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日本における糖質制限食の歩みと治療報告
糖質制限食の臨床実践は、1999年から釜池豊秋先生が宇和島で開始し、同時に高雄病院でも私の兄江部洋一郎院長が開始し有効例を重ねていきました。

釜池先生は肥満・メタボリックシンドローム・糖尿病などに応用し、高雄病院では当初糖尿病に特化して症例を積み重ねました。

特に2001年に私自身の糖尿病症例、第1例目を経験してからは、病院をあげて精力的に糖質制限食の研究を行いました。

その経験を踏まえ2005年に私が「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」糖質制限食のすすめ(東洋経済新報社)を出版しました。

その後、荒木裕先生が2006年「断糖宣言!」(エディットハウス)を出版され、釜池豊秋先生が2007年に「糖質ゼロの食事術」(実業之日本社)を出版されました。

私は、
2008年「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」(東洋経済新報社)
2009年「我ら糖尿人、元気なのには理由がある」(東洋経済新報社)
を出版し、糖質制限食理論の充実をめざしました。

医学文献では、2004年6月号の京都医学界雑誌に、私が糖質制限食が糖尿病に有効だった3症例の報告を行いました。(1)

医学文献としては、この報告が本邦初だと思います。

灰本元先生は2008年に、2年間の介入研究で糖質制限食は高糖質食と摂取カロリーは同一でも有意に2年後のHbA1cとBMIが改善することを英文雑誌に報告しました。(2)

2009年には、重症糖尿病(HbA1c>9.0%)への糖質制限食治療で、インスリンを使用することなく半年後にHbA1c10.9から7.2%へ下がり、LDL-Cは低下、HDL-Cは上昇することを英文雑誌に報告しました。(3)

春日井市の灰本元先生は京都漢方シンポジウムで糖質制限食のことを学ばれ、早速ご自分のクリニックで実践されて、貴重な論文報告をされました。

坂東浩先生、中村巧先生は約1000人を肥満外来で治療し糖質制限食の有効性を2008年に報告されました。(4)

2009年、医学雑誌・治療に私が糖質制限食の小論文を発表しました。(5)

学会発表としては、東海大学の山門一平先生、大櫛陽一先生、金大成先生と一緒に、2009年糖尿病学会年次学術集会で、糖質制限食の有効性を初めて報告しました。(6)

福岡の丸岡先生もこの学会で糖質制限食の発表をされました。

日本における糖質制限食の歩みを概観してみましたが、一歩一歩確実に、医学界にも浸透しているのがよくわかります。糖質制限食の未来は明るいと確信しています。 (^_^)

江部康二

(1)江部康二他:糖尿病食事療法として糖質制限食を実施した3症例,
      京都医学会雑誌51(1):125-130、2004

(2)Haimoto H, et all:Long-term effects of a diet loosely restricting carbohydrates on HbA1c levels, BMI and tapering of sulfonylureas in type 2 diabetes: a 2-year follow-up study.Diabetes Research and Clinical Practice, 79, (2), 350-356,2008.

(3)Haimoto H, et all:Effects of a low-carbohydrate diet on glycemic control in outpatients with severe type 2 diabetes.Nutrition & metabolism.6(21)2009.

(4)坂東浩,中村巧:カーボカウントと糖質制限食, 治療,90(12):3105-3111,2008

(5)江部康二:主食を抜けば(糖質を制限すれば)糖尿病は良くなる!,
治療,91(4):682-683,2009

(6)山門一平,江部康二,金大成,大櫛陽一:2型糖尿病における低炭水化物食の有用性とテーラーメード運動処方,第52回日本糖尿病学会年次学術集会

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
ご報告
江部先生

定期的に貴ブログを愛読させて戴いております、もうすぐ41歳のボン(♂)と申します。

米国駐在中ですが、7月中旬に糖尿病を発症しました。貴ブログとカステラ氏のブログを励ましに禁酒・禁煙・生活改善に取り組み、下記の結果を出すことができました。

*計測値は何れも左が7月24日時点、右が9月30日時点の検査結果より。

総コレステロール 457 193
善玉コレステロール   40 72
悪玉コレステロール 計測不能 108
中性脂肪 1,814 63
血糖値 209 78
HbA1c 10.8% 5.7%

