/general/carenet/45572
低用量スタチンでの糖尿病リスク~日本のコホート研究
http://www.carenet.com/news/general/carenet/45627 】
こんばんは。
コレステロール値を下げるために、よく使用されるスタチン製剤には、
糖尿病発症リスクがあります。
いままでも、それなりのエビデンスがありましたが、
今回さらに、中嶋一雄先生から、新しい情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。
結局、スタチンが糖尿病発症リスクとなることは、確実のようです。
『コレステロール値は高い方が長生き』
という主張の日本脂質栄養学会と
『コレステロール値は低いほど良い』
という主張の日本動脈硬化学会のバトルは
記憶に新しいです。
バトルに決着がついたわけではなく、世界でもバトルが続いています。
私は、糖質セイゲニストのコレステロール値は下げる必要はないという立場です。
さて、脳は脂質に富み、ヒト脳の乾燥重量の65%が脂質です。
脳脂質の半分がリン脂質、コレステロールが1/4、糖脂質が1/4です。
コレステロールは、生体のあらゆる細胞膜の構築に必須の物質であり、
肝臓で合成し腸肝循環によって制御・調節されています。
コレステロールは、細胞膜や男性ホルモン、女性ホルモンなどの原料であり、
人体に必要不可欠な大切な物質です。
ヒトだけではなく、約2億2500万年前に哺乳類が誕生して以来、
生命現象の根幹をなす細胞膜などの原料として一貫して利用されてきたのです。
そのため血清コレステロール値は、
摂取された食物のコレステロールが少ない場合は肝臓での合成が高まり、
一方、摂取コレステロールが多い場合は、肝臓での合成が徐々に減少して、
一定量を必ず確保するよう調整しています。
このように、人体にとって大切なコレステロールが、少々高値だからといって
害をなすとはとても思えません。
あくまでも、『小粒子LDLコレステロール』と『酸化LDLコレステロール』だけが
悪玉であって、肝臓から末梢組織に細胞膜の原料であるコレステロールを運んでくれる
標準の大きさのLDLコレステロールは、当然どうみても善玉なのです。
糖質セイゲニストは、HDLコレステロールが多くて、中性脂肪値が低めなので、
『小粒子LDLコレステロール』と『酸化LDLコレステロール』はほとんどなくて
善玉の標準の大きさのLDLコレステロールばかりです。
従って、糖質セイゲニストのコレステロール値が高くても問題はなく
スタチン内服も必要ないのです。
一般社団法人 日本老年医学会
「高齢者脂質異常症診療ガイドライン 2017」11ページ
CQ3 スタチンは高齢者において,有害事象を増加させるか?
【要約】
●高齢者においてスタチン治療は糖尿病の新規発症を
有意に増加させるので注意を要する(推奨グレードB).
13RCTのメタ解析の結果、スタチンにより糖尿病の新規発症が9%増加とのことです。
スタチンによる糖尿病発症の危険因子~日本のPMSデータ
http://www.carenet.com/news/general/carenet/45572
ケアネット、2018/03/05の記事です。
以下、抜粋、要約です。
慶應義塾大学薬学部の橋口 正行氏らが、
日本の市販後調査(PMS)データベースを使用したコホート内ケースコントロール研究で検討した結果、
スタチン使用により、糖尿病や高血糖症の発症が増加する可能性が示唆されたそうです。
低用量スタチンでの糖尿病リスク~日本のコホート研究
http://www.carenet.com/news/general/carenet/45627
こちらもケアネット、2018/03/08の記事です。
以下、抜粋、要約です。
秋田大学医学部附属病院薬剤部の加藤 正太郎氏らが、低用量スタチン服用患者を、
高力価スタチン群と低力価スタチン群に分けて糖尿病新規発症リスクを評価しました。
その結果、高力価スタチン群では低力価スタチン群と比べ有意に発症リスクが高かったとのことです。
江部康二
2018年04月16日 (月)
こんにちは。
今日は糖質制限食に肯定的な、長期のエビデンスを紹介したいと思います。
長期にわたる食事療法のRCTは、極めて少数です。
長期の食事療法のエビデンスはもっぱら「コホート研究」よるものが多いです。
以下、検討してみると、RCTもコホートも長期の研究において、
糖質制限食が有利というエビデンスがあると言えます。
RCTでは、下記のディアベテス・ケアの8年間の研究論文が
私が探した限りでは、最長と思いますが、低糖質地中海食群は、低脂肪群に比し、
HbA1cレベルが大きく低下し、糖尿病の寛解率が高く、
糖尿病治療薬の導入を遅らせました。
コホート研究1)は
ニューイングランドジャーナル2006年掲載の有名な論文です。
82802人 、20年間のコホート研究です。
「低炭水化物食に冠動脈疾患のリスクなし」
「炭水化物摂取量が多いと冠動脈疾患リスク増加」という結論です。
