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AGEsと糖尿病合併症
こんばんは。

今回はAGEについて、モン吉さんから、コメント・質問をいただきました。


『09/07/20 モン吉 AGEは「わかさ」の牧田先生の記事をみる
AGE値について
こんにちは、毎日ブログ拝見させていただいています、
50代男性です。

2年少し前に糖尿病が発覚し、当時食後血糖値 390、HbA1cが10.7ありました。
しばらく食事と運動で様子を見ましょうという事で 薬なしでいきました。数ヶ月後に先生のブログを
知り「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」の本も 知りすぐ購入し糖質制限を実行した結果、現在
はずっと薬なしでHbA1c5.5前後で安定しています。 先生のブログと本に出合えて本当に良かったと 大変感謝しております。

お尋ねしたいのは、書店で見た「わか○9月号」 に先生の記事が載っていたので購入し、最後の 方にAGE値についての記事が載っていて初めて 聞く事なので気になりました。

私は、血糖値を押さえてHbA1cを低く安定させて いれば合併症の心配はないと思っていましたし、
主治医もそう仰られていましたが、この記事 を見ると、いくら血糖値を低く保ち続けていても AGE値を低く押さえないと合併症がでるという事でした。現在の病院ではAGE値の検査項目は ありませんが、先生の病院では検査項目に入っているのでしょうか。合併症にはやはりこのAGE 値が関係するのでしょうか?

又、AGE値とコラーゲンの関係も書かれていましたが、私はサプリメントでコラーゲンを摂っていますが、今現在腎臓には異常はありませんが、糖尿病人においてはコラーゲンをずっと摂り続ける事は腎臓にあまり良くないのでしょうか?
少し不安になりご質問させて頂きました。宜しくお願い致します。』


モン吉さん。
コメントそして本のご購入ありがとうございました。

「2年前食後血糖値390mg、HbA1cが10.7%。 現在ずっと薬なしで、HbA1c5.5」

糖質制限食実践で、素晴らしい改善ですね。(^-^)v(^-^)v
薬なしですから、主治医殿もさぞかし驚かれたことでしょう。ヾ(゜▽゜)

さて、ご質問のAGE*のことですが、回答が遅くなって申し訳ありませんでした。この間、同級生や知人の糖尿病専門医に複数尋ねてAGEに対する見解をご教示願いました。それでやっと、現時点での結論らしきものに辿り着きました。

A)AGEについてある程度コンセンサスが得られていること

①体内で高血糖により産生されたAGEsが、細小血管合併症に関わることは、以前から指摘されていました。細小血管合併症とは、糖尿病網膜症や糖尿病腎症です。

②さらに近年「高血糖の記憶**」という概念で、
米国の大規模臨床研究・DCCTのフォローアップ試験であるEDIC-DCCTの報告、UKPDSの20年後の解析で、大血管合併症にもAGEが関わっているのではないかという説が浮上しています。大血管合併症とは、心筋梗塞や脳梗塞などです。

B)AGEについてまだコンセンサスが得られていないこと

食品に含有されるAGEが人体に有害か否かは、現在論争中です。米国の文献では、食品中のAGEも人体に有害という論文もあります。

しかし、日本の糖尿病専門医のほとんどが、食品に含有されるAGEは、人体に有害という立場はとっていません。その間接的証拠といいますか、日本では血中や尿中AGE濃度の検査は、全くといっていいほど実施されていません。

C)AGE値の検査

様々な AGEがあるので、一つの検査法でAGEsの総量を測定することは困難です。
一方、近年各種AGEsの化学構造が解明されたことや抗体作成技術の進歩によって、CML、ピラリン、ペントシジン、クロスリンなど、個別AGEの測定法が確立されました。

2006年1月にはELISA法による血中ペントシジン測定が腎機能検査項目において保険収載(実施料130点)され、臨床検査として測定されるようになりました。

しかし、まだ一般的でなく、研究機関によって測定方法も異なっているなど課題が多い段階です。
現在、日本最大の検査会社であるSRLにおいても、AGE値の検査はほとんど行われていません。