*2ヶ月間日本未承認?のLipofen (150mg/dose)を服用(今は中止)。糖尿病の薬は処方されるも服用せず。

Lipofenの副作用らしき肝臓のダメージがあるようですが、いずれ消えるでしょう。

尿中ケトンは7月の検査では+でしたが、9月末は検査なしでした。市販のキットでは陰性と出ましたが、泡が立つのでどうやらタンパクが出てはいるようです。これもその内消えるだろうとあまり気にせずやっております。

ともあれ、一言お礼のコメントを書かせて戴きたいと思った次第です。有難うございます。これからも弛まずに管理して参ります。
2009/10/14(Wed) 10:40 | URL | ボン | 【編集
タンパク尿
ボンさん。

2009年7月発症で、糖質制限食で改善し、
血糖値 209→ 78
HbA1c 10.8%→ 5.7%

なら、糖尿病腎症の可能性はなく
タンパク尿も正常と思いますよ。

このまま美味しく楽しく糖質制限食をお続け下さいね。
2009/10/14(Wed) 13:26 | URL | 江部康二 | 【編集
ご報告2
江部先生

ご多忙中コメントを戴きまして、誠に有難うございました。

流石にカボチャ等は食べませんが、野菜の糖質は原則気にせず、主食を完全に抜く形で管理しております。

米国でも普通の医者にかかると先に薬を処方する傾向があるようで、知人から「薬は飲まなくても糖尿秒の管理は可能だ」と言われ、処方箋を捨てて今に至っております(その知人、その割りに食後高血糖を頻繁に起こしていますが)。

間食をしないので毎食楽しく食べられています。ご著書の「主食を抜けば…」を只今読んでいるところです。今後も続けていきます。現地人は結構患者が多い為、今後は逆にアドバイスが出来るようになると思います。
2009/10/14(Wed) 14:13 | URL | ボン | 【編集
シックデイ
これから本格的にインフルエンザのシーズンで、日を追って患者数も増えています。今は薬を飲まずに血糖値を正常にキープしていますが、もし、シックデイになったときはかなりあがるのではと心配です。そのときは薬を飲む必要があるのでしょうか?
何の薬を処方してもらうと良いでしょうか?一時的に飲める薬はありますか?
それともインスリンのほうがよいのでしょうか?
2009/10/14(Wed) 14:51 | URL | usa | 【編集
はじめまして。フランス在住で10月はじめの血液検査での値が悪く、主治医からの説明が非常にあいまいなので自分で調べ始め、先生のブログにたどり着きました。
家族に2型糖尿病が多いので希望して、10月3日にブドウ糖負荷テスト50gをしました。
結果、空腹時0.93 1時間値2.18でした。
主治医(一般内科医)からは一ヵ月後にHbA1cを受けるように、現時点では何も言えない。と言われ、その後受診したメタボ専門医からは、空腹時が1.26を越えていないので「糖尿病ではなく耐糖以上の域」と断言され、納得いかず説明を求めると、そんなに気になるならと、1ヶ月後に再度ブドウ糖負荷テストを今度は2時間値を、プラスHbA1cを受けるように言われました。
検査までの一ヶ月間は「砂糖・お菓子は止めて、でも炭水化物はきちんと取って」とのこと!!自分の体にこれ以上の負担をかけたくないため、5日前からス-パ-糖質制限をしています。(体重は5日で2キロ落ちました)
そこで3つ質問です。
①約3週間後、ブドウ糖負荷テストを受けるのですが、ス-パ-糖質制限をしている人がいきなり空腹時に50gものブドウ糖を飲んで大丈夫なのでしょうか?体をびっくりさせないためにも多少の糖質は取る食事に変えたほうがいいのでしょうか?
また、②ス-パ-糖質制限の効果で、検査時の値が改善されてしまい、糖尿病であると診断されなくても、実はすでに糖尿病だった。ということもありえ、その場合制限食を緩めたとたんに悪化するという理解で間違っていませんか?
③スーパー糖質制限食を始めてから、背中の肩甲骨の間あたりが痛いのですが何か関係がありますか?

お忙しいとは思いますが、異国で言葉の壁・習慣の壁・糖尿病といえば1型が主流の国ですし、ましてや糖質制限食なんてとんでもない!という医師・栄養士・糖尿病の人にしか今のところ出会えていません。
わらにもすがる思いでいます。どうぞよろしくお願いします。
2009/10/14(Wed) 19:48 | URL | さち | 【編集
Re: タイトルなし
さちさん。

診断基準と正常値をしっかりDrに確認して下さいね。

①約3週間後、ブドウ糖負荷テストを受けるのですが、ス-パ-糖質制限をしている人がいきなり空腹時に50gものブドウ糖を飲んで大丈夫なのでしょうか?体をびっくりさせないためにも多少の糖質は取る食事に変えたほうがいいのでしょうか?

特に問題はありません。2型糖尿病なら、結果として1gの糖質がピーク3mg血糖値を上昇させるでしょう。日本では75g負荷が標準です。

また、
②ス-パ-糖質制限の効果で、検査時の値が改善されてしまい、糖尿病であると診断されなくても、実はすでに糖尿病だった。ということもありえ、その場合制限食を緩めたとたんに悪化するという理解で間違っていませんか?

スーパー糖質制限食で膵臓が休養できて、耐糖能があるていど改善するとは思います。
しかし、それでも糖尿病であれば、負荷試験で陽性となるでしょう。

③スーパー糖質制限食を始めてから、背中の肩甲骨の間あたりが痛いのですが何か関係がありますか?

これは、無関係です。

2009/10/14(Wed) 22:57 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: シックデイ
usa さん。

現在コントロール良好ですし、2型と考えられるので
シックデイもそれほど神経質になる必要はありません。
糖質制限食なら軽度上昇くらいで薬なしで乗り切れると思います。
2009/10/14(Wed) 23:02 | URL | 江部康二 | 【編集
はじめまして
先日、先生のご本をはじめて読み、糖質制限食をはじめてみた41歳の男です。糖尿病ではないのですが、ご本の中で血糖値の安定によるメンタルの安定という点に興味をひかれはじめました。なぜなら私は長年、気分にムラがあり、また疲労感がいつもあり、仕事への集中力が欠ける点がありました。またお米がとても好きで食べすぎる傾向がありました。ご本を読んで、もしかすると糖質のとりすぎが原因だったのかもかと思いつきました。そこで一週間ほど前からはじめてみると劇的な変化があらわれました。それは朝の目覚めが異様によいことです。いつもいくら寝ても寝たりない感じがあり、しかも朝から疲れているようだったのが、目がさめた瞬間に頭が立ち上がるような感じで、しかも4時や5時に目ざめるのです。目の奥に感じていた何かつまっている感じもなくなりました。日中の気分の軽さもかつてないほどです。糖質を消化するのにこれほど体に負担があったのかと恐ろしくなるほどです。糖尿病対策、ダイエット対策として以外に現在の日本人の漠然とした疲労感、陰鬱感軽減対策として、先生の理論と実践は救世主となるのではないかと思いました。こういった観点での症例がありましたら、教えていただければと思います。
2009/10/15(Thu) 04:48 | URL | しょうぞう | 【編集
一型糖尿病と糖質制限食と暁現象…
おはようございます!
いつもありがとうございます!

