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糖質制限食とメトホルミンとHbA1c
おはようございます。

7月25日から28日まで信州八ヶ岳山麓・富士見高原でテニス合宿です。標高1250m、とっても涼しいですよ。 (^_^)

さて今回は、海外赴任中の 糖質制限万歳!さんから、薬の中止とHbA1cの変動について、コメント・質問をいただきました。

「09/07/23 糖質制限万歳!
HbA1Cの上下変動
江部先生、ブログ、ご本いつも感銘しつつ拝見しています。
糖質制限を一貫して実践中に HbA1Cが低下傾向を示す以外に、上下変動やバウンドがある場合があるのか伺いたくコメントさせていただきます。
私は海外赴任中の50歳で数年来、糖尿を患っていおり、1-4月の時点ではHbA1Cが7.5前後ありました。 5月半ばより本サイトと、日本で購入した先生のご本をもとに3食とも主食抜きのスーパー糖質制限を実践しています。当初は脱力感があったり、空腹感が強かったり苦労しましたが 1ヶ月を過ぎたあたりからご飯やパンへの執着が減り、糖質制限食に違和感がなくなって、その後は楽に実践ができています。
その結果、1ヶ月を経た時点での血液検査でHbA1Cが7.0と 0.5ポイント程下がりました。HbA1Cは2,3ヶ月の平均といいますから、スポットで見ると実際はもっと改善があったのではと期待しました。が、同じ食事内容を実践しているのにもかかわらず、そのまた1ヶ月後の検査では7.5に再び上昇し、この結果をどう解釈すべきか当惑しています。その間2ヶ月半で、体重は3kg減り(172cm、64→61Kg)、ウエストも3cm縮み、空腹時血糖値は140/160→114mgに下がるなどなどと他指標は改善しているのにです。(これだけでも 大変嬉しいですが!)
素人なりに考えるに、糖質制限食と同時に薬をやめたこと( Glucophage)の影響か、または スーパー糖質制限なものの食事自体の量が増えたためか(安心して量が増えた傾向はあるかも知れない)などと思いあぐねるのですが 当地の邦人医師は 肝臓で糖がつくられるようになったのではないか、とも言います。また薬を再開すべきとも言います。一連のブログを拝見した中ではこういうケースはないようですが どのように考え、または対処したらよいものでしょうか。
よろしくお願いします。末尾ながら 先生のご活躍とさらなる糖質制限食の普及をお祈りします。」


糖質制限万歳!さん.
コメントありがとうございます。

Glucophage(塩酸メトホルミン)は日本ではメルビン、グリコランと同じ、ビグアナイド系の薬です。

ビグアナイド系薬剤は、その中の一つのフェンホルミンという薬が乳酸アシドーシス**という副作用を起こしやすかったため、一時期他の薬も含めてほとんど使われていませんでした。

しかし乳酸アシドーシスを起こしにくい塩酸メトホルミン(メルビン、グリコランなど)塩酸ブホルミン(ジベトスB、ジベトンSなど)などが近年見直されてきました。

これは、英国の大規模臨床試験(UKPDS:1998年報告)で、「塩酸メトホルミン投与により肥満のある2型糖尿病患者で死亡率を減少させた」という結果がでたことによる影響が大きいと思います。

ビグアナイド剤の作用は、肝臓での糖新生の抑制が主で、その他消化管からの糖吸収の抑制、末梢組織でのインスリン抵抗性の改善などがあります。

従ってSU剤とは違って、膵臓に直接作用するのではなく、膵外作用で血糖値を下げますので、膵臓には優しい薬といえます。
また体重増加を来しにくいのも長所ですね。 (^_^)

単独使用では、低血糖を起こす危険は極めて低いです。糖質制限食的にも、問題の少ない良い薬です。

しかし、肝腎の効きがそれほど良くないのです。理論的にはいい感じなのになぜでしょう?

実は、欧米における1日使用量は1500~2000mgなのですが、日本では1日、750mg以下となっているのです。

私も、膵臓に負担をかけない糖質制限食にぴったりの薬ということで、大勢の患者さんに処方してみたのですが、量が少なすぎるためなのか、「効いた!」という印象がやや薄いのです。

それで現在、日本内分泌学会などが、欧米並の1日量2000mgまで許可するように、厚生労働省に申請中なのです。

なお、肝障害や腎障害がある人は、やはり乳酸アシドーシスを起こしやすいので注意が必要です。また、心肺機能に障害のある人や高齢者も、腎予備力の低下がありえるので慎重投与です。上記以外の人には、副作用は少ない薬です。

糖質制限万歳! さんのHbA1cが、7.5%→7.0%→7.5%と変動したことですが、主治医の仰有る通りGlucophage休薬の影響で、一過性に肝臓の糖新生が活発となり、血糖値が上昇した可能性がありますね。

一方、糖質制限万歳! さんは、空腹時血糖値が「140/160→114mg」に改善しておられますので、
糖質制限食で膵臓が休養できて、β細胞があるていど回復し、基礎分泌インスリンがかなり出るようになってきています。

糖質制限食なら食後高血糖も生じないので、Glucophage休薬の影響が抜ければ、HbA1cも基本的に改善するはずです。次回の検査が楽しみですね。ヾ(^▽^)

次回の検査でもHbA1cがイマイチなら、Glucophage(塩酸メトホルミン)再開もありと思います。


江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
 お久しぶりです。
 自分の時間ができたので、励ましを頂こうと過去のコメントを読み返していましたところ、5月に血糖値測定器購入の質問に対して、先生はじめ複数の方からアドバイスを頂いていたことがわかりました。まだ、購入にはいたっていないのですが、大変参考になりました。遅くなりましたがお礼申し上げます。
 食あたり回復後体重は42kgまで回復しました。
2009/07/24(Fri) 15:26 | URL | 太りたいみい | 【編集
LDLコレステロール上昇
江部先生こんばんわ。いつもブログ参考にさせて頂いてます。
さて、糖質制限を始め1ヶ月が過ぎ会社で健康診断があり本日結果が出ました。
空腹時血糖値は元々正常で今回は65の低血糖の診断でした。私の場合食後高血糖と糖尿病家系が問題です。
ところで、検査結果を1年前と比較しますと

身長156
体重45.5 → 44.0
腹囲63→59
LDL 117 → 207
HDL 85 → 99
トリグリセライド38→47
尿酸値 5.4 → 7.2

血中脂質の高度異常と尿酸値上昇につき内科受診をするようにとの事でした。
また動物性蛋白質を控える様にと注意がありました。
体脂肪率は自宅の体脂肪計で22%前後です。33歳♀

1年前と比較して変わった事は食生活で、ほとんど食べなかった肉・卵・チーズを毎日摂ります。
しばらく様子をみて大丈夫でしょうか?
又は食生活の見直しが必要でしょうか?
少し心配になりアドバイスお願い致します。
長々申し訳ございません。
2009/07/24(Fri) 21:06 | URL | Key | 【編集
Re: LDLコレステロール上昇
Keyさん。

まだ1ヶ月ですので、経過をみてよいと思います。

LDL-Cや尿酸は減少する人と増加する人と個人差がありますが、
そのうち落ち着くことが多いです。
2009/07/24(Fri) 21:48 | URL | 江部康二 | 【編集
安心しました(*^^*)
江部先生、早速のアドバイスありがとうございました。
しばらく様子を見てみます。
糖質制限を始めて体調も良いですが、心にも、とても良い気がします。
以前は無性に食べたかったケーキや菓子パンに全くと言ってイイ位に関心が無くなりました。
それよりも肉&魚を体が要求します。
自分としては良い事だと思ってます。
これからも上手に糖質制限と付き合っていきたいです。
ありがとうございました。
2009/07/24(Fri) 22:15 | URL | Key | 【編集
HbA1Cの上下変動
江部先生、

お忙しい中、薬の機序など詳しいご説明ありがとうございました。(私は500mg x 2/日でした)
大いに納得いたしました。次回の検査を楽しみにします!! お元気でご活躍ください!
2009/07/25(Sat) 13:22 | URL | 糖質制限万歳! | 【編集
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