2009年07月31日 (金)
おはようございます。
昨夜は、比較的涼しかったです。今朝は、蝉の声で午前6時半に目が覚めました。
今日は、江部診療所を休診にして、午後から第33回日本産婦人科栄養代謝研究会で1時間の特別講演「栄養・代謝と糖質制限食」をするため、金沢に向かいます。
医師向けの講演なのでやや緊張してますが、とても楽しみでもあります。 (^_^)
さて、よくある質問の一つに「糖尿病は治るのでしょうか?治らないのでしょうか?」というのがあります。
一般には、「一旦糖尿病になったら決して治らない。」というのが定説ですが、本当のところはどうなのでしょう。
それではまず、どのようにして糖尿病が発症するのかを考えてみます。
日本人の糖尿病発症は、食後高血糖が数年間続いているのを見逃しているうちに、遂に空腹時血糖値が上昇してきて、健康診断で発見されたというパターンが多いです。
即ち、当初は食後高血糖にならないように、膵臓のβ細胞がインスリン追加分泌を頑張って沢山出し続けていくのですが、ある日とうとう追いつかなくなってきて、食後高血糖の段階に至ります。
この段階では、インスリン追加分泌の軽度の不足があり、食後2時間値が140〜199mgの境界型レベルになりますが、まだ基礎分泌は保たれていて早朝空腹時血糖値は、110mg/dl未満で正常範囲を保つことがほとんどです。
食後高血糖の段階になると、高血糖そのものが膵臓のβ細胞を障害します。食後高血糖が180mgを超えてくると、β細胞への直接のダメージでインスリン分泌不足を悪化させ、また体細胞のインスリン抵抗性も増してきて、糖毒と呼ばれる悪循環を生じます。
食後高血糖が数年間続くと、膵臓は徐々に疲弊していき、インスリン追加分泌の不足に加えて、インスリン基礎分泌不足となり、とうとう早朝空腹時血糖値が高値となるのです。
空腹時血糖値が126mg/dl以上、随時血糖値が200mg/dl以上で糖尿病型と診断されます。
糖毒状態が1日の中でも長時間続くようになれば、急速に糖尿病が悪化していきます。
糖尿病は、インスリン分泌不足とインスリン抵抗性が合わさって発症しますが、日本人は、インスリン分泌不足が主で、欧米人は、インスリン抵抗性が主とされています。インスリン分泌不足とインスリン抵抗性を合わせて、インスリン作用不足と言います。
インスリン分泌不足が主の場合、糖尿病と診断された時点でインスリンを作っている膵臓のランゲルハンス島のβ細胞の1〜2割が壊れていて、3〜4割が疲弊していて、健常なのは、残りの半分くらいと考えられます。
一般に、糖尿病が治らないと言われるのは、既に壊れてしまったβ細胞は、元に戻らないと言う意味です。
しかし、糖質制限食を実践して、膵臓が充分休養できれば、疲弊していたβ細胞が、正常に回復することが期待できます。
実際、入院時の空腹時血糖値が200mg近かった方が、糖質制限食実践数日で、110mgを切ってくることもあります。
食後高血糖の期間・年数が長いほど、β細胞がダメージを受けている割合が徐々に増えていき、ダメージが大きい細胞は、回復しにくくなっていくということになります。
次にインスリン抵抗性が主の糖尿病を考えてみます。
この場合、インスリン分泌能力は保たれていることが多いのです。日本人でもこのタイプが少し増えてきています。
例えば、肥満や脂肪肝がありインスリン抵抗性が高まれば、インスリンは分泌されていても、糖尿病を発症することがあります。このとき何らかの方法で肥満や脂肪肝が改善すればインスリン抵抗性も減少します。
そうすると、適量のインスリンで筋肉細胞や脂肪細胞内にブドウ糖を取り込むことが可能となり、インスリン分泌不足はないので血糖値は正常化し、糖尿病が治ることになります。
治るという言い方に語弊があるなら、インスリン作用不足が改善し健常のパターンに戻るということです。
実際、そういう患者さんを数名経験しました。
例えば、空腹時血糖値218mg/dl、HbA1c11.7%、163cm、72kgだった人が、内服薬なしで糖質制限食を1年続けて、60kgと肥満が解消し、HbA1cは5%前後で保ち、糖質を普通に摂取しても食後2時間血糖値が140mg/dl未満となりました。勿論空腹時血糖値も正常範囲です。
血液検査のデータでは、診断基準上は正常人としかいいようがありませんので、糖尿病のレッテルも消えました。ヾ(゜▽゜)
現段階なら、この患者さんが糖尿病専門医を受診して、いろいろ血液検査をされたとしても「糖尿病ではありません。診断基準からみて正常です。」という診断となるでしょう。