おかげさまで、MAX7.0あったHba1cも5.8まで下がりました!
インスリンも食前にヒューマログ2単位ですんでおり、主治医からも一型でこの状態は良好だよと言っていただいてます!
ただ早朝の血糖値は130~高いと140を超えることもあります…
(先月より就寝前にヒューマカートを4単位うっています)

毎食後は糖質制限をしてるので、正常値内でおさまるのですが、やはり暁現象を落ち着かせるのは、薬しかないでしょうか?糖質制限食で暁現象をおさえるのは難しいでしょうか?
2009/10/15(Thu) 08:28 | URL | ゆか | 【編集
ありがとうございます。
早速のお返事ありがとうございます。

今日主治医に(一般内科医)再度、診断基準について質問をしてきました。すると、糖尿病の診断に使われているのは、「空腹時血糖値126以上。医師によってはここ数年HbA1cを診断に使う人もいる。HbA1cの正常値は4~6。7以上が糖尿病」との事です。
空腹時は正常値で食後の血糖値の高い隠れ糖尿病について聞くと、「そんな人は非常に稀だ、それはすでに糖尿病で薬を使っている人が、血糖のコントロ-ルが悪いときの数値だ」さらに、「あなたは太っていないし、糖尿病で無いと賭けてもいいよ」との事。
メタボ専門医も同じ様な事を言っていたので、これがこちらの医者の見解なのかもしれません。
今日も炭水化物もしっかり食べるように。と念を押されてきましたが、
今のところ主治医・メタボ専門医ともに信頼できそうも無いので自分の体は自分で守る。
負けずにス-パ-糖質制限を続けていこうと思います。
2009/10/17(Sat) 07:44 | URL | さち | 【編集
Re: ありがとうございます。
さちさん。

『空腹時は正常値で食後の血糖値の高い隠れ糖尿病について聞くと、「そんな人は非常に稀だ、それはすでに糖尿病で薬を使っている人が、血糖のコントロ-ルが悪いときの数値だ」さらに、「あなたは太っていないし、糖尿病で無いと賭けてもいいよ」との事。 』

空腹時血糖値が正常で、食後高血糖のみある糖尿病は、境界型に分類され
日本人では一番多いです。でも欧米ではまれなんでしょうね。

「食後高血糖が数年~10年くらい続いて、ついに空腹時血糖値が上昇する」というのが
日本人の糖尿病の典型的パターンです。
欧米ではやせ型の糖尿病は珍しいようですね。

欧米の一般的な医師においては、2型糖尿病は、基本的に肥満で、
やせ型の糖尿病は1型というような常識があるようです。
2009/10/17(Sat) 08:01 | URL | 江部康二 | 【編集
その後のご報告です。
こんにちは。
以前質問にお答えいただいた、フランス在住のさちです。
1ヶ月おいての2度目の血液検査
(今回は日本の基準に合わせて75g・2時間)の結果、

空腹時0.98、 75gの糖摂取後1時間値2.30、 2時間値1.27 
HBA1c 5.7でした。

空腹時・2時間値・HBA1c ともになんとか正常範囲ですが、
1時間値が2.00以上は耐糖能異常と検査結果表にあります。
ところが、主治医(一般内科医)からは、正常です。
心配のしすぎですと言われ、少し混乱しています。

家族に糖尿病が非常に多いので、今後も先生の本を参考に
糖質制限を続けていくつもりですが、
頻繁に負荷テストをして監視したほうがいいのでしょうか?

糖質制限を糖尿病の母に勧めていますが、
まだまだ抵抗があるようで拒否されてしまいます。
お医者さんの間で早く糖質制限への理解が深まって欲しいです。

2009/11/20(Fri) 01:28 | URL | さち | 【編集
1時間値
さちさん。

日本でも、75gブドウ糖負荷試験で
2時間値が140mg未満なら正常です。
しかし正常の中でも、1時間値が180mgを超えている人は、生来糖尿病になりやすいことがわかっています。
さちさんは糖質制限食を続ければ、それが防げると思いますよ。
2009/11/20(Fri) 07:46 | URL | 江部康二 | 【編集
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