慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版。糖尿病腎症と糖質制限食。
【15/10/12 HK

CKDについて

私自身はCKDが進んでももちろん糖質制限は工夫して行う必要があると思います。
ただ、CKD診療ガイド2013」において、「eGFR60ml/分以上あれば顕性たんぱく尿の段階でも、たんぱく質制限の必要なしと明示されました。」という部分ををみつけだせませんでした。 また腎学会の「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」ではCKDステージ1,2でたんぱく質の過剰な摂取をしない、ステージ3aで0.8-1.0、ステージ3b以降で0.6-0.8g/kgとなってます。
CKDでは低糖質中蛋白質高脂肪でなんとかせねばと思います。】



こんばんは。

HKさんから、糖尿病腎症と糖質制限食に関してコメントを頂きました。
コメント・情報をありがとうございます。


日本腎臓病学会のサイト
http://www.jsn.or.jp/guideline/guideline.php
の中で、

<慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版(日本腎臓病学会誌、56巻5号)>

<CKD診療ガイドライン2013>
をPDFファイルで閲覧することができます。

<慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版>

表1 CKDステージによる食事療法基準

ステージ(GFR)         たんぱく質(g/kgBW/日)

ステージ1(GFR≧90)      過剰な摂取をしない
ステージ 2(GFR 60~89)     過剰な摂取をしない
ステージ 3a(GFR 45~59)     0.8~1.0
ステージ 3b(GFR 30~44)     0.6~0.8
ステージ 4(GFR 15~29)      0.6~0.8
ステージ 5(GFR<15)       0.6~0.8
     5D(透析療法中)      0.9~1.2



となっています。

透析になると、たんぱく摂取基準量が増えます。

CKDステージによる食事療法基準によれば、糖尿病腎症第3期で、蛋白尿が陽性の段階でもGFRが60ml/分以上あれば、過剰な摂取はしないという表現ですので、いわゆるたんぱく制限は必要ないわけです。

過剰を示す具体的な指示量としては、進行するリスクのある CKDにおいては 1.3 g/kg 標準体重/日を超えないことが 1 つの目安としてありますので透析中の人より、さらにたんぱく質摂取量が多くなっています。


エビデンスが相対的に少ない糖尿病性腎症においては、
ステージ G1~G2 では 1.0~1.2、
G3 では0.8~1.0、
G4~G5 では 0.6~0.8 g/kg 標準体重/日で指導してもよいとされています。

<CKD診療ガイドライン2013>
エビデンスに基づく
CKD診療ガイドライン2013 編集 日本腎臓病学会
29ペ-ジに、以下の記載があります。

『3.CKDと栄養

5.たんぱく質制限の適応

たんぱく質制限の適応は、主にステージ G3b より進行した CKD であるが、画一的な制限は不適切であり、個々の症例に応じた検討が必要である。

これまでに行われた RCT のほとんどは、対象の平均年齢が50~55歳で、主に顕性蛋白尿を呈している CKD ステージ G3b~5 であること、つまり末期腎不全のリスクが高い集団に対して行われている。

日本の CKD ステージ G3a に多くみられるような蛋白尿の少ない高齢者は末期腎不全に至るリスクが低く、腎機能低下速度自体の抑制効果は明らかでないことからも、たんぱく質制限をそのような対象に行う意義は乏しい。

また,現時点では早期 CKD における有効性は不明である。

個々の症例に対する適応や制限のレベルは、事前に予想される末期腎不全に至る可能性とたんぱく質制限の潜在的な危険性の両面を考慮して、リスクとベネフィットの観点から、実際の診療にあたる腎臓専門医が慎重に検討する必要がある。』


*GはGFRのことで、G1、G2、G3a、G3b、G4、G5と進行していきます。
G1はGFRが90ml/分以上です。
G2はGFRが60~89ml/分
G3aはGFRが45~59ml/分
G 3bはGFR が30~44ml/分 
G 4はGFR が15~29ml/分
G5はGFRが<15ml/分
5D(透析療法中)

