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疲弊したβ細胞と糖質制限食
こんばんは。

今回は疲弊したβ細胞について、kei5 さんから、コメント・質問をいただきました。

「09/10/29 kei5
疲弊したβ細胞について
初めてコメントさせていただきます。
10月に健診で空腹時120mg、A1c8%だった為、近くの内科医において、グルコバイ、アクトスの処方を頂きましたが、3日で服用中止し、糖質制限を開始、10日後に、空腹時80mgの前後、
食後1時間値で、140mgを超えない食事を続けています。疲弊したβ細胞は、メカニズム的にあるいは生理的にどのような状態にあるとお考えでしょうか?つまり正常に分泌能を持つ細胞と可逆的な分泌能の低下に陥ってる細胞を分けるものはどこら辺にあるのでしょうか?
お忙しい中、ご教示いただけたら幸いです。」


kei5 さん。
コメントありがとうございます。

膵β細胞からのインスリン分泌と糖尿病の病態進展との関係は、過去いろいろ研究されてきました。

それでつい最近までは、「糖尿病を発症した時点で、膵臓のβ細胞機能は50%くらい低下している。」というのが定説でした。

しかし最新の研究で、IGT(食後高血糖境界型・予備軍)の段階で、耐糖能正常の状態に対して、実に80%の機能低下があることが報告されました。(*)

つまり、糖尿病発症前の段階から、インスリン分泌の低下がすでに認められたわけです。

また他の多くの研究から、

「血糖値上昇と膵β細胞の機能低下が相関すること」
「2型糖尿病の発症以降は、インスリン感受性が維持されていても膵β細胞機能は徐々に低下すること」

が報告されています。

要するに、膵β細胞機能は糖尿病発症前の段階から低下していて、疾患進行とともにさらに悪化すると考えられています。つまり進行性の不治の病です。(;ー;)

これでは、糖尿人の未来は、まるでお先真っ暗ではないですか。(;△;)

でもこれは、従来の薬物療法(SU剤やインスリン注射など)と従来のカロリー制限食(高糖質食)を実践した場合のお話しですね。

結局、従来の治療法では「食後高血糖」が防げないので、膵β細胞機能が進行性に徐々に低下していったものと考えられます。(180mg/dl以上の食後高血糖膵β細胞障害)

それならば、糖質制限食実践で食後高血糖を正常にコントロールすれば、膵β細胞の進行性の障害は予防できると考えられます。ヾ(^▽^)

IGT(食後高血糖境界型・予備軍)の段階で、正常に比し80%の機能低下があると、述べました。糖尿病発症の段階ならもっと機能低下があります。

ただ、これはβ細胞の80%が既に壊れているということではありません。「壊れている細胞」、「疲弊している細胞」、「元気な細胞」の3種類のβ細胞があると思います。

壊れている細胞はもう元には戻りませんが、疲弊しているβ細胞は糖質制限食で、追加分泌インスリンの必要がほとんどなければ休養できて回復します。

実際、高雄病院入院時には空腹時血糖値200mg以上レベルと基礎分泌の不足が明らかだったのですが、スーパー糖質制限食実践で徐々に改善し2週間後退院時には100mg以下になった糖尿人が数人はおられます。


「疲弊したβ細胞は、メカニズム的にあるいは生理的にどのような状態にあるとお考えでしょうか?つまり正常に分泌能を持つ細胞と可逆的な分泌能の低下に陥ってる細胞を分けるものはどこら辺にあるのでしょうか? 」

この質問は難しいので私ごとき未熟者には答えがたいのですが、わかるところだけ説明します。

2型糖尿病で認められる膵β細胞の異常には質的異常と量的異常があります。

<質的異常>
①インスリン分泌のリズムが異常
②不活性型のプロインスリンの上昇(2型糖尿病の特徴)
③第1相追加分泌インスリン反応の欠落~不全
④第2相追加分泌インスリン反応の遅延

<量的異常>
膵β細胞のアポトーシスの亢進による膵β細胞量の進行性の減少。

ともあれ、kei5 さんは空腹時血糖値120mg/dlと境界型だったのが糖質制限食開始10日後に、空腹時80mg前後に改善しておられます。

これは当初インスリン作用の不足が認められましたが、10日後には少なくとも基礎分泌インスリン作用が正常に回復したことを示しています。

これは膵β細胞分泌機能が100%正常に戻ったという意味ではなくて、あるていど回復したことによりインスリン作用としてはトータルにみて正常範囲ということです。

「空腹時80mgの前後、食後1時間値で、140mgを超えない食事」

これなら、HbA1cも1~2ヶ月で6%台、3ヶ月で5%台に舏ると思いますよ。 (^_^)

(*)
2008年第68回米国糖尿病学会 DeFronzo RA

江部康二


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
慢性腎炎
先生こんにちは

私は糖尿病と診断される前からタンパク尿がでています。血圧も高いです。

タンパク尿が出始めた5年前には、尿糖もかなりでてましたが、糖尿の検査はしていませんでした。

その後タンパク尿は続いていたものの、尿糖も出たり出なかったりでした…

そして今回糖尿病と診断された時にその経緯を説明し、糖尿病性腎症と言われたのですが、先生のブログに出会い、糖質制限を始めて3ヶ月でHba1Cが8.6%から5.7%に下がっても、血圧コントロールが良好になっても、尿中アルブミンのクレアチニン換算値が176もあります

主治医からは糖尿病性腎症ではなく、糖尿病以前に腎臓に異常があると言われました。7月の時点では血清クレアチニンは0.47でした。


もし、慢性腎炎などの疾患だった場合、糖質制限は続行不可になってしまうのでしょうか…?

先生、よろしければ回答お願いいたしますm(__)m
2009/10/29(Thu) 20:03 | URL | ゆか | 【編集
不安と安堵
非常に丁寧なお答えありがとうございました。
進行性であるという面においては不安を覚えますが、グルコーススパイクを小さく押さえ込む事によって進行性の障害は予防できるとのお言葉に安堵しました。診療をなさりながらブログにおいても、これだけの応答をされてらっしゃるのを見るにつけ、感謝いたします。ブログ、御本等を通して、これからも勉強させて頂きます。
2009/10/30(Fri) 09:38 | URL | kei5 | 【編集
先生のブログ、いつもありがたく読ませていただいています。
感謝です。

ちょうど、インスリン分泌について不安だったところにタイムリーな記事でした。
空腹時でIRIを検査したことがなく、随時では12とか7とかなのでいいのか悪いのかもわかりません。主治医から何か言われたこともありません。血糖値がさがってくるのが3時間後あたりであまりにも分泌が遅いのと、前夜より朝のほうが数値が高いので基礎分泌が不足していることは認識しています。
普段はスーパー制限してますが(つもりですが、食後50くらいは軽く上がります)、時々は色々食べます。
糖質制限は半年になりますが、制限し始めて2カ月後には、朝200→110、食後5時間で85くらいまでになりました。
今は、朝の空腹時が130くらいです。食後5時間でやっと110くらいになります。A1C6.3です。

薬はアクトスとベイスンですが、まじめには飲んでいません。地道な薬だからまじめに飲んでこそ効いてくるものだと説明がありましたが、実感できませんでしたので。

糖質制限して半年経ち、厳しくというより適当な感じでやっているので甘いかもしれません。
数値はイマイチでも、今くらいの制限がちょうどいいかなという気もします。
発症が7年くらい前で放っておいたので、これでも十分ありがたい状況ではあります。
が、このくらいだと、半分も細胞が元気じゃないのかな、と思っていたところです。
で、分泌異常のお話しを読み、あてはまっているなとおもいました。
空腹時をどう下げようか、食後の高血糖をどうコントロールしようか模索しています。
もっともっとスーパー制限でしょうか。
2009/10/30(Fri) 15:50 | URL | ゆうめ | 【編集
Re: 慢性腎炎
ゆかさん。

血清クレアチニンは0.47と正常ですので
糖質制限食、OKです。

糖尿病腎症なら、「尿中アルブミンのクレアチニン換算値が176」も血糖値コントロールで
正常に戻る可能性があります。
しかし、糖尿病以前からの蛋白尿は変わらないかもしれません。
2009/10/31(Sat) 08:13 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: 空腹時血糖値について
mkさん。

肥満がさらに改善すれば、インスリン抵抗性が改善し、
空腹時血糖値も下がる可能性が高いです。

追加分泌インスリンもでていますが、やや出遅れています。
しかし分泌能力そのものは保たれています。

血糖自己測定器は20%の誤差があります。
1日2食でよいとおもいます。
糖質制限食で、膵臓を休養させつつ体重減少を目指しましょう。
2009/10/31(Sat) 08:19 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: タイトルなし
ゆうめ さん。

HbA1c6.3%ですから、コントロール良好ですね。

理想的にはスーパー糖質制限食で膵臓を休養させて、
下記が達成できればいいですね。

【糖尿人の目標】
糖尿病合併症予防のために

① 空腹時血糖値140mg/dl未満→126mg/dl未満→さらには110mg/dl未満
② 食後2時間血糖値180mg/dlmg/dl未満→さらには140mg/dl未満
③ 理想的には食後1時間血糖値180mg/dl未満
④ HbA1c6.5%未満→さらには5.8%未満
2009/10/31(Sat) 08:22 | URL | 江部康二 | 【編集
ありがとうございました
お返事ありがとうございました

先生のおかげで先日Hba1c5.2とコントロールできていていました
尿タンパクについてなんですが、タンパクの量から慢性糸球体腎炎だろうとの診断でした(腎生検しないとよくわからないそうですが)

このまま糖質制限を続けたとして、慢性腎炎の進行が早まるのではないかと心配なんですが、どうでしょうか??
2009/11/06(Fri) 02:06 | URL | ゆか | 【編集
尿蛋白
ゆかさん。

蛋白尿の量はどの程度でしょうか?
漢方薬が有効なことがあります。
2009/11/06(Fri) 07:36 | URL | 江部康二 | 【編集
ありがとうございます
タンパク尿の量ですか?…

11/2に検査時は

BUN 12mg/dl
クレアチニン 0.47mg/dl

比重 1.013
PH 5.50
蛋白 (1+)
潜血 (-)
ウロビリノーゲン (-)
ビリルビン (-)
亜硝酸塩 (-)
白血球 (-)
蛋白定量 23.5mg/dl
アルブミン定性 (+)
アルブミン定量 187.4mg/l尿中クレアチニン 66.3mg/dl
尿中ナトリウム 76mEq/l
尿中カリウム 38.2mEq/l尿中クロール 94mEq/l
乳び (-)
(ここから下は何の数値なのかわかりませんが、一応)
NAG定量 14.30U/l
RBC 0.1/HPF
WBC 2.0/HPF
EC 1.3/HPF
CAST 0.0/LPF
BACT (-)

(↑これらは何の数値ですか?)

でした。

よろしくお願いします
2009/11/06(Fri) 23:06 | URL | ゆか | 【編集
追加です
あと、ちなみに

糖 (-)
ケトン体 (1+)

糖質制限を始めて4ヶ月目なのでケトン体がでるんですよね??
ケトン体は先月は(-)でしたが、先々月は(2+)でした…
2009/11/06(Fri) 23:12 | URL | ゆか | 【編集
Re: ありがとうございます
ゆかさん。

尿蛋白定量 23.5mg/dl なら、比較的少量です。
糖質制限食実践に問題はありません。

「RBC 0.1/HPF
WBC 2.0/HPF
EC 1.3/HPF
CAST 0.0/LPF
BACT (-) 」
尿を遠心分離して、成分を顕微鏡で見た検査です。尿沈査といいます。
正常範囲です。

「NAG定量 14.30U/l 」
尿の腎機能検査です。基準値が施設によりことなるので評価はわかりません。
2009/11/07(Sat) 19:33 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: 追加です
ゆかさん。

尿中ケトン体は、3~6ヶ月で陰性になることが多いです。
2009/11/07(Sat) 19:34 | URL | 江部康二 | 【編集
ありがとうございました
お忙しい中ありがとうございましたm(__)m

もうひとつ質問なんですが、私の今のタンパク尿の状態で漢方は有効なんでしょうか??
むしろ漢方の方がいいのでしょうか?
2009/11/10(Tue) 23:10 | URL | ゆか | 【編集
蛋白尿
漢方が有効なことがあります。
100%ではありませんが・・・
2009/11/10(Tue) 23:56 | URL | 江部康二 | 【編集
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