江部康二の場合は、インスリン分泌不足が主でインスリン抵抗性が従の糖尿病でして、スーパー 糖質制限食を続けているかぎりは正常人ですが、糖質を摂取すれば残念ながら食後時間血糖値は200mgを超えて、立派な糖尿病です。
β細胞が既に1〜2割壊れていて、決して治らないパターンですね(×_×)
結論です。
「インスリン抵抗性が主の糖尿病なら、抵抗性が改善すれば、糖代謝が正常人のパターンに戻る人もまれにいる。」ということですね。
江部康二
昨夜は、比較的涼しかったです。今朝は、蝉の声で午前6時半に目が覚めました。
今日は、江部診療所を休診にして、午後から第33回日本産婦人科栄養代謝研究会で1時間の特別講演「栄養・代謝と糖質制限食」をするため、金沢に向かいます。
医師向けの講演なのでやや緊張してますが、とても楽しみでもあります。 (^_^)
さて、よくある質問の一つに「糖尿病は治るのでしょうか?治らないのでしょうか?」というのがあります。
一般には、「一旦糖尿病になったら決して治らない。」というのが定説ですが、本当のところはどうなのでしょう。
それではまず、どのようにして糖尿病が発症するのかを考えてみます。
日本人の糖尿病発症は、食後高血糖が数年間続いているのを見逃しているうちに、遂に空腹時血糖値が上昇してきて、健康診断で発見されたというパターンが多いです。
即ち、当初は食後高血糖にならないように、膵臓のβ細胞がインスリン追加分泌を頑張って沢山出し続けていくのですが、ある日とうとう追いつかなくなってきて、食後高血糖の段階に至ります。
この段階では、インスリン追加分泌の軽度の不足があり、食後2時間値が140〜199mgの境界型レベルになりますが、まだ基礎分泌は保たれていて早朝空腹時血糖値は、110mg/dl未満で正常範囲を保つことがほとんどです。
食後高血糖の段階になると、高血糖そのものが膵臓のβ細胞を障害します。食後高血糖が180mgを超えてくると、β細胞への直接のダメージでインスリン分泌不足を悪化させ、また体細胞のインスリン抵抗性も増してきて、糖毒と呼ばれる悪循環を生じます。
食後高血糖が数年間続くと、膵臓は徐々に疲弊していき、インスリン追加分泌の不足に加えて、インスリン基礎分泌不足となり、とうとう早朝空腹時血糖値が高値となるのです。
空腹時血糖値が126mg/dl以上、随時血糖値が200mg/dl以上で糖尿病型と診断されます。
糖毒状態が1日の中でも長時間続くようになれば、急速に糖尿病が悪化していきます。
糖尿病は、インスリン分泌不足とインスリン抵抗性が合わさって発症しますが、日本人は、インスリン分泌不足が主で、欧米人は、インスリン抵抗性が主とされています。インスリン分泌不足とインスリン抵抗性を合わせて、インスリン作用不足と言います。
インスリン分泌不足が主の場合、糖尿病と診断された時点でインスリンを作っている膵臓のランゲルハンス島のβ細胞の1〜2割が壊れていて、3〜4割が疲弊していて、健常なのは、残りの半分くらいと考えられます。
一般に、糖尿病が治らないと言われるのは、既に壊れてしまったβ細胞は、元に戻らないと言う意味です。
しかし、糖質制限食を実践して、膵臓が充分休養できれば、疲弊していたβ細胞が、正常に回復することが期待できます。
実際、入院時の空腹時血糖値が200mg近かった方が、糖質制限食実践数日で、110mgを切ってくることもあります。
食後高血糖の期間・年数が長いほど、β細胞がダメージを受けている割合が徐々に増えていき、ダメージが大きい細胞は、回復しにくくなっていくということになります。
次にインスリン抵抗性が主の糖尿病を考えてみます。
この場合、インスリン分泌能力は保たれていることが多いのです。日本人でもこのタイプが少し増えてきています。
例えば、肥満や脂肪肝がありインスリン抵抗性が高まれば、インスリンは分泌されていても、糖尿病を発症することがあります。このとき何らかの方法で肥満や脂肪肝が改善すればインスリン抵抗性も減少します。
そうすると、適量のインスリンで筋肉細胞や脂肪細胞内にブドウ糖を取り込むことが可能となり、インスリン分泌不足はないので血糖値は正常化し、糖尿病が治ることになります。
治るという言い方に語弊があるなら、インスリン作用不足が改善し健常のパターンに戻るということです。
実際、そういう患者さんを数名経験しました。
例えば、空腹時血糖値218mg/dl、HbA1c11.7%、163cm、72kgだった人が、内服薬なしで糖質制限食を1年続けて、60kgと肥満が解消し、HbA1cは5%前後で保ち、糖質を普通に摂取しても食後2時間血糖値が140mg/dl未満となりました。勿論空腹時血糖値も正常範囲です。
