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妊娠糖尿病
おはようございます。

めっきり秋めいてきました。涼しくて過ごしやすい日々です。

秋は一年で一番好きな季節ですが、紅葉が見頃になると、高雄に観光に訪れる人でバスが満員で、患者さんが大変なのは困りものです。

さて今回は、コメントでよく質問をいただく妊娠糖尿病のお話しです。

今まで糖尿病でなかったのに、妊娠した後、初めて糖尿病になる場合があります。これが「妊娠糖尿病」で、妊婦の約3%くらいにみられます。

妊娠糖尿病の診断基準は、国により異なっています。妊娠糖尿病のスクリーニング検査として、グルコースチャレンジテストがあります。随時に50gブドウ糖経口負荷後1時間の血糖値が140mg/dl以上を陽性とします。

それで陽性の場合、日本では、妊娠中に75gぶどう糖負荷試験を行い、糖負荷前値100mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値150mg/dL以上の3つの基準のうち、2つ以上を満たす場合に妊娠糖尿病と診断します。

従って非妊娠時の糖尿病の判定基準とは異なっています。妊娠糖尿病と診断された場合には、分娩後に改めて75gブドウ糖負荷試験を行って病型を分類するとしています。


肥満、糖尿病の家族歴、高齢、などが妊娠糖尿病のリスクとなります。もともとの糖尿病患者が妊娠することを「糖尿病合併妊娠」といい、二つはわけて分類されています。

妊娠すると、胎盤が形成され「母体・胎盤・胎児」がひとつのユニットとなります。この時、健常な胎児を発育・成長させるために胎盤や母体が、ヒト胎盤性ラクトーゲン(hPL)、成長ホルモン、グルカゴン、カテコラミン、糖質コルチコイドなどのホルモンを分泌し、それらによりインスリン抵抗性インスリンの効きが悪くなること)がでてきます。

これらのホルモンは、妊娠の進行とともに増加しますから、特に妊娠中期以後にインスリン抵抗性が増加して、血糖値が上昇しやすくなります。

正常の妊婦は、インスリン抵抗性が増強する時期には、インスリンを多く分泌して血糖値が上昇しないように対処します。しかし、必要なだけのインスリンを分泌することができない体質の妊婦は、血糖値が上昇し妊娠糖尿病を発症します。

妊娠糖尿病は、通常は妊娠期間が終わったら、糖尿病の症状は消失します。しかし、出産後も糖尿病が続く人もいます。

現在では妊娠糖尿病は、「妊娠中に発症もしくは初めて発見された耐糖能低下をいう」と定義されています。

このため、お産が終わって、6~12週間後に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行って、正常型、境界型、糖尿病型に分類します。

なお日本では、若い女性の2型糖尿病が少し増えています。従って、可能性として、「糖尿病が既にあったのに検査していなくて見過ごされていて、たまたま妊娠して検査したら糖尿病が発見された。」というパターンがあり得ます。

この場合は、「妊娠糖尿病」ではなくて「糖尿病合併妊娠」の見逃しになります。高血糖に由来する奇形の発生は、妊娠7週までに規定されることが明らかになっていますので、妊娠機会のある女性は、糖尿病や境界型の有無を調べておくのがお奨めですね。


なお妊娠許可の条件として、HbA1c6%以下が設定されています。

妊娠中は、HbA1c5.8%以下が目標です。

血糖値の目安としては、

妊娠前
食前血糖値100mg/dL 未満、食後2時間血糖値120mg/dL 未満、
妊娠中
食前血糖値100mg/dL 未満、食後1時間血糖値140mg/dL未満、食後2時間血糖値120mg/dL 未満、

となっています。

産後の検査ですが、

日本糖尿病・妊娠学会 http://www.dm-net.co.jp/jsdp/qa/e/q02/

のサイトが参考になります。

以下は引用です。

「妊娠糖尿病の人はお産後も定期的な健診が必要といわれましたが必要なのですか?」

最近の報告では、妊娠糖尿病の人は産後早期の3~6ヶ月の検査でも、5.4%が糖尿病、全体で25%に何らかの耐糖能異常が見られると報告されています。その他の報告を集計すると、産後1年以内では糖尿病になる頻度は2.6~38%、産後5~16年追求すると糖尿病は17~63%の頻度で発症すると報告されています。

また、妊娠糖尿病の人を定期的に11年間追求した研究では、産後11年経った平均年齢40.6歳時にはメタボリックシンドロームの発症率は27.2%であり正常妊婦さんの8.2%に比較して明らかに高頻度に発症することが報告されています。

したがって、産後も定期的に耐糖能異常があるかどうかスクリーニングをうけることが大切であり、同時に食事や運動に気をつけていく必要があります。
(岡山大学 平松祐司)2007年11月


