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現行の糖尿病治療の問題点③運動療法
おはようございます。京都は朝から雨が降り続いています。琵琶湖の水位回復には恵みの雨となってくれるでしょう。

糖尿病の運動療法ですが、現行の糖尿病学会の指導方法で特に問題はないと思います。

① 運動の急性効果として、筋肉細胞の血液中のブドウ糖利用が促進され、血糖値が下がる。この機序はインスリンとは無関係なのがミソ。(註1)
② 運動の慢性効果として、インスリン抵抗性が改善する。つまり細胞に対するインスリンの効きが良くなる。

糖尿病に対する運動の直接的効果としてはこの二つが大切です。
その他、一般的に骨粗鬆症予防、筋力確保、高血圧・高脂血症の改善、心肺機能の改善・・・などが期待できるので、運動療法はできればやったほうがいいと思います。

それでも足が痛いとかリウマチがあるとか運動ができない人もいます。このような場合にも 糖質制限食がおおいに役立ちます。 糖質制限食を実践していれば食後高血糖は基本的にほとんどないので、運動ができない人でも糖尿病のコントロールOKなのです。

逆に言えば、急性効果を期待するならば、主食(糖質)を食べて血糖値が上昇している時に運動するのが、一番理屈に合っていると言えます。

「食後30分くらいに30分ほどウオーキング」で充分効果があるようです。すなわち走ったり、スポーツをしたりとか激しい運動をする必要はないのです。

渡邊昌先生の「糖尿病は薬なしで治せる」(角川)によれば、200mg/dlの血糖値が30分の歩行あるいは自転車こぎで、120~130におちるそうです。

なお、運動で消費するエネルギーはあまり多くありません。例えば30分歩いて約100キロカロリーです。運動してエネルギーを消費するから血糖値が下がるのではありませんので、誤解の無いように・・・

運動の慢性効果を期待するには、週3日以上の頻度で実施するのが望ましいそうです。

目安として1回15~30分間、1日2回、1日の運動量として約1万歩、消費エネルギーとして160~240キロカロリーが、日本糖尿病学会推奨です。

**註1
骨格筋や心筋の糖輸送体(ブドウ糖取り込み装置)はGLUT4(グルット4)で、通常は細胞の中に隠れていますが、運動時には細胞の表面に出てきて血糖を取り込むのです。 運動していない時は、グルット4は細胞の中に隠れているので、筋肉は血糖を極微量しか取り込むことはできませんから、主要エネルギー源は脂肪になるわけです。
(4.24のブログ参照して頂けば幸いです)

江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
運動と血糖値
私は最近は自己血糖値チェックはしておりませんが、血糖値を管理していた時は、食後2時間で運動強度60%で15分運動すると、血糖値が50mg/dlほど下がりました。

ただ、朝食前に運動しても全く変化ありませんでした。

サイクリングしている時だけはDMを忘れて、好きな時に好きなだけ食べております。
1日サイクリングすれば5000kcal程度は簡単に消費できます。
先日400kmを25時間で走った時は11000kcal消費しました(^_^;)
2007/06/24(Sun) 20:15 | URL | boss | 【編集
質問させて下さい!
江部先生、はじめまして。私は31歳で2型糖尿病歴約5年です。本屋で江部先生の本に出会ってブログ拝見させて頂いております。質問なのですが、ダイエットコカコーラやカロリーゼロの清涼飲料水は飲んでもいいのでしょうか?2週間前から、糖質制限食実行中です!お忙しいかと思いますが、回答お願い致します。
2007/06/25(Mon) 05:32 | URL | ももかん | 【編集
boss さん、運動強度60%で15分運動すると、血糖値が50mg/dl下がりましたか。参考になります。ありがとうございます。
江部康二

ももかんさん、ダイエットコカコーラやカロリーゼロの清涼飲料水は血糖値は上昇させません。しかし合成甘味料は一日摂取許容量が決められているので、大量に摂取する必要もないと思います。
江部康二
2007/06/25(Mon) 07:37 | URL |  | 【編集
運動時のインスリン
 こんにちは。江部先生。
私の理解が違っていたのでしょうか?
運動時、細胞がブドウ糖を利用するのにはインスリンが不可欠だと思っておりました。

 >① 運動の急性効果として、筋肉細胞の血液中のブドウ糖利用が促進され、血糖値が下がる。この機序はインスリンとは無関係なのがミソ。(註1)

 運動による消費エネルギーは、筋肉の少量グルコーゲン→血液中のブドウ糖→肝のグルコース→遊離脂肪酸の順番だと思っていました。
かつ、血液中のブドウ糖を取り込むのにインスリンがないと、さらなる高血糖、ケトン体の高値を招くと思います。

 先生の仰る糖輸送担体のトランスロケーションも別ルートであるわけですが、どちらのほうが優位に働くのでしょうか?
 ご教示いただけると幸いです。

インスリン抵抗性のない私ですが、食後1Hで時速6キロ、30分ウォーキングするときは食前インスリンの単位数を3単位減らします。
Bossさんのように、運動でBSを何mg/dl落とすといえないのは、必ず、インスリンが介在しているためです。

2007/06/25(Mon) 18:08 | URL | 9日を忘れない | 【編集
9日を忘れないさん。
 あるていど糖尿病がコントロールされていれば、
「運動の急性効果として、筋肉細胞の血液中のブドウ糖利用が促進され、血糖値が下がる。この機序はインスリンとは無関係なのがミソ。」がなりたちます。
 即ち基礎分泌のインスリンは保たれている前提で、追加分泌のインスリンがなくても運動により糖輸送担体のトランスロケーションが起こるというのが今の学説です。
 一方、仰るとおり、インスリンの作用不足がかなり深刻で、空腹時血糖値が250mg以上とかコントロールが良くないときは運動でかえって血糖値が上昇することもあり、運動療法は禁止となります。
江部康二
2007/06/25(Mon) 21:27 | URL |  | 【編集
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