血液検査のデータでは、診断基準上は正常人としかいいようがありませんので、糖尿病のレッテルも消えました。ヾ(゜▽゜)
現段階なら、この患者さんが糖尿病専門医を受診して、いろいろ血液検査をされたとしても「糖尿病ではありません。診断基準からみて正常です。」という診断となるでしょう。
江部康二の場合は、インスリン分泌不足が主でインスリン抵抗性が従の糖尿病でして、スーパー 糖質制限食を続けているかぎりは正常人ですが、糖質を摂取すれば残念ながら食後時間血糖値は200mgを超えて、立派な糖尿病です。
β細胞が既に1〜2割壊れていて、決して治らないパターンですね(×_×)
結論です。
「インスリン抵抗性が主の糖尿病なら、抵抗性が改善すれば、糖代謝が正常人のパターンに戻る人もまれにいる。」ということですね。
江部康二
戻る場合もありますから、
また戻れなくても、薬と注射が不要で血糖値コントロールが、今のところ、どの方法より「手軽に」厳格に、β細胞の状態を改善できますから 素晴らしい食事療法ですよね!
専門家は、β細胞が減ったら何故、分泌が遅延するのかを追究するべきですね!
また戻れなくても、薬と注射が不要で血糖値コントロールが、今のところ、どの方法より「手軽に」厳格に、β細胞の状態を改善できますから 素晴らしい食事療法ですよね!
専門家は、β細胞が減ったら何故、分泌が遅延するのかを追究するべきですね!
2009/07/31(Fri) 13:03 | URL | 哲学者 | 【編集】
心優しい回答有難うございます。今先生のご飯の本の巻末にある写真を見て心優しきは顔ににじみ出るものだなぁ!と一人納得しております。実は10日ほど前の負荷試験報告書が来ました。血糖 前 211 30分 322 60分 420 120分 457 インスリン 前 5、7 30分 4、0 60分 6、5 120分 7、9 となっていました。このまま主食抜き療法を続けていくと朝一錠のアマリール無しの生活も可能でしょうか?それともこの数値ではインスリン分泌は少な過ぎるのでしょうか?今から書店に行き先生の過去に出された書籍を調べて購入します。本嫌いな私が初めて活字に夢中になったのはこのブログからです。有難うございます。先生のブログ更新が何より楽しみな英吉より。
2009/07/31(Fri) 14:24 | URL | 英吉 | 【編集】
ブログいつも読ませてもらっています。
質問させてください。
追加分泌が遅れるのは、β細胞が疲弊か壊れているということでしょうか。それとも抵抗性でしょうか。
私のDrは専門的なことを聞くと嫌がられます。
質問させてください。
追加分泌が遅れるのは、β細胞が疲弊か壊れているということでしょうか。それとも抵抗性でしょうか。
私のDrは専門的なことを聞くと嫌がられます。
2009/07/31(Fri) 17:29 | URL | ともこ | 【編集】
江部先生
軽症でインスリン分泌能力がある程度残っているのなら、直る可能性があると理解しています。勇気つけられました。もう少し糖質制限食でがんばります。
先生の1000人治療のデーターを見たいですが、このブログの新人ですので、どこに掲載されているのか教えていただければ幸いです。
よろしくお願いします。
軽症でインスリン分泌能力がある程度残っているのなら、直る可能性があると理解しています。勇気つけられました。もう少し糖質制限食でがんばります。
先生の1000人治療のデーターを見たいですが、このブログの新人ですので、どこに掲載されているのか教えていただければ幸いです。
よろしくお願いします。
英吉さん。
10日前の負荷試験の時点では、空腹時血糖値も200mgを超えて、
ほぼ一日中糖毒状態です。
今回の検査で空腹時血糖値120mgと改善してますので
糖毒状態が急速によくなり、食後血糖値も改善します。
そうなれば疲弊していたβ細胞が回復する可能性は高いですよ。
10日前の負荷試験の時点では、空腹時血糖値も200mgを超えて、
ほぼ一日中糖毒状態です。
今回の検査で空腹時血糖値120mgと改善してますので
糖毒状態が急速によくなり、食後血糖値も改善します。
そうなれば疲弊していたβ細胞が回復する可能性は高いですよ。
2009/07/31(Fri) 21:40 | URL | 江部康二 | 【編集】
ともこさん。
先天的にインスリン追加分泌第一相が欠落或いは機能不全のある人がいます。
また、そういうタイプの人が日常的に糖質を摂取して、インスリン追加分泌を多量に続けていると
疲弊して分泌がいよいよ不足し糖尿病を発症します。
この場合インスリン抵抗性は関係ありません。
2007年10月13日 (土) のブログ「基礎分泌のインスリンと追加分泌のインスリン 」
2007年10月14日 (日) のブログ「なぜ糖尿病になるのか?」
2008年09月01日 (月) のブログ「インスリン分泌能の回復」をご参照下さい。
先天的にインスリン追加分泌第一相が欠落或いは機能不全のある人がいます。
また、そういうタイプの人が日常的に糖質を摂取して、インスリン追加分泌を多量に続けていると
疲弊して分泌がいよいよ不足し糖尿病を発症します。
この場合インスリン抵抗性は関係ありません。
2007年10月13日 (土) のブログ「基礎分泌のインスリンと追加分泌のインスリン 」
2007年10月14日 (日) のブログ「なぜ糖尿病になるのか?」
2008年09月01日 (月) のブログ「インスリン分泌能の回復」をご参照下さい。
2009/07/31(Fri) 21:58 | URL | 江部康二 | 【編集】
崔 金燕 さん。
個別のカルテには1000人のデータはありますが、
全てまとめているわけではありません。
個別のケースを時々、患者さんの許可を得てブログにアップしています。
2009年の日本糖尿病学会で東海大学との共同研究を発表しましたが、
データはブログにはアップしてありません。
個別のカルテには1000人のデータはありますが、
全てまとめているわけではありません。
個別のケースを時々、患者さんの許可を得てブログにアップしています。
2009年の日本糖尿病学会で東海大学との共同研究を発表しましたが、
データはブログにはアップしてありません。
2009/07/31(Fri) 22:04 | URL | 江部康二 | 【編集】
先日の検査で初めてLDが310と高値になっていました。ASTは21,ALTは15でした。糖質制限と何か関係があるのでしょうか教えて頂けたら幸いです。
2009/08/01(Sat) 12:59 | URL | 佐藤 | 【編集】
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2009/08/01(Sat) 13:41 | | | 【編集】
佐藤さん。
LDHは糖質制限食とは基本的に無関係です。
別の要因と考えられます。
LDHは糖質制限食とは基本的に無関係です。
別の要因と考えられます。
2009/08/01(Sat) 17:42 | URL | 江部康二 | 【編集】
初めまして。3ヶ月前低血糖症と診断され治療中です。先生の本と出会い糖制限食をはじめ現在はスーパー糖制限食でかなり改善されてきました。有難うございます!お聞きしたいのですが、穀物は粉にすると血糖値が上がるとありましたが、野菜も(たとえば枝豆など)フードプロセッサーで(繊維ごと)ドロドロにしてスープで食べると、粒状で食べるより血糖は上がるのでしょうか?
初歩的な質問ですみません。
よろしくお願いいたします。
初歩的な質問ですみません。
よろしくお願いいたします。
2009/08/02(Sun) 04:24 | URL | kika | 【編集】
kikaさん。
精製された炭水化物は、食物繊維がかなり除かれているので、未精製のものに比し血糖値を上げやすいです。例えば白米と玄米の違いですね。
一方、野菜をフードプロセッサーにかけても、繊維が除かれるわけではないので、大丈夫と思います。また野菜に含まれる糖質は穀物に含まれる糖質に比し、大幅に少ないです。
精製された炭水化物は、食物繊維がかなり除かれているので、未精製のものに比し血糖値を上げやすいです。例えば白米と玄米の違いですね。
一方、野菜をフードプロセッサーにかけても、繊維が除かれるわけではないので、大丈夫と思います。また野菜に含まれる糖質は穀物に含まれる糖質に比し、大幅に少ないです。
2009/08/02(Sun) 08:45 | URL | 江部康二 | 【編集】
江部先生
早速の御回答をありがとうございます!
スーパー糖質制限食を始めてから靄がかかっていた思考がはっきりしてきました。レシピ集から色々作っては食を楽しんでいます。
これからも更新たのしみにしております! kika
早速の御回答をありがとうございます!
スーパー糖質制限食を始めてから靄がかかっていた思考がはっきりしてきました。レシピ集から色々作っては食を楽しんでいます。
これからも更新たのしみにしております! kika
2009/08/02(Sun) 19:33 | URL | kika | 【編集】
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