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「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」  著者 宮本輝 江部康二
こんにちは。

お久しぶりです。28日、夜に信州八ヶ岳山麓・富士見高原から無事帰京しました。夜は合宿最後の宴会でしたので、ブログ更新できませんでした。o(_ _)o

富士見高原は標高1250m、夜は寒いくらいで長袖が必要でした。曇りがちで雨もありましたが、結局4日間を通して毎日テニスができました。 (^_^)

梅雨だというのに、自分でも運がいい方だと思います。28回のテニス合宿で、全くテニスができなかったことは過去一回もありません・・・。

さて、今日は、高雄病院で新刊本に向けての写真撮影でした。

しばらく前、全く今までとは別の切り口の、新しい本が8月に発売されるとブログで書きましたが、いよいよ8月10日に発売になります。

「我ら糖尿人、元気なのには理由(ワケ)がある。」 現代病を治す糖質制限食
著者 宮本輝 江部康二  東洋経済新報社

何と、あの太宰賞・芥川賞作家の宮本輝先生との対談本なのです。

東洋経済新報社もえらく力をいれて頂いていて、宮本輝先生と江部康二の写真を本の写真と並べて、新聞広告をうってくれるという
破格の扱いです。嬉しい限りです。(^-^)v(^-^)v 

アマゾンでもう予約できると思います。¥1500円+消費税ですので、送料は無料です。

糖尿人作家・宮本輝先生と糖尿人医師・江部康二が、それぞれの体験談を始めとして自由闊達に喋ってます。

糖質制限食糖尿病だけの話題にとどまらず、癌などそれ以外の病気、医療問題、医療崩壊、人類の食生活の歴史、ブドウ糖スパイク、糖質制限食の本質・可能性・・・

とても幅広い視点からの対談本になり、必ずや皆さんのお役に立てると自負しています。これもひとえに、宮本輝先生の英知・経験・直感・鋭い質問のお陰と感謝しております。

ブログ読者の皆様、是非ご一読のほど、よろしくお願い申し上げます。

以下は、長文ですが、

「我ら糖尿人、元気なのには理由(ワケ)がある。」 東洋経済新報社

の「あとがき」です。

あとがき  「常識の壁を越えて」  江部康二

宮本輝先生が初めて糖質制限食の情報に触れられたとき、妄言・戯言と思われたという。無理もないことである。実は私も兄、江部洋一郎が1999年に高雄病院に初めて糖質制限食を導入したとき、非常識・荒唐無稽でとんでもない代物と無視していた。私だけでなく3人いる管理栄養士も同様の対応であった。常識の壁というものは高く厚い。「脂肪悪玉説」、「カロリー至上主義」、「脳のエネルギー源はブドウ糖だけ」といった従来の常識にとらわれていた間は、糖質制限食を受け入れて勉強する気には到底ならなかったのである。2001年に私の糖尿病患者さんが血糖値560mg/dl、HbA1c14.5%という重症で入院され、通常のカロリー制限食で玄米を主食とし、7日間きっちり治療したが食後血糖値は400mgをきることはなかった。困り果てて糖質制限食を導入したところ、食後血糖値は180mgを超えることはなくなり、2週間後には入院時265mgあった空腹時血糖値が131mgに改善した。退院して初診から3ヶ月後にはHbA1c6.2%となった。この間内服薬もインスリン注射もまったくなしである。この糖質制限食第一号患者さんを経験した後は、目から鱗が落ちた思いで、徹底的に糖質制限食を研究することになった。

私の勤務する高雄病院は漢方治療を主としているユニークな病院である。1984年からは東洋医学と西洋医学を含めて薬物療法に頼るだけでなく、食事療法も重要と考えて給食に「玄米魚菜食」を導入した。食事療法に興味はあったがこの頃は理論的に裏付けがあったというよりは、先人の経験的な知識に頼っていた。また日本人が本来食べていた伝統的な食事はどんなものだったかを意識していた。 漢方治療の病院なので、難病や膠原病、腎不全など通常の西洋医学的治療では治りにくい様々な病気の患者さんが全国から来院される。この頃は、基本的に全ての病気に玄米魚菜食を推奨していた。

