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[日本疫学会2014] 久山町研究、蛋白質摂取量多いと脳卒中リスク減少。
第24回日本疫学会学術総会[久山町研究]

【蛋白質の摂取量が多いほど,脳卒中および脳出血の発症リスクが低下

発表者: 九州大学・小澤 未央 氏 (1月25日,一般口演)

目的: 日本人地域一般住民を対象に,蛋白質の摂取量と脳卒中発症リスクとの関連を検討。

コホート・手法: 久山町研究。心血管疾患既往者,および蛋白質摂取量が極端な人(高値,低値とも全体の1%)を除外した2400人を19年間追跡。1日あたりの蛋白質摂取量の四分位により対象者を4つのカテゴリーに分類(Q1: 50 g未満,Q2: 50~55.5 g,Q3: 55.6~61.4 g,Q4: 61.5 g以上)。 (久山町研究へ)

結果: 蛋白質摂取量は,脳卒中発症の多変量調整ハザード比の低下と有意に関連していた。脳卒中病型別にみると,脳出血では同様の結果が得られたが,脳梗塞については,蛋白質摂取量との有意な関連はみられず。蛋白質の種類(動物性/植物性)ごとに解析を行うと,脳卒中発症の多変量調整ハザード比は植物性蛋白質の摂取量が多いほど有意に低下したが,動物性蛋白質摂取量との関連はみられず,この結果は脳梗塞についても同様であった。脳出血については,動物性蛋白質の摂取量が多いほど発症の多変量調整ハザード比が有意に低下していたが,植物性蛋白質では有意な関連はみられなかった。

小澤未央氏のコメント
今回の結果から,蛋白質摂取が脳卒中発症リスクの低下と関連していることが示唆されました。動物性蛋白質と植物性蛋白質に分けて検討した場合に,動物性蛋白質は脳出血に対して,植物性蛋白質は脳梗塞に対してそれぞれ予防的に働いていたことから,これまでに蛋白質摂取の効果として報告されている降圧作用以外にも,動物性蛋白質と植物性蛋白質のそれぞれに特有のメカニズムによる脳卒中予防効果がある可能性があります。そのため,動物性蛋白質,植物性蛋白質の両方をバランスよく摂取することが大切だと考えられます。】


こんにちは。

精神科医師Aさんから情報をいただきましたが、
第24回日本疫学会学術総会が、
2014年1月23日(木)~25日(土)の3日間、仙台にて開催されました。
http://www.epi-c.jp/entry/e800_0_jea2014.html#3rd

興味深い報告が複数ありましたが、まずは久山町研究です。

九州大学の小澤美央氏が、久山町研究のデータを元に発表されました。

結論は

「蛋白質の摂取量が多いほど、脳卒中および脳出血のリスクが低下」

ということです。

結果をみると、脳卒中(脳出血+脳梗塞)全体と脳出血単独に関しては、蛋白質摂取が多いほど発症リスクが低下していましたが、脳梗塞に関してはリスク低下はなしです。

さらに、動物性蛋白質と植物性蛋白質に分けて検討したところ、大変興味深い結果がでています。

すなわち、

動物性蛋白質摂取が多いと、脳出血に対して予防的に働き、
植物性蛋白質摂取が多いと、脳梗塞に対して予防的に働く


という結論です。

糖質制限食なら、

動物性蛋白質(肉、魚、卵、チーズ・・・)
植物性蛋白質(豆腐・納豆・湯葉・厚揚げ・がんもどき・枝豆など大豆製品、クルミ・アーモンド・ピーナッツなどナッツ類・・・)

など、そもそも蛋白質摂取量は、従来の糖尿病食に比べたら比較にならないほど多いです。

そうすると普通に糖質制限食を実践していたら、自然に動物性蛋白質と植物性蛋白質をバランスよく多めに摂取できることになるので、脳出血も脳梗塞も予防できるという結論となります。

久山町研究という信頼度の高い疫学データから得られた結果に基づく結論なので、私の我田引水ということにはなりませんね。

久山町研究にはいつも感謝です。

小澤美央先生、素晴らしい研究発表を、ありがとうございます。



江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
MTpro、「糖質摂取の多い集団で心血管疾患発症リスクが高い」
こんにちは。

医師のための専門情報サイトMTproのドクターズアイ(2013年10月9日)において、北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟 氏が

