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トランス脂肪酸
こんにちは。

昼から雨がしとしと、梅雨らしく降ってます。

さて、糖質制限食を実践する場合、相対的に高脂質になるので、脂質摂取には気を遣います。

今回は、久しぶりにトランス脂肪酸のお話です。いったん解決がついたかに見えた問題が再燃です。


トランス脂肪酸

アメリカ・ニューヨーク市の健康問題委員会は、2006年12月5日、同市内の飲食店2万4000軒に対し、虚血性心疾患の一因とされている人工添加物・トランス脂肪酸を含む食用油の使用を全面的に禁止する決定(段階的にですが)を行いました。

具体的な数値としては、日本での摂取量は1.56グラム/日なのに対し、アメリカでは5.8グラム/日ものトランス脂肪酸を摂取しているそうです。

日本の厚生労働省はこの報道を受けて、「日本人はトランス脂肪酸の摂取量は少ないので特に制限する必要はない」とのコメントをだしました。

しかしながら、FAO/WHO食事・栄養及び慢性疾病予防に関する合同専門家会合(2002年開催)や米国のFDA(食品医薬品庁)は、食事中のトランス脂肪酸をエネルギーの1%以下にするよう勧告しています。

いくら日本の厚生労働省が大丈夫といっても、私は、わざわざ水素添加などの人工的なトランス脂肪酸を摂取する気にはなれません。人工的なトランス脂肪酸は、生体内でまともに代謝するシステムがないので、細胞膜などに紛れ込むと病理的かく乱を生じる恐れがあります。

人工的トランス脂肪酸は 、炎症反応を増加させ血管内皮を損傷させるため、虚血性心疾患に悪影響を与えるとされ、摂取量が増えると気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患の罹患率が上がることも報告されています。

さらに、胎児や乳児の発達に影響を及ぼす可能性や、認知症の誘因の可能性も指摘されています。

動植物で作られる脂肪酸は、通常ほとんどがシス型ですが、牛や羊などの反芻動物の脂肪分には、少量の天然のトランス脂肪酸が含まれています。

例えば、牛乳やバターやチーズにも含まれています。この天然のトランス脂肪酸は、人工的なトランス脂肪酸とは成分が異なり、生体内で共役リノール酸などに変換されます。共役リノール酸には発ガン予防作用があると言われています。

トランス脂肪酸②

食品の三大栄養素はタンパク質、糖質及び脂質ですが、その脂質を構成しているのが脂肪酸です。

トランス脂肪酸は、脂肪酸の一種で、加工油脂やそれらを使用した加工食品に含まれています。トランス脂肪酸には様々な種類があり、国際的にトランス脂肪酸に関する明確な定義や測定法が統一されていないのが現状です

トランス脂肪酸の生成については、次の三つの過程が考えられています。

(1) 油を高温で加熱する過程において生成
(2) 植物油等の加工に際し水素添加の過程において生成 
(3) 自然界において、牛など(反芻動物)の第一胃内でバクテリアにより生成(脂肪や肉などに少量含まれる)

*日本の食品に含まれる総脂肪酸中のトランス型脂肪酸の平均割合(天然と人工込み)
マーガリン   13.5%
バター      4.1%
チーズ      5.7%
牛乳       4.5%
食パン      9.3%
ドーナツ     0.8~23.9%
フライドポテト  0.8~19.5%
レトルトカレー  6.2%
牛肉バラ     4.9%
牛肉ヒレ     2.7%
 (日本食品油脂検査協会調べ)

1)
ヘキサンなどの溶媒を使用して、高温で抽出された植物性油脂(市販大豆油、コーン油、ナタネ油など)や、高温の植物性油脂を使って調理した食品(揚げ物、フライ、天ぷらなど)、植物性油脂を含み高温で調理された食品(スナック菓子、冷凍食品など)などには、油脂の高温処理という過程で産生される、人工のトランス脂肪酸が多く含まれていることが分かってきました。

フライドチキンやポテトチップなど毎日食べたりするのは危険かも・・・

2)
マーガリン類(マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング)の原材料には、食用植物油脂と硬化油脂が使用されています。

