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飲酒とがん
こんにちは。

今回は、飲酒とがん全体の発生率について、考えてみます。

私は、タバコは吸いませんが、お酒はそこそこ飲むので、
おおいに気になるところです。

結論としては、喫煙がなければ、
飲酒量が増えても、がんの発生率は不変
ということです。

タバコを吸わない酒飲みには、とても嬉しいお話しですね。 (^_^)


以下、
国立がん研究センター
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/269.html
飲酒とがん全体の発生率との関係について
から、要約してみました。

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―
平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、アンケート調査。
そのうち、40~59歳の男女約73,000人について、
その後平成13年(2001年)まで追跡した調査結果に基づいて、
飲酒とがん全体の発生率との関係について調べた結果を、
論文発表。(British Journal of Cancer 2005年92巻182-187ページ)。


お酒も量が過ぎれば将来がんになりやすい

調査開始時の飲酒の程度により6つのグループに分けて、
その後のがん全体の発生率を比較。
調査開始から約10年間の追跡期間中に、
調査対象者約73,000人のうち約3,500人が何らかのがんに罹患。

男性では、
たまに飲む人の間で癌を発症するリスクが最も低く、
アルコール(エタノール)摂取量の増加と線形の正の関連が認められました。
何故か、飲まない人よりたまに飲む人のほうがリスクが低いです。

飲まない人:1.1
たまに飲む人:1.0
週1〜149 gの人:1.18
週150〜299 gの人:1.17
週300gの人:1.43
週450g以上の人:1.61


たまに飲酒しているグループと比べると、
男性では、アルコール摂取量が日本酒にして1日平均2合未満のグループは、
がん全体の発生率は1.18。
一方、飲酒の量が1日平均2合以上3合未満のグループは、
がん全体の発生率が1.43倍、
1日平均3合以上のグループは、1.61倍。
(日本酒1合と同じアルコール量は、焼酎で0.6合、泡盛で0.5合、ビールで大ビン1本、ワインでグラス2杯(200ml)、ウイスキーダブルで1杯。)

女性では、定期的に飲酒する人が多くないためか、
はっきりした傾向がみられませんでした。


飲酒と喫煙が重なるとがんの発生率が高くなる

この結果を、たばこを吸う人と吸わない人とに分けてみてみたところ、
たばこを吸わない人では、飲酒量が増えても、がんの発生率は不変。
ところが、たばこを吸う人では、飲酒量が増えれば増えるほど、
がんの発生率が高くなり
、ときどき飲むグループと比べて、
1日平均2-3合以上のグループでは1.9倍、
1日平均3合以上のグループでは2.3倍がん全体の発生率が増加。

このことから、飲酒によるがん全体の発生率への影響は、
喫煙によって助長されることがわかります。

もちろん、口唇・口腔・咽頭・食道・肝・喉頭(注)など、
飲酒と特によく関連していると考えられているがんだけでみてみると、
喫煙していなくても飲酒量が増えればがんの発生率が高くなりますが、
喫煙が重なることにより、さらに発生率が高くなるという結果になりました。


飲酒と喫煙が重なるとなぜいけないのか
お酒に含まれているエタノールは分解されてアセトアルデヒドになるが、
これががんの発生にかかわると考えられています。
そして、喫煙者では、エタノールをアセトアルデヒドに分解する酵素が、
たばこの煙の中に含まれる発がん物質を
同時に活性化してしまっているとも考えられています。


やはり多量飲酒はよくない

この研究からは、何らかのがんになりにくくするには、
日本酒換算で一日平均2合以上の多量飲酒は慎んだ方がいいと言えます。

しかし、同じ多目的コホート研究からの結果では、
最近増加している糖尿病や大腸がんなら、
一日平均1合を超えると危険性が高くなるという結果となっています。

いろいろな生活習慣病をまとめて予防しようと考えると、
お酒は日本酒換算で一日1合(ビールなら大びん1本、ワインならグラス2杯)程度までに控えておいた方がよいと言えます。



(注)
食道癌に関しては、上述のように、
喫煙なしで飲酒単独だと、リスクとなりません。



江部康二

酒飲みでも、タバコ(-)なら食道がんのリスクなし。
こんにちは。
今回は、アルコールと食道ガンのお話しです。
糖質セイゲニストには酒飲みが多いので、耳寄りな情報かもしれませんね。

日本人に多いのですが、遺伝的に、お酒を呑むとすぐに赤くなる体質があります。
そしてこの体質の場合はアルコールを呑むと食道ガンになりやすいというのが定説です。
アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドを分解する酵素が
2型アセトアルデヒド分解酵素(ALDH2)で、この酵素の働きが弱いと
少しのお酒で赤くなってしまうのです。
アセトアルデヒドのヒトへの発ガン性は2010年に、WHOがしっかり認定しています。

実はかくいう私も、お酒を呑むとすぐに赤くなるタイプです。( ̄_ ̄|||)
まあ鍛えられたのか、かなりの量は呑めるようにはなっています。(^^)  

この鍛えて呑めるようになったというのが曲者で、
本来、アセトアルデヒド分解酵素が弱くて、
お酒など呑まない方が良いに決まっている体質なのに
ついつい呑んでしまうわけです。

結局、アセトアルデヒド分解酵素が弱いにもかかわらず、
お酒をたくさん呑む人達が日本人の食道がんの患者さんの約70%を占めているのですから、ご用心、ご用心。(=_=;)

ところが、『捨てる神あれば拾う神あり』です。
「酒飲みでも、タバコ(-)なら食道がんのリスクなし」
という結論の信頼度の高い論文を発見したのです。(☆)
しかも、欧米人でなくて、日本人のデータですから、『鬼に金棒』です。

(☆)
国立がん研究センター
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/338.html
飲酒と食道がんの発生率との関係について
-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-


この研究によれば、
「お酒で顔が赤くなる体質でもならない体質でも、
飲酒による食道がんリスクへの影響は見られませんでした。
ただし、喫煙指数20以上のヘビースモーカーでは影響が現れ
1日当たり2合以上の大量飲酒グループで顔が赤くなる体質の食道がんのリスクが、
2合未満で顔が赤くならない体質に比べ3.4倍高くなっていました。」

げにタバコの害、恐るべしです。
喫煙の量を示す国際的な指標として、喫煙指数 Pack-yearsがあります。
Pack years=(1日の喫煙本数/20本)×喫煙年数という計算法です。
すなわち「1日のタバコの箱数×年数」という意味です。

1日1箱のタバコを20年間吸ったら、喫煙指数が20になります。
私は、タバコを吸ったことがないので、喫煙指数は20未満というかゼロです。
ということは、結構お酒を呑んでいるけれど(1日当たり2合以上、(-_-;) )、
食道がんリスクはないという誠に有り難いご宣託ではありませんか。

なお、今日のお話はあくまでも『食道がん』にしぼったお話しですので誤解のないように御願いします。

アルコールは食道がん以外にも
他のがんなどのリスクとなることも努々お忘れ無く。

それから、適量のアルコールという基本もあることをお忘れなく。
あとは自己管理、自己責任でよろしくお願い申し上げます。  m(_ _)m

<アルコールの適量>
世界がん研究基金2007年の勧告では、アルコールの推奨量は、男性は1日2杯、女性は1日1杯までとしています。
1杯はアルコール10~15グラムに相当します。

米国糖尿病学会は、
アルコール24g(30ml)/日を食事と共に摂る程度なら適量としていますが、
ビール(5%)なら600ml
ワイン(15%)なら200ml
ウイスキー(43%)なら70ml
焼酎(25%)なら120ml
糖質ゼロ発泡酒(4%)なら750ml

に相当します。

<アルコールのリスク>
世界がん研究基金の2007年の勧告で、アルコール摂取は、「口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、大腸がん(男性)、乳がん」の確実なリスクであり、「肝臓がん、大腸がん(女性)」 のリスクとなるので要注意です。

それから、過度のアルコール摂取は、肝細胞内での脂肪酸からの中性脂肪の過剰合成を引き起こします。

その一部は肝臓外へ分泌されて高中性脂肪血症の原因となり、一部は肝細胞内に蓄積されて脂肪肝の原因となります。


江部康二


芋焼酎と日本酒、ビール、食後の血糖値上昇が低いのはどれか?
こんにちは。
少し前ですが、2018年6月20日、日経グッディに、
【芋焼酎と日本酒、ビール、食後の血糖値上昇が低いのはどれか?】
http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100015/051500045/

というとても興味深い記事が掲載されました。
yanosonoさんから、情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。

