2009年09月07日 (月)
こんにちは。
さきほど、高雄病院駅前診療所から本院にかえってきたところです。
今日は忙しくて、昼食はコンビニの唐揚げとソーセージとサラダですませました。
さて、おりおのびーるさんから『朝日新聞電子版』に記事についてコメント・質問をいただきました。
「09/09/02 おりおのび~る
脂肪組織の老化
江部先生、ご無沙汰しております。m(__)m
おりおのび~るです。
お陰様で血糖値は常に正常値をキープしており、改めて『糖質制限食』の有効性に驚嘆しておる次第です。(o^-’)b
…ところで話しは変わりますが、さる9/1の『朝日新聞電子版』にて(脂肪組織の老化が糖尿病の発病に関係していると千葉大の研究グループがマウスの実験で確かめた。と米国ネイチャーメディシン電子版に掲載された。)との記事があったのですが、これはいったいどういう意味なのでしょうか?
いかんせん、医学知識の乏しい素人の私には解りかねる内容なので、またお手空きの際で結構なので簡易レクチャーをよろしくお願いします。m(__)m
秋…良い季節になりましたが季節の変わり目故、お身体ご自愛下さい。(^-^)ノ~~
おりおのび~る」
<『朝日新聞電子版』記事>
【マウス実験で確認2009年9月1日 http://www.asahi.com/health/news/TKY200909010148.html
糖尿病の発病に脂肪組織の老化が関係していることを、千葉大などのグループがマウスの実験で確かめた。脂肪組織の老化を抑えることが糖尿病の新たな治療法開発につながることを示した成果で、米医学誌ネイチャーメディシン電子版に掲載された。
千葉大医学部循環器内科(小室一成教授)の南野徹助教らは、遺伝子操作で老化しやすくしたマウスを研究している中で、このマウスに糖尿病が目立つことに気づいた。
このマウスに高脂肪のエサを与えると、通常のマウスに比べ、インスリンが効きにくくなって血糖値が上昇することが判明。脂肪組織を調べると、細胞の老化を示す酵素が増え、脂肪組織の老化が進んでいた。
さらに、老化した脂肪組織を摘出すると、このマウスはインスリンが効きやすくなった。一方、正常なマウスにこの脂肪組織を移植すると、インスリンが効きにくくなり、老化した脂肪組織が糖尿病の引き金になっていることがわかった。
このマウスの老化した脂肪組織では、炎症を引き起こす分子の量が増え、p53という遺伝子の活性が高まっていた。活性化すると、細胞の老化につながることで知られている。糖尿病になりやすく改変されたマウスでも同様の変化が認められたため、遺伝子操作でこのマウスの脂肪組織のp53を働かなくさせて老化を阻害したところ、インスリンの効きが改善された。逆にp53を過剰に働かせるとインスリンの効きが悪くなった。
このことから、p53の活性化による脂肪組織の老化が糖尿病を引き起こしていることが明らかになった。糖尿病の患者の内臓脂肪でも老化を示す酵素の増加など同様の現象が認められたことから、小室教授は「人の糖尿病でも脂肪組織の老化との関係が考えられる。糖尿病を脂肪組織の老化を抑えるという観点で研究を進めれば、新たな治療薬の開発につながるかもしれない」と話している。(本多昭彦)】
おりおのび~るさん。
糖質制限食で血糖コントロール良好、良かったですね。
朝日新聞の記事ですが、千葉大のグループが「元々老化しやすい特徴を持つマウス」を使って実験したものです。
この老化しやすいマウスに糖尿病が多いことに気づいて、実験計画をつくられたようです。
「このマウスに高脂肪のエサを与えると、通常のマウスに比べ、インスリンが効きにくくなって血糖値が上昇することが判明。肪組織を調べると、細胞の老化を示す酵素が増え、脂肪組織の老化が進んでいた。」