結論です。

1)高血糖により体内で産生された、AGEsは糖尿病の血管合併症の原因となる。
2)一方、食材から摂取されたAGEsが、人体に有害か否かは、結論は出ていない。
3)日本では、AGE値の検査自体が、ほとんど実施されていない。

なお、コラーゲンをサプリで摂取すれば、消化管でアミノ酸に分解されて、吸収されます。コラーゲンはタンパク質ですので既に腎障害がある人は控えた方がいいですが、それ以外ででは人体への悪影響はありません。

江部康二

*AGE

タンパク質と糖が結びついた物質で、Advanced Glycation End-productの頭文字をとってAGEと呼ばれます。日本語では終末糖化産物と訳されています。

過剰な血糖は、糖化反応により血管壁のコラーゲンなど様々なタンパク質に付着します。付着した糖は一部変性してアマドリ化合物(変性ブドウ糖)となります。このアマドリ化合物と糖が結合しAGEができます。

AGEは、糖尿病合併症を引き起こす、重大な原因の1つです。AGEには多種の物質があります。それらを総称してAGEsといわれます。日常よく検査されるグリコヘモグロビンやグリコアルブミンは、糖化反応の前期生成物であるアマドリ転位生成物です。

**高血糖の記憶

糖尿病血管合併症のメカニズムを特徴的に説明する、高血糖の記憶(hyperglycemic memory)と呼ばれる概念があります。

「高血糖の記憶」とは、過去の高血糖レベルとその曝露期間が生体に記憶され、その後の血管合併症の進展を左右するという考え方です。

ヒトの糖尿病において、この「高血糖の記憶」の存在を示すエビデンス(証拠)として、米国の1型糖尿病患者の大規模臨床研究・DCCTのフォローアップ試験であるEDIC-DCCTの報告があります。

DCCTでは、1型糖尿病患者を従来の通常療法群と、より厳格に血糖管理を行う強化療法群に分け、平均6.5年間追跡しました。

その結果、通常療法群に比べ強化療法群で平均HbA1c値が1.9%低下し、強化療法群で血管合併症の進展リスクが大幅に減少しました。(*)

同研究終了後に行われたEDIC-DCCTでは、通常療法群にも強化療法を実施し、両群をさらに平均11年間追跡しました。

つまり「継続的な強化療法群」と「通常療法→強化療法群」の2つのグループの比較が、DCCT終了後11年間行われたことになりますね。

その結果、開始から3~4年で両群の平均HbA1c値がほぼ同等となったにも関わらず、11年間の心筋梗塞、脳卒中、心血管死のリスクは「継続的な強化療法群」の方がやはり低かった(相対リスク57%低下)ことが報告されたのです。(**)

すなわち、糖尿人において一定期間血糖コントロールが不良であれば、高血糖の記憶が「借金」のように生体内に残り、その後良好なコントロールが得られても、血管合併症リスクの差は縮まらないことが示されたわけです。

この借金の正体が、組織沈着AGEではないかと言われています。

まだ仮説ではありますが、組織に沈着したAGEが血管を傷害し続け、動脈硬化の元凶となり「高血糖の記憶」を最もよく説明するとされています。

高血糖の記憶・借金を残さないためには、糖尿病発症の初期の段階から血糖コントロールを保つことが大切です。当然、早ければ早いほどいいわけです。

糖尿人の皆さん、カロリー制限食(高糖質食)では必ず、食後高血糖が生じ将来に借金を残します。
是非、糖質制限食で速やかな血糖コントロールを目指して下さいね。


(*)N Engl J Med 1993; 329: 977-986

(**)N Engl J Med 2005; 353: 2643-2653

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
ご回答有難うございます。
江部先生。

大変お忙しいなか、とても詳しくご回答頂きまして有難うございます。AGEについては、現在の糖質制限を続けて高血糖状態にならないようにすれば、まず安心ということですね。
又、コラーゲンのサプリメントについても腎障害が無ければ大丈夫という事で、大変安心いたしました。

