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ADAガイドラインの変遷と海外の糖質制限食に関する報告②
こんばんは。

今朝は寒かったです。枕元の温度計は18度でした。いよいよ本格的秋到来ですね。

さて、今回は米国在住のusaさんから、米国医師の糖質制限食事情に関して、コメント・情報をいただきました。

「09/10/03 usa
興味深い記事でした
いつもお世話になっています。
今回、米国における概観を記事にしていただき、胸のつかえが少しとれました。
私が診療を受けた医師は2人とも糖尿病医でした。

「減量が望まれる糖尿病患者には低カロリー食、もしくは低炭水化物食によるダイエットが推奨される」と低糖質食を支持する見解が初めてだされました。(*)

とのことで、私のように痩せすぎで減量の必要がない患者には、制限はあるにしても日本人にとっては驚くべきほどの炭水化物の量で、栄養士に指導を受けても、今まで以上の摂取をするように指示され疑問きわまりなかったのです。ローカーボのロノ字もでませんでした。

つい先日、ローカーボドクターのリストhttp://lowcarbdoctors.blogspot.comと言うサイト(個人のもの)を見つけましたら、Dr.Bernsteinが1番にリストアップされていました。その他各州に3~10人くらいますが、0人の州もあります。ダイエット中心の医師もいますし、自己申告でリストに載せることもできるので、信憑性は今1つですが、驚いたことに全て糖尿病医ではなく、一般医だったのです。
また、ローカーボ食品を検索すると、実に多種多様な食品を通販で入手することができるのに、糖尿病医はローカーボにあまりこだわっていないという矛盾が生じました。
私は1日に30gのCaboでは少なすぎるので(標準体重未満のため)、多めに摂取し、数値が上がれば薬とインスリンという診断を2人の医師から受けているのが実情です。もちろん、そんなことはする気はありませんが。それに基礎分泌がまだ多少でているのに、今すぐインスリンをといわれています。 残念ですが、アメリカの一般的な糖尿病医はこれが現実です。
どうも私には標準体重以上で太りすぎが原因の糖尿病患者が2型、正常体重未満で高血糖のものが1型という認識が彼らの根底にあるのでは、と思えてなりません。(単純には決め付けられませんが)」


usaさん。
コメントありがとうございます。

今の米国事情、興味深いです。

「つい先日、ローカーボドクターのリストhttp://lowcarbdoctors.blogspot.comと言うサイト(個人のもの)を見つけましたら、Dr.Bernsteinが1番にリストアップされていました。その他各州に3~10人くらいますが、0人の州もあります。ダイエット中心の医師もいますし、自己申告でリストに載せることもできるので、信憑性は今1つですが、驚いたことに全て糖尿病医ではなく、一般医だったのです。」

そういうことなのですね。日本よりは多いけどまだまだなのですね。糖尿病専門医が一人もいないのは、さもありなんです。

「どうも私には標準体重以上で太りすぎが原因の糖尿病患者が2型、正常体重未満で高血糖のものが1型という認識が彼らの根底にあるのでは、と思えてなりません。」

仰有る通りと思います。

米国には<肥満+インスリン抵抗性>が主の2型糖尿病が一番多いです。彼らはインスリン分泌能力は保たれているか、過剰のこともあります。痩せた2型糖尿病は米国においてはまれなのだと思います。

1型糖尿病は、米国では日本の5%よりはかなり多いです。1型は米国でも日本でも痩せてインスリン分泌能は低下~欠乏しています。

それで米国の常識から考えると、usaさんは1型糖尿病という固定観念から抜け出せないのだと思います。

日本では糖尿病の95%が2型で、正常体重未満の人がたくさんいます。私もその一人です。

日本では<インスリン分泌能低下が主>で<インスリン抵抗性は従>の2型糖尿病が多いです。

抗GAD抗体が陰性であり、インスリン注射なしで糖尿人の目標血糖コントロールを達成されているusaさんは、日本の医師が診察すれば2型糖尿病とする人がほとんどと思います。

糖尿病専門医以外では米国産婦人科の医師も妊娠糖尿病に糖質制限食を取り入れている人が
いるようです。以下はうさぎさんのコメントです。

☆☆☆うさぎさんのコメント

「・・・余談ですが、先々週から1週間ほど出張でアメリカに滞在したのですが、思いのほか糖質制限食がしやすかったです。メインディッシュの量がたっぷりなので、日本のように一皿余分にオーダーしなくてもよいですし、サラダの上にお肉やエビなど、好きなものを焼いてのせてくれるようなオプションがありました。もちろん、糖質の少ない葉野菜もたっぷりです。

また、米国ではカーボカウントが定着しているためだと思いますが、ごく普通の薬局で様々な種類の血糖測定器が販売されていましたし、本屋には食品別にカーボの量が一覧になっている本や料理本がたくさんありました。

一番印象的なお話としては、妊娠糖尿病になった方が、直ちに炭水化物(糖質)を制限するように指導され、無事に元気な赤ちゃんを出産されてました。ごく一般的な病院で指導されたそうです。米国では妊婦さんでも腎臓などに問題が無ければ糖質制限食は安全という認識なのだと理解しました。

日・米で大きな差を感じた出張になりました。
うさぎ | 2009.03.24(火) 11:29 」


さて米国の糖質制限食の歴史ですが、「Dr. Atkins Diet Revolution」が出版されたのは1970年代初頭です。

アトキンス博士は、循環器専門医だったので、肥満治療に糖質制限食を導入したのが始まりです。メインは肥満治療で、糖尿病にもいいですよというスタンスですね。

「Dr. Bernstein's Diabetes Solution: The Complete Guide to Achieving Normal Blood Sugars 」は
1997年に出版されました。こちらは勿論糖尿病がメインの本です。

米国のバーンスタイン医師(バーンスタイン医師の糖尿病の解決の著者)は、ご自身が1型糖尿病です。小児期12才に1型糖尿病を発症され、以後インスリンを打ち続けておられます。

35才、糖尿病腎症の初期となった頃、SMBGで血糖自己測定をしながら食事療法を研究し、徹底した糖質制限食を開始。蛋白尿が出現する段階の顕性腎症前期から、糖質制限食で回復しタンパク尿消失。

45才で医学部に入学、49才で医師になり、糖尿病を徹底的に研究。以後、多数の糖尿病患者を診察。73才現在、糖尿病合併症もなく、現役医師としてお元気にお過ごしです。

アトキンス医師とバーンスタイン医師は、米国の近年の糖質制限食(低糖質食)の先駆者といえます。

その後米国では、糖質制限食関連の文献は少数発表されてきましたが、ここ数年、主として代謝・栄養学会や循環器学会などにおける発表がかなり増えてきており、糖質制限食の効果が明確に示されています。しかし、糖尿病学会での発表は、まだ少ないようです。

2008年、Accurso1らはcarbohydrate restriction(糖質制限食)が血糖コントロールを改善し、インスリン追加分泌を減少させ、メタボリック・シンドロームの全ての指標を改善することを報告しました。

バーンスタイン医師も共著者になっておられるこの論文は、過去の文献が網羅してあり総説としても価値が高いものです。(*)

その後Nielsenらは、2型糖尿病患者に20%の低糖質食で22ヶ月間観察し、体重減少と血糖値改善が得られたことを報告しました。(**)

米国の糖質制限食、日本より2.3歩は先んじているようですが、まだ主流というにはほど遠いようですね。



Accurso1 A, Bernstein RK,et all:Dietary carbohydrate restriction in type 2 diabetes mellitus and metabolic syndrome: time for a critical appraisal.Nutrition & metabolism.5(9)2008

**
Nielsen JV,et all: Low-carbohydrate diet in type 2 diabetes: stable improvement of bodyweight and glycemic control during 44 months follow-up.Nutrition & Metabolism,5(14)2008


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
静脈血漿血糖値と毛細血管血糖値について
先生 こんにちは

以前、こちら(http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-905.html)で長~い質問をしたにもかかわらず、ご丁寧にアドヴァイス頂き、とても感謝しているゆうこです。

おかげさまで、グルファスト+ベイスンで、1週間の海外旅行、朝・昼・晩とご飯もパンも麺も思い切り楽しんできました!!

旅行後の血液検査も心配したのですが、

       6/1 ⇒6/30⇒ 8/4 ⇒9/29
GOT    16 ⇒ 16 ⇒ 17 ⇒17
GPT    21 ⇒  21 ⇒ 20 ⇒17
γ-GT    31 ⇒ 18 ⇒ 18 ⇒ 20
HDL    59 ⇒ 46 ⇒ 56 ⇒ 59
LDL    137 ⇒ 91 ⇒ 91 ⇒93
中性脂肪 111 ⇒ 66 ⇒ 58 ⇒59
尿酸     6.2 ⇒ 9.2 ⇒ 6.7 ⇒7.8
尿素窒素  9.2 ⇒ 10.5 ⇒ 11 ⇒10.7
クレアチニン 0.4 ⇒0.45⇒ 0.4 ⇒0.39
A1C     7.3 ⇒ 6.3 ⇒ 5.1 ⇒4.7♪
血糖     206⇒ 138⇒ 137 ⇒133

という結果で、A1Cが減っていたので、一安心です。主治医にもびっくりされました。
HDLとLDLの比率も理想の1.5未満になるように願っているのですが、
やっと、当初2.322⇒1.978⇒1.625⇒1.58 と徐々に近づいているようです。
体重は、微減ですが、増えてはいない・・・という、もうちょっとがんばらないといけない感じですが・・・。

◆尿酸は、増えたり減ったりですが、心配しなくていいでしょうか?
◆クレアチニンが低いと言われたのですが、このまま糖質制限食で問題ありませんか?

私にとっては、ベイスン+グルファストが、かなり効力があるらしく、
どうしてもご飯が食べたい時や、外食の時に服用しているのですが、
この間など自宅で炊き込みご飯をして、3杯食べてしまったのですが、
1時間後131 2時間後142 がピークでした。
イタリアンレストランで、たくさんのパスタやリゾット、デザートなどを食べても2時間後で121くらいでした。(翌朝はちょっと高めで134ありましたが)

それにしても、前回教えていただいた「食後一時間=服用からの時間」となると、食後二時間くらいまではまだデザート付近にいたりして、(◆ベイスン服用から2時間過ぎてしまったらデザート用にベイスン追加した方がいいのでしょうか?)
「今食べているこのデザートの分はいつの血糖値に反映されるんだろう」
と考えてしまうのですが、

◆長~い食事でまだ食事中、つまり糖質追加投入中でも、食後一時間・二時間の考え方は変わらないのですよね?



先生のブログで、

①空腹時血糖値126mg未満、理想的には110mg未満
②食後2時間血糖値180mg未満、理想的には140mg未満
③HbA1c6.5%未満、理想的には5.8%以下

とよく書いてありますが、①はたまに超えるけれど、②は大丈夫 ③もオッケー!
と、安心していたところに、ひとつ疑問がーーーー!

◆先生のこの数字は、病院の数値である「静脈血漿」ですか?それとも自宅採血の数値である「毛細血管血」ですか?


病院で測る血糖値が、自宅の二プロよりも20ほど高く出るのと、検査結果の紙の裏に「静脈血漿」とか「毛細血管血」の違いが書かれているのに気づき、ネットで色々調べてみましたら、
『大きな病院や外部に検査に出す病院(=簡易血統測定器で測定する病院以外)などは、ほとんどすべて静脈血の血漿で測定していて、この場合の測定値は、「血漿血糖値」と言って、指先などの毛細血管血糖値と比べて、20mg/dLくらい高いのが普通です。
例えば静脈血漿で110mg/dLの場合には、毛細血管血では90~100mg/dLくらいになります。』
とありました。

・・・・という事は・・・・自宅で測るより20高い理由はわかったのですが、
①②③ともオッケー!と喜んでいたのに、

◆①②は、自宅で測る場合には、それぞれマイナス20しないといけない、ということになりますか??


もうひとつ、
◆「180mgを超えるとリアルタイムに血管が破壊される」とおっしゃっていましたが、
そうすると、②の「食後2時間血糖値180mg未満(自宅採血では160mg未満?)」では1時間血糖値はもっと高く、すでに血管が破壊されかける、という事になりますか?
それを防ぐ為には食後1時間値180mg未満(自宅採血で160mg未満)にしないといけない、という事になりますでしょうか?


目安が20違うとなると、大きく違うので、ぜひ教えて下さいませ。


(また長文になってしまい、読みにくいので 疑問点に◆をつけました。)
2009/10/05(Mon) 19:34 | URL | ゆうこ | 【編集
経過報告
先生、ご無沙汰しております。m(__)m

経過報告

10月頭の検査結果です。

血糖    不明→96→84→88
HbA1c   6.7→5.7 →5.2→4.9
尿酸    不明→8.1 →8.8→7.7
体重    80.4→75.8 →73.7→72.5
HDL    38.6→39.7→45.9→48.0
LDL    91.0→77.1→79.6→79.3
総コロステロール 不明→184→159→163
中性脂肪 361→551→252→256
γ-GTP  127→69→44→39

の結果でした。

中性脂肪が下がらない?

う~ん、3分思考・・・

尿酸値が高い、中性脂肪が増える、発泡酒の飲みすぎかぁ~w

血糖値もHbA1Cも悪くないのに、中性脂肪が下がらない、お酒とプリン体摂取を少し控えます。w(^^ゞ

結構大量に飲むのと、検査に12時間開くか開かないかでしたので。

2009/10/05(Mon) 19:36 | URL | たろう | 【編集
Re: 経過報告
たろう さん。

HbA1c:4.9%  絶好調ですね。
尿酸は心配ないと思います。
①ストレス②肥満③大酒④プリン体食材
の順で尿酸値を上昇させるので、気持ちアルコールを減らせばいいでしょうね。
中性脂肪は空腹時のデータでしょうか?
2009/10/05(Mon) 22:07 | URL | 江部康二 | 【編集
足がつる
33才主婦です 糖尿病の家系です 私はまだ病院で診断されていませんが予備軍には間違いなく入ると思います 1ヶ月まえから糖質制限をして炭水化物もとってません 食後二時間が120に収まるようにしています!ほとんど100ぐらいです!空腹血糖値は80台だったんですがここ二週間ぐらいは90台で100の時も時々あります!朝と夕食後二時間値があまり変わってないように思いまちなみに一年前から毎日夕食後30分~1時間は散歩してます! そこでお聞きしたいのが 最近足が毎日つるのです!糖質制限と関係ありますか?それと二年前にヘルニアになりました
まだ左足の痺れが残ってます つるのは左足ばかりです
2009/10/05(Mon) 23:39 | URL | あい | 【編集
Re:経過報告
今回と前回は、食後11時間以上空けてますが、その直前まで結構飲んでました。

次回、丸1日断酒してのぞみます。
2009/10/06(Tue) 06:42 | URL | たろう | 【編集
足がつる
あいさん。

時に足がつる人がいます。
カルシウム・マグネシウムを食物から補給すると
こむら返りが改善します。

2009年09月03日 (木)
2009年09月04日(金)
のブログご参照ください。
2009/10/06(Tue) 07:47 | URL | 江部康二 | 【編集
本日発売のサンデー毎日
江部先生、こんにちは。
朝刊の広告で見ましたが、本日発売のサンデー毎日に、宮元輝さんの記事が出ているようですね。
「宮元輝 糖尿病に克つ」
「カロリー制限をやめ、ステーキと焼酎で劇的に改善した」
早速今から買いに行きます。
2009/10/06(Tue) 12:17 | URL | xiangdao | 【編集
江部先生 何時もブログでお世話になっております。5日の夕方Webを見ていたら『現役保険営業マンの生命保険徒然日記』というブログがありまして、江部先生と大阪市立大学の川村智行講師とフランス料理のシェフだった河合勝幸氏の3氏のことが炭水化物制限食のことが書かれていました。
 書かれた内容は、3月18日の日本経済新聞・夕刊に『糖尿病の食事療法に新顔登場―炭水化物だけを減らし血糖値の上昇を抑制』というという記事があったという内容でした。
 ⇒ http://hoken-ag-diary.at.webry.info/200803/article_14.html
先生のブログにこのようなことが書いてあったかどうか記憶にないのですが、日経の記事は、多数の経営者やビジネスマンも読んだことでしょうね。新聞の記事になったということは、これから益々世の中に広がっていくというサインのように感じられました。もっと早く先生のブログに出会っていたら、私の糖尿病もここまで悪化しなかっただろうにと悔やまれますが、もはや取り返しできるわけがありませんから、今後も私のできる範囲で続けようと思っています。
2009/10/06(Tue) 12:54 | URL | 飯坂 | 【編集
どうもありがとうございました!ブログ見させていただきました!ミネラル カルシウムですね!実践してみます



2009/10/06(Tue) 14:20 | URL | あい | 【編集
日本の糖質制限食実践医について
こんばんは。いつも貴重な情報有難うございます。江部先生や釜池先生は日本での数少ない糖質制限提唱医師ですが、現在全国でどれ位いらっしゃるのでしょうか。そういったデータや組織は未だ無いのでしょうか。

私は福岡在住ですが、知る限り福岡県に低糖質ダイエット提唱の糖尿病専門医はいないようです。

糖質制限を実践する多くの糖尿病患者は、私同様、主治医や栄養士の無理解と闘いながら「孤独な」血糖コントロールをしているのが実情だと思います。

いつの日か(近い将来)、全国の糖尿病患者が糖質制限治療を身近な主治医の下で、専門的に行えるようになればと願っています。

そのためにも先生のますますのご活躍を願って止みません。よろしくお願いします!
2009/10/07(Wed) 01:58 | URL | IDDMランナー | 【編集
Re: 日本の糖質制限食実践医について
IDDMランナー さん。

今、糖質制限食OK医師ネットワーク、構築中ではあるのですが・・・

三宅和久先生は、京都漢方シンポジウムで、年に一回高雄病院に来られ
糖質制限食にも詳しい、漢方医・西洋医です。
まずは、江部康二のブログで紹介されたということで、電話してみて下さい。

私も三宅先生も糖尿病専門医ではありませんが、糖質制限食には精通しています。


三宅漢方医院
三宅和久
092-716-9039
〒810-0041
福岡市中央区大名パークビル2F
2009/10/07(Wed) 08:20 | URL | 江部康二 | 【編集
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