いつも言っていますように、マウスなどネズミ類の主食は510万年間、草原の草の種子(穀物)ですから、糖質がメインです。糖質が主食のマウスに高脂肪食を与えれば、代謝全体がかく乱され大きな負担となります。
これもいつも例に出しますが、「棘の多い大きな蔓や大きな草」が主食のゴリラに、ロースステーキを毎日食べさせるようなものです。
で、当然代謝異常が生じて、インスリン抵抗性が出現してインスリンの効きが悪くなり、血糖値が上昇したのですね。
そのマウスの脂肪組織を調べると、老化が進んでいたということです。
「さらに、老化した脂肪組織を摘出すると、このマウスはインスリンが効きやすくなった。一方、正常なマウスにこの脂肪組織を移植すると、インスリンが効きにくくなり、老化した脂肪組織が糖尿病の引き金になっていることがわかった。」
これは興味深いですね。
老化した脂肪組織を摘出すると、インスリン抵抗性が改善しています。さらに、正常なマウスに老化した脂肪組織を移植するとインスリン抵抗性が出現しています。つまり老化した脂肪組織そのものが、インスリン抵抗性のもとになっていたわけです。
私なりにこの実験事実を整理してみます。
①本来、糖質が主食のマウスに、高脂肪食を食べさせる。
②そのため早老マウスの代謝はかく乱され、種々の負担が生じる。
③代謝のかく乱・身体の負担などにより、特に脂肪組織でp53という遺伝子の活性が高まる。
④p53の活性が高まると、脂肪組織の老化が起こる。
⑤脂肪組織の老化が起こると、インスリン抵抗性が出現する。
⑥インスリン抵抗性の増悪により糖尿病となる。
このマウスの実験のプロセスを、ヒトに置きかえてみるとあくまでも仮説ですが、結構怖いお話しになります。
①本来、糖質制限食(高脂質・高蛋白食)が399万年間の主食であったヒトが
特にここ50年間豊かになり飽食し、総摂取カロリーの約60%が糖質という、
偏った穀物依存の食生活を続けている。
②明治・大正・昭和初期は、穀物は沢山食べていたが、飽食できるほどの食料はなく、
運動量も非常に多かったし、空調もなかった。
③特に精製炭水化物の摂取により、1日に3回~5.6回、グルコースミニスパイクを起 こす。
④グルコースミニスパイクが起これば、追加分泌インスリンが大量に分泌される。
インスリン拮抗ホルモンも分泌され、体内に代謝のミニ嵐が起こる。
⑤肥満ホルモンのインスリンにより、内臓脂肪が蓄積する。
⑥内臓脂肪蓄積によりインスリン抵抗性が出現し、ますます高インスリン血症となる。
⑦高インスリン血症が長年持続すれば代謝症候群になる。
⑧膵臓が疲弊してインスリン分泌が不足すれば糖尿病になる。
**グルコースミニスパイクによる代謝のミニ嵐などがp53を活性化させ
内臓脂肪の老化を生じる可能性もある。
というお話しです。
以下は代謝症候群発症の流れです。
<代謝症候群の根本要因>
精製炭水化物の過剰摂取
↓
ブドウ糖ミニスパイクとインスリン頻回追加分泌
↓
内臓脂肪肥満
↓
高インスリン血症
↓
代謝症候群
*代謝症候群の全ての指標が糖質制限食で改善する
江部康二
さきほど、高雄病院駅前診療所から本院にかえってきたところです。
今日は忙しくて、昼食はコンビニの唐揚げとソーセージとサラダですませました。
さて、おりおのびーるさんから『朝日新聞電子版』に記事についてコメント・質問をいただきました。
「09/09/02 おりおのび~る
脂肪組織の老化
江部先生、ご無沙汰しております。m(__)m
おりおのび~るです。
お陰様で血糖値は常に正常値をキープしており、改めて『糖質制限食』の有効性に驚嘆しておる次第です。(o^-’)b
…ところで話しは変わりますが、さる9/1の『朝日新聞電子版』にて(脂肪組織の老化が糖尿病の発病に関係していると千葉大の研究グループがマウスの実験で確かめた。と米国ネイチャーメディシン電子版に掲載された。)との記事があったのですが、これはいったいどういう意味なのでしょうか?