新刊本の「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」にも書かれていらっしゃいますが、糖質制限は毛細血管も含めて血流をとても良くするとの事です。病気の多くは血流が悪くなるのが原因のようですので、糖質制限は糖尿病だけでなく、その他の病気の予防の為にもとても効果が有ると感じます。今後他の病気にならない為にも、美味しく楽しく末永く続けていきます。
2009/08/17(Mon) 22:28 | URL | モン吉 | 【編集
はじめまして
江部先生

はじめまして、私は5月の健康診断で糖尿病と診断されてしまいました。
その時のデータは下記のように、

空腹時血糖:277mg/dL(前年107mg/dL)
HbA1c:11.3%(前年6.1%)
体重:96.9kg(前年104.5kg)
となっていました。
前の晩に飲み会、朝ごはんはキッチリ食べたにしてもHbA1cが高すぎるので間違いないと言われ、また特別な運動や減量もしていないのに体重は減り、多飲、多尿の症状も今思えばあったので完全に糖尿病になっていました。

その後、病院で運動と栄養指導(カロリー制限)を受け、一ヵ月後にはHbA1c:8.5%、
検査前に買い物をしていたとはいえ、食後約4時間~4.5時間の空腹時血糖:91mg/dL

となりました。その後は
7月
HbA1c:7.5%
食後1.5~2時間血糖:141mg/dL
血中インスリン?:11.3yU/mL

8月
HbA1c:6.2%
食後2時間血糖値:109mg/dL
体重:82kg

と、順調に下がっています。
そのときに先生のこのブログを見つけ、自分のデータは下がってはいるけど、本当にこのままで平気なのかとちょっと心配になっています。
やはり私も糖質制限に切り替えた方がいいのでしょうか。

体重の減りが早く、栄養指導の先生からはご飯は200g食べても平気と言われていますが、糖質が血糖値を上げるならば先生の考えどおり糖質を制限した方がいいような気がしたので、先日栄養指導の先生に糖質制限食について聞いたところ、あまり賛成はされませんでした。
栄養指導の先生が言うには、食べたいものは食べて、糖質さえ取らなければいいというのは血糖値は下げると思うけど、栄養バランスの面から他の病気につながる可能性が高いというです。
糖尿病の主治医も同じような考えだとのことでした。
まだこのブログとであったばかりの私が反論して変に治療プランと違うことをしていると思われるのも何だったので(実際にまだ糖質制限はしていません)そうなんですか程度で終わりましたが、江部先生の糖質制限食とはちゃんと栄養のバランスを取ることを前提としている認識でいいのでしょうか。
最近は仕事が忙しく帰りこそウォーキングで帰っていますが中々本屋の開いてる時間に帰れなくて先生の本が買えないのです。
長文になりすみませんがよろしくお願いします。
2009/08/18(Tue) 00:10 | URL | ポウル | 【編集
恐ろしい…(-_-;
おはようございます。おりおのび~るです。
今回のAGEsの話、大変勉強になりかつ恐怖しました。(;□;)!!

まさか『糖の借金』はたまた『高血糖の記憶』などと言う概念があろうとは…(@_@;)

…やはりどんな病気でも『予防』と『早期発見・早期治療』が大事なんだと改めて認識を新たにさせていただきました。

ところで昨日の総回診時に医院長に直訴したところ、アッサリ糖質制限食の許可が降り、拍子抜けいたしました。どうも看護師さん達には馴染み薄い情報(勉強不足?w) のようですが、ドクターや栄養士さん達はチャッカリ江部先生の書籍をお読みになっているようです。w

まさに『隠れキリシタン』ならぬ『隠れ江部イスト』とでも言いましょうか…(;^_^A

これで院内でも大手をふって『糖質制限食』で『2型糖尿病』の治療に専念できます!…って骨折で入院してるのに!w
2009/08/18(Tue) 07:53 | URL | おりおのび~る | 【編集
迷います
江部先生

