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糖質制限食と癌③
こんにちは。

23日、日曜日は東京で「脳と栄養のシンポジウム」が行われて、私も演者の一人として参加しました。大盛況で本もよく売れたようです。 (^_^)

さて今回は、糖質制限食とガンに関するお話の3回目です。

ランセットというイギリスの権威ある医学雑誌2008年9月号、にイヌイットとガンに関する論文が掲載されました。以下はその要約です。

<ランセット論文 要約>*

イヌイットは、アラスカ、カナダ北西、グリーンランドの極地に住んでいる。20世紀初頭までは、イヌイットには、悪性腫瘍はほとんど存在しないと信じられていたが、平均余命がのびてきて異なるパターンを呈してきた。

その変化とは、EBウィルスによる鼻咽頭と唾液腺の癌のハイリスク、白人に多い癌(前立腺癌、精巣癌、造血系癌)のロウリスクである。遺伝的・環境的要因が共にこのパターンに関わっている。

20世紀の後半、 イヌイット社会でライフスタイル、生活状況に大きな変化があった。そして喫煙、食事、生殖性因子の変化のあと、ライフスタイルに相関する腫瘍、特に肺癌大腸癌乳癌がかなり増加した。

この論文は、イヌイット集団における癌の疫学の最近の知識を、イヌイットタイプの癌の特性を強調して簡単に要約している。」

要約に加えて、本文もざっと読んでみました。ランセットの論文に加えて、イヌイットの食生活の歴史も考慮しながら、イヌイットのガンの変遷を概観してみましょう。

まず、20世紀初頭までは、伝統的食生活(糖質制限食)が守られており、癌はかなり少なかったようです。

この頃までは約4000年間、小麦など穀物は皆無で、糖質摂取はほとんどなしの食生活です。まさに民族をあげてのスーパー糖質制限食実践例そのものです。

その後1910年代から欧米人との交流が徐々に頻回となり、EBウィルスも外部からイヌイット社会に持ち込まれたのでしょう。免疫がなかった分と民族的特性で、EBウィルスによる鼻咽頭と唾液腺の癌が急速に増えました。

1910年代にハドソン湾会社などの交易会社がカナダの東部極北地帯へと進出し、1920年代に北ケベックの各地に毛皮交易所が設置されました。しかし、1950年頃までは、欧米白人型の癌はまだまれでした。

食生活も徐々に欧米的なもの(例えばバノクと呼ばれる無発酵パン)が入ってきます。バノクが日常食として定着していったのは、1920年代と思われます。

交流が活発になり約40~50年が経過した1950年代からは、欧米型の癌(肺癌大腸癌乳癌)が増加しています。

またアルコール、タバコ、麻薬はかつてイヌイット社会に無かったものですが、急速に浸透していき、人々を苦しめ大きな影を落とすこととなりました。

「イヌイットと癌」というテーマに関して、少ないという説や欧米と変わらないという説が入り乱れていて、私も困っていたのですが、ランセットの論文のように歴史的に経過を追うと、とても解りやすくなりました。

整理すると

①イヌイットが伝統的食生活(糖質制限食)を守っている時は、癌は少なかった。
EBウィルス初感染以後、鼻咽頭と唾液腺の癌が急速に増加し、他民族より多い。
②食生活や社会生活などライフスタイルの変化と共に、徐々に欧米型の癌が増えていった。

という結論となります。

糖質制限食という視点から見ると、イヌイットが伝統的食生活(スーパー糖質制限食)を守っていたときは、少なくとも欧米型のガンはほとんど見られませんでした。

一方、小麦が入ってきて、バノクが主食として定着して、40~50年経過したら今までイヌイット社会にはほとんんど無かった、欧米型の癌(肺癌大腸癌乳癌)が増加しています。即ち、糖質を摂取するようになってから、欧米型のガンが増えています。

1993年、マッギル大学の先住民栄養環境研究センターの調査によれば、イヌイットの若者は、ハンバーガー、ピザ、ポテトチップス、コーラ、ガム、チョコレートを好み、摂取カロリーの大半が、これら糖質を大量に含むジャンク・フ-ドでした。

今やイヌイット社会において、肺癌大腸癌乳癌・・・、糖尿病肥満全て、欧米より増加してしまいました。この中で肺癌は、タバコが元凶です。

イヌイットの歴史を振り返れば、肺癌以外の欧米型のガンに関しては、「糖質制限食による癌予防」おおいに期待できそうですね。ヾ(^▽^)


Lancet Oncol. 2008 Sep;9(9):892-900.
Cancer patterns in Inuit populations.Friborg JT, Melbye M.
Department of Epidemiology Research, Statens Serum Institut, Copenhagen, Denmark.。

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
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