糖質制限食のほうが、高炭水化物食より安全というエビデンスです。
コホート研究2)は
21論文、約35万人(5~23年追跡)をメタアナリシスして、
飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は、関係がないことを明白にしました。
糖質制限食では飽和脂肪酸摂取量が増えますが、心配ないというエビデンスです。
コホート研究3)は
日本の研究で、9200人を20年間観察したコホートです。
「炭水化物摂取比率が少ないほど、心血管死と総死亡リスクが少ない」
という糖質制限に有利な結論です。
コホート研究4)
上海コホート研究で、
「糖質摂取量が多いほど心血管疾患の発症リスクが高い」
という結論で、やはり糖質制限食に有利なエビデンスです。
コホート研究5) は
2017年8月、ランセットの掲載された論文です。
5大陸18ヵ国の13万5千例以上を約7年半追跡
「炭水化物の摂取比率が高いほど総死亡率上昇」
という結論で、糖質制限食に有利なエビデンスです。
RCT
1)低糖質地中海食(LCMD)。8年間RCT研究論文。
糖質50%未満のLCMD群(108人)と低脂肪群(107人)の比較。女性は1500kcal/日。男性は1800kcal/日。
新たに診断された2型糖尿病患者では、LCMDは低脂肪食と比較して、HbA1cレベルの大きな減少、糖尿病の寛解率が高く、糖尿病治療薬の導入を遅らせた。
Diabetes Care. 2014 Jul;37(7):1824-30.
The effects of a Mediterranean diet on the need for diabetes drugs and remission of newly diagnosed type 2 diabetes: follow-up of a randomized trial.
コホート研究
1)低炭水化物・高脂肪・高タンパク食に冠動脈疾患のリスクなし。
ニューイングランドジャーナルのコホート研究
82802人 20年間 2006年掲載 ハーバード大学
炭水化物摂取比率36.8±6.1%グループと58.8±7.0%のグループの比較。
10分位に分けて比較。
一方総炭水化物摂取量は冠動脈疾患リスクの中等度増加に関連していた。
高GLは冠動脈疾患リスク増加と強く関連していた。
Halton TL, et al. Low-carbohydrate-diet score and the risk of coronary heart disease in women. New England Journal of Medicine 2006;355:1991-2002.
2)飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は、関係がない
21論文、約35万人をメタアナリシスして、
5~23年追跡して1.1万人の脳心血管イベントが発生。
飽和脂肪摂取量と脳心血管イベントハザード比を検証してみると、
飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は、関係がないことが判明。
Siri-Tarino, P.W., et al., Meta-analysis of prospective cohort studies evaluating the association of saturated fat with cardiovascular disease. Am J Clin Nutr, 2010. 91(3): p. 535-46.
3)糖質制限食の長期安全性にエビデンス
前向きコホート試験NIPPON DATA80 9200人 29年間 中村保幸ら。
第10分位(糖質摂取比率51.5%)のグループは、第1分位(糖質摂取比率72.7%)のグループに比べて女性においては心血管死のリスクが、59%、総死亡リスクが79%、男女合わせると、それぞれ、74%、84%しかないという結論で、
糖質制限群がリスク低下に有利。
Br J Nutr 2014; 112: 916-924
4)上海コホート研究
「糖質摂取量により4群に分けて、
糖質摂取量が多いほど心血管疾患の発症リスクが高い」
女性:糖質264g/日未満、264~282g未満、282~299g未満、299g以上
男性:糖質296g/日未満、296~319g未満、319~339g未満、339g以上
11万7,366人を対象に、調べた研究。
女性が6万4,854人で、平均追跡期間が9.8年。
男性が5万2,512人で、平均追跡期間が5.4年。
Am J Epidemiol. 2013 Nov 15;178(10):1542-9.
Dietary carbohydrates, refined grains, glycemic load, and risk of coronary heart disease in Chinese adults.