「これでもまだ残る? 糖質制限食に対する動脈硬化症の懸念」

と題して、糖質制限食の安全性に関して論陣をはっておられます。

山田悟氏は、「緩やかな糖質制限食」賛成派の医師です。

Am J Epidemiol 2013年9月5日オンライン版に上海の前向きコホート研究の結果が報告され、

「糖質摂取量が多いほど心血管疾患の発症リスクが高い」

ことがわかりました。

11万7366人を対象に、調べた研究です。

女性が6万4,854人で、平均追跡期間が9.8年。
男性が5万2,512人で、平均追跡期間が5.4年。

この間に120人の女性と189人の男性が心血管疾患を発症。

発症リスクを糖質摂取量多い群と少ない群で、4つのグループに分けて解析。

女性 心血管発症リスク

1、糖質摂取量264g/日未満 ---------- 1.00

2、糖質摂取量264g~282g/日未満-------- 1.19

3、糖質摂取量282g~299g/日未満-------- 1.76

4、糖質摂取量299g/日以上 ----------- 2.41


男性 心血管発症リスク

1、糖質摂取量296g/日未満 ------------ 1.00

2、糖質摂取量296g~319g/日未満 ---------- 1.50

3、糖質摂取量319g~339g/日未満 ---------- 2.22

4、糖質摂取量339g/日以上 ------------- 3.20


心血管疾患の発症リスクの上昇は、

男性の

3、糖質摂取量319g~339g/日未満
4、糖質摂取量339g/日以上

においては統計学的に有意であった。

また,男女を合わせると、 心血管発症リスクは糖質摂取が少ない方から1.00(基準)、1.38、2.03、2.88であり、
やはり3分位,4分位においては統計学的に有意な上昇であった。



結論として、本上海前向きコホート研究においては、糖質摂取量が多いほど、心血管発症リスクが多いことがわかりました。

糖質制限食にとって、大きな追い風です。(^^)


江部康二


以下、MTpro記事、2013年10月9日のドクターズアイから、抜粋。

医師のための専門情報サイト MTpro

ドクターズアイ・最新論文で考える日常臨床
これでもまだ残る? 糖質制限食に対する動脈硬化症の懸念


上海コホート研究から
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟

研究の背景:懸念の理由は観察研究でのネガティブなデータ
昨年来,糖質制限食に対する世の関心の高まりをひしひしと感じているが,糖質制限食の安全性に懸念を感じている先生もまだまだ多いかもしれない。その懸念の理由は,観察研究において,糖質摂取の少ない集団で動脈硬化症の発症率が高いといった,ネガティブなデータが存在していることにあろう(関連記事)。

しかし,このたび,そうした懸念を払拭するような研究,すなわち糖質摂取の多い集団でこそ動脈硬化症の発症率が高いという上海の前向きコホート研究の結果が報告されたのでご紹介したい(Am J Epidemiol 2013年9月5日オンライン版)。

研究のポイント1:11万7,366人を対象とした前向きコホート研究

本研究は,上海女性健康研究(以下,女性研究)と上海男性健康研究(以下,男性研究)という2つの前向きコホート研究を合わせた解析である。

女性研究は1997~2000年に,40~70歳の上海近郊の女性8万1,170人が登録を呼びかけられた前向きコホート研究であり,実際の登録は7万5,221人であった。糖尿病などの疾病を持っていた,極端な食事嗜好の偏向があったなどの理由での除外から,女性研究では6万4,854人が解析に利用された。

一方,男性研究は2002~06年に40~74歳の上海近郊の男性8万3,125人が登録を呼びかけられた前向きコホート研究であり,6万1,482人が実際に登録された。女性研究と同様の理由での除外から,男性研究では5万2,512人が解析に利用された。

平均の糖質摂取量は女性281g/日,男性316g/日で〔国立がんセンターの多目的コホート研究の10年後調査では,日本人の平均糖質摂取量は女性249g/日,男性281g/日で,栄養摂取全体の約68%(女性で68.5%,男性で67.5%)を占めていた(下記関連リンク参照)〕,ベースラインの糖質摂取量に応じて4分位に分類したところ,各群で栄養摂取量には差異はなかったが,糖質摂取量の多い群ほど,高齢で,BMIが高く,低所得で,低教育であることが示された。

