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急激なHbA1cの改善と糖尿病網膜症
こんにちは。

先ほど、高雄病院京都駅前診療所の外来を終えて、本院に戻ってきました。

さて今回はnecobabarさんから、急激なHbA1cの改善と糖尿病網膜症について、コメント・質問をいただきました。


「急激な数値の下降
こんにちは。お忙しい先生に長文申し訳ありません。私は17年位前に糖尿病を指摘されたのですが、その時は数値も軽くちょっとした食事制限ですぐ普通に戻ってしまいました。以来安心してずっと体重も管理せず、先日ついに眼科で眼の異常を発見されて専門医で検査しましたところ、合併症の網膜症が進んでいてレーザー一歩手前、HbA1cはなんと10。がけっぷちで気が付いて良かったですねと言われました。放置した自分をいくら後悔しても仕方がないのですが、これから勉強して頑張ろう!とインターネットで情報を探していて見つけたのが先生の本と糖質制限系ブログの数々でした。

本を何冊か購入してキッチンに置き、早速スーパー低糖質を厳密に実行してみました。我慢できる日は一日1食だったり、とにかく数値を戻したい一心です。糖質制限食は続けるつもりですが、根性ナシの私(ーー;)これほどきつい制限は長くはしていられないと思いますが。アマリール一日2回分処方されています。でも一食しか食べない日も多いので、薬は一日一回しか飲まない日が多いです。

その結果一ヶ月でHbA1cは10→8 空腹時血糖220→86、コレステロール、中性脂肪、クレアチニンすべて基準範囲内でした。

数値が下がってきたと喜んでいたら、そこで糖尿病眼科の先生と別の医者(親戚、専門医ではない)から言われたのが、あまり急激にHbA1cを落とすと、私のように病歴が長い者は良くない影響が出る、ということです。内分泌担当の先生は特に何もおっしゃいませんでした。病院の栄養指導の方は旧式の考えをされる方です。

少しペースを落とすべきでしょうか、それとも思いっきりやってしまっていいのでしょうか。私の場合はスタート地点の数値がすごいので早く戻したい気持ちが大きいのですが。お忙しい先生に長文の質問で申し訳ありません。
2009/07/05(Sun) 09:08 | URL | necobabar | 」


necobabarさん。
コメント・本のご購入ありがとうございます。HbA1c、空腹時血糖値の速やかな改善、よかったですね。 (^_^)


「数値が下がってきたと喜んでいたら、そこで糖尿病眼科の先生と別の医者(親戚、専門医ではない)から言われたのが、あまり急激にHbA1cを落とすと、私のように病歴が長い者は良くない影響が出る」

懸念されているのは、
「急速な血糖値の改善により網膜症の一時的な悪化や眼底出血を起こすことがある」
という従来からの定説のことですね。

確かに、インスリン注射やSU剤などにより急速に血糖値が改善した場合、改善速度が速いほど、網膜症の悪化率が高かったという論文報告がありますし、日常臨床上、糖尿病専門医の方々においては経験があることと思われます。

まあ一時的な悪化はあっても、長期的には血糖コントロールが良い方が網膜症にも良いということも報告されていますが、やはり心配ですよね。

それでは、糖質制限食によって血糖値が急速に改善した場合はどうなのでしょう?網膜症の悪化や眼底出血の心配はないのでしょうか?

実は当初、私達も糖質制限食でインスリン注射以上に速やかに血糖コントロールが良くなるので、このことを懸念していました。

1999年以来の高雄病院の経験で、糖質制限食による改善では基本的に網膜症の悪化はありませんでした。それで今は全く心配はしていないのですが、疑問は残りました。

何故?(・・?)

つまり、急速な血糖値の改善が、インスリン注射やSU剤により生じた時は、網膜症の悪化や眼底出血が起こりえるのに、 糖質制限食だともっと急速に血糖値が改善するのになぜ大丈夫なのか???

まず、最初にお断りしておきますが、インスリン注射やSU剤により急速に血糖値が改善した場合に、何故網膜症が悪化することがあるのか、医学的な原因は現在まで実は解明されていません。( ̄_ ̄|||)

それで、ここから先は、あくまでも江部康二の仮説としてお読み頂けば幸いです。即ち、まだ証明されているわけではありませんので・・・。

例えば、インスリン注射により、血糖値だけは急速に改善しますが、中性脂肪や酸化LDL、レムナントリポ蛋白といった脂質代謝やアミノ酸代謝は、基本的に改善されません。また、高インスリン血症そのものが、メタボリック・シンドロームの元凶とも言われています。

つまり、部分的に血糖値だけ下げて辻褄を合わせても、体の代謝全体は改善されていません。細小血管内や毛細血管内の血液中の成分内容も血糖以外は改善されていません。

血糖値が高値というのは勿論好ましくありませんが、人体はとりあえずその状態でそれなりの恒常性を保とうとしています。この時、血糖という部分だけ急速に下げたら全体の恒常性にかえって破綻が生じて、網膜症の悪化につながる可能性があると思います。SU剤も部分的改善で全体を見ていないことは同様です。

この点、糖質制限食ならば、血糖値、中性脂肪、酸化コレステロール、レムナントリポ蛋白など脂質代謝やアミノ酸代謝も全てが改善し、部分だけではなく代謝全体が改善しますから人体の恒常性は保たれます。そのため急速な血糖値改善にもかかわらず、網膜症の悪化がないと考えられます。

 少し話は変わりますが、血糖を下げる薬、コレステロールを下げる薬、中性脂肪を下げる薬などを併せて飲んでいる患者さんは結構おられます。まあ、放置するよりはましとは思うのですが、生物においてははいくら部分をよせ集めても全体にはなりませんし、薬を多種類飲めば副作用の確率も上昇するのでそれなりに心配です。

糖質制限食なら、血糖も酸化コレステロールも中性脂肪もすべてOKで代謝全体が改善します。どちらが望ましいかは言うまでもありませんね。

necobabarさん。
このまま、順調に血糖値、HbA1cが改善していけば、主治医と相談されて
「アマリール2錠、朝夕前」→「1錠、朝前」→「アマリール中止」
も夢ではありませんので、美味しく楽しく糖質制限食をお続け下さいね。

江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
糖尿病性網膜症について
はじめて投稿します。mimiと申します。necobabarさんのコメントを読ませていただきました。私も以前はHbA1c値が13以上ありとても危険な状態でしたが、江部先生の本を読んで実践したところ、わずか1~2か月で7.0以下になり、現在は5.0~5.2です。急激に下げる時に、網膜症を発症してしまいました。でもそれは糖質制限食のせいではなく、主治医からアマリールやアクトスを飲み続けるように言われ、私も薬を中止することに不安があり、飲み続けたためだと思っています。糖尿病性網膜は血糖値の導関数の絶対値が大きくなるために発症するような気がします。そのころのSMBG記録では一時間で260⇔50台というのもよくありました。私の推測なのですが、すい臓のベーター細胞はリアルタイムに血糖値を調べて適度のインシュリンを分泌しています。SU剤はそのシステム、リズムを徹底的に破壊するのではないでしょうか。SU剤を飲んだ直後、血糖値は急激に下がり、網膜の活動に必要なブトウ糖さえも不足します。その後SU剤によって無理に働かされたβ細胞は一定時間働かなくなり、200以上の高血糖の状態になり網膜を傷つけます。HbA1c値はトータルの値なので、SMBGをしないと把握できない変動です。網膜症の発症を眼科医に指摘され、SU剤もアクトスも処分しました。するとそれまで、5.8~6.0だったHbA1c値が1か月後に5.4になり、今では5.0~5.2です。私一人のデーターなので一般化はできないかもしれませんが、アマリールは0.5錠でも危険です。necobabarさんは糖質制限食をしながらアマリールを飲んでいるようですが、それは、大変危険です。江部先生が言われるように、糖質制限食は生物本来の食事で、人間が地球上に生まれて400~600万年前から農耕がはじまるまで、糖質制限の食事だったと思います。そして400~600万年といってもそれはこのあたりから「人間」とよぶことにしようと勝手に定義したものですから、すい臓を持っている前人間的な生物の段階も加えると数億:1の比率で糖質制限食をしてきたことになると思います。私の体験ではアマリールを中止し、糖質制限食にすると、血糖値は100+-20で落ち着き、他の数値もよくなります。SU剤を飲むと網膜症は確実に悪化します。たとえ、0.5錠でも危険です。SU剤を飲むと網膜以外の毛細血管もダメージを受けます。主治医が反対しても、SU剤を中止してください。HBA1cが5.5以下になると何も言わなくなりますよ。


2009/07/07(Tue) 00:14 | URL | mimi | 【編集
Re: 糖尿病性網膜症について
mimi さん。

貴重な情報ありがとうございます。

「SMBG記録では一時間で260⇔50台」

mimi さんのご指摘通り、
糖尿病専門医の間でも、「血糖値の乱高下や低血糖が網膜症悪化の要因」という
仮説があります。
2009/07/07(Tue) 09:10 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: 長期に渡る糖尿病の場合
スニフさん。

過去既に完成している動脈硬化に関しては、糖質制限食をしたからといって
改善は見込めません。

糖質制限食により血糖コントロールが良くなれば今後の動脈硬化の進行は防げます。
ただステントが入る段階ということは、既に全身の血管にある程度のの動脈硬化があることは
認識しておかなくてはなりません。

またインスリンの量が多いと、発ガンやアルツハイマーのリスクとなります。
糖質制限食でインスリンの量が減らせるのでリスクが減りますね。
2009/07/10(Fri) 18:14 | URL | 江部康二 | 【編集
こんにちは、江部先生
私は健康診断で糖尿病と診断され、ネットを調べていたらこのブログに行き着きスーパー糖質制限を始めたものです。
診断時はhba1c13.5あり空腹時血糖値も297と重度の糖尿病で医師からは入院とインシュリンを進められました
仕事の都合上入院するのは難しいしインシュリンを打つのも精神的に嫌だったので食事療法で治せるこの糖質制限には本当に助かってます、
(インシュリンは8日ぐらい続けましたが糖質制限と一緒に行ってたら低血糖症状らしきものが出たので自己判断で止めました)
糖質制限開始から2週間後の受診時、血糖値が99になっておりこの食事療法の効果が実感できました
(体調も糖質制限開始後1週間くらいで良くなっていたので感覚的には実感してましたが・・・)
で、糖質制限開始から本日で30日たちましたので試しにと朝食に玄米130g食べ30分後1時間後2時間後3時間後と血糖値を測定してみました
食事内容:玄米130g(硬め)味噌汁、納豆100g卵1個チーズ3個
早朝空腹時血糖値104
食後30分134
食後1時間159
食後2時間162
食後3時間114
食後2時間の数値が食後1時間の数値より若干高いのが気になりましたが玄米を食べてもこの数値だったので良かったと思いました。
今後も全ての数値で正常値を出せるように糖質制限を続けていきたいと思います。ありがとうございました。
(ちなみに運動療法も取り入れておりエアロバイク30分から50分を週5日、筋トレを週2日行っています)
2012/01/12(Thu) 11:37 | URL | はやく正常値になりたい | 【編集
Re: タイトルなし
はやく正常値になりたい さん。

重症の糖尿病から境界型まで
耐糖能が改善していますね。
糖質制限食で膵臓のβ細胞が休養できて回復したのでしょう。
良かったです。
2012/01/12(Thu) 20:49 | URL | ドクター江部 | 【編集
13%でケトアシドーシス入院今月6%にヘモグロビン低下
今年6月30日に嘔吐で夜間緊急入院。ヘモグロビン13%台。インスリンを入院一週前~切らしてしてなかった。仕事もしたくない、食欲低下。また、三食食べず、二食が多かった。7月25日退院。9月5日通院して検査。ヘモグロビン6%迄に。血糖値は180台。先月、生理期間低血糖になってましたが、生理期間だけ。網膜症もレーザー確定。これは、危険ですか?
2014/09/05(Fri) 20:58 | URL | なつパンダ | 【編集
Re: 13%でケトアシドーシス入院今月6%にヘモグロビン低下
なつパンダ さん

「ヘモグロビン6%迄に。血糖値は180台。」

なら、危機は脱出して、コントロール比較的良好です。
生理期間中に低血糖になりやすいなら、特に注意して、低血糖を予防しましょう。

今後、低血糖を起こさないよう注意して、
空腹時血糖値130mg/dl未満、食後2時間血糖値180mg/dl未満、HbA1c7.0%未満を達成すれば、
日本糖尿病学会的には、合併症の予防となります。
2014/09/06(Sat) 08:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
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