食用植物油脂はサラダ油の原料でもある比較的安価な大豆油、菜種油、コーン油などがよく使われます。

これらの油脂は、常温では液状です。これに適度な硬さを付加してマーガリンにするために、硬化油脂(水素添加して固体状にした油脂)を配合します。

この硬化油脂を製造する工程で、トランス脂肪酸が発生します。したがって、硬化油脂を使用しているマーガリン類には人工のトランス脂肪酸が含まれることになります。

3)
牛などの反芻動物の胃内に共生するバクテリアは、シス型の不飽和脂肪酸をトランス型に変換する特殊な酵素を持っています。このバクテリアが産生するトランス脂肪酸は主にバクセン酸です。


牛肉や乳製品には、2-5%程度のトランス脂肪酸が含まれていますが、その大部分はバクセン酸です。バクセン酸は、エライジン酸とは不飽和結合の位置が異なる位置異性体です。

摂取されたバクセン酸は、生体内にある酵素の働きで、共役不飽和脂肪酸の一種に変換され生理的に利用されるとされています。 

一方、人工の硬化油脂等には、エライジン酸など、多種類のトランス脂肪酸が含まれています。人工の硬化油脂には、バクセン酸以外のトランス脂肪酸が多く、硬化油脂に含まれるトランス脂肪酸の大部分は、生体内でも共役不飽和脂肪酸に変換されず代謝されないので、生体内に何らかのかく乱を生じる可能性があります。

従って今までは、「天然由来のトランス脂肪酸は安全で、人工的トランス脂肪酸は危険」と割り切れたのですが、

最近、「トランス脂肪酸は天然も人工も全て危険」という説があることをtomoさんからコメントいただきましたのでご参照下さい。**

tomoさん、貴重な情報ありがとうございます。トランス脂肪酸については今後の課題ですね。一方、脂質摂取に関して、私もtomoさんのご意見に賛成です。


江部康二

トランス脂肪酸③
農業情報研究所(WAPIC)北林寿信氏http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/index.html)の情報によるとネイチャー・ニュースが、2006年6月12日、

「トランス脂肪酸を食べると同じカロリーの他の脂肪を食べるよりも太るし、インスリン抵抗性が増す。」

という研究について伝えています。

研究チームは、サルの一グループに水素添加のトランス脂肪酸が摂取カロリーの8%になる食事を与えました。第二のグループのサルにも同じ食事を与えましたが、トランス脂肪酸を別の同カロリーの脂肪に置き換えて与えました。

6年を経た後、トランス脂肪酸を食べたサルの体重は7%増えたのに対し、第二グループのサルの体重は2%増えただけでした。 

さらにトランス脂肪酸サルは血糖値が高く、インスリン抵抗性が増加していました。これは、トランス脂肪酸が糖尿病発症を促進することを示唆します。

江部康二


**
「牛のトランス脂肪酸も有害」との中間報告

 はじめまして、tomoです(以前、別名でコメントさせて頂きました)。天然トランス脂肪酸の有害性に関する新情報をみつけましたのでご報告します。

 牛の体内にあるトランス脂肪はヴァクセン酸(VA)と共役リノール酸(CLA)ですが、人がVAを食べると体内でCLAに変化するそうです。今まで共役リノール酸(CLA)は安全でむしろ抗癌作用があり有用と思われていましたが、CLAも有害という実験結果の中間報告が発表されています。

 実験は61人の男女を対象にした9週間の期間に渡るもので中間報告は2008年11月に全米心臓病協会(American Heart Association)の会合で行われました。発表者はアムステルダム自由大学のブラウエル(ブラウワー)博士で、発表を中間報告の形でおこなったのは、関係する患者に結果を早く伝えたかったから、とのことです。正式な報告は後におこなわれるそうですが、現時点ですでに発表されているか否かは不明です。(正確には正式な報告書を読む必要があります。)

 実験の方法と結果の概略は、文章の引用を禁止している、以下のサイトに解説されていますので、日本語で読むことができます。直リンクを避けますので次の指示に従って記事を検索して下さい。