江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
ご質問があります。
江部先生、はじめまして。

最近、簡易測定器の誤差について疑問を抱いている際に、先生のブログにたどりつきました。

約1年前に妊娠中に使用していた簡易血糖測定器があり、当時は特に基準値内におさまっておりました。最近気になって、再度測定を行ってみました。

空腹時は、毎日平均80くらいです。
しかし、食後になると、変動が大きくあることが気になっています。
たとえば、8/24に朝食後コンビニおにぎり1個で2時間値96、昼食同じくおにぎり2個で、2時間値136 8/25 昼食おにぎり2個で2時間値138、夕食おにぎり150gで1時間値136 など安定しておりました。
しかし、8/26から同じようにおにぎり2個食べて2時間値測ったところ、196や180、190など急激な上昇がみられました。 確かに、この頃娘の夜泣きによる睡眠不足や血糖が気になることでのドキドキ感など体調不良が重なっていたとは思いますが、ここまで値が違いすぎるのは正直ショックです。 簡易測定器は誤差があるとのコメントがありましたが、このような体調の変化も含めて起こりうることなのでしょうか?

正直混乱しております。
また、8/29におにぎり1個、ヨーグルト昼食後2時間値が103と再び正常に戻ったり、 いったいどの値を信用していいものかなと感じています。

心配症な性格なこともあり、先生のご意見よろしくお願いします。
2009/09/02(Wed) 16:09 | URL | ゆかり | 【編集
ケトン体と腎臓
江部先生
こんにちは。何度かコメントをさせてもらっています、ふじです。
糖質制限を初めて8カ月。
HbA1cが9.3%から4.9%に落ち着きました!
改めて江部先生に感謝感謝です(^o^)

表題のケトン体と腎臓ですが、糖質制限を始めて尿中ケトン体がずっと3+のままです。
徐々に糖質制限に理解を持ちつつある主治医は、それが気になるのか、「ケトン体はあまり出過ぎていると腎臓に良くない」とお話されました。
ケトン体が出続けることによって、腎臓に負担がかかるというようなことがあるのでしょうか?

2009/09/02(Wed) 17:03 | URL | ふじ | 【編集
脂肪組織の老化
江部先生、ご無沙汰しております。m(__)m

おりおのび~るです。
お陰様で血糖値は常に正常値をキープしており、改めて『糖質制限食』の有効性に驚嘆しておる次第です。(o^-’)b

…ところで話しは変わりますが、さる9/1の『朝日新聞電子版』にて(脂肪組織の老化が糖尿病の発病に関係していると千葉大の研究グループがマウスの実験で確かめた。と米国ネイチャーメディシン電子版に掲載された。)との記事があったのですが、これはいったいどういう意味なのでしょうか?
いかんせん、医学知識の乏しい素人の私には解りかねる内容なので、またお手空きの際で結構なので簡易レクチャーをよろしくお願いします。m(__)m

秋…良い季節になりましたが季節の変わり目故、お身体ご自愛下さい。(^-^)ノ~~

おりおのび~る
2009/09/02(Wed) 22:59 | URL | おりおのび~る | 【編集
HbA1c6.0%をGETしました。
江部先生 こんばんは。kenmです。

昨日の採血検査の結果が出ました。HbA1c6.0%をGETしました。
7月中旬から糖質管理食、そして糖質制限食を導入しましたので、7週間でHbA1c6.8%から6.0%に好転したことになります。

これもひとえに先生のご著書とブログに教えられて実際にやってみた結果です。ありがとうございます。これからまだまだ勉強しなければなりませんが、一歩ずつ前進するつもりです。今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。

まだ主治医の理解が得られませんが、低血糖に注意しながら続けていきます。
2009/09/02(Wed) 23:54 | URL | kenm | 【編集
Re: HbA1c6.0%をGETしました。
kenmさん。

HbA1c6.0%、6.5%未満でコントロール良好ですから、
目標達成おめでとうございます。
次は、5.8%未満のコントロール優を目指しましょう。
2009/09/03(Thu) 07:42 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: 妊娠糖尿病の糖質制限食について
けこさん。

胎児への影響を考えると、
食後の高血糖が一番リスクになると思います。

妊娠中の血糖値の目標は
「食前血糖100mg/dL 未満、食後1時間糖値140mg/dL未満、食後2時間血糖120mg/dL 未満」
です。

この中で
「食後1時間糖値140mg/dL未満、食後2時間血糖120mg/dL 未満」
が空腹時より大事と思います。
2010/04/23(Fri) 16:11 | URL | ドクター江部 | 【編集
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