5)炭水化物の摂取比率が高いほど総死亡率上昇 ランセット
5大陸18ヵ国の13万5千例以上を約7年半追跡
大規模疫学前向きコホート研究
炭水化物摂取比率 総死亡率
1群 46.4% 4.1%
2群 54.6% 4.2%
3群 60.8% 4.5%
4群 67.7% 4.9%
5群 77.2% 7.2%
ランセット・オンライン 2017/8/29号
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(17)32252-3
エビデンスレベル 「糖尿病診療ガイドライン2016」
レベル1 + 質の高いランダム化比較試験(RCT)および
それらのメタアナリシス(MA)/システマティック・ レビュー(SR)
レベル1 それ以外のRCTおよびそれらのMA/SR
レベル2 前向きコホート研究およびそれらのMA/SR
(事前に定めた)RCTサブ解析
レベル3 非ランダム化比較試験 前後比較試験
後ろ向きコホート研究
ケースコントロール研究およびそれらのMA/SR
RCT後付けサブ解析
レベル4 横断研究
症例集積
*質の高いRCTとは①多数例②二重盲検、独立判定③高追跡率④ランダム割り付け法が明確などをさす。
江部康二
今日は糖質制限食に肯定的な、長期のエビデンスを紹介したいと思います。
長期にわたる食事療法のRCTは、極めて少数です。
長期の食事療法のエビデンスはもっぱら「コホート研究」よるものが多いです。
以下、検討してみると、RCTもコホートも長期の研究において、
糖質制限食が有利というエビデンスがあると言えます。
RCTでは、下記のディアベテス・ケアの8年間の研究論文が
私が探した限りでは、最長と思いますが、低糖質地中海食群は、低脂肪群に比し、
HbA1cレベルが大きく低下し、糖尿病の寛解率が高く、
糖尿病治療薬の導入を遅らせました。
コホート研究1)は
ニューイングランドジャーナル2006年掲載の有名な論文です。
82802人 、20年間のコホート研究です。
「低炭水化物食に冠動脈疾患のリスクなし」
「炭水化物摂取量が多いと冠動脈疾患リスク増加」という結論です。
糖質制限食のほうが、高炭水化物食より安全というエビデンスです。
コホート研究2)は
21論文、約35万人(5~23年追跡)をメタアナリシスして、
飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は、関係がないことを明白にしました。
糖質制限食では飽和脂肪酸摂取量が増えますが、心配ないというエビデンスです。
コホート研究3)は
日本の研究で、9200人を20年間観察したコホートです。
「炭水化物摂取比率が少ないほど、心血管死と総死亡リスクが少ない」
という糖質制限に有利な結論です。
コホート研究4)
上海コホート研究で、
「糖質摂取量が多いほど心血管疾患の発症リスクが高い」
という結論で、やはり糖質制限食に有利なエビデンスです。
コホート研究5) は
2017年8月、ランセットの掲載された論文です。
5大陸18ヵ国の13万5千例以上を約7年半追跡
「炭水化物の摂取比率が高いほど総死亡率上昇」
という結論で、糖質制限食に有利なエビデンスです。
RCT
1)低糖質地中海食(LCMD)。8年間RCT研究論文。
糖質50%未満のLCMD群(108人)と低脂肪群(107人)の比較。女性は1500kcal/日。男性は1800kcal/日。
新たに診断された2型糖尿病患者では、LCMDは低脂肪食と比較して、HbA1cレベルの大きな減少、糖尿病の寛解率が高く、糖尿病治療薬の導入を遅らせた。
Diabetes Care. 2014 Jul;37(7):1824-30.
The effects of a Mediterranean diet on the need for diabetes drugs and remission of newly diagnosed type 2 diabetes: follow-up of a randomized trial.
コホート研究
1)低炭水化物・高脂肪・高タンパク食に冠動脈疾患のリスクなし。
ニューイングランドジャーナルのコホート研究
82802人 20年間 2006年掲載 ハーバード大学
炭水化物摂取比率36.8±6.1%グループと58.8±7.0%のグループの比較。
10分位に分けて比較。
一方総炭水化物摂取量は冠動脈疾患リスクの中等度増加に関連していた。
高GLは冠動脈疾患リスク増加と強く関連していた。
Halton TL, et al. Low-carbohydrate-diet score and the risk of coronary heart disease in women. New England Journal of Medicine 2006;355:1991-2002.
2)飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は、関係がない
21論文、約35万人をメタアナリシスして、
5~23年追跡して1.1万人の脳心血管イベントが発生。
飽和脂肪摂取量と脳心血管イベントハザード比を検証してみると、
飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は、関係がないことが判明。
Siri-Tarino, P.W., et al., Meta-analysis of prospective cohort studies evaluating the association of saturated fat with cardiovascular disease. Am J Clin Nutr, 2010. 91(3): p. 535-46.