CKD診療ガイドライン2013においても、画一的なたんぱく制限は不適切であり、個々の症例に応じた検討が必要としています。

また、たんぱく質制限の適応は主にステージ G3b(GFR45未満)より進行した CKD としています。

それでも、97頁で日本腎臓病学会は、一応たんぱく制限を推奨しています。

推奨グレード C1なので、エビデンスレベルは弱いです。

たんぱく質摂取制限は、糖尿病性腎症の進展を抑制するというエビデンスは十分ではないが、一定の腎症抑制効果が期待できる可能性があるため推奨する。ただし、たんぱく質の制限量は個々の病態、リスク、アドヒアランスなどを総合的に判断して設定されるべきである。」

98頁には
「たんぱく質摂取制限の腎症の進展抑制に対する効果は明らかではない(特に 2 型糖尿病)」という記載もあります。 

一方、98ページには

「非糖尿病慢性糸球体腎炎の腎不全(血清 Cr 6 mg/dL)症例を対象として、
超たんぱく質制限食(0.5 g/kg 標準体重/日未満)が腎機能低下を遅延させたことが報告されている。」

という記載もあります。

<米国糖尿病学会>

これに対して、米国糖尿病学会(ADA)は

Position Statement on Nutrition Therapy(栄養療法に関する声明)
Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版

において、糖尿病腎症患者に対する蛋白質制限の意義を明確に否定しました。

『糖尿病腎症の所見のない糖尿病患者では、最適な血糖コントロール、あるいは、心血管疾患リスクの改善のための理想的な蛋白質摂取量に関しては、これを推奨するに足る十分なエビデンスは存在しない。したがって、目標は個別化されなければならない。C

糖尿病腎症(微量アルブミン尿、および、顕性蛋白尿)を有する糖尿病患者では、通常の摂取量以下に蛋白質摂取量を減量することは、血糖状態、心血管リスク、あるいは、糸球体ろ過率低下の経過に変化を与えないので、推奨されない。A』


糖尿病腎症のない糖尿病患者での理想的な蛋白質摂取量のエビデンスは、存在しないと断定しています。

さらに踏み込んで、糖尿病腎症を有する患者においても、「蛋白質制限は推奨しない」とランクAで断定しています。

根拠はランク(A)ですので、信頼度の高いRCT研究論文に基づく見解です。


<高雄病院の方針>

現時点で高雄病院では、糖尿病腎症でもeGFRが60ml/分以上の場合は、糖尿病コントロールのためにも糖質制限食を推奨しています。

糖尿病腎症で、腎機能悪化の最大のリスクは「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」と考えられるからです。

糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の場合も、患者さんとよく相談して、糖質制限食を実践するか否か、個別に対応するようにしています。

万一スーパー糖質制限食でクレアチニン値の悪化傾向があれば、「超低たんぱく・低糖質・高脂肪食」・・・即ちケトン食も、腎不全に一考の余地ありと現在検討中です。

<結論>

1)GFRが60ml/分以上の場合は、タンパク質制限よりも血糖コントロールを優先して、
  糖尿病腎症でも、普通にスーパー糖質制限食を実践することを推奨する。 

2)GFRが60ml/分未満の場合は、よく相談して糖質制限食を実践するかどうか個別に対応する。

3)GFRが60ml/分未満で、スーパー糖質制限食を選択開始した場合、毎月腎機能検査を実施して、
 血清クレアチニン値を測定し、その結果でスーパー糖質制限食を継続するか否かを決める。

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ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖質制限食と腎機能検査、BUN、クレアチニン、シスタチンC
こんばんは。

スーパー糖質制限食開始後は、血糖値とHbA1Cは速やかに改善しますが、尿素窒素(BUN)が上昇することがあります。

尿素窒素(BUN)の一般的な正常値は8~20gm/dlくらいですが、スーパー糖質制限食中は、21~30mg/dl程度に上昇することがあります。

腎機能検査の一つである、BUNが基準値より高値であれば、誰でも気になりますよね。

でも、血清クレアチニン値や血清シスタチンC値が基準値内なら、BUNが高値でも生理的なものであり、腎機能障害ではないので心配ないです。

それでは、尿素窒素(BUN)がスーパー糖質制限食実践で、何故生理的高値になるのかを考えてみます。

細胞内の蛋白質が限度まで満たされると、体液中のアミノ酸は分解され、エネルギーとして使われたり、主に脂質あるいは、わずかながらグリコーゲンとして貯蔵されます。この大部分は、肝臓で行われます。

アミノ酸分解産物であるアンモニアが、そのままでは神経毒性を有するため、肝で尿素サイクルの代謝をうけて無害な尿素が産生されます。

尿素のほとんどは、腎臓の糸球体で濾過されて尿中に排泄されますが、その一部は再吸収され、血中に戻されます。

一部再吸収されるので、高タンパク食(糖質制限食)により血中尿素窒素(BUN)が高値となることがありますが、これは生理的な現象で、腎機能障害ではありません。

また、高タンパク食(糖質制限食)で、正常な腎臓に負担がかかるということもありません。

従いまして糖質制限食実践中の方において、BUN軽度高値でも、血中クレアチニン値や血中シスタチンCの値が正常であれば問題ありませんのでご安心ください。

血清シスタチンCは、血清クレアチニンよりは、かなり鋭敏な腎機能検査の指標で、初期の腎機能障害を拾い上げることができます。

つまりクレアチンが異常値になった段階はすでに、腎障害はあるていど進んでいる段階なので要注意なのです。

血清クレアチニン値は、GFRが30ml/min前後に低下する時期から上昇するのに対し、血清シスタチンC値はGFR 70ml/min前後に低下したころから上昇します。

したがって、シスタチンCはクレアチニンより初期の段階から腎機能障害をチェックできる利点があります。

シスタチンCを用いた、eGFR (eGFRcys) は、食事や筋肉量、運動の影響を受けずに、糸球体濾過量を反映するので、実際の腎機能を示す最もよい指標と考えられます。

『CKD診療ガイド2012』において、 「るいそうまたは下肢切断者などの筋肉量の少ない場合には、eGFRcysがより適切である」と、クレアチニンを用いた場合よりもシスタチンCを用いたeGFRが望ましいとされています。

なお血清クレアチニンは、尿素窒素よりは腎機能以外の要素の影響は受けにくいのですが、筋トレとかで筋肉量が多い人は、やや高値となります。

この場合は、血清クレアチニンが高値でも腎機能傷害ではありません。

このようなとき、血清シスタチンCを検査すれば本当の腎機能がわかります。

血液による腎機能検査の基準値
尿素窒素(BUN):8~20mg/dl
クレアチニン:0.6~1.1mg/dl
血清シスタチンC:0.53~0.95mg/dl


上記数値は、検査機関により差がありますが、およその基準値です。
血清シスタチンCは、男女で基準値が違う検査機関もあります。

eGFRの計算式は「シスタチンC eGFR」で、グーグルで検索すればすぐ表示されます。

年齢、性別、血清シスタチンC値を記入すれば計算できます。

江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
高タンパク食と腎機能と糖質制限食
こんにちは。

「糖質制限食を実践すると、肉や卵等の動物性タンパク質の摂取量が増え、腸内細菌叢が乱れて、健康に悪影響が出るのではないでしょうか?」

といった質問を患者さんからされることがあります。

確かに、糖質制限食を実践すると相対的に高タンパク・高脂質になります。

動物性タンパク質も糖質制限食ではたっぷり摂取します。

巷で一部言われているように、動物性タンパク質は、人の健康に悪いのでしょうか?

この疑問に答えるべく、「人類本来の食生活とはどんなものなのか?」ということを考えてみると、農耕以前の人類は、そもそも糖質制限食を日常的に摂取していたことに思い至ります。

人類700万年の歴史の中で、農耕が始まってわずか1万年です。

ということは、人類は狩猟・採集時代の700万年間は、木の実・ナッツ・魚貝類・果物・野草・小動物・動物の肉・内臓・骨髄・昆虫などが日常的な食料であり、糖質制限食が本来の食生活でした。

農耕が開始された最近の1万年間だけが穀物を主食としているわけです。

従って、人類の歴史の中で穀物を主食としているのは、わずかな期間に過ぎないことがわかります。

つまり高タンパク・高脂質の糖質制限食は、人類が地上に誕生してから殆どの期間、日常的に摂取していた食生活に戻るだけということになります。

アラスカやグリーンランドのイヌイットの伝統的な食生活は、まさに糖質制限食ですね。マサイ族やモンゴルの遊牧民の伝統的食生活も糖質制限食です。

糖質制限食を続けることによって、血糖値・中性脂肪・HDL-コレステロール・内臓脂肪・血圧が改善し、基本的に血流・代謝すべてが良い方に向きます。

これらはメタボリック・シンドローム(代謝症候群)の指標そのものですが、糖質制限食で全て改善します。

ということは、糖質の過剰摂取こそが、メタボリック・シンドロームの根本要因だったと考えられます。

動物性タンパク質と腸内細菌ですが、人類本来の食生活に戻るわけなので、慣れの問題だけです。

糖質制限食でいったん便秘したり下痢したりする人がいますが、1~3ヶ月で慣れて快便となることが多いです。もちろん当初から便通に問題が生じない人もいます。


糖質制限食を実践すれば、動物性タンパク質の摂取は相対的に増加しますが、人類本来の食生活にもどり代謝全てが安定するので、理論的には健康に良いと考えられます。

次に、高タンパク食と腎機能について考えてみます。

1)日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2013」

腎機能に関して、日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2013」において、
eGFR60ml/分以上あれば顕性たんぱく尿の段階でも、
たんぱく質は過剰な摂取をしないという表現となっていて、制限という記載はなし。


2)米国糖尿病学会の栄養療法に関する声明


米国糖尿病学会(ADA)は、Position Statement on Nutrition Therapy(栄養療法に関する声明)
Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版において、
糖尿病腎症患者に対する蛋白質制限の意義を明確に否定。
根拠はランク(A)で、信頼度の高いRCT研究論文に基づく見解。


3)「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)


「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
II  各論
たんぱく質(PDF:1,149KB)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042630.pdf
<97ページ>

3─1.耐容上限量の設定
たんぱく質の耐容上限量は、たんぱく質の過剰摂取により生じる健康障害を根拠に設定されなければならない。
しかし現時点では、たんぱく質の耐容上限量を設定し得る明確な根拠となる報告は十分には見当たらない。
そこで、耐容上限量は設定しないこととした。

<98ページ>
4─1─1.たんぱく質と発症予防との関連
たんぱく質の摂取不足が脳卒中のリスクとなる可能性が指摘されており 70)、
疫学的にもたんぱく質摂取量と脳卒中発症率との間に有意な負の関連を認めた研究が存在する 71─73)。
しかし、有意な関連を認めなかった研究もあり 74)、結論はまだ出ていない。

たんぱく質の由来により、心血管危険因子に対するアウトカムや、死亡率に大きな差が見られる。
しかし、一致した見解は得られていない 75,76)。
高齢者の肥満では、内臓脂肪が増加しても筋肉量が減少するため、
BMI では肥満の程度が過小評価されがちである 77─79)。
減量する場合、生活機能を悪化させないように筋肉と骨量の喪失を最小限にする必要があり、
食事療法だけでなく運動療法も考慮しなければならない 80,81)。

健康な人でも、たんぱく質を過剰に摂取すると、
1 週間程度の短期では腎血行動態に変化をもたらして尿中アルブミンが増加するが 82)、
中期的には腎機能へ与える影響はほとんどない 83─85)。
たんぱく質が糖尿病腎症のない糖尿病において、腎症発症リスクになるとする明らかな根拠はない。

しかし、日本人を含む調査によれば、
たんぱく質の過剰摂取が糖尿病や心血管疾患の発症リスク増加につながる可能性がある 86─90)。
たんぱく質エネルギー比率が 20% エネルギーを超えた場合の健康障害として、
糖尿病発症リスクの増加、心血管疾患の増加、がんの発症率の増加、骨量の減少、BMI の増加などが挙げられる。

たんぱく質と糖尿病発症リスクとの関係を認めた研究 91─94)並びに、最近の系統的レビュー 94)では、
これらのどの事象についても明らかな関連を結論することはできないとしながら、
たんぱく質エネルギー比率が 20% エネルギーを超えた場合の安全性は確認できないと述べ、注意を喚起している。




糖質制限食は、高タンパク・高脂質食になりますが
1)により、糖尿病腎症第3期でも、eGFR60ml/分以上なら、蛋白質もある程度しっかり摂取して、糖質制限食OKです。

そして2)により、今後は、糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の場合も、
患者さんとよく相談して、糖質制限食を実践するか否か、個別に対応することとなります。

3)を検討してみると、結局、現時点では、正常人がタンパク質をたくさん食べて危険という根拠もないけれど、
たくさん食べても安全という根拠もないということですね。

まさに、自分で考えて選択して自己責任で食事療法を実践することとなります。

ちなみに、江部康二は、糖尿病発覚の2002年(52才)からスーパー糖質制限食を開始して、2015年6月(65才)現在まで続けています。

タンパク質の摂取量は、一日あたり130~140gくらいと、普通人よりかなり大量のタンパク質を摂取してます。

体重あたり2.4gのタンパク質ですね。それでも尿酸は低めですし、腎機能に何の問題もありません。

2015年2月の検査データは
BUN:23.3mg/dl(8~20)
クレアチニン:0.63mg/dl(0.6~1.1)  eGFR:97.1ml/min./1.73m2
シスタチンC:0.63mg/dl(0.53~0.95) eGFR:120.3ml/min./1.73m2
尿中アルブミン:6.3mg/g・c(30.0未満)
です。

BUNがやや高値ですが、高タンパク食において生理的な現象であり、クレアチニン、シスタチンC、eGFR、尿中微量アルブミンの検査が全て基準値内なので、腎機能に何の問題もありません。

私は、現在は、糖尿病患者さんに対して、糖尿病腎症でeGFRが60mg/分未満でも、個別によく相談して糖質制限食を実践するかどうかを決めています。

A)血糖コントロール良好を保つことは、腎血管と腎機能にはとてもよいことです。

B)eGFRが60mg/分未満の場合、高タンパク食が腎機能に悪影響を与えるか否かは、現在明確ではありません。
  eGFRが60mg/分未満の場合、高タンパク食が腎機能を悪化させるという研究もありますが、
エビデンスレベルはかなり弱いのです。あとは、個人差がある可能性があります。

A)B)を考慮しながら、検査結果を経過観察して、糖質制限食を続けるか否かを検討していきます。



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
高タンパク食と腎機能と糖質制限食
こんにちは。

今回は、高タンパク食と腎機能と糖質制限食について考えてみます。

1)日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2013」

腎機能に関して、日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2013」において、
eGFR60ml/分以上あれば顕性たんぱく尿の段階でも、
たんぱく質は過剰な摂取をしないという表現となっていて、制限という記載はなし。


2)米国糖尿病学会の栄養療法に関する声明

米国糖尿病学会(ADA)は、Position Statement on Nutrition Therapy(栄養療法に関する声明)Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版において、糖尿病腎症患者に対する蛋白質制限の意義を明確に否定。
根拠はランク(A)で、信頼度の高いRCT研究論文に基づく見解。


