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脂肪悪玉説・マウス・動物実験
こんにちは。

世の中相変わらず「脂肪悪玉説」が蔓延っていますね。( ̄_ ̄|||)

糖質制限食を実践すれば、相対的に高脂肪食になります。「脂肪悪玉説」には反論しておかなくてはなりませんせんね。('-^*)☆

以下は、国立健康・栄養研究所 生活習慣病研究部で、2002年に作成された<高脂血症とインスリン抵抗性>という論文の要旨です。

「脂肪摂取量の増大はインスリン抵抗性を引き起こす最も重要な環境因子である。これは、高脂肪食の摂取により肥満が発症し、それによって脂肪組織や筋肉での糖の取り込みが低下するためと考えられている。

その機序として、筋肉や肝臓への脂肪の過剰蓄積による代謝異常、脂肪細胞の肥大化によるTNF-αやレプチンなどの生理活性物質の分泌増加が考えられる。

また、インスリン依存的に血中から脂肪組織に糖を輸送するGLUT4 は、高脂肪食の摂取でmRNA発現量が減少することから、高脂肪食誘導性のインスリン抵抗性発症に関与している可能性がある。

しかし、脂肪には様々な種類があり、摂取する脂肪の質の違いによってインスリン抵抗性の発症は大きく異なる。一般に、飽和脂肪酸はインスリン抵抗性を来しやすい。

また、マウスに高脂肪食を負荷した研究では、リノール酸を多量に含む紅花油の摂取はインスリン抵抗性を発症しやすく、一方、魚油はインスリン抵抗性の発症が改善される傾向にあった。

魚油によるインスリン抵抗性の改善には、肝臓での脂肪合成の抑制と熱産生の増加が寄与していると考えられる。これらの成績は、インスリン抵抗性の予防法として食事療法が重要であることを強く示唆している。」


国立健康・栄養研究所の論文ですから、権威あるものなのでしょうが、「高脂肪食の摂取により肥満が発症」という常識から出発して論じておられます。

しかし、これはマウスにおいては兎も角、少なくともヒトにおいては、根拠のない神話です。

ヒトの体重減少に関しては、2008年のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンに、イスラエルの研究報告が発表されました。(NENGLJ MED JULY17,2008、 VOL359. NO.3 229-241)これは、322人を2年間追跡した権威ある疫学的研究です。

<低炭水化物法が最も体重減少。HDL-Cも増加。>

• イスラエルの322人(男性86%)
• (1)低脂肪法(カロリー制限あり)
• (2)オリーブ油の地中海法(カロリー制限あり)
• (3)低炭水化物法(カロリー制限なしのアトキンス式ダイエット)
• 3グループの食事法を2年間経過観察。
• 低炭水化物法が最も体重減少。HDL-Cも増加。
• NENGLJ MED JULY17,2008、 VOL359. NO.3 229-241

低炭水化物食糖質制限食)が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させた。」ということで、長年の食事療法の論争に決着がついたと思います。アトキンス式の低炭水化物食ですから、当然高脂肪食です。

このように、ヒトにおいては、高脂肪・低炭水化物食がもっとも体重減少効果があることが証明されましたので、国立健康・栄養研究所の論文は出発点から問題ありですね。

「一般に、飽和脂肪酸はインスリン抵抗性を来しやすい。また、マウスに高脂肪食を負荷した研究では、リノール酸を多量に含む紅花油の摂取はインスリン抵抗性を発症しやすく、一方、魚油はインスリン抵抗性の発症が改善される傾向にあった。」

これもマウスの実験が根拠になっているなら、ヒトに当てはまるかどうかは疑問ですね。

なぜこのような間違いが生じるのでしょうか?。一つには例の脂肪悪玉説という「常識の壁」があります。

もう一つはこれも別の意味の医学界の常識の壁なのですが、どんな研究でも手軽なので、マウスやラットが実験動物として使われやすいことがあります。

しかし、マウスで高脂肪食の実験をすること自体が、根本的なカテゴリー・エラーなのです。(*- -)(*_ _)

なぜなら、マウスなどネズミ類は、本来の主食は草の種子(即ち今の穀物)です。草原が地球上の有力な植生として現れる鮮新世(510万年前)以降ネズミ科の動物が出現して爆発的に繁栄します。510万年間、草原の草の種子(穀物)を食べ続けてきたネズミに、高脂肪食を与えれば、代謝が破綻するのは当たり前です。

これは単純に、マウスの代謝に合わない(主食でない)高脂肪食を与えて病気を作るという実験です。インスリン抵抗性を始めとして、全ての代謝が狂って病気だらけになるのもいわずもがなです。

例えば、ゴリラの主食は「棘の多い大きな蔓や大きな草」です。ゴリラに高脂肪食を食べさせたら、代謝はガタガタになり、マウスと同様、たちどころに様々な病気になるでしょう。