3)糖質制限食の長期安全性にエビデンス
前向きコホート試験NIPPON DATA80 9200人 29年間 中村保幸ら。
第10分位(糖質摂取比率51.5%)のグループは、第1分位(糖質摂取比率72.7%)のグループに比べて女性においては心血管死のリスクが、59%、総死亡リスクが79%、男女合わせると、それぞれ、74%、84%しかないという結論で、
糖質制限群がリスク低下に有利。
Br J Nutr 2014; 112: 916-924
4)上海コホート研究
「糖質摂取量により4群に分けて、
糖質摂取量が多いほど心血管疾患の発症リスクが高い」
女性:糖質264g/日未満、264~282g未満、282~299g未満、299g以上
男性:糖質296g/日未満、296~319g未満、319~339g未満、339g以上
11万7,366人を対象に、調べた研究。
女性が6万4,854人で、平均追跡期間が9.8年。
男性が5万2,512人で、平均追跡期間が5.4年。
Am J Epidemiol. 2013 Nov 15;178(10):1542-9.
Dietary carbohydrates, refined grains, glycemic load, and risk of coronary heart disease in Chinese adults.
5)炭水化物の摂取比率が高いほど総死亡率上昇 ランセット
5大陸18ヵ国の13万5千例以上を約7年半追跡
大規模疫学前向きコホート研究
炭水化物摂取比率 総死亡率
1群 46.4% 4.1%
2群 54.6% 4.2%
3群 60.8% 4.5%
4群 67.7% 4.9%
5群 77.2% 7.2%
ランセット・オンライン 2017/8/29号
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(17)32252-3
エビデンスレベル 「糖尿病診療ガイドライン2016」
レベル1 + 質の高いランダム化比較試験(RCT)および
それらのメタアナリシス(MA)/システマティック・ レビュー(SR)
レベル1 それ以外のRCTおよびそれらのMA/SR
レベル2 前向きコホート研究およびそれらのMA/SR
(事前に定めた)RCTサブ解析
レベル3 非ランダム化比較試験 前後比較試験
後ろ向きコホート研究
ケースコントロール研究およびそれらのMA/SR
RCT後付けサブ解析
レベル4 横断研究
症例集積
*質の高いRCTとは①多数例②二重盲検、独立判定③高追跡率④ランダム割り付け法が明確などをさす。
江部康二
2018年04月15日 (日)
こんにちは。
相変わらず、根拠のない(エビデンスのない)糖質制限食批判が、インターネット上で散見されます。
今回は、糖質制限食においてエビデンスとなる信頼度の高い論文を
取り上げてみました。
まずは、「エビデンスレベル1+」と「エビデンスレベル1」
の論文で、糖質制限食の有効性を示すものを列挙してみました。
集めてみると、こんなにたくさんあるのですね。
糖質制限食批判には、「エビデンスレベル1+」と「エビデンスレベル1」の論文は皆無です。
今回の一連の週刊新潮の糖質制限批判記事は、エビデンスレベル全て皆無であり、
無根拠な憶測に過ぎません。
RCT(ランダム化比較試験)レベル1+
①Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2009年
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。
Systematic review of randomized controlled trials of low-carbohydrate vs. low-fat/low-calorie diets in the management of obesity and its comorbidities M. Hession,et all
Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)
Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009
②Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2012年
23レポートのメタ解析によって
研究期間にかかわらず糖質制限食が体重,脂質,血糖,血圧を改善させる。
Obes Rev 2012; 13: 1048-1066Systematic review and meta-analysis of clinical trialsof the effects of low carbohydrate diets oncardiovascular risk factorsobr_1021
③システマティック・レビュー/53RCTのメタアナリシス。ランセット。
1)低脂肪食よりも糖質制限食の方が減量効果が高い。
2)低脂肪食は他の高脂肪食との比較で減量効果に有意差なし。
3)低脂肪食は普通食との比較でのみ、体重減少効果があった。
4)低脂肪食は、長期的な減量効果についての科学的裏付けがない。
Effect of Low-Fat Diet Interventions Versus Other Diet Interventions on Long-Term Weight Change in Adults:
A Systematic Review and Meta-Analysis Lancet Diabetes Endocrinol 2015 Dec 01;3(12)968-979,
DK Tobias, M Chen, JE Manson, DS Ludwig, W Willett, FB Hu
RCT(ランダム化比較試験)レベル1
①低糖質食 vs. 低脂質食。低糖質食の圧勝
低糖質食 vs. 低脂質食、減量や脂質データなどCVD(心血管疾患)リスク低減で、
低糖質食の圧勝。148人の肥満者を、1年間研究。
低糖質食は40g/日未満。
Effects of low-carbohydrate and low-fat diets: a randomized trial.