糖質制限食は、高タンパク・高脂質食になりますが1)により、糖尿病腎症第3期でも、eGFR60ml/分以上なら、糖質制限食OKです。

そして2)により、今後は、糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の場合も、患者さんとよく相談して、糖質制限食を実践するか否か、個別に対応することとなります。

3)「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)

「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
II  各論
たんぱく質(PDF:1,149KB)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042630.pdf
<97ページ>

3─1.耐容上限量の設定
たんぱく質の耐容上限量は、たんぱく質の過剰摂取により生じる健康障害を根拠に設定されなければならない。しかし現時点では、たんぱく質の耐容上限量を設定し得る明確な根拠となる報告は十分には見当たらない。そこで、耐容上限量は設定しないこととした。

<98ページ>
4─1─1.たんぱく質と発症予防との関連
たんぱく質の摂取不足が脳卒中のリスクとなる可能性が指摘されており 70)、疫学的にもたんぱく質摂取量と脳卒中発症率との間に有意な負の関連を認めた研究が存在する 71─73)。しかし、有意な関連を認めなかった研究もあり 74)、結論はまだ出ていない。

たんぱく質の由来により、心血管危険因子に対するアウトカムや、死亡率に大きな差が見られる。しかし、一致した見解は得られていない 75,76)。高齢者の肥満では、内臓脂肪が増加しても筋肉量が減少するため、BMI では肥満の程度が過小評価されがちである 77─79)。減量する場合、生活機能を悪化させないように筋肉と骨量の喪失を最小限にする必要があり、食事療法だけでなく運動療法も考慮しなければならない 80,81)。

健康な人でも、たんぱく質を過剰に摂取すると、1 週間程度の短期では腎血行動態に変化をもたらして尿中アルブミンが増加するが 82)、中期的には腎機能へ与える影響はほとんどない 83─85)。たんぱく質が糖尿病腎症のない糖尿病において、腎症発症リスクになるとする明らかな根拠はない。

しかし、日本人を含む調査によれば、たんぱく質の過剰摂取が糖尿病や心血管疾患の発症リスク増加につながる可能性がある 86─90)。たんぱく質エネルギー比率が 20% エネルギーを超えた場合の健康障害として、糖尿病発症リスクの増加、心血管疾患の増加、がんの発症率の増加、骨量の減少、BMI の増加などが挙げられる。

たんぱく質と糖尿病発症リスクとの関係を認めた研究 91─94)並びに、最近の系統的レビュー 94)では、これらのどの事象についても明らかな関連を結論することはできないとしながら、たんぱく質エネルギー比率が 20% エネルギーを超えた場合の安全性は確認できないと述べ、注意を喚起している。


結局、現時点では、正常人がタンパク質をたくさん食べて危険という根拠もないけれど、たくさん食べても安全という根拠もないということですね。

まさに、自分で考えて選択して自己責任で食事療法を実践することとなります。

ちなみに、江部康二は、糖尿病発覚の2002年(52才)からスーパー糖質制限食を開始して2015年2月(65才)現在まで続けています。

タンパク質の摂取量は、一日あたり130~140gくらいと、普通人よりかなり大量のタンパク質を摂取してます。体重あたり2.4gのタンパク質ですね。それでも尿酸は低めですし、腎機能に何の問題もありません。

2014年9月の検査データは
BUN:23.3mg/dl(8~20)
クレアチニン:0.63mg/dl(0.6~1.1)  eGFR:97.1ml/min./1.73m2
シスタチンC:0.63mg/dl(0.53~0.95) eGFR:120.3ml/min./1.73m2
尿中アルブミン:6.3mg/g・c(30.0未満)
です。

BUNがやや高値ですが、高タンパク食において生理的な現象であり、クレアチニン、シスタチンC、eGFR、尿中微量アルブミンの検査が全て基準値内なので、腎機能に何の問題もありません。