早速、日経グッデイの当該の記事を読んでみました。
以下は、記事の要約、抜粋と感想です。

まずは、ちょっとビックリなのですが、

「鹿児島大学は全国唯一の“焼酎学講座”が開設された大学で、焼酎についての研究も盛んに行われています。
そして、私が糖尿病、肥満などを専門としていたことから、芋焼酎の健康面での機能性に注目しました。
特に糖代謝にいい影響があるのではないかと考えたわけです。
鹿児島は何を食べてもおいしいので、つい食べ過ぎてしまいます。
さらに、車社会で慢性的に運動不足になりがちなので、実は肥満の方が多いのです」


という、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 特任教授の乾明夫さんのコメントです。
さすが鹿児島というか、焼酎に特化して学術的に研究というのは、
衝撃的ですし、そりゃー日本全国で唯一というのも納得です。

今回の実験の被験者は30~50代の男女6人で、「郷土の宝」である芋焼酎のため、
鹿児島大学のスタッフが被験者となったそうです。
その心意気やよしであり、good job です。

芋焼酎との比較対象は、水、ビール、日本酒の3種です。
飲酒量は、芋焼酎(アルコール度数15%)は333mL、
ビール(同5%)は1000 mL、日本酒(同15%)は333mLで、
純アルコール量はいずれも約40gと同等になるように調整です。

水も比較対象になっているのが興味深いです。
おそらく約710kcalの同一の食事を摂取しての実験です。

食事摂取後の血糖値の上昇は、
ビールが最も高く、次に水、日本酒で、
芋焼酎が最も低値でした。

芋焼酎は、糖質・カロリーともにゼロの“水”より、
血糖値の上昇が抑えられていました。

つまり、芋焼酎には積極的に血糖値を下げる
何らかの成分が存在することとなります。

もっとも、ビールには結構大量の糖質が含まれています。
100g中に3gくらいの糖質ですから、1000mlなら約30gの糖質でこれは多いですね。
第2位の水は糖質ゼロ・カロリーゼロですから、
このときの血糖値の上昇は、710kcalの食事に含まれる糖質によるものです。

第3位の日本酒ですが、333ml中の糖質含有量は、約13gですが、
それでも水より少し食後血糖値の上昇が低いので
日本酒にも、何らかの血糖値を下げる物質が含まれていることとなります。

そして最後に焼酎は、水よりかなり明確に食後血糖値の上昇が少ないですが、
これには焼酎の糖質含有量がゼロということも関係していると思います。

結局、日本酒と芋焼酎が、水より食後血糖値の上昇を抑制しましたが
効果としては芋焼酎の圧勝です。

結論です。
①日本酒と芋焼酎と水の結果を考慮すれば、
 アルコールそのものに血糖上昇抑制作用がある可能性が高い。
②芋焼酎には血糖上昇抑制作用があるが、それが、アルコール以外の成分も関与しているかは 現時点ではわからない。


ということとなります。
エチルアルコール単独で40g摂取して、芋焼酎(アルコール40g)摂取と比較して頂ければ
芋焼酎にアルコール以外の血糖上昇抑制成分があるかどうかがわかると思います。
乾明夫先生、是非よろしくお願い申し上げます。


江部康二

「妊娠糖尿病」「妊娠中の明らかな糖尿病」「糖尿病合併妊娠」と糖質制限食
こんにちは。
「妊娠糖尿病」に関して、よく質問があります。

今回は
「妊娠糖尿病」「妊娠中の明らかな糖尿病」「糖尿病合併妊娠」

『糖質制限食』『従来の糖尿病食』について、考えてみました。

日本糖尿病・妊娠学会
http://www.dm-net.co.jp/jsdp/information/024273.php
のサイトと

科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013

を参考にしました。

<診断基準>
1)妊娠糖尿病
糖尿病ではなかった人が、
妊娠後初めて妊娠糖尿病の基準をみたした場合は「妊娠糖尿病」です。
妊娠糖尿病は、糖尿病にいたっていない糖代謝異常であり、
妊娠時に診断された明らかな糖尿病は含まれません。
妊娠糖尿病は75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)によって診断されます。

負荷前値が92mg/dl以上、
1時間値180mg/dl以上、
2時間値153mg/dl以上、

のいずれかがあれば、
妊娠糖尿病(GDM)と診断されます。

妊婦さんの7〜9%は妊娠糖尿病と診断されます。
特に肥満がある人、糖尿病の家族歴のある人、
高齢妊娠、巨大児出産既往のある人などは
ハイリスクですので必ず検査をうけましょう。


2)妊娠中の明らかな糖尿病 (註1)
以下のいずれかを満たした場合に診断する。

空腹時血糖値 ≧126 mg/dl
HbA1c値 ≧6.5%


*随時血糖値≧200 mg/dlあるいは75gOGTTで2時間値≧200 mg/dlの場合は、
妊娠中の明らかな糖尿病の存在を念頭に置き、
1)または2)の基準を満たすかどうか確認します。(註2)


3)糖尿病合併妊娠

妊娠前にすでに診断されている糖尿病患者の妊娠。
確実な糖尿病網膜症があるものの妊娠。
妊娠前のHbA1c:7.0未満が目標です。

(註1).妊娠中の明らかな糖尿病には、妊娠前に見逃されていた糖尿病と、
妊娠中の糖代謝の変化の影響を受けた糖代謝異常、
および妊娠中に発症した1型糖尿病が含まれる。
いずれも分娩後は診断の再確認が必要である。

(註2).妊娠中、特に妊娠後期は妊娠による生理的なインスリン抵抗性の増大を反映して
糖負荷後血糖値は非妊時よりも高値を示す。
そのため、随時血糖値や75gOGTT負荷後血糖値は
非妊時の糖尿病診断基準をそのまま当てはめることはできない。


<妊娠中の血糖値コントロール目標>

朝食前血糖値:70~100mg/dl未満
食後2時間血糖値:120mg/dl未満
GA(グリコアルブミン)15.8%未満


妊娠中の血糖値コントロール目標は
「妊娠糖尿病」「妊娠中の明らかな糖尿病」「糖尿病合併妊娠」
の3つとも上記となります。
できれば、食後1時間血糖値:140mg/dl未満もクリアすることが望ましいです。

HbA1c6.2%未満も目標なのですが、
妊婦で鉄欠乏状態があると、HbA1cは正確な数値を示さないので、
GA(グリコアルブミン)の方が頼りになるのです。


<妊婦の高血糖によるリスクと弊害>


高血糖による母体、胎児への合併症として

【胎児への影響】
・流産、奇形、巨大児、未熟児、低血糖児、心臓病、胎児死亡 など

【母体への影響】
・糖尿病腎症の悪化、糖尿病網膜症の悪化
・早産、
・尿路感染症
・妊娠高血圧症候群、羊水過多
・赤ちゃんが巨大児になることにより、難産になったり、帝王切開になるリスクの増加などがあります。

高血糖により、これだけのリスクが母体と胎児に生じます。


<従来の糖尿病食(高糖質食)の欠陥>
そして、直接高血糖を生じるのは、糖質摂取時だけであり、
タンパク質・脂質摂取時は、血糖値が直接上昇することはありません。
従って日本糖尿病学会推奨の糖尿病食(カロリー制限・高糖質食)で
食後高血糖を防ぐことは、インスリン注射をしていても至難の業です。

さらに、食後高血糖を防ごうとして、インスリンの量を増やせば、
今度は母体は低血糖のリスクが大きく増加します。

そして、普通に糖質を摂取して、インスリン注射で厳格にコントロールしようとすると、一日の血糖値の変動幅が、増大します。

食後高血糖と平均血糖変動幅の増大が一番大きな酸化ストレスリスクとなります。(*)

酸化ストレスは、母体にも胎児にも当然、悪影響を及ぼします。

「妊娠糖尿病」「妊娠中の明らかな糖尿病」「糖尿病合併妊娠」で、
糖質を普通に食べてインスリン注射を打っている場合は、
上記のリスクは常にあるわけです。

糖尿病妊娠で糖質を普通に食べてインスリンを注射して、
無事出産されている方も多いと思いますが、このように見てくると、
それはある意味運が良い人と言えるのかもしれません。

(*)
酸化ストレスに関しては、
2014年07月14日 (月)の本ブログ記事
酸化ストレス・・・て何?食後高血糖と平均血糖変動幅増大がリスク!
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3030.html
をご参照いただけば幸いです。


<スーパー糖質制限食の利点>
スーパー糖質制限食に切り替えると、
「妊娠糖尿病」ならインスリンフリーになり、
血糖コントロールが一日を通して、とても良好となります。
そして、食後高血糖、低血糖、
平均血糖変動幅増大、酸化ストレス増大といった母体と胎児に悪影響を及ぼす要因が、
全てなくなります。

「妊娠中の明らかな糖尿病」「糖尿病合併妊娠」の場合も、
食前インスリンの単位は1/3以下になりますし、
フリーになることもあります。
インスリンフリーが一番良いのですが、インスリンの量が減ったなら
低血糖のリスクは確実に減るので好ましいのです。

また妊婦体重コントロールも、糖質制限食なら、ほとんど苦労はいりません。
その結果、安産で、元気な赤ちゃん誕生の可能性がとても高いということとなります。


<βヒドロキシ酪酸(ケトン体)の安全性

2014年1月12日(日)第17回日本病態栄養学会年次学術集会(大阪国際会議場)で、宗田哲男先生が、画期的な研究成果を発表されました。
人工流産胎児(58検体)の絨毛の組織間液のβヒドロキシ酪酸値の測定です。
何と平均1730μmol/Lとかなりの高値です。
成人の基準値は76~85μmol/L以下くらいなのですが、胎児の絨毛間液においては、
1730μmol/L程度が基準値ということになります。
糖質を普通に摂取している成人の基準値の、約20~30倍です。

その後、宗田先生はさらに研究を積み重ねられて、2016年
胎盤・臍帯・新生児のケトン体値に関する研究を英文で発表されました。(☆)
胎児、新生児は、ケトン体を主たるエネルギー源として利用している可能性が高いことを示唆する、画期的な研究です。
胎盤・臍帯のケトン体値論文は、世界初と思われますが、私もも共著者の一人です。
胎盤のケトン体値は基準値の20~30倍、 平均2235.0μmol/L(60検体)
臍帯のケトン体値は基準値の数倍~10倍、平均779.2μmol/L(60検体)
新生児のケトン体値は、基準値の3倍~数倍、
平均240.4μmol/L(312例、生後4日)  基準値は85 μmol/L以下。
胎盤と臍帯と新生児では、ケトン体は高値が当たり前であることが
確認できて、ケトン体の安全性の担保となりました。
このように、胎盤、新生児のケトン体の基準値は、
現行の基準値よりはるかに高値であることが確認されたわけですから、
妊婦のケトン体が少々高値でも胎児へ悪影響などあるはずもないのです。
スーパー糖質制限食で、妊婦のケトン体が、一般的基準値より高値になりますが、
妊婦においても、胎児においても、
ケトン体の安全性(基準値より高値でも)が確認されたと言えます。

(☆)Ketone body elevation in placenta, umbilical cord,newborn and mother in normal delivery  Glycative Stress Research 2016; 3 (3): 133-140
Tetsuo Muneta 1), Eri Kawaguchi 1), Yasushi Nagai 2), Momoyo Matsumoto 2), Koji Ebe 3),Hiroko Watanabe 4), Hiroshi Bando 5)


江部康二
西洋医学と東洋医学。漢方医、西洋医、そして食医。
 こんにちは。
私は、漢方医かつ西洋医で、東洋医学にも西洋医学にも共に携わっています。
また糖質制限食を推進する「食医」でもあります。

 日本で本格的に東洋医学(当時の中国で主流の医学)が隆盛となったのは、
室町・戦国時代の医師田代三喜以後とされていますが、
彼は明にわたり、当時明で盛んであった李東垣と朱丹渓の医学を学び、日本に伝えました。
即ち李朱医学とよばれています。

 その弟子の曲直瀬道三に到り、
李朱医学は日本流に完成され隆盛となっています。
この医学は傷寒論の時代(後漢末期~三国時代)に比べれば、
後世の医学ということで後世方(中国では時方)と呼ばれるようになりました。

 一方後世派の隆盛に対して、その漢方理論が思弁的であるとの批判をかかげ、
傷寒論の原点にかえれとする一派が台頭してきます。
傷寒論を唯一無二の聖典とするわけで、
李朱医学に比べれば古(いにしえ)の医学ということで、
古方(中国では経方)と呼ばれるようになりました。
この一派には江戸時代前期の医師、名古屋玄医を始めとして、
吉益東洞、尾台榕堂などがいます。
特に吉益東洞は後世に与えた影響が大きいとされています。

 又、両者を共に取り入れた折衷派と呼ばれる一派もあり
多紀元簡、浅田宗伯などがいます。

 江戸時代後期にオランダ医学が紹介されると、
それまでの医学と新しい医学とを区別する必要が生じました。
そのためオランダ医学を「蘭方」(らんぽう)と呼び、
それまでの治療法を「漢方」と呼ぶようになりました。

 現代中国での伝統医学は「中医学」と呼ばれ、
日本の伝統的「漢方」とは、異なる体系です。
高雄病院では中医学も漢方も両方、取り入れています。

 なお日本では、明治維新後、
1883年の医師免許規則配布により、西洋医だけを医師として認め、
漢方医は医師の資格として認められなくなりました。
しかし西洋医のなかで志をもって漢方を学ぶ医師により、
漢方は現代まで綿々と続いています。

 漢方も西洋医学も、患者さんが健康を取り戻すのを援助します。
それぞれに得意分野があるので、
どちらか一方が優れていて他方が劣っているということではなく、
役割分担で相補的に対応するのがよいと思います。

 これは、食事療法運動療法についても同じことがいえます。
もし、食事療法だけで健康を保てるのなら楽ですし、
食事に運動を加えてバランスの良い健康な生活が出来るのなら、
薬の世話にならずに済むわけです。
現実に糖質制限食の実践で様々な生活習慣病が改善します。

 食事と運動でどうにもならなければ、その次に漢方薬を使うことを考えます。
バランスが少し崩れていただけの人ならば、漢方だけで健康な状態に戻れます。
しかし、西洋医学も必要です。
例えば、手術が必要な病気の人は漢方ではどうにもなりません。
漢方でどうにかしようなどと無理をいわず、さっさと手術すれば良いのです。

 西洋医学は原因がはっきりしている病気はとても得意としています。
たとえば近年、一旦激減した梅毒が、再び大流行しています。
患者層は、若い女性が非常に多いのが特徴です。
梅毒は梅毒トレポネーマという菌が感染して発病することがわかって、
ペニシリンなどの抗生物質が特効薬として開発され
簡単に治るようになりましたので、速やかに治療して欲しいと思います。

 梅毒は江戸・明治時代までは原因がわからず、
当時の漢方医にとって不治の病だったのですから、西洋医学、たいしたものです。
 このように「一つの病気に対して一つの原因があり、
対応する特効的治療がある。」
というパターンは、
西洋医学が最も得意とするところです。

 ところが今、平成・令和の世の病気をみてみると、
原因がはっきりしない病気が多くを占めています。
言い換えれば西洋医学的には対症療法が主で、
特効的な治療法がない病気がおりのように溜まって残ってきたと言えます。
 
 高雄病院には西洋医学単独では難治の様々な現代病の漢方治療を求めて、
たくさんの患者さんがやってこられます。
膠原病や難病でステロイド薬減量を目的として、来院される患者さんもあります。
常勤医師すべてが漢方治療を実践しているユニークな病院ですが、
もちろん必要な場合は西洋医学的治療も行います。

 外来には潰瘍性大腸炎などの難病、気管支喘息など呼吸器疾患、リウマチなど膠原病、過敏性腸など消化器疾患、アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患、
不妊症など婦人科疾患、高血圧など循環器疾患、糖尿病など代謝疾患、
ネフローゼ症候群など腎疾患・・・。
 そのほかにも、風邪をひきやすい、冷え性、なんやしんどい、微熱など、
西洋医学的には診断がつかないような訴えの人もこられます。

 このように漢方医は小児、成人、老人含めて実に多種多様な病気を診ます。
漢方的診察により、人体の気血の流れや五臓六腑のバランスをチェックして、
それを整えるような薬を処方します。
ですから原因不明の病気にもそれなりに対処できます。
しかし漢方治療も決して万能ではなく、
西洋医学の知識が必要なことが多々あります。

 西洋医学と東洋医学を上手に両立させて、
少しでも患者さんの症状が楽になればいいなと思っています。
また潰瘍性大腸炎のような難病に、
糖質制限食を併用すると顕著な効果がある場合が多いことも
判明してきましたので、こちらもさらに勉強を重ねたいと思います。

 糖尿病は勿論のこと、ニキビ、喘息、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、膠原病、
婦人科疾患、高血圧、メタボ、肥満、花粉症、逆流性食道炎、片頭痛、歯周病、機能性低血糖症など様々な「生活習慣病」の改善と予防にも糖質制限食
有効なことが多いです。
 あと、AGEs蓄積が主たる発症要因の一つである「認知症」の予防と改善においても糖質制限食の療効果が期待できます。


江部康二