1. まず以下のサイトのホームページを開いてください:
「ノギボタニカル」 URL http://www.botanical.jp/
2.このページの[健康と食品の解説]という部分をクリックします。
3. ページが変わったら「no.2008120547 2008/12/05 共役リノール酸(天然トランス脂肪酸)の有害性」という項目を探してクリックすれば詳細な解説が表示されます。

 なお、私はこのページを偶然Googleによる検索中に発見しました。試しに「共役リノール酸 有害性」という2つのキーワードをスペースで区切って入力して検索したところ、トップに表示されましたのでGoogleを使う方が素早く解説ページにたどり着けると思います。

 一応の結論です。糖質制限食は必然的に高脂質食になりますから、食事で摂る脂質はできる限り害の少ないものを選ばないと、長期的にみて、心臓病・動脈硬化・ガンなどのリスクを高める可能性があります。現時点での自衛策として、乳製品と脂肪の多い部位の牛肉の摂取を控えめにして、他の種類の肉と脂質(オリーブ油、高オレイン酸キャノーラ油、シソ油、エゴマ油、亜麻仁油、胡麻油、ラードなど)や魚を多めにする方が良さそうです。(トランス脂肪はコールドプレスのオリーブ油などを除く市販の油にも数%程度含まれていると推定されていますから乳製品の4~5%という値が異常に高いというわけではありません。摂取の総量が多くならないように気を付けましょうという意味です。)

 リスクを覚悟の上で牛の脂肪をたくさん食べるのもご自由ですが、牛由来の脂肪もマーガリンやショートニング、硬化油と同じように危険かもしれない、ということも考えに入れておいて下さい。

 脂肪とタンパク質を多く取るアメリカ人富裕層女性の平均寿命が日本人女性のそれに及ばないのもトランス脂肪の取りすぎが原因のひとつかもしれません。(アメリカ人の心臓病の多さから考えるとトランス脂肪有害説が有力かも…)

tomo | 2009.04.17(金) 22:44

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
感謝感激!
江部先生
初めてコメントさせていただきます。
当方、43歳の会社員で、昨年6月の健康診断でHbA1cが9.0もあり、結果が出たその日から先生のブログを参考に糖質制限食を開始しました。先日、今年の健康診断の結果が出ましたので、以下に記載いたします。
体 重 87.5→67.9kg 
腹 囲 96.2→78.5cm 
BMI  27.5→21.5
HDL    46→72
中性脂肪 103→35
LDL   196→155
GOT    21→15
GPT    19→10
γ-GPT  52→17
LDH   170→155
尿 酸  7.1→7.5
クレアチニン  0.8→0.7
HbA1c  9.0→4.9

結果としては、尿酸値が少しあがっていましたが、その他の数値は大きく改善できたのかな、と考えています。HbA1cは5.0を切りましたし、毎日それなりの量を飲酒し、赤ワインなどを平気でボトル1本空けたりしている割にはγ-GPTが最小値を記録(これは酒飲みとしては非常に嬉しかったです!しかし飲みすぎは禁物ですよね)したり、糖質制限食の効果を実感しております。先生のブログや著書はもちろん、糖質制限ドットコムにもお世話になり、この一年頑張れました。今後も無理なく、おいしく楽しく糖質制限を実行していく所存です。
先生には本当に感謝しております。ご活躍を期待しております。
ありがとうございました!
2009/06/29(Mon) 16:26 | URL | チャレンジャー | 【編集
トランス脂肪酸の新たな健康リスクが明らかに
江部先生

本当に怖いトランス脂肪酸ですが、また新たなリスクが明らかにされたとのことです。

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http://biz-journal.jp/2014/11/post_6523.html

危険なトランス脂肪酸に新たな健康リスク、野放しに批判強まる 菓子パン、マーガリン…

文=郡司和夫/食品ジャーナリスト

トランス脂肪酸は脳梗塞や心臓病のリスクを高めることから、世界的に規制の動きが強まっています。トランス脂肪酸は、植物油など液体状の油脂や、マーガリン、ショートニングのような固体状の油脂を製造する加工工程で生成します。欧米やWHO(世界保健機関)などの専門機関は、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギーの1%以下にするよう勧告しています。これを受けて米ニューヨーク市はトランス脂肪酸を含む油脂製品の使用を禁止するという厳しい措置をとっています。また米国、カナダ、韓国では、加工食品についてトランス脂肪酸など4種類の脂質について含有量を表示することが義務付けられています。

 しかし、日本では「日本人のトランス脂肪酸の摂取量はWHOの目標を十分に下回っている」(食品安全委員会)などとして、基準値の設定や表示は義務付けられておらず、野放し状態です。

 こうした中、トランス脂肪酸の新たな健康リスクが明らかにされ、トランス脂肪酸の使用を放置している厚生労働省や食品安全委員会に対する批判が強まっています。

●新たな健康リスク


 新たなリスクというのは、トランス脂肪酸の摂取が皮膚障害の原因になるというものです。この研究結果を明らかにしたのは、JA高知病院の野田里香医師(形成外科・皮膚科)です。2014年7月26日に開催された講演会(主催:食品表示を考える市民ネットワーク)で野田医師は、小さい娘のアトピーが、保育園を変えたとたん急激に悪化、その原因を追究していく中で、トランス脂肪酸と皮膚障害の関連性を突き止めたと語っています。「食の安全ウオッチ」(No.42)は、その講演の要旨を以下のように伝えています。

「患者の中で皮膚の痒みを訴える人には、肉料理と魚料理はどちらが多いか、食用油は何を使っているか、菓子パン・調理パン・アイスクリーム・スナック菓子・洋菓子・スーパーの揚げ物などをどのくらいの頻度で食べているかという問診票を使って尋ねています。ひどいニキビや皮膚の湿疹などに悩んでいる患者にはEPA製剤を投与するほか、菓子パンやドーナツやアイスクリームなど、トランス脂肪酸を多く含む食品をやめ、肉食より魚食に代えてもらうと、劇的に改善します。汗は本来暑いときに体を冷やしてくれる優れものですが、汗の中に身体から出る有害物質が混じっていて、それが皮膚に痒みなどをもたらすのではないか」

 そして、野田医師はこうアドバイスしています。

「アトピー性皮膚炎や、あせも、汗あれなどの痒みに悩んでいる人は、菓子パンやドーナツなどに気をつけて、マーガリンやショートニングと書いてあったら(食べるのを)やめてみたらどうでしょうか」

 野田医師によれば、アイスクリームやコーヒーフレッシュもトランス脂肪酸が多く含まれるので、食べるのは控えたほうがいいと言います。また、揚げ物より油炒めのほうが油の摂取量が少ないので、トランス脂肪酸の摂取量は少なくなるといいます。

 トランス脂肪酸の含有量が最も多いのは、マーガリンを使ったショートニングですが、サラダ油も要注意です。サラダ油はパーム油、大豆油、菜種油など複数の油を混ぜたものですが、ほとんどのサラダ油には100g中1~2gのトランス脂肪酸が含まれています。しかし、単独のオリーブ油であれば0.1gしか含まれていません。油を使うならオリーブ油がお勧めです。

 ともあれ、皮膚障害という新たな健康リスクの疑いも出てきているのですから、食品安全委員会は「日本人のトランス脂肪酸摂取量は、欧米人に比べて少ない」などと根拠のない説明をせず、早急にトランス脂肪酸の規制策を打ち出すべきといえます。

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この記事を読んで思ったのですが、トランス脂肪酸を多く含む食品は糖質の多い甘いものが多い分けで、この件に関しては糖質の害によるものと言えなくもないのかなと。。。
糖質とトランス脂肪酸のコンビは、より危険度が増すということなのかも知れません。
2014/11/05(Wed) 12:43 | URL | 福助 | 【編集
Re: トランス脂肪酸の新たな健康リスクが明らかに
福助 さん

情報をありがとうございます。

スーパー糖質制限食なら、トランス脂肪酸は、ほとんどないですね。
2014/11/05(Wed) 13:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
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