研究のポイント2:糖質摂取量が多いほど心血管疾患の発症リスクが高い

平均フォローアップ期間は女性研究9.8年,男性研究5.4年であり,その間に120人の女性と189人の男性が心血管疾患を発症した。その発症リスクを糖質摂取量の4分位で分けて解析したところ,男女ともに糖質摂取量が多いほど高値で,年齢,ウエスト・ヒップ比,所得,教育レベルなどさまざまな要素で調整した後の心血管疾患の発症リスクの上昇は,男性の3分位,4分位においては統計学的に有意であった(表1,表2)。

また,男女を合わせると,糖質摂取が少ない方から1(基準),1.38,2.03,2.88であり,やはり3分位,4分位においては統計学的に有意な上昇であった(表3)。

なお,サブ解析をしたところ,年齢,BMI,ウエスト・ヒップ比で層別解析をしても,いずれの層でも同様の関係性が認められ,身体活動が少なく,教育レベルが低く,喫煙していて,高血圧症の既往がある集団で,糖質摂取量と心血管疾患発症リスクのより強固な相関が認められたという。

私の考察:RCTに続きコホート研究でもエビデンス…もはや動脈硬化症の懸念を議論する必要はない

これまで,糖質制限食については熱い議論が戦わされてきた。

 当初は,ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析において,その心血管リスクに対する有効性は短期的でしかなく(Arch Intern Med 2006; 166: 285-293),前向きコホート研究において,糖尿病発症率(Am J Clin Nutr 2011; 93: 844-850),心血管イベント発症率(BMJ 2012; 344: e4026),死亡率(Ann Intern Med 2010; 153: 289-298)が,糖質を少なく摂取している群で高かったことから,糖質制限食は勧められないとする声が大勢を占めていたと思う。
 
しかし,昨年,Santosらによる多数のRCTのメタ解析において,その心血管リスクに対する有効性は継続的であることが示され(Obes Rev 2012; 13: 1048-1066),さらには,前向きコホート研究においても,白米(糖質)を多く摂取していると糖尿病が発症しやすいことが示されると(BMJ 2012; 344: e1454),前述の糖質摂取の少ないグループでの負の成績を示す前向きコホート研究のデータが本当に因果関係を示しているといえるのかに重大な疑問が投げかけられるようになった。

そもそも,前向きコホート研究における相関関係は,(1)因果関係(causality),(2)バイアス(reverse causalityを含む),(3)交絡(false causalityを含む),(4)偶然―のいずれかを示すものであり,因果関係のみを示すものではない。(前向きコホート研究の)メタ解析(PLoS One 2013; 8: e55030)も(4)偶然の可能性をなくすことはできるが,(2)バイアスや(3)交絡の可能性を除外できるわけではない。だからこそ,前向きコホート研究のエビデンスレベルはRCTより低く,RCTのメタ解析が最上級レベルのエビデンスとなるのである〔ランダム化により(2)バイアスや(3)交絡を除外し,メタ解析により(4)偶然を除外するので,ほぼ(1)因果関係を示す〕。

実際,当初の前向きコホート研究でも,糖質を少なく摂取していても,植物性蛋白質・脂質を多く摂取している群では糖尿病発症率も(Am J Clin Nutr 2011; 93: 844-850),心血管イベント発症率も(N Engl J Med 2006; 355: 1991-2002),死亡率も(Ann Intern Med 2010; 153: 289-298),低いか,低くなる傾向にあり,いかにも交絡因子が存在する感があった。

すなわち,今,振り返ってみれば,いずれの論文も糖質摂取の低さが直接的な負の成績の原因であったとは極めて考えにくいのである。

一方,Santosらのデータ(Obes Rev 2012; 13: 1048-1066)はRCTのメタ解析であり,糖質制限食が原因として心血管リスクを軽減する結果につながることを示している。今回の中国人のデータから,観察研究でも糖質制限と心血管イベントの減少という良い相関関係が示されたことになる。よって,個人的には糖質制限食による動脈硬化症増加の懸念を議論することはもはや不要になったと感じている。これからは,より安全で,より有効な糖質制限のレベルについての議論,すなわち,どこまで制限するかについての議論を進めていくべきではないだろうか(Am J Clin Nutr 2006; 83: 1055-1061)。

なお,表1,表2が示す結果からは,飽和脂肪酸摂取が心血管リスクに結び付くとも到底思えない。Sydney diet heart study(BMJ 2013; 346: e8707)が示したように,これまで観察研究の結果から想定されていた飽和脂肪酸摂取と心血管疾患との関係性についても,もう一度考え直す必要があろう。



テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
禁煙して体重が増加しても、心血管イベントリスクは約半分に減少。
こんばんは。

喫煙のリスクが周知され、たばこ税が増税されて、日本の喫煙者の割合は減ってきています。

国民健康栄養調査によると

1989年男性55.3%,女性9.4%、
2010年男性32.2%,女性8.4%

なので、男性の喫煙者も少数派になってます。

私はタバコは吸わないので、とても良い傾向と思います。

しかしながらタバコをやめると体重が増加することが多いです。

禁煙による心血管イベント(*)減少効果は得られるけれど肥満による心血管イベントリスクが増えたら、禁煙の効果は相殺されてしまわないか?という疑問が生じます。

この件に関して、JAMA 2013; 309: 1014-1021 に研究報告が掲載されて、山田悟氏が、MT Pro記事(2013年4月4日)で解説しておられます。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr130402.html
MT Pro記事

禁煙したら太っちゃったよ!

先生,俺,大丈夫かな?/禁煙後の体重増加と心血管疾患の関係
[2013年4月4日]


この研究は有名なフラミンガム子孫研究のサブ解析がデータベースです。

非喫煙者,最近の喫煙者,長期の禁煙者,喫煙者の4群に分類です。

論文の結論として

1)最近の禁煙者は体重を増加させたが心血管イベントリスクは半分に減少。
2)糖尿病の人は非糖尿病の人より、心血管イベント発症率が多い。
3)喫煙者よりも非喫煙者、禁煙者で心血管イベントの発症率は低下。