私は糖尿病患者さんに対して、糖尿病腎症でeGFRが60mg/分未満でも、個別によく相談して糖質制限食を実践するかどうかを決めています。

A)血糖コントロール良好を保つことは、腎血管と腎機能にはとてもよいことです。

B)eGFRが60mg/分未満の場合、高タンパク食が腎機能に悪影響を与えるか否かは、現在明確ではありません。
  eGFRが60mg/分未満の場合、高タンパク食が腎機能を悪化させるという研究もありますが、エビデンスレベル  はかなり弱いのです。あとは、個人差がある可能性があります。


A)B)を考慮しながら、検査結果を経過観察して、糖質制限食を続けるか否かを検討していきます。



江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
蛋白尿と糖質制限食、腎機能と糖質制限食
【14/11/11 てぃ

長文で申し訳ありません!

はじめまして。今年の夏頃からスーパー糖質制限を始めて、体重もHbA1c数値も以前より良くなりました。

私は20才位から、尿蛋白がででいるのですが、その当時はまだ糖尿病ではなく、行った病院の医師から、早朝尿に蛋白が出てなければ大丈夫、と言われました。

20代半ば頃糖尿病になったのですが、糖尿病が原因か、太り過ぎが原因で蛋白が出ているのかわからない、痩せれば良くなるかもしれないと言われました。

現在30代、体重も83→66と、17kg程落ちましたが先月の健康診断で尿蛋白+2でした。

尿蛋白がでていても、このまま糖質制限を続けても大丈夫なのでしょうか?
腎機能が心配です…】



こんにちは。

てぃさんから、蛋白尿と糖質制限食、腎機能と糖質制限食についてコメント・質問をいただきました。

てぃさん、HbA1cの改善、17kgの減量成功、良かったですね。

20才くらいから蛋白尿で、当時はまだ糖尿病はなし。
そういうことなら、体位や運動後に蛋白尿が陽性となる、健常者にもある生理的蛋白尿の可能性もありますが、一方、何らかの腎疾患がある可能性もあります。

早朝第一尿で、蛋白尿が陰性なら、「生理的蛋白尿」の可能性が高いです。

早朝第一尿で、尿蛋白陽性なら、「尿細管性蛋白尿」「糸球体性蛋白尿」などの腎疾患の可能性があるので、医療機関でまずは、尿沈査という検査をしましょう。

尿沈渣(にょうちんさ)とは、尿を遠心分離器にかけたときに沈殿してくる様々な固形成分を顕微鏡で観察する検査です。
尿沈渣で腎臓などの異常が疑われれば、より詳しい検査を腎臓内科(腎臓専門医)で実施する必要があります。

さて、ご質問の件ですが、蛋白尿が陽性でも、血液検査で腎機能が保たれていれば、スーパー糖質制限食OKです。

具体的には、血清クレアチニン検査や血清シスタチンCの検査をして計算式でeGFRを算定します。
これは医療機関や検査機関がしてくれます。

日本腎臓病学会のCKD診療ガイド2013によれば、eGFRが60ml/分以上あれば、蛋白尿が陽性でも蛋白制限の必要はないので、糖質制限食OKです。

即ち糖尿病腎症第3期でも eGFRが60ml/分以上あれば蛋白制限必要なしです。

CKD診療ガイド2013では、糖尿病腎症第3期で、eGFR60ml/分未満には、エビデンスレベルは低い(科学的根拠は低い)けれどタンパク制限を推奨です。

糖尿病腎症以外のCKDは、eGFRが45ml/分未満でタンパク制限推奨ですが、個別の検討が必要と記載されています。

結論です。

1)
てぃさんの場合、eGFRが60ml/分以上と推定されますのでスーパー糖質制限食を実践されて、OKです。
一方、尿沈査などを検査しておくことも必要ですね。
2)
eGFRが60ml/分未満の糖尿病腎症第3期の糖尿人は、個別によく相談して糖質制限食をするか否かを
決めることとなります。


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット