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糖質制限食の効果と長期予後
おはようございます。

糖質制限食実践者においては、血糖値HbA1c中性脂肪は速やかに改善します。
HDL-コレステロールは個人差があり、しっかり上昇する人と軽度に上昇する人がいます。

糖質制限食実践者の総コレステロール、LDLコレステロール値、尿酸値に関しては、個人差があり一定しません。

しかし、HDL-コレステロールが上昇し、中性脂肪が減少するので、真の悪玉である、小粒子LDLコレステロールや酸化LDLコレステロールは減ります。

糖質制限食の短期的効果に関しては、このように全ての指標が良い方に向かいます。

ちなみに私の場合は、2型糖尿病で2002年からスーパー糖質制限食実践中ですが、HDL-コレステロールが上昇し、中性脂肪が減少し、LDLコレステロールも少し減りました。血糖コントロールは、正常レベルです。


<江部康二の血液検査:スーパー糖質制限食7年間実践中>
2009年6月
空腹時採血血糖値93mg
HbA1c:5.3%
ケトン体:945μM/L(26~122) *糖質制限食中は生理的で正常
尿酸:3.6(3.4~7.0)
TC:238
TG:55
HDL-C:113.5
LDL-C:113
BUN:18.7(8~20)
クレアチニン:0.64(0.6~1.1)
シスタチンC:0.57(0.53~0.95)
IRI:2.2(3~15μU/ml) *インスリン基礎分泌がやや低下
NT-ProBNP:15pg/ml(125以下)
γGTP:39


高雄病院では、1999年から糖質制限食による糖尿病治療を開始しています。その結果、糖質制限食を実践する限りにおいては、99%の人が著明に血糖値が改善することを確認しています。

基本的に体重も減少し肥満が改善しますので、血圧も下がることが多いです。

それでは10年、20年後の長期的予後はどうなのでしょう?同級生の糖尿病専門医にいつも相談しているのですが、必ずこの話題がでてきます。

一つの答えは、イヌイットです。

生肉と生魚が主食という完全無欠の糖質制限食を四千年以上続けてきた民族ですが、有名なダイアベルグ博士の研究によると、心筋梗塞や脳梗塞が極めて少なかったことが報告されています。(^-^)v(^-^)v

二つ目の答えは最近流行の代謝症候群(メタボリック シンドローム)です。

一つ一つは些細な所見でも、二重・三重に重なってくると危険という警鐘です。
 
*腹囲基準:男性85cm、女性90cm以上、
①高血圧:130/85以上、
②空腹時血糖:110mg以上、
中性脂肪高値:150mg以上  HDL-コレステロール:40mg未満

具体的には、腹囲基準を満たしていて、①②③の三項目中二項目を満たせば、何もない人に比べて、将来冠動脈疾患になる確率が、約31倍にもなるとされています。

糖質制限食の実践により、代謝症候群の指標が全て改善します。
逆に言えば糖質の過剰摂取こそが代謝症候群の根本要因といえます。

ともあれ西洋医学的に現在まで明らかにされている動脈硬化の危険因子が 糖質制限食の実践により全て改善するので、長期的予後も悪かろうはずがありません。

さらに三つ目として、米国の大きな疫学的研究を2つご紹介しましょう。

<米国医師会雑誌2006年2月8日号>

米国の大規模介入試験において脂質熱量比率20%で強力に指導したグループは、対照群に比較して意外なことに心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクを下げないことが米国医師会雑誌2006年2月8日号で報告されました。総コレステロール値に関しても、両群に優位な差はありませんでした。

この研究は、5万人弱の閉経女性を対象に対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した大がかりなもので、所謂EBM(科学的根拠に基づいた医療)的にはトップランクに位置する権威あるものです。
権威ある研究により、従来の常識(脂肪悪玉説)が根底から覆ったわけですね。


<New England Journal of Medicine、2006年11月9日>
『米国の女性看護師82,802人を20年間追跡したところ、炭水化物が少なく脂肪とたんぱく質が多い食事でも、冠動脈疾患のリスクは上昇しなかった』

このような内容の研究が、New England Journal of Medicine、
2006年11月9日号にハーバード大学のグループにより報告されました。

今まで、 糖質制限食(即ち高脂肪・高タンパク食)の長期的な予後に関する本格的な研究がなかったのですが、とうとう出たという感じですね。

論文を要約すると

『1980年、米国の女性看護師82,802人に対して、質問票を使った食事調査を行い、研究を開始した。
1980年から1998年までのあいだに、2~4年間隔で食事調査を6回実施し、一人一人の低炭水化物食の度合を得点化。
2000年まで20年間の追跡調査を行ったところ、1994人が心筋梗塞などの冠動脈疾患に罹患した。
解析の結果、「低炭水化物食得点」が上位10%のグループの冠動脈疾患の発生率は、下位10%のグループの0.94倍で有意差なし。

つまり、脂肪とたんぱく質が多く炭水化物が少ない食事をしているグループでも、心臓病のリスクは上昇しなかった。
**Halton TL, et al. Low-carbohydrate-diet score and the risk of coronary heart disease in women. New England Journal of Medicine 2006;355:1991-2002.』

低炭水化物食を長期に続けた場合、心臓病リスクの上昇などの害が生じるのではないかという批判が、従来の医学界おいてありました。

今回の研究は、低炭水化物食の長期的な安全性を調べる目的で、20年間、82,802人の女性の分析が行われました。

その結果、少なくとも心臓病に関しては、高タンパク・高脂肪食の長期的安全性があるていど保証されたということになります。

このように、理論的にも短期データ的にも、長期の疫学的データでも 、糖質制限食(高タンパク・高脂肪食)の有効性と安全性が、確立されつつあるといえるでしょう。ヾ(^▽^)


江部康二

コメント
生き残りβ細胞
先生こんにちは。

私はSU薬を休薬し、メルビンとアクトスを一日二錠ずつ、コレステロールの薬、リピトールを一日一錠服用しています。

SU薬を休薬して二日目で血糖値が50~70跳ね上がりましたが、スーパー糖質制限食を実践して4週間後の現在、休薬前の数値より僅かながら下がっています。

ただ、それでも数値が安定しません。

一昨日までは空腹時(夕方)で140~150、空腹時(早朝起床時)で160~170、食後2時間で150~170くらいでしたが、なぜか今朝は起床時190、食後1時間で240もの数値が出ていました。

測定器の誤差の範囲を超えて高値が記録されるのはキモチ悪いです。(笑)もちろん人間の身体ですからばらつきが出るのは当然でしょうが、半年もすれば安定するのでしょうか。

個人差のことは理解していながらも、やはり安定してくれないと不安になります。

これまで7年間、漫然と食品交換表とカロリーコントロール、それにSU薬を中心とした治療を続けてきたから、β細胞の生き残りがあんまりいないのかなと諦めの気分になったりもします。

なにかデータがあればお示しくださると不安解消に繋がるかもしれませんので、厚かましいのですがお願いします。

来週月曜は現在通っている病院に、二ヶ月に一度の診察に行く日ですので、その結果をまたご報告します。
2009/07/07(Tue) 10:03 | URL | 飯山忍 | 【編集
1年間糖質制限を実施して、すべての検査項目が正常値になりました。江部先生には本当に感謝しております。ありがとうございます。

昨日、恐れ多くもトラックバックさせていただきました。

2009/07/07(Tue) 10:31 | URL | 糖尿おじさん | 【編集
正常化
糖尿おじさん。

全ての検査項目が正常化、おめでとうございます。
トラックバック了解です。
2009/07/07(Tue) 10:54 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: 生き残りβ細胞
飯山忍 さん。

来週の検査の時に
早朝空腹時のインスリン値を血糖値などと共に測定してみましょう。

早朝空腹時は基礎分泌のインスリンをチェックできます。
基礎分泌のインスリンがどのくらい残っているかで、β細胞のダメージの程度が推定できるので
今後の展開があるていど予測できます。

江部康二の6月のデータが
IRI:2.2(3~15μU/ml)
インスリン基礎分泌がやや低下で、数年来こんなものです。
早朝空腹時血糖値は100前後~110前後~120mg/dl前後とあるていどばらつきます。

飯山さんのインスリン基礎分泌がどのくらい残っているかがポイントですね。
2009/07/07(Tue) 11:02 | URL | 江部康二 | 【編集
有難うございます。

次回の検査時に検査をお願いしてみます。
2009/07/07(Tue) 12:22 | URL | 飯山忍 | 【編集
はじめまして。

糖尿病と糖質制限の、効果のすごさに、
大変関心があります。

糖尿病はもちろん、脂質異常症など
コレステロール系、痛風、
動脈硬化性疾患の脳・心筋梗塞などにも
リスクなく改善効果が見られることは、
よくわかりました。

しかし、日本人大多数を対象とした、
10年単位の追跡調査結果があると、
人種間の違いなども考慮でき、
信頼がおけるのですが、
そのような調査はあるのでしょうか?

さらに、腎疾患の認められる場合は、
注意した方が良いこともわかりました。
また、イヌイットの食事の、
動脈硬化、血液凝固作用における
研究も、よくわかりました。

しかし、糖尿病・血液凝固や動脈硬化などの
代謝以外でのリスクはないと
いえるのでしょうか?

イヌイットの食事は、心筋梗塞・脳梗塞が
極めて少ないですが、
同時に脳出血などの疾患が多く、
短命であるという報告も見受けられます。

また、ケトン体が産生されることによる
弊害も含め、
長期継続と加齢に伴う
他疾患のリスク・寿命への影響は
ないと考えて良いものなのでしょうか?
2009/07/09(Thu) 21:25 | URL | FUDM | 【編集
Re: No title
ペコリ さん。

血糖値の改善、良かったです。

http://www.matsui-sr.com/kettou/6-3-1.htm
の管理者は司法書士さんですね。
ご質問に関しては、事実ではありません。

糖質制限食は、農耕前の狩猟採集時代の人類の食生活です。
人類は約400万年間糖質制限食で進化してきました。
農耕が定着して、4000年間です。
総摂取カロリーの60%を糖質に依存する現代の食生活は、糖質制限食で進化・適応した人体には
極めてバランスが悪いものです。
糖質制限食こそが、人類本来の食生活、人類の健康食なのです。
2011/04/23(Sat) 08:53 | URL | ドクター江部 | 【編集
驚くべき短期結果
いつもブログ読ませていただいています。機能性低血糖症と食後高血糖で今年3月からスーパー糖質制限食をしている42歳です。

今回6月23日に健診にて採血結果が やっときました。驚くべき結果が来ましたので報告させていただきます。比較対照として半年前の12月の検査結果です。
(どちらも食後3時間値です)


      12月        6月

体重     62        50
GOT    69        23
GPT   149        21
γーGTP  243        29
BS    120        75
HDLc   58        50
LDLc  143       160
TG     71       222

血糖値改善は元より、肝機能の改善に驚愕しています。私の検査結果とは思えないくらいです。実は、20代後半より、ほとんど毎日缶ビール500を3から6本。33歳頃から
肝機能障害と脂肪肝を指摘されていました。
まず、γーGTPが正常値になる事は全くなく、いつも3ケタでした。

3月から始めたスーパー糖質制限とビールはアサヒスタイルフリー変えただけです。数十年改善しなかった脂肪肝・肝障害が、たった3ヵ月で改善しました。TGが高値で 気にはなりますが後日再検予定です。

短期制限食で血糖値改善したら アルコール辞めずに肝機能も改善^^。

とにかく、本当にうれしくて びっくりしています。先生に出会えてよかったと心から感謝しています。ありがとうございます。 

最後にご質問ですが・・・時々、付き合いで飲んだり食事しますが、食後高血糖避けるためにグルコバイとグルファスト欲しいのですが、私の病院には、アマリール・ファスチック・ベイスン・オイグルコンしかありません。  お守り代わりに ベイスンを服用してもよろしいでしょうか? 

私の主治医も驚愕した検査結果でした^^





 

2011/07/31(Sun) 11:40 | URL | norikky | 【編集
Re: 驚くべき短期結果
norikky さん。

データ改善良かったです。

グルコバイとベイスンは同種の薬です。
グルファストとファスティックも同種の薬です。

たまの糖質摂取前の内服、OKと思います。
2011/08/03(Wed) 12:41 | URL | ドクター江部 | 【編集
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