人類の主食が島泰三氏の説(親指はなぜ太いのか・中公新書)の如く「骨、骨髄」であったかは兎も角 、穀物で無かったことは確実です。そして歴史的事実として、農耕の前は人類皆、糖質制限食でした。

またヒトの進化の過程で脳が急速に大きくなり、シナプシスが張り巡らされるためには、EPAとDHAの摂取が不可欠です。EPAとDHAは地上の植物性食品には含まれていません。

従って少なくとも、肉・骨髄・昆虫・地虫・魚貝・・・などの高蛋白・高脂肪食を、脳が急速に発達した20万年前頃、主食として食べてたことは間違いないでしょう。

結論です。

薬物の作用や毒性をネズミ類で動物実験するのは、研究方法として特に問題はないと思います。(動物実験自体の是非はおいておきます。)しかし、本来主食が全く異なるマウス・ラットなどネズミ類で、人類の食物代謝の研究をおこなうのは出発点から根本的に間違っています。

研究者の皆さん、「薬物の動物実験」と「食物の動物実験」は、全く意味が異なることを、認識してほしいと思います。そこのところ、是非よろしくお願い申し上げます。 m(_ _)m


江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
チーズの件、了解いたしました。
チーズは日常的にけっこう食べていたので
ひとまず安心いたしました。
早速回答していただきありがとうございました。
失礼いたします。
2009/06/30(Tue) 17:32 | URL | ゆう | 【編集
やっぱり・・・ですね
先生、いつもとても参考にさせて頂いております。
今月はじめに、手足と唇の痺れを感じて、採血検査をしたところ、空腹時血糖値が206、A1Cが7.3もありました。
でも、専門医に通院する前に、いろいろとインターネットで調べていたところ、こちらのブログを知り、25日前から糖質制限を始めました。

206あった前日はジャガイモと玉ねぎたくさんの食事をした、とはいえ、A1Cが7.3なので、それほど遠くない数字かと思います。

体重もかなり重く体脂肪も45%超えていたのですが、体重は-5キロ、体脂肪も-6%になり、痺れも、ほんの少しだけ良くなりました。

今人間ドックで検査したところ、29日前の結果と比べ、次のような結果でした。


          29日前⇒今日
空腹時血糖値 206  ⇒ 138
A1C       7.3   ⇒ 6.3
LDLコレステ  137  ⇒  91
HDLコレステ  59   ⇒  46
中性脂肪    111  ⇒  66
尿酸値     6.2  ⇒  9.2!

肝臓の数値も腎臓も、尿もまったく問題ありませんでした。

ただ、尿酸値が、びっくりする数値になっていて、
「いつ痛風になってもおかしくない数値なので、たんぱく質や脂の多い魚・肉を控えるように」
と言われてしまいました。

血糖値について、「6/1に計測した時には200以上あったのですが、糖質制限をして・・・」
と話したら、「食後だったんでしょう」から始まり、
「バランスよく摂取しないといけない。特に脂質は悪いのはわかっているので、極力摂らないように」と、皆さんが書いていらっしゃるように始まってしまったので、反論をあきらめました。

頭ガチガチの先生ならともかく、若い女医さんだったのですが、「バランス良く」と「カロリーを」の一点張り。

ただ、その後看護師との面談では、数値が下がった事を認めて下さり、続けてみてもいいのでは?と言ってくれました。

そこで安心したいためにアドヴァイス頂きたいのですが、
1.短期間で尿酸値が上がってしまいましたが、このまま、高たんぱく・高脂肪・低糖質の食事を続けていても、大丈夫でしょうか?
痛風が怖いので・・・。

2.それともう一つ、眼底検査の結果はまだわからないのですが、眼圧が高い、といわれました。(2.1)
血糖値が高いのが影響しているのでしょうか・・・
きっと、眼科を受診しないと、心配ですよね?

3.受診に関連してもうひとつ、アドヴァイス頂きたいのですが、
東京23区内に在住なのですが、主治医を見つけるにあたり、先生の理念を理解なさっている病院・先生を探す事はむずかしいでしょうか?

どうぞ宜しくお願いいたします。
2009/06/30(Tue) 20:17 | URL | おれんじ | 【編集
なるほど
主食が違う、草食系の動物を実験の対象にするのはどうかなぁと思いますね!

