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10年ぶりに糖尿病の診断基準改定へ
こんばんは。

朝日カルチャー芦屋センターの講演、広島や京都から参加していただいた糖尿人もおられました。
皆さん、熱心で質問が相次ぎ、高雄病院に辿り着いたのは午後4:30でした。

午後4:30~2時間、読売新聞さんの取材があり、先ほど帰宅しました。

さて今回は、糖尿病診断基準のお話しです。

10年ぶりに、日本の糖尿病診断基準の改定作業が進められています。HbA1cを現行の基準にどう取り入れるかが、もっぱら議論されています。

また、日本独自のJDS法によるHbA1cの表記(JDS値)を、国際標準値(NGSP値)に対してどう位置づけるか、も注目されます。

日本では今までも、HbA1cを血糖コントロールの指標として取り入れてきました。

コントロール良好の基準がHbA1c6.5%未満、
コントロール優の基準がHbA1c5.8%未満、

です。

しかし、この6.5%という数字は、日本独自の算出法による表記(JDS値)で、米国などが採用している国際的な表記(NGSP値)だと約6.9%に相当します。

つまり、同一の血液を測定してもNGSP値だとJDS値より約0.4%ほど高値となるので、このことを認識しておく必要があります。

11月1日に開催される「糖尿病の診断基準とHbA1cの国際標準化に関するシンポジウム」で最終調整が行われる予定です。今回の改定、欧米の診断基準の改定の動きも影響していると思います。

MTpro という医師向けのサイトに、

「米国糖尿病学会(ADA)などが糖尿病の新診断基準を発表・・・」

という記事が2009年6月8日掲載されました。

以下MTpro 記事からの抜粋です。

HbA1C 6.5%以上を糖尿病に,6~6.5%は高リスク群  ADAなどが新診断基準を発表
   
米国糖尿病学会(ADA),国際糖尿病連合(IDF),欧州糖尿病学会(EASD)による国際専門家委員会は,HbA1Cに基づいた新しい糖尿病診断基準を米ニューオリンズで開催中の第69回米国糖尿病学会(ADA2009)で発表し,糖尿病と診断するカットオフ値は6.5%,6%以上6.5%未満を高リスク群とした。新診断基準の詳細は Diabetes Care(2009; 32: 7: 1-8)に掲載されている。」

「何や、何を今更・・・」と仰有る方もおられそうですが、実はHbA1Cは今まで、主として糖尿病コントロールの評価の基準として用いられてきて、診断基準としては採用されていなかったのです。

糖尿病診断の基準としては、過去空腹時血糖値または75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間後血糖値が採用されてきました。

今回の発表は、空腹時血糖値75g経口ブドウ糖負荷試験よりも、HbA1C の方が診断基準として優れているので、切り替えようということです。

この背景には、

1、血糖検査の精度がこれまで考えられていたほど高くないということ
2、HbA1Cは検査時の誤差が血糖検査に比べて少ないこと
3、HbA1C検査法の国際標準化が最近達成されてきたこと
4,HbA1cなら、空腹時でも食後でも関係なく検査できるので便利

があります。

以下もMTpro 記事からの抜粋です。

同委員会の委員長を務めたハーバード大学教授のDavid M. Nathan氏は、

「HbA1C値は空腹時血糖値よりも測定値の変動が少なく,HbA1C検査は血糖検査よりも技術的に優れている。HbA1C検査は容易であり、空腹時血糖値またはOGTT検査を受ける必要がなくなる」

と述べたそうです。

米国糖尿病学会(ADA)は、この発表を受けて、糖尿病診断に原則HbA1C検査を適用するとしました。

日本の場合、75gOGTTや、空腹時血糖値の基準は基本的に残ると思いますが、10年ぶりの日本の糖尿病診断基準の改定作業がどう決着するのか注目ですね。


江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
今日はお疲れさまでした
本日芦屋での講演に参加させていただきました。
まっさきに質問したNsです。
注入食の件さっそく一緒に働いている医師にも報告いたします。
糖尿病の診断基準変更のこと、わたしも日経メディカルオンラインで読みました。
どうなるのか、注目しています。
2009/10/31(Sat) 00:13 | URL | ぷっこちゅ | 【編集
Re: 今日はお疲れさまでした
ぷっこちゅさん。

朝日カルチャーセンター芦屋・講演会、
お疲れ様でした。

糖質制限OKな注入食は今後の課題ですね。
ただ原価がどうしても高くなるので、なかなか大変です。
2009/10/31(Sat) 08:25 | URL | 江部康二 | 【編集
腎臓の悪い人には向かない方法
江部先生、以前は急激な血糖値改善と目についての質問にお答えいただき、本当にありがとうございました。
私の目は眼底出血の跡もありレーザー瀬戸際ということですが今のところ現状維持しており、先生のおっしゃったように急激な血糖値改善が理由で悪くなることはないようです。

しかしその後別の問題が出てきてしまいました(;_:)。気が向かれたらお答えいただけると幸いです。

5月より月を追った私の検査結果です。5月2回目以降は糖尿病の専門医にかかっています。投薬は血圧の薬と、5月にアマリール2mg処方されましたが、すぐ1mgに減り今に至ります。
      
HbA1c 10.2 (5月) →10.7 (5月) → 8.5 (6月) → 6.7 (7月) → 5.0 (9月) →5.1 (10月)


血糖値は劇的に改善したのですが、問題が出てきてしまいました。


クレアチニン  0.78 (5月)  0.89 (5月)  0.91 (7月)   0.89(先日)

尿素窒素    11,4 (5月)   22.2 (5月)   31.5 (7月)   37.7(先日)

私は6月より基本的にスーパー糖質制限ですが、双方の先生は普通に糖質制限にはあまり肯定的ではありません。

7月の時点でコレステロールも跳ね上がりましたので現在リバロ1錠処方されており、今回こちらの数値はHDL 75 LDL 89 比率 1.19 で全く問題なかったようです。その際に糖質制限はやめたほうがいいと言われました。でも続けています(^^ゞ

今回の診療で先生のおっしゃるには、血糖値は安定したが今は腎臓のほうが心配だ、炭水化物を増やして蛋白質を減らしなさい。ということです。

確かに糖質制限は腎臓の悪い人には向かないと江部先生も繰り返しおっしゃってますね。私は病歴が長く、初期は良好な状態だったのに甘えこの10年ほどコントロールを投げていました。17年前、発病確認され治療を始めた頃に1回、この春1回腎盂炎になったこともあります。実際それがコントロールを再開するきっかけになったのですが。

私は糖質制限にはやはり向かないのでしょうか…(~_~;) ここまで血糖値を改善できたのは糖質制限との出会いのおかげです。少し制限を軽くしてみるとかで継続させることは無理でしょうか。たとえ継続がダメでもここまで数値を下げられたことは本当にありがたいことと思っています。

このような個人的な問題について度々ネットで診断を仰ぐことは心苦しいのですが(ーー;)、ダメモトで書き込んでみます。よろしくお願いいたします。

ところであちこちでの講演会、お疲れ様です。私も中野でのシンポジウムに参加させていただきました。帰宅後に、ネットで拝見した通りのハンサムでおだやかそうな先生だったと騒ぎ、主人に「教祖様にお会いできて良かったね」と笑われました(#^.^#)
最初は小さな動きだったものが今はさざなみに、先生方の努力でいずれはビッグウェンズデーになって行くのかも知れませんね\(^o^)/




 



2009/10/31(Sat) 09:24 | URL | necobabar | 【編集
つけたし
necobabarです。つけたしさせてください。
尿蛋白はマイナスです。カリウム値は7月4.4 今回4.9でした。
2009/10/31(Sat) 09:42 | URL | necobabar | 【編集
Re: 腎臓の悪い人には向かない方法
necobabarさん。

糖質制限食による
高タンパク食は一時的にBUNが高値となることがあります。
クレアチニンが正常なら、BUNはいったん高値となっても
正常に戻ってきます。


腎機能が心配なら血清シスタチンCを検査してみましょう。
2009/11/01(Sun) 21:13 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: お疲れ様です<(__)>
ドリームさん。

高雄病院京都駅前診療所に電話して
診察予約をお取りいただけば幸いです。

電話:075-352-5050
2009/11/01(Sun) 21:49 | URL | 江部康二 | 【編集
新診断基準について
先生、いつもありがとうございます。

HbA1cについて、空腹時にすごく低いけど、食後は結構高い、という人と、空腹時は130くらいだけど、食後にそれほど上がらない、という人との違いは、やはり、負荷試験でないと出にくいでしょね。

また、努力して糖質制限していることによってHbA1cが4%台になったとしても、糖質をとれば、血糖値が急上昇するわけですが、診断基準が変わって、頼みの綱のグルファストやベイスンが保険適用にならなくなったり、それこそ、予防接種の対象から外れたり、となど、糖質制限食を治療食としている人たちにデメリットが出ないように、ご進言いただければ、と思います。

それと・・・・SU剤などで治療している人は不要かもしれませんが、血糖値を測りながら、その日食べられる糖質量などを計算しつつ過ごしているわけですが、センサーが高くて、とても困ってます。

Ⅰ型だけでなく、Ⅱ型も、コントロールするには、計測はとっても必要な事。

ぜひ、保険適用されれば、結果的に医療費削減にも繋がると思うのですが、医師の判断で、保険で処方する事ができるようにはならないものなのでしょうか。
2009/11/02(Mon) 16:08 | URL | たか | 【編集
Re: 新診断基準について
たかさん。

新診断基準になっても、血糖値も残りますので、グルファストやベイスンは健康保険で大丈夫ですよ。

センサーは確かに高いですね。
日本では、1枚100円~120円。
せめて米国並みに、30円ぐらいになればいいのですが・・・

多くの人が使用するようになると、量販効果で安くなるかもしれませんね。
2009/11/02(Mon) 18:16 | URL | 江部康二 | 【編集
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