つまり、少々太っても、禁煙のメリットのほうがはるかに大きいということなのですが、「禁煙+糖質制限食」なら、体重増加もないですね。


(*)
心血管イベント
通常は心筋梗塞と脳卒中のことを指すのですが、論文により狭心症や心不全の悪化などを含むこともあります



江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖質制限食と血清尿酸値について
こんばんは。

糖質制限食と血清尿酸値について

名古屋・hさん、小児科のおかだ先生、まーさんからコメントをいただきました。

過去の記事で、糖質制限食と血清尿酸値について書いたことがありますが、もういちど考えてみます。

尿酸値に関しては、糖質制限食実践で、減少する人、不変の人、増加する人と個人差が大きいです。

もともと尿酸が高値だったのが糖質制限食で基準値になる人がいますが、これは問題ないですね。

もともと尿酸値は正常だったのに、糖質制限食実践で高値となる人がいます。

この場合は、糖質制限食をつづけていれば、3カ月~半年~1年で基準値に戻ることが多いです。
おかだ先生の場合はこのパターンですね。

結局、持って生まれた体質が、一番関係するのだと思います。

2012年4月4日の毎日新聞の記事によれば、

『激しい関節痛を起こす痛風の発症は、原因物質の尿酸を尿から出す機能だけでなく、腸から排出する機能が低下することも一因』

とのことです。

『尿酸は3分の2が腎臓から、3分の1が腸から排出される』

とは、初めて知りました。

この腸からの排泄機能も、個人差に関係しているのでしょうね。

体内で尿酸をつくり過ぎるか尿からの排泄が悪いため、高尿酸血症になると考えられてきましたが、これらに腸からの排泄障害も加わることとなりました。

あくまでも私見ですが、この腸からの尿酸排泄は、生活習慣やストレスの影響を一番受けやすいような気がしますね。

ただ、低カロリーすぎると、どんな内容の食事でも、尿酸値が上昇することがあるので注意が必要です。

例えば断食(絶食)をすると、尿酸値は急激に上昇します。

さて糖質制限食を実践すれば、相対的に高タンパク・高脂質食となります。

一般に高タンパク食だと尿酸値が上昇するとされていますが、ことはそれほど単純ではありません。

例えば、江部康二は、2002年以来10年間、スーパー糖質制限食実践で130g~150g/日のタンパク質を摂取していて、かなりの高タンパク食です。

しかしながら、尿酸値はこの10年間、一貫して2.4~3.1mg/dl(3.4~7.0)ていどと低いほうです。

兄もスーパー糖質制限食で、高タンパク食ですが、尿酸値は、私と同じていどで低置です。

尿酸は体内の酸化ストレスに対抗する物質という説があります。

兄も私もスーパー糖質制限食で体内の酸化ストレスが少ないので、尿酸も少なくてすんでいるというポジティブな仮説もありかと考えています。

通常、糖質制限食でいったん尿酸値が上昇した人も、数ヶ月~1年で元の値に戻ることが多いので経過をみることが多いです。

ただ、過去痛風発作を起こしたことがある人は、内服も考慮する必要があります。

過去痛風発作を起こしたことがない場合は、尿酸8~9mg/dlとかでも、経過をみてよいと思います。

名古屋・hさんの場合、尿路結石がいつの段階からあったのかはわかりませんが、糖質制限食実践後尿酸値が高値となったことは間違いありません。

そしてそのことが、排石・血尿と関係している可能性は否定できません。

従いまして、過去尿路結石のあった人や家系的に石持の方々は、尿酸が高値となったときはおかだ先生の方法のように、梅干しを食べるとか、わかめ・ほうれん草・大根・キャベツ・茄子・しいたけなど摂取で尿をアルカリに保って尿酸が結晶化しにくいようして、尿酸値が基準値にもどるのを待つのが安全と思います。

尿酸値は、従来、肉の摂りすぎや、ビールの飲み過ぎで高値となるということが常識だったのですが、食事由来の尿酸は約100mgで、一日に生産される総量約700mgに比し、かなり少ないということが判明しました。

自らが痛風患者であり、痛風専門医でもある、元鹿児島大学病院内科教授、納(おさめ)光弘先生によれば、食事よりストレスや肥満のほうが、尿酸値への影響が多いことがわかってきました。

尿酸を確実に上昇させるのは、重要なものから順番に

1、ストレス
2、肥満
3、大量の飲酒
4、激しい運動
5、プリン体の摂りすぎ

だそうです。

納先生の指摘されているストレスは、精神的なもののようです。

例えば、納先生が学会の会頭をされたときに尿酸値が一番上昇して、学会が終了したら下がったそうです。

学会会頭という精神的ストレスで、腸からの尿酸排泄が減少した可能性がありますね。

これらに特殊例として肉体的ストレスである「断食や極端な低カロリーのときは尿酸値上昇」というのが、一番上にくる感じですね。

まーさんの場合も、体重がかなり減少しているなら、低カロリーによる尿酸値上昇の可能性があります。

あとはストレスの影響ですが・・・。


**参考
「痛風はビールを飲みながらでも治る」(小学館文庫)2004年
鹿児島大学病院内科教授、納(おさめ)光弘先生 著



江部康二


【12/06/05 名古屋・hさん
糖質制限食と尿酸値
江部先生、こんばんわ。

tagashuuさんのデ-タで気になる点があります。それは、尿酸が6.5から8.1に大きく上昇していることです。
私は糖質制限食を始める前は、尿酸値は5.2程度でしたが、ス-パ-糖質制限食を開始して、HA1cや血糖値はすぐに正常値となったのですが、尿酸値が上昇、今年の4月には7.6となりました。5月10日頃、突然血尿が出るとともに尿とともに小さい石が数個でました。泌尿器科でMRI検査の結果、腎臓に結石があるとのことで、現在、ウラリットとウロカルンという薬を飲んで治療中です。
先生の過去のブログを見ると、糖質制限食で尿酸値は変化しない、下がる、上昇する場合があるので、尿酸値と糖質制限食と直接関係はないとのことです。
私の場合は、ス-パ-糖質制限食を開始後から尿酸値が上昇しているので、何らかの影響があると思われます。
血糖値、HA1cのためにス-パ-糖質制限食は必ず継続したいのですが、尿酸値を上げない方法はあるでしょうか。お教えいただければ幸いです。
なお、糖質制限食開始後、尿のpHは5.0と低い値です。糖質制限食開始前のpHは不明です。

名古屋・h】



【12/06/06 おかだ
尿酸値
名古屋hさん
糖質制限している小児科医です。
糖質制限する前からやや高尿酸血症があり、尿のアルカリ化を心がけていました。
糖質制限する開始後少し上昇しましたが、4ヶ月経過した今は正常範囲に落ち着いています。
糖質制限食は尿が酸性化しやすく尿酸結石ができやすいかもしれません。
http://www.tufu.sakura.ne.jp/arukarisyokuhin.html
尿アルカリ化薬には、クエン酸カリウムとクエン酸ナトリウムの合剤ということで、それなら素人思考で梅干しを毎朝一粒食べています。
結石ができた方は治療が必要だと思いますが、結石ができていない方は尿アルカリ化を予防してもいいかもしれません。】



【12/06/06 まー
健診結果です
拝啓 江部先生

久しぶりに投稿致します。
先生のブログを拝見し、糖質制食を始めたのが2009年の夏でした。
以降、徐々にスーパー制限食の精度を高めつつ努力し、今では週1回は大好きなラーメンやパスタを食しつつも、その際でも食前のグルコバイ服用+食後2時間半以上のウォーキングは欠かしません。

明日50歳を迎える本日、年に1度の人間ドックに行ってきましたが、32歳から記録している空腹血糖値は、それが奏功し過去二番目に良い値98(34歳時の95以来)でした。努力が実った形が数字で表れ、とてもうれしかったです。

血糖値:123(2008.6)→101(2009.6)→115(2010.6)→108(2011.6)→98(2012.6)

一方で、今回のご相談はここからで、大変な問題が生じました。
尿酸値が上昇しているのです。

尿酸値:5.8(2006~08.6平均)→6.7(2009.6)→7.5(2010.6)→7.6(2011.6)→9.4(2012.6)

確かに、最近の食事は肉魚系が多いのですが、野菜もきちんと摂取しています。

江部先生の過去のブログを拝見すると、尿酸値の影響は個人差があるとのことですし、納先生の研究結果も拝見しました。

しかし、この状況にどう対処すればよろしいでしょうか。
血糖値と尿酸値の改善が二律背反のようで、これを打開したく御助言をよろしくお願い申し上げます。
敬具】
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖尿人は何故、感染しやすい?
こんにちは。

2月16日(木)は呉市で開催される、第51回中部防衛衛生学会で、午前11時から糖質制限食の特別講演を行います。

日本全国の自衛隊の病院の医師・栄養士が参加されます。

2月15日(水)江部診療所の夜診終了後新幹線で広島へ。

広島で一泊して、翌朝、呉にいく段取りです。

さて、一般によく知られていることですが、糖尿人は、肺炎、尿路感染、胆道感染、皮膚・軟部組織感染、外耳道炎、真菌感染、結核、歯周症・・・etcなど、様々な感染症を併発しやすいのです。

それでは、糖尿人は何故、感染しやすいのでしょう?

糖尿病専門医研修ガイドブック(改定第4版)の233ページに合併症、G.感染症の項目があります。

以下、引用です。

【糖尿病患者は易感染性であるといわれ、感染症が重症化しやすく、また感染症により血糖コントロールが増悪し、ひいては糖尿病昏睡の原因となることもある。

糖尿病患者の易感染性に関する因子としては、

1)好中球をはじめとする貪食細胞機能低下
2)免疫担当細胞機能低下
3)血行障害
4)神経障害

などがあげられる。

一般に血糖コントロールが不良なほど易感染性は増悪する傾向にあり、たとえば好中球貪食能は血糖値が250mg/dl以上になると急速に低下するとされ、血糖値をできるだけ正常レベル近くに保つよう努めることが大切である。】

高血糖そのものが、好中球貪食能を低下させるのですね。

正常人では、血流がスムースに循環していれば、そもそも感染は成立しません。

例えば、大腸ガンの手術で、癌を切り取って、端々吻合して縫い合わせ、腹壁を閉じます。

その後、皮膚は消毒しますが、糞便(細菌の塊)が通過していく大腸粘膜は、消毒しなくても感染しません。

また切れ痔も感染しませんが、痔瘻は袋状で血流が循環しないので感染します。

<参考:『傷はぜったい消毒するな』夏井睦著 (光文社新書,2009年6月)>

しかし、糖尿人では、まず

1)好中球をはじめとする貪食細胞機能低下
2)免疫担当細胞機能低下

があります。

これがあると、少々血流があっても感染する可能性がありますね。

さらに

3)血行障害
4)神経障害

が加わりますから、コントロール不良の糖尿人は大変ですね。

糖質制限食で血糖コントロール良好に保てば、1)2)はOKです。

3)4)は、糖尿病合併症ですが、これらが出現する前に、糖尿人の目標を達成して、予防したいですね。


<糖尿病合併症予防のための目標>
① 空腹時血糖値110mg/dl未満
② 食後2時間血糖値140mg/dl未満
③ 食後1時間血糖値180mg/dl未満
④ HbA1c6.5%未満→さらには5.8%未満



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット