2009年10月27日 (火)
こんにちは
新型インフルエンザが猛威を振るっていますが、ワクチンが圧倒的に不足しています。
昨日は、新型インフルエンザに関して、おじさん、おばさん、高齢者は、どうやら一定の免疫が既にある人が多く、比較的感染しにくいし重症化もしにくいという記事を書きました。
<インフルエンザワクチンの有効性>
言い換えれば、若い人達には免疫がないので、ワクチンを接種したい方は多いと思います。
しかしながら、以前からわかっていたことですが、実は現行のインフルエンザワクチンには、季節性も新型も含めて、水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。
感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので過信するのは禁物です。
理論的に考えても、ワクチンを注射することにより、IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
従って、インフルエンザウィルスが、咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。
下記は国立感染研究所のホームページからの抜粋です。
http://www.nih.go.jp/niid/topics/influenza01.html
「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を完全に阻止することは難しいと考えられます。」
「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる気道の粘膜免疫や、回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では大きな短所であると考えられています。」
<院内感染>
2009年1月18日(日)京都新聞に、東京都の某病院(内科と認知症主体の精神科)で1月17日までに、入院患者77人と職員24人の職員が相次いでインフルエンザを発症し、女性患者3人が死亡したという痛ましい記事が載りました。ちなみに院長も感染したそうです。1月3日に20代の女性職員がインフルエンザに感染し、6日以降入院患者に広がりました。
亡くなった3人は、いずれも高齢の認知症で寝たきりの患者で、2人はワクチンを接種していました。
インフルエンザに罹患した77人の入院患者のうち、68人はワクチンを接種しており、罹患した24人の職員のうち、21人が接種を受けていました。
インフルエンザワクチン「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。奇しくも上述の記事で、感染防御には実際にまったく無力だったことが明らかとなりました。
<誤解>
ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、感染防御できると誤解しておられるのです。
私は、過去十年間以上、友人の医師などに、感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、皆なかなか信じてもらえませんでしたね。どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。 (*_*)
ここ2年、新聞などでもやっと、「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。逆に言えば、過去10年以上、あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、そのことに関して自己批判もなくてなんだか興ざめです。(*- -)(*_ _)
インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、私はこのことを説明して
「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」と付け加えます。
<必要性>
別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、接種する意味はありますね。
<感染防御>
①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクを
して乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクを
する。その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
できればノンタッチごみ箱に廃棄すること
ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、感染防御効果はないことをしっかり認識して、上記①~⑦を励行してくださいね。これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。
<終わりに>
インフルエンザワクチンに、賛成の人も反対の人もあると思います。ブログ読者の皆さんには、インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて今回記事にしました。
江部康二
新型インフルエンザが猛威を振るっていますが、ワクチンが圧倒的に不足しています。
昨日は、新型インフルエンザに関して、おじさん、おばさん、高齢者は、どうやら一定の免疫が既にある人が多く、比較的感染しにくいし重症化もしにくいという記事を書きました。
<インフルエンザワクチンの有効性>
言い換えれば、若い人達には免疫がないので、ワクチンを接種したい方は多いと思います。
しかしながら、以前からわかっていたことですが、実は現行のインフルエンザワクチンには、季節性も新型も含めて、水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。
感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので過信するのは禁物です。
理論的に考えても、ワクチンを注射することにより、IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
従って、インフルエンザウィルスが、咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。
下記は国立感染研究所のホームページからの抜粋です。
http://www.nih.go.jp/niid/topics/influenza01.html
「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を完全に阻止することは難しいと考えられます。」
「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる気道の粘膜免疫や、回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では大きな短所であると考えられています。」
<院内感染>
2009年1月18日(日)京都新聞に、東京都の某病院(内科と認知症主体の精神科)で1月17日までに、入院患者77人と職員24人の職員が相次いでインフルエンザを発症し、女性患者3人が死亡したという痛ましい記事が載りました。ちなみに院長も感染したそうです。1月3日に20代の女性職員がインフルエンザに感染し、6日以降入院患者に広がりました。
亡くなった3人は、いずれも高齢の認知症で寝たきりの患者で、2人はワクチンを接種していました。
インフルエンザに罹患した77人の入院患者のうち、68人はワクチンを接種しており、罹患した24人の職員のうち、21人が接種を受けていました。
インフルエンザワクチン「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。奇しくも上述の記事で、感染防御には実際にまったく無力だったことが明らかとなりました。
<誤解>
ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、感染防御できると誤解しておられるのです。
私は、過去十年間以上、友人の医師などに、感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、皆なかなか信じてもらえませんでしたね。どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。 (*_*)
ここ2年、新聞などでもやっと、「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。逆に言えば、過去10年以上、あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、そのことに関して自己批判もなくてなんだか興ざめです。(*- -)(*_ _)
インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、私はこのことを説明して
「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」と付け加えます。
<必要性>
別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、接種する意味はありますね。
<感染防御>
①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクを
して乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクを
する。その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
できればノンタッチごみ箱に廃棄すること
ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、感染防御効果はないことをしっかり認識して、上記①~⑦を励行してくださいね。これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。
<終わりに>
インフルエンザワクチンに、賛成の人も反対の人もあると思います。ブログ読者の皆さんには、インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて今回記事にしました。
江部康二
この記事へのトラックバック
| ホーム |