Bazzano LA et all
Ann Intern Med. 2014 Sep 2;161(5):309-18
②DIRECT低炭水化物食で一番体重減少・ HDL-C増加
脂肪制限食(カロリー制限)、
地中海食(カロリー制限)、
低炭水化物食(カロリー無制限)の3群
低炭水化物群のみカロリー無制限のハンディがあったが、結局3群全て同じだけのカロリーが減少。満足度と満腹度。
当初糖質20g/日以下。3ヶ月後から120g/日以下を目指すも、結局女性150g/日、男性180g/日で40%の糖質。
糖質約50%の低脂肪食群、地中海食群(高糖質群)
DIRECT(Dietary Intervention Randomized Controlled Trial)
322人を3群に分けて、2年間の研究。
Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359.NO.3 229-241
③DIRECTのフォローアップ研究。合計6年間。
地中海食、低炭水化物食の2群は、6年後も 体重減少に有意差あり。
Four-Year Follow-up after Two-Year Dietary Interventions
N Engl J Med 2012; 367:1373-1374October 4, 2012
④低糖質地中海食(LCMD)。HbA1cレベルの大きな減少。
低糖質地中海食(LCMD)。8年間RCT研究論文。
糖質50%未満のLCMD群(108人)と低脂肪群(107人)の比較。女性は1500kcal/日。男性は1800kcal/日。
新たに診断された2型糖尿病患者では、LCMDは低脂肪食と比較して、HbA1cレベルの大きな減少、糖尿病の寛解率が高く、糖尿病治療薬の導入を遅らせた。
Diabetes Care. 2014 Jul;37(7):1824-30.
The effects of a Mediterranean diet on the need for diabetes drugs and remission of newly diagnosed type 2 diabetes: follow-up of a randomized trial.
⑤低炭水化物食が、肥満・HDL-C・TGを改善。
JAMA 2007年3月 A TO Z 体重減少研究
アトキンス、ゾーン、ラーン、オーニッシュダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果などをみた。311人の女性を上記4グループに分けて追跡。これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなものである。
アトキンスは低炭水化物食(スーパー糖質制限食)、ラーンとオーニッシュは高炭水化物、低脂肪食、ゾーンは炭水化物40%
低炭水化物食が体重を最も減少させて、HDL-CとTGを改善。
Comparison of the Atkins, Zone, Ornish, and LEARN Diets for Change in Weight and Related Risk Factors Among Overweight Premenopausal Women
The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial ,JAMA297:969-977
エビデンスレベル 「糖尿病診療ガイドライン2016」
レベル1 + 質の高いランダム化比較試験(RCT)および
それらのメタアナリシス(MA)/システマティック・ レビュー(SR)
レベル1 それ以外のRCTおよびそれらのMA/SR
レベル2 前向きコホート研究およびそれらのMA/SR
(事前に定めた)RCTサブ解析
レベル3 非ランダム化比較試験 前後比較試験
後ろ向きコホート研究
ケースコントロール研究およびそれらのMA/SR
RCT後付けサブ解析
レベル4 横断研究
症例集積
*質の高いRCTとは①多数例②二重盲検、独立判定③高追跡率④ランダム割り付け法が明確などをさす。
江部康二
相変わらず、根拠のない(エビデンスのない)糖質制限食批判が、インターネット上で散見されます。
今回は、糖質制限食においてエビデンスとなる信頼度の高い論文を
取り上げてみました。
まずは、「エビデンスレベル1+」と「エビデンスレベル1」
の論文で、糖質制限食の有効性を示すものを列挙してみました。
集めてみると、こんなにたくさんあるのですね。
糖質制限食批判には、「エビデンスレベル1+」と「エビデンスレベル1」の論文は皆無です。
今回の一連の週刊新潮の糖質制限批判記事は、エビデンスレベル全て皆無であり、
無根拠な憶測に過ぎません。
RCT(ランダム化比較試験)レベル1+
①Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2009年
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。
Systematic review of randomized controlled trials of low-carbohydrate vs. low-fat/low-calorie diets in the management of obesity and its comorbidities M. Hession,et all
Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)
Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009
②Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2012年
23レポートのメタ解析によって
研究期間にかかわらず糖質制限食が体重,脂質,血糖,血圧を改善させる。
Obes Rev 2012; 13: 1048-1066Systematic review and meta-analysis of clinical trialsof the effects of low carbohydrate diets oncardiovascular risk factorsobr_1021
③システマティック・レビュー/53RCTのメタアナリシス。ランセット。
1)低脂肪食よりも糖質制限食の方が減量効果が高い。
2)低脂肪食は他の高脂肪食との比較で減量効果に有意差なし。
3)低脂肪食は普通食との比較でのみ、体重減少効果があった。
4)低脂肪食は、長期的な減量効果についての科学的裏付けがない。
Effect of Low-Fat Diet Interventions Versus Other Diet Interventions on Long-Term Weight Change in Adults:
A Systematic Review and Meta-Analysis Lancet Diabetes Endocrinol 2015 Dec 01;3(12)968-979,
DK Tobias, M Chen, JE Manson, DS Ludwig, W Willett, FB Hu
RCT(ランダム化比較試験)レベル1
①低糖質食 vs. 低脂質食。低糖質食の圧勝
低糖質食 vs. 低脂質食、減量や脂質データなどCVD(心血管疾患)リスク低減で、
低糖質食の圧勝。148人の肥満者を、1年間研究。
低糖質食は40g/日未満。
Effects of low-carbohydrate and low-fat diets: a randomized trial.
Bazzano LA et all
Ann Intern Med. 2014 Sep 2;161(5):309-18
②DIRECT低炭水化物食で一番体重減少・ HDL-C増加
脂肪制限食(カロリー制限)、
地中海食(カロリー制限)、
低炭水化物食(カロリー無制限)の3群
低炭水化物群のみカロリー無制限のハンディがあったが、結局3群全て同じだけのカロリーが減少。満足度と満腹度。
当初糖質20g/日以下。3ヶ月後から120g/日以下を目指すも、結局女性150g/日、男性180g/日で40%の糖質。
糖質約50%の低脂肪食群、地中海食群(高糖質群)
DIRECT(Dietary Intervention Randomized Controlled Trial)
322人を3群に分けて、2年間の研究。
Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359.NO.3 229-241
③DIRECTのフォローアップ研究。合計6年間。
地中海食、低炭水化物食の2群は、6年後も 体重減少に有意差あり。
Four-Year Follow-up after Two-Year Dietary Interventions
N Engl J Med 2012; 367:1373-1374October 4, 2012
④低糖質地中海食(LCMD)。HbA1cレベルの大きな減少。
低糖質地中海食(LCMD)。8年間RCT研究論文。
糖質50%未満のLCMD群(108人)と低脂肪群(107人)の比較。女性は1500kcal/日。男性は1800kcal/日。
新たに診断された2型糖尿病患者では、LCMDは低脂肪食と比較して、HbA1cレベルの大きな減少、糖尿病の寛解率が高く、糖尿病治療薬の導入を遅らせた。
Diabetes Care. 2014 Jul;37(7):1824-30.
The effects of a Mediterranean diet on the need for diabetes drugs and remission of newly diagnosed type 2 diabetes: follow-up of a randomized trial.
⑤低炭水化物食が、肥満・HDL-C・TGを改善。
JAMA 2007年3月 A TO Z 体重減少研究
アトキンス、ゾーン、ラーン、オーニッシュダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果などをみた。311人の女性を上記4グループに分けて追跡。これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなものである。
アトキンスは低炭水化物食(スーパー糖質制限食)、ラーンとオーニッシュは高炭水化物、低脂肪食、ゾーンは炭水化物40%
低炭水化物食が体重を最も減少させて、HDL-CとTGを改善。
Comparison of the Atkins, Zone, Ornish, and LEARN Diets for Change in Weight and Related Risk Factors Among Overweight Premenopausal Women
The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial ,JAMA297:969-977
エビデンスレベル 「糖尿病診療ガイドライン2016」
レベル1 + 質の高いランダム化比較試験(RCT)および
それらのメタアナリシス(MA)/システマティック・ レビュー(SR)
レベル1 それ以外のRCTおよびそれらのMA/SR
レベル2 前向きコホート研究およびそれらのMA/SR
(事前に定めた)RCTサブ解析
レベル3 非ランダム化比較試験 前後比較試験
後ろ向きコホート研究
ケースコントロール研究およびそれらのMA/SR
RCT後付けサブ解析
レベル4 横断研究
症例集積
*質の高いRCTとは①多数例②二重盲検、独立判定③高追跡率④ランダム割り付け法が明確などをさす。
江部康二