上述の如く2001年に糖質制限食の研究を開始し、その後2002年に自分自身が糖尿病と発覚してから、さらに徹底的に勉強した。実は家族歴として両親が糖尿病である。父は77歳の時、右大腿切断術を行い、80歳の時心筋梗塞・肺炎で永眠した。糖質制限食理論にもう10年早く巡り会えていればという思いがある。母親も20年来糖尿病であるが、現在85才で完全自立の一人暮らしである。2002年から緩い糖質制限食を実践していたが、2007年11月、HbA1c7.0%で、尿中微量アルブミン299(正常30以下)と上昇したので、糖質制限食をより厳しくした。その結果HbA1cは改善していき、だいたい、6・0%前後で推移している。2009年現在、HbA1c6.1%程度で、尿中微量アルブミンは33.3まで改善した。父は糖尿病合併症のオンパレードであったが、母は何とか糖質制限食が間に合ったのである。

糖質制限食の研究を重ね、海外文献を集めていく過程で、上述の「脂肪悪玉説」、「カロリー至上主義」、「脳のエネルギー源はブドウ糖だけ」は根拠のない神話に過ぎず、明確に間違いであるという認識を得た。例えば米国医師会雑誌(JAMA)2006年2月8日号の論文で、5万人の閉経女性を対照群をとって8年間追跡した結果、脂肪を総摂取カロリー比20%に制限しても心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクは全く減少しないことが確認された。さらにニューイングランド・ジャーナル2008年7月17日号に、「322人の成人を2年間追跡して、カロリー制限ありの脂肪制限食とカロリー制限なしの糖質制限食の効果を比較検討した結果、糖質制限食が体重を減少させ、HDL-Cを増加させた。」という報告がなされた。また医学の教科書「ハーパー・生化学」(原著27版)には、脳が脂肪酸の代謝産物のケトン体をエネルギー源とすることが明記してある。常識の壁とは恐ろしいもので、これらの明確な証拠があっても、100人中99人以上の医師.栄養士が「脂肪悪玉説」、「カロリー至上主義」、「脳のエネルギー源はブドウ糖だけ」という無根拠な神話をいまだに信じているのが現状である。
これらの文献や糖質制限食の画期的な治療効果を目の当たりにして、「本来の日本型の食生活」という以前に「本来の人類の食生活」とは何だったのかという根源的な疑問が湧いてきた。数年間、様々な本や資料を読み、友人・知人にも尋ね、試行錯誤を繰り返し、自分なりの結論を出すことができた。

すなわち、人類の食生活は「農耕が始まる前」「農耕以後」「精製炭水化物以後」の3つに分けることができる。この3段階の変化が人体の代謝において極めて重要な意味をもっている。その鍵となるのが血糖値の変化である。

人類の歴史が400万年として、農耕が始まる前の399万年間は食生活の中心は狩猟や採取であり、穀物はないので人類皆糖質制限食である。従って血糖値の上下動がほとんどない。例えば空腹時血糖値が100mg/dl程度と仮定して、食後の血糖値はせいぜい110~120mg/dlくらいで、血糖値上昇の幅は10~20mgていどの少なさである。これならインスリンの追加分泌はほとんど必要ない。

農耕が始まったのが約1万年前で、世界に定着したのが約4000年前である。糖質・脂質・タンパク質の三大栄養素のなかで血糖値を急峻に上昇させるのは糖質だけである。穀物(糖質)を摂取すれば、空腹時血糖値が100mgとして、食後血糖値は140mgていどまで上昇し、インスリンが大量に追加分泌される。血糖値上昇の幅は40mgもある。農耕以後の4000年間は、人類の膵臓のβ細胞はそれ以前に比べて毎日10倍以上働き続けなくてはならなくなった。

さらに18世紀に欧米で小麦の精製技術が発明され、白いパンが登場した。日本では江戸中期に白米の習慣が定着した。そしてここ200年~300年間、世界中で精製された炭水化物が日常的に摂取されるようになった。精製された炭水化物は未精製のものに比して、さらに急峻に血糖値を上昇させる。すなわち、空腹時血糖値が100mgとして、食後血糖値は160~170mgまで上昇する。血糖値上昇の幅は60~70mgもあります。これほど急激に血糖値を上昇させる食品は人類史上類のない特殊なものである。

追加分泌のインスリンは未精製穀物摂取時に比しさらに大量に分泌せざるを得ない。インスリンを大量に分泌し続けて膵臓が疲弊すれば糖尿病になる。

人体にはホメオスタシス(恒常性)というものがあり、できるだけ変化が少なく体内を一定の状態に保とうとする。食後血糖値の変化をみたとき、糖質制限食だと恒常性が保たれ、玄米や全粒粉のパンだとボチボチで、白米や白パンだとかなり乱れることがわかる。

糖尿病の人が糖質を摂取すると、未精製の穀物でさえも、食後血糖値は軽く200mgを超える。この急峻な食後高血糖のことを「ブドウ糖スパイク」とよび、糖尿病の人で動脈硬化が生じる元凶となる。正常の人でも精製炭水化物を食べると生じる食後血糖値が160mg、170mgという状態を、私は「ブドウ糖ミニスパイク」と名付けた。このミニスパイクが生体の恒常性をかく乱してアレルギー疾患を悪化させたり、将来の生活習慣病の元となる。過去世界中にいろんな食事療法があったが、経験的に有効とされているものは、玄米食など基本的にミニスパイクが少ないという点で一致している。
宮本輝先生が私の過去ブログを全てご覧になり糖質制限食を実践され、メールでいろいろご質問頂きそれに私が答えるという形で数ヶ月経過したとき、実に鋭いご指摘を受けた。先生は作家の直感という表現で糖質制限食が糖尿病や肥満だけではなく、人体においてより重要な根源的な意味合いを持っている可能性に言及された。この指摘は7年間糖質制限食を研究・実践・熟成して辿り着いた私なりの最新の結論、上述の「人類の食生活3段階と血糖値の関係」とほぼ同様であった。糖質制限食歴わずか数ヶ月の宮本先生に追いつかれて正直いって仰天し、尊敬の念を禁じ得なかった。そして是非とも対談したいという思いが沸々と湧き上がってきたのである。

「ブドウ糖スパイク」「ブドウ糖ミニスパイク」をキーワードに人類の食生活と健康を考えていくと自然に糖質制限食にいきつく。糖質制限食の効果は、身体の代謝機能全般・血流を改善するものであり、自然治癒力そのものを高める。従って糖尿病だけでなく、メタボリック・シンドローム系の他の病気(肥満・高血圧・高コレステロール症・動脈硬化)、アレルギー疾患などほとんど全ての病気にも、効果が期待できる。

2005年に「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」を上梓して、4年の月日が過ぎた。14刷を重ねるベストセラーとなり世に「糖質制限食」を広めるきっかけになったと自負している。高雄病院には北海道から九州まで糖尿病患者さんが入院してこられるが、当初は「主治医に怒られたので内緒で来ました。」というパターンがほとんどであった。しかしここ1年は、紹介状を持って来られる患者さんもあるようになった。さらに医学雑誌「メディカル朝日」2008年12月号に糖質制限食に対して好意的な記事が載り、私の本も紹介された。また医学雑誌「治療」2009年4月号に、私が糖質制限食の論文を執筆した。欧米では広がり始めている糖質制限食も、日本では全くの夜明け前であったがそろそろ医学界でも日の出という状況になりつつある。

このような時期に宮本輝先生と対談できたのは糖質制限食普及に向けて実にタイムリーであり、喜ばしい限りである。先生の鋭い質問にたじたじとなりながらも、人類の食生活・歴史・進化、人体の生理・代謝・栄養、糖質制限食の本質的な意味などについておおいに語り合えたと思う。

本書が読者の皆さんの常識の壁をうちやぶり、人体の真実にふれる助けとなれば幸甚である。


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
Re: 私の進むべき道は
うめこさん。

2009年03月08日 (日) のブログ<糖質制限食>VS<糖質たっぷりカロリー制限食>
をご参照ください。
2009/07/30(Thu) 07:45 | URL | 江部康二 | 【編集
糖質制限食で
新本が楽しみです。宮本輝先生も糖尿人ですか…。本当に身近な病気ですよね。
この糖質制限食を知ってからは、本当に血糖値コントロールができ、最近のHbA1Cの値が5.0でした!

糖質制限食で脳の機能は別に変わりありませんし、糖新生をちゃんとしていますね。

常識の壁を越えるのは、確かに難しいでしょうが、少しずつでも前進し、啓蒙ですね!

場合によっては、糖代謝の機能も正常に戻ることも出来る糖質制限食は凄いの一言です。糖質制限食という人類本来のの食に戻っただけですから。糖質過多が異常だと後に振り返る時代は必ず来ますね!肥満から、生活習慣病から、慢性疾患のほとんどから解放されれば、病気の8割くらいは無くなり、本当に難病とか、緊急オペとか緊急に対応すべき症状に対応する余裕が出来ますよね。医療費も大いに削減され、医師不足からも解消されますね。
2009/07/30(Thu) 08:22 | URL | 哲学者 | 【編集
LDL-Cの値
こんにちは
早々アマゾンで予約しました。
8月8日となっていましたが到着が楽しみです。

最近のデータは HbA1C 5.6 血糖値(空腹) 102
と順調で喜んで居ます。
ただ LDL-C が160と少し高めです。
個人差が有るとのことですが、食対策を
再度見直すべきか考えています。
2009/07/30(Thu) 08:30 | URL | 大阪のシンドバッド | 【編集
江部先生に感謝
江部先生、はじめまして。
長野市の薬局にて、小売部門で登録販売者として勤務しております、42歳、男、はると申します。

先生の新刊本の案内や、あとがきを読ませていただいて、あまりの感動にコメントを入れずにはいられませんでした。

私も10年前に、ストレスと暴飲暴食で、足の指の痺れ、極度の口の渇き、夜中の頻尿、目のかすみに悩まされ、病院に行ったときは、A1cが12を越えていました。

164cmで84kgもありましたので、とにかく減量し、薬を服用しておりましたが、A1cが7~8ぐらいまでしか下がらず、絶望を感じておりました。

わらをもつかむ思いで、ネットで検索しておりましたら、江部先生のブログに出会うことができました。
本も二冊買わせていただいてます。

それまで、炭水化物を少なくするという食事はなんとなくしていました。
MY血糖測定器で測ると、やはり炭水化物を食べた時の上がり方がすごいということはわかっていました。
でも理屈がわからなかったので、やはりカロリー制限なのかなぁ、という感じで中途半端でした。

でも先生のブログと本のおかげで、スーパー糖質制限食に近い食事にしています。

今現在、体重は69kg、空腹時血糖は120ぐらい、A1cは最近測ってないのでわかりませんが。
半年前は空腹時血糖が200を越えていましたので、かなり改善されていると思います。

二年前から、ハーフ中心ですが、マラソンの大会にも出ています。
毎回必ず足の痙攣に悩まされていましたが、先日のハーフマラソンでは痙攣が全く起きずに完走できました。糖質制限の結果ですね。

今、店頭にて健康相談をよく受けておりますが、糖尿の方、ダイエットの方には、胸をはって糖質制限のお話と、江部先生のお話をさせていただいております。

私も微力ながら、自分のできる範囲で、常識の壁を破るお手伝いを、一生していく決意です。

これからも、江部先生のブログと本を根本に、勉強させていただきます。

長々とすみませんでした。
いつか必ず、先生の講演会に参加させていただきます。
ありがとうございました。
2009/07/30(Thu) 11:27 | URL | はる | 【編集
Re: 糖質制限食で
哲学者さん。

ありがとうございます。
私も同感です。

それにしてもHbA1Cの値が5.0%とは
すごいですね。
2009/07/30(Thu) 16:44 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: 江部先生に感謝
はるさん。

血糖値の改善、減量成功、おめでとうございます。

本のご購入ありがとうございます。

ご自分が成功しておられるので、健康指導も説得力がありますね。
これからも美味しく楽しく糖質制限食をお続けください。
2009/07/30(Thu) 16:47 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: LDL-Cの値
大阪のシンドバットさん。

新刊のご予約、ありがとうございます。

HbA1cと血糖値の改善も良かったですね。

海外の文献で「糖質制限食でLDL-コレステロール値も減少する」としているものもあります。
スーパー糖質制限食で経過をみられてよいと思いますよ。
2009/07/30(Thu) 16:53 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: AGE(終末糖化産物)について
missフェローさん。

糖尿病でコントロールが悪くて、
高血糖により体内で産生されたAGEは人体に有害であることは確立されています。
動脈硬化など合併症の大きな要因です。

一方食物由来のAGEが人体に有害かどうか、研究者の間で今だもって論争中です。
まだよくわからないところがあります。

近日中に私自身の血中AGE濃度を調べてみようと思います。
その後AGEのことは記事にする予定です。
2009/08/02(Sun) 18:48 | URL | 江部康二 | 【編集
早い対応、ありがとうございます。
よろしくお願いします。

宮本先生との対談本、楽しみです。
宮本先生の小説の中に、糖尿病のお父さんが、食事に気をつけたり、歩いたりする場面があります。
糖質制限食のこと、お教えしたいなぁ~なんて思いながら、読んでいました。
なんて、素敵な企画でしょう!
ホントに楽しみです。
2009/08/03(Mon) 22:09 | URL | missフェロー | 【編集
Re: 是々非々 秘密の感想です
keyeyeさん。

本の感想ありがとうございます。
医療崩壊の項目は本筋とは外れますが
危機感にかられて是非とも入れたかったのです。
それぐらい世間で思っている以上に医療崩壊はすすんでいますので
少しでも皆さんに実態を知って頂きたいと思いました。
2009/08/08(Sat) 18:28 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: タイトルなし
keyeyeさん。

了解です。
いろんなお医者さんがいます。
心中お察しいたします。
2009/08/09(Sun) 12:31 | URL | 江部康二 | 【編集
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