ただ私としては、草食動物の膵臓のベータ細胞の在り方に興味はあります。


あと、高脂肪に高糖質なら(ポテトチップスなど)代謝は破綻するでしょうね!その実験で使われた、高脂肪食の中身を具体的に知りたいものです。
2009/06/30(Tue) 20:49 | URL | 哲学者 | 【編集
追伸
何度も申し訳ありません。
今、夕食の支度をしていて、悩んだのですが、尿酸値が上がる、という、納豆や大豆食品はどうなのでしょう・・・・
「いつ痛風になってもおかしくない」なんて言われると、いろいろと心配になってしまいます。
2009/06/30(Tue) 21:32 | URL | おれんじ | 【編集
始めまして 2型糖尿歴28年です。5~6年グリコが下がらず困っていました。主治医に教育入院をお願いし予約をしてから 江部先生のブログに出会い、主食を抜いただけで 血糖値が良くなり、体重も4キロ痩せました。今はただ先生に感謝の気持ちです。有難うございまいした これからの ご活躍とご健康をお祈りして お礼のメールとさせていただきます
2009/06/30(Tue) 22:37 | URL | サクヨ | 【編集
Re: 痩せ続けています・・・
モンちゃん。

痩せるのは、血糖コントロールが悪くて、尿中に糖が漏れているためと思われます。
糖質制限食で血糖コントロールが良くなれば、尿中に糖が漏れなくなり体重も回復すると思います。
糖質制限食で1600㌔カロリーでよいと思います。
2009/07/01(Wed) 07:23 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: タイトルなし
サクヨさん。

血糖値、体重の改善、良かったですね。
これからも美味しく楽しく糖質制限食をお続け下さいね。
2009/07/01(Wed) 07:31 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: やっぱり・・・ですね
> 1.短期間で尿酸値が上がってしまいましたが、このまま、高たんぱく・高脂肪・低糖質の食事を続けていても、大丈夫でしょうか?
> 痛風が怖いので・・・。

通常、数ヶ月で落ち着きます。低カロリーでも尿酸が上昇しますのでご注意ください。
2008年11月17日のブログ「糖質制限食と尿酸そして微量アルブミン」をご参照ください。

>
> 2.それともう一つ、眼底検査の結果はまだわからないのですが、眼圧が高い、といわれました。(2.1)
> 血糖値が高いのが影響しているのでしょうか・・・
> きっと、眼科を受診しないと、心配ですよね?

いずれにせよ糖尿病の人は、眼科受診が必要です。眼圧の件はは眼科でご相談ください。

>
> 3.受診に関連してもうひとつ、アドヴァイス頂きたいのですが、
> 東京23区内に在住なのですが、主治医を見つけるにあたり、先生の理念を理解なさっている病院・先生を探す事はむずかしいでしょうか?
>
以下の先生方がおられます。

姫野友美先生
ひめのともみクリニック
〒141-0022 品川区東五反田1-17-1 第二昭和ビル3階
℡03-3445-0766 Fax03-3445-0838
ホームページ:http://himeno-clinic.com/

原 譲先生
〒187-0032 東京都小平市小川町1-972-7
TEL 042-348-8515 FAX 042-348-8516
ゆずるクリニック
http://www.yuzuru-clinic.com/annai.html#top
2009/07/01(Wed) 07:58 | URL | 江部康二 | 【編集
日系米人
いつも興味深く記事拝見しております。

米国では、脂肪摂取の減少とともに糖尿病の有病率が増えているようですが、日本人と日系米人では、糖尿病の発症は後者に多いとの研究があり、要因として高脂肪食が挙げられています。

もともとインスリン分泌能の低い日系人が高脂肪食を摂った結果、糖尿病を発症しやすくなったという論旨と思われますが、この件については、先生はいかがお考えになりますか?

2011/01/29(Sat) 16:08 | URL | 原日本人 | 【編集
Re: 日系米人
原日本人さん。

日本でも1997年からは、脂肪の摂取比率は減少し、糖質の摂取比率は増加しています。
それでも現在まで日本の糖尿病は増え続けています。

日系米国人の場合も、高脂肪食で糖尿病発症増加と単純には言えないと思います。
2011/01/29(Sat) 17:49 | URL | ドクター江部 | 【編集
中途半端な脂肪制限?
ご教示ありがとうございます。

さらに脂肪についてですが、
「糖尿病カレントライブラリー① インスリン抵抗性」という本の
「生活習慣(高脂肪食・運動不足」の章で、国立健康・栄養研究所の先生が、次のように記述していました

 <普通の食事では、脂肪だけでなく、炭水化物も摂取するため、食後はインスリン濃度が上がり、食事由来の脂肪のほとんどは脂肪組織に入っていく。これが脂肪を食べると太る理由である。>


 これを踏まえますと、肥満防止のため、2つの考えが導かれると思います。

1 エネルギー比で、脂肪10%炭水化物75%くらいの昔の日本食

2 エネルギー比で、脂肪50%炭水化物25%くらいの糖質制限食

 中途半端に脂を制限し、糖質もしっかり摂るということが肥満への最短距離ということになりましょうか。


2011/01/31(Mon) 13:39 | URL | 原日本人 | 【編集
Re: 中途半端な脂肪制限?
原日本人 さん。

文献によりますと
脂肪制限食は、体重減少にあまり効果がありません。
糖質制限食は、体重減少に効果があります。

ブログ「糖質制限食でなぜやせる?2010年11月30日」
をご参照ください。
2011/01/31(Mon) 18:01 | URL | ドクター江部 | 【編集
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