リボーンの会員で、何度かセミナーに出席させていただいています。いまのところは糖尿人ではありませんが、以前低血糖症状などに悩まされ、現在は糖質制限食を実践しよい状態を保っています。

先生の著書もブログも熟読し納得しているつもりなのですが、時々迷いが生じます。
先日、岡本裕医師の著書「9割の病気は自分で治せる」を読み、ほとんどの部分では共感できるのですが、これはどう解釈したらよいのだろう?と考えてしまった部分がありますので転記いたしますね。
お忙しい中恐縮ですが、コメントいただけましたら幸いです。

以下
『肥満を解消するポイント
・・・同じものばかり食べ続けたり、炭水化物を極端に減らしたりすると、確かに体重は減ります。しかし・・・
さて、炭水化物を極端に減らすとどうなるのでしょうか。
炭水化物はもちろんエネルギー源ですので、当然の結果としてエネルギー不足に陥ります。そのため、炭水化物のかわりにタンパク質にエネルギー源としての動員がかかります。つまり炭水化物(糖質)がエネルギー源として利用できないので、タンパク質(アミノ酸)からわざわざ糖(炭水化物)を作ってエネルギー源を確保しようとするのです。もちろん生体は、タンパク質をほとんど筋肉として備蓄しているわけですから、タンパク質がエネルギー源として必要となれば、筋肉が解けていき、もちろん自己治癒力も著明に低下していきます。
いずれの手法も体調を損ね、その結果として体重が減っているのです。言い換えれば、命がけのダイエットなのです。早い話が、病気になって痩せていくるという当たり前の原理なのです。』

エネルギー源は糖だけではないということは理解しています。
よろしくお願いいたします。
2009/08/18(Tue) 11:44 | URL | ナナモリ | 【編集
ナナモリにあいのり
それはぜひ私も先生の見解をお聞きしたいです。
ただ、その岡本先生の説だと、食事で摂取するタンパク質と脂質のエネルギーは全く無視されている様な気がするのですが・・・

江部先生は極端なエネルギー(カロリー)不足にならない様に!と繰り返しおっしゃってますよね。
それと関係あるのでしょうか?
2009/08/18(Tue) 12:32 | URL | ジュニア | 【編集
岡本裕という医師は、糖新生のメカニズムを全く理解してないということだな。
ご両名、質問の前に過去のログをよく読んでみましょう。できれば著書も。答えがみつかります。
2009/08/18(Tue) 13:26 | URL | めんぼう | 【編集
Re: 入院手術時のインスリン
心配性 さん。

「一般的にインスリン依存の糖尿病者が入院手
術を受けるとき、インスリンはどのように投与されるもの
でしょうか? 」

当然一人一人パターンは違いますので一般論にはなりません。
主治医に、「現在データ的に正常であるが、海外出張で血糖値300mgを超えることがある」
ことを告げて、よくご相談ください。
2009/08/18(Tue) 22:09 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: はじめまして
ポウル さん。

人類400万年の歴史のなかで
農耕前の399万年間は、狩猟・採集が生業で、人類皆糖質制限食です。
人類は399万年かけて、糖質制限食を続けて進化しそれに適応してきたわけです。

即ち糖質制限食こそが人類本来の食事といえます。
穀物に60%も依存する食生活は人体の代謝・生理にとって不自然なものということです。
どちらがバランスがよいか言うまでもないですね。
2009/08/18(Tue) 22:24 | URL | 江部康二 | 【編集
ご回答ありがとうございました
日々復習しないとホントに頭に入りません(苦笑)
深く感謝いたします!
2009/08/18(Tue) 22:30 | URL | ナナモリ | 【編集
Re: 入院手術時のインスリン
江部先生、ご回答いただき大変有り難うございました。
2009/08/19(Wed) 09:13 | URL | 心配性 | 【編集
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