いかんせん、医学知識の乏しい素人の私には解りかねる内容なので、またお手空きの際で結構なので簡易レクチャーをよろしくお願いします。m(__)m
秋…良い季節になりましたが季節の変わり目故、お身体ご自愛下さい。(^-^)ノ~~
おりおのび~る」
<『朝日新聞電子版』記事>
【マウス実験で確認2009年9月1日 http://www.asahi.com/health/news/TKY200909010148.html
糖尿病の発病に脂肪組織の老化が関係していることを、千葉大などのグループがマウスの実験で確かめた。脂肪組織の老化を抑えることが糖尿病の新たな治療法開発につながることを示した成果で、米医学誌ネイチャーメディシン電子版に掲載された。
千葉大医学部循環器内科(小室一成教授)の南野徹助教らは、遺伝子操作で老化しやすくしたマウスを研究している中で、このマウスに糖尿病が目立つことに気づいた。
このマウスに高脂肪のエサを与えると、通常のマウスに比べ、インスリンが効きにくくなって血糖値が上昇することが判明。脂肪組織を調べると、細胞の老化を示す酵素が増え、脂肪組織の老化が進んでいた。
さらに、老化した脂肪組織を摘出すると、このマウスはインスリンが効きやすくなった。一方、正常なマウスにこの脂肪組織を移植すると、インスリンが効きにくくなり、老化した脂肪組織が糖尿病の引き金になっていることがわかった。
このマウスの老化した脂肪組織では、炎症を引き起こす分子の量が増え、p53という遺伝子の活性が高まっていた。活性化すると、細胞の老化につながることで知られている。糖尿病になりやすく改変されたマウスでも同様の変化が認められたため、遺伝子操作でこのマウスの脂肪組織のp53を働かなくさせて老化を阻害したところ、インスリンの効きが改善された。逆にp53を過剰に働かせるとインスリンの効きが悪くなった。
このことから、p53の活性化による脂肪組織の老化が糖尿病を引き起こしていることが明らかになった。糖尿病の患者の内臓脂肪でも老化を示す酵素の増加など同様の現象が認められたことから、小室教授は「人の糖尿病でも脂肪組織の老化との関係が考えられる。糖尿病を脂肪組織の老化を抑えるという観点で研究を進めれば、新たな治療薬の開発につながるかもしれない」と話している。(本多昭彦)】
おりおのび~るさん。
糖質制限食で血糖コントロール良好、良かったですね。
朝日新聞の記事ですが、千葉大のグループが「元々老化しやすい特徴を持つマウス」を使って実験したものです。
この老化しやすいマウスに糖尿病が多いことに気づいて、実験計画をつくられたようです。
「このマウスに高脂肪のエサを与えると、通常のマウスに比べ、インスリンが効きにくくなって血糖値が上昇することが判明。肪組織を調べると、細胞の老化を示す酵素が増え、脂肪組織の老化が進んでいた。」
いつも言っていますように、マウスなどネズミ類の主食は510万年間、草原の草の種子(穀物)ですから、糖質がメインです。糖質が主食のマウスに高脂肪食を与えれば、代謝全体がかく乱され大きな負担となります。
これもいつも例に出しますが、「棘の多い大きな蔓や大きな草」が主食のゴリラに、ロースステーキを毎日食べさせるようなものです。
で、当然代謝異常が生じて、インスリン抵抗性が出現してインスリンの効きが悪くなり、血糖値が上昇したのですね。
そのマウスの脂肪組織を調べると、老化が進んでいたということです。
「さらに、老化した脂肪組織を摘出すると、このマウスはインスリンが効きやすくなった。一方、正常なマウスにこの脂肪組織を移植すると、インスリンが効きにくくなり、老化した脂肪組織が糖尿病の引き金になっていることがわかった。」
これは興味深いですね。
老化した脂肪組織を摘出すると、インスリン抵抗性が改善しています。さらに、正常なマウスに老化した脂肪組織を移植するとインスリン抵抗性が出現しています。つまり老化した脂肪組織そのものが、インスリン抵抗性のもとになっていたわけです。
私なりにこの実験事実を整理してみます。
①本来、糖質が主食のマウスに、高脂肪食を食べさせる。
②そのため早老マウスの代謝はかく乱され、種々の負担が生じる。
③代謝のかく乱・身体の負担などにより、特に脂肪組織でp53という遺伝子の活性が高まる。
④p53の活性が高まると、脂肪組織の老化が起こる。
⑤脂肪組織の老化が起こると、インスリン抵抗性が出現する。
⑥インスリン抵抗性の増悪により糖尿病となる。
このマウスの実験のプロセスを、ヒトに置きかえてみるとあくまでも仮説ですが、結構怖いお話しになります。
①本来、糖質制限食(高脂質・高蛋白食)が399万年間の主食であったヒトが
特にここ50年間豊かになり飽食し、総摂取カロリーの約60%が糖質という、
偏った穀物依存の食生活を続けている。
②明治・大正・昭和初期は、穀物は沢山食べていたが、飽食できるほどの食料はなく、
運動量も非常に多かったし、空調もなかった。
③特に精製炭水化物の摂取により、1日に3回~5.6回、グルコースミニスパイクを起 こす。
④グルコースミニスパイクが起これば、追加分泌インスリンが大量に分泌される。
インスリン拮抗ホルモンも分泌され、体内に代謝のミニ嵐が起こる。
⑤肥満ホルモンのインスリンにより、内臓脂肪が蓄積する。
⑥内臓脂肪蓄積によりインスリン抵抗性が出現し、ますます高インスリン血症となる。
⑦高インスリン血症が長年持続すれば代謝症候群になる。
⑧膵臓が疲弊してインスリン分泌が不足すれば糖尿病になる。
**グルコースミニスパイクによる代謝のミニ嵐などがp53を活性化させ
内臓脂肪の老化を生じる可能性もある。
というお話しです。
以下は代謝症候群発症の流れです。
<代謝症候群の根本要因>
精製炭水化物の過剰摂取
↓
ブドウ糖ミニスパイクとインスリン頻回追加分泌
↓
内臓脂肪肥満
↓
高インスリン血症
↓
代謝症候群
*代謝症候群の全ての指標が糖質制限食で改善する
江部康二
いつも拝見しています。ケイです。
糖尿病が発覚して、はや3ヶ月。糖質制限食のおかげで、空腹時血糖値が124mg/dl→88mg/dl、HbA1cが7.1→5.2まで下がりました。
とりあえず合併症の安全圏に入りました。体重も100kg→91kgになり、ユニクロで服が買えるようになり、ショッピングが楽しいです。
気になることは、尿中アルブミンだけ検査していません。医者には、HbA1cや血糖値から判断して、腎臓は悪くならないと言われました。検査する必要がありますか?
糖尿病が発覚して、はや3ヶ月。糖質制限食のおかげで、空腹時血糖値が124mg/dl→88mg/dl、HbA1cが7.1→5.2まで下がりました。
とりあえず合併症の安全圏に入りました。体重も100kg→91kgになり、ユニクロで服が買えるようになり、ショッピングが楽しいです。
気になることは、尿中アルブミンだけ検査していません。医者には、HbA1cや血糖値から判断して、腎臓は悪くならないと言われました。検査する必要がありますか?
2009/09/07(Mon) 19:42 | URL | ケイ | 【編集】
先生こんにちは。
糖質制限を始めて二回目の検査結果が出ました。
今回も↓に結果をアップしました。
http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/55/0000889755/23/img73c17642zikdzj.jpeg
ずいぶんマトモな数値に近づいてきました。ほんの4ヶ月前、5/18には血糖値:261mg/dl、HbA1c:10.2%もあったのが嘘みたいです。
ところで、先生のアドバイスに従ってIRIを測定してもらったところ、3.1μU/mlでした。
担当医から解説がなかったのでお伺いしたいのですが、この数値は、まだβ細胞は生き残っていると見ていいのでしょうか。
申し訳ありませんがご教示よろしくお願いします。
糖質制限を始めて二回目の検査結果が出ました。
今回も↓に結果をアップしました。
http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/55/0000889755/23/img73c17642zikdzj.jpeg
ずいぶんマトモな数値に近づいてきました。ほんの4ヶ月前、5/18には血糖値:261mg/dl、HbA1c:10.2%もあったのが嘘みたいです。
ところで、先生のアドバイスに従ってIRIを測定してもらったところ、3.1μU/mlでした。
担当医から解説がなかったのでお伺いしたいのですが、この数値は、まだβ細胞は生き残っていると見ていいのでしょうか。
申し訳ありませんがご教示よろしくお願いします。
2009/09/07(Mon) 23:35 | URL | 飯山忍 | 【編集】
ケイさん。
HbA1cの改善、体重の減少、良かったですね。
現在のデータですと、主治医の仰有る通り、腎機能悪化の可能性はほとんどありません。
それでも、糖尿病が発覚して3ヶ月で、食後高血糖がどのくらいの期間あったかは、よくわからないので
1回は尿中アルブミン調べた方が無難です。
HbA1cの改善、体重の減少、良かったですね。
現在のデータですと、主治医の仰有る通り、腎機能悪化の可能性はほとんどありません。
それでも、糖尿病が発覚して3ヶ月で、食後高血糖がどのくらいの期間あったかは、よくわからないので
1回は尿中アルブミン調べた方が無難です。
2009/09/08(Tue) 11:58 | URL | 江部康二 | 【編集】
飯山忍さん。
空腹時血糖値:146mg
HbA1c:6.7%
素晴らしい改善、良かったですね。
IRI3.1μU/ml、正常の下限くらい
出ていると思います。
基準値は施設により少し異なりますが、
(3~15μU/ml)くらいです。
空腹時血糖値:146mg
HbA1c:6.7%
素晴らしい改善、良かったですね。
IRI3.1μU/ml、正常の下限くらい
出ていると思います。
基準値は施設により少し異なりますが、
(3~15μU/ml)くらいです。
2009/09/08(Tue) 12:14 | URL | 江部康二 | 【編集】
先生ありがとうございます。
正常値の下限と聞いて気が楽になりました。
これからもいっそう糖質制限食を楽しんで行きたいと思います。
正常値の下限と聞いて気が楽になりました。
これからもいっそう糖質制限食を楽しんで行きたいと思います。
2009/09/08(Tue) 16:03 | URL | 飯山忍 | 【編集】
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