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クロワッサンの記事と糖質制限食 
雑誌「クロワッサン」私も、2008年6月10日号に、「糖質を制限する食事は、ダイエットにも効果あり。」という記事で写真いりで登場して、「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」も紹介してもらいました。

今回、あやぴんさんから、雑誌「クロワッサン」2009年5月25日号に、糖質制限食に批判的な記事が掲載されたとのコメント・質問をいただきました。

うーむ!? 

クロワッサン、何でもありなのですね。( ̄_ ̄|||)

良い機会なので、この批判に反論しておきましょう。

【09/05/25 あやぴん
雑誌「クロワッサン」の記事より
江部先生、はじめまして。クリニックハイジーア(矢崎智子院長)のHPから来ました。昔から甘いもの大好き、お酒も好き、ストレスで7キロ体重が増え、失敗ダイエットを繰り返すうちに、低血糖症の症状が現れるようになり、関連書籍やウェッブサイトを読み漁っています(血糖値は正常範囲です)。

本日発売の、「クロワッサン」(マガジンハウス)は「食べて痩せる」がテーマなのですが、その中に気になるコメントがありました。先生のご意見をお聞かせいただければと思いました。

『炭水化物抜きのダイエットも流行しているようですが、これもまったくお勧めできません(中略)炭水化物を抜くと大変なことになる。脳はパニックにんる、筋肉は減る、体脂肪は増える、朝から爆睡する、リバウンドもしやすくなってしまう。(中略)脳のエネルギー源は糖質からできているブドウ糖だけです。だから、炭水化物を減らすと、エネルギーを大量に消費する脳はエネルギー不足になり、体を省エネモードにしてしまう。簡単な話、寝かせてしまうんです。それでも栄養が不足すると、脳は筋肉のたんぱく質をアミノ酸に分解して、肝臓でブドウ糖に変えて摂取する。その結果、筋肉は痩せて基礎代謝が落ち、食欲の調整もできなくなる』

後半部分ですが、先生は、糖質を摂取しなくても、肝臓で保存されている脂肪が糖質に変わり、脳にエネルギーが届けられるから問題がない、むしろそれにより体脂肪が減る、と繰り返し主張されていますし、論理的です。私も昨日からスーパー糖質制限ダイエットに取り組んでいます。

が、上記の主張は先生はどう捉えられますか?お忙しいところ恐縮ですがご意見いただければと思います。

『』部分は、森谷敏夫さんの記事です(P 21)森谷さんの専門は応用生理学とスポーツ医学です。】


あやぴんさん。コメント・情報ありがとうございます。

<森谷敏夫先生のコメント>
『炭水化物抜きのダイエットも流行しているようですが、これもまったくお勧めできません(中略)炭水化物を抜くと大変なことになる。脳はパニックになる、筋肉は減る、体脂肪は増える、朝から爆睡する、リバウンドもしやすくなってしまう。(中略)脳のエネルギー源は糖質からできているブドウ糖だけです。だから、炭水化物を減らすと、エネルギーを大量に消費する脳はエネルギー不足になり、体を省エネモードにしてしまう。簡単な話、寝かせてしまうんです。それでも栄養が不足すると、脳は筋肉のたんぱく質をアミノ酸に分解して、肝臓でブドウ糖に変えて摂取する。その結果、筋肉は痩せて基礎代謝が落ち、食欲の調整もできなくなる』

森谷先生、まず余りにも基本的な知識不足です。脳はブドウ糖も利用しますが、脂肪酸の代謝産物のケトン体もなんぼでも利用します。

このことは生理学的な事実で、例えば、医学の教科書の「ガイトン臨床生理学」や「ハーパー生化学」にも記載してあり、論争の余地など全くありません。この事実を知っているか知らないかだけです。

NHK「ためしてがってん」といい、森谷先生といい、「脳はブドウ糖だけでなくケトン体もエネルギー源として利用する。」という基本的な生理学的事実をご存じないのは、如何なものかと思います。 ε-(-Д-)

次に、糖質制限食を実践すれば高血糖は改善しますが、肝臓でアミノ酸や脂肪酸の代謝産物のグリセロールから糖新生が行われますので低血糖にはなりません。

肝臓の糖新生は、糖質を含む食事摂取後、数時間たつと日常的に行われています。勿論睡眠中にも糖新生は行われています。糖質制限食実践中は食事中でも糖新生が行われているわけです。

人類は、農耕が始まる前の399万年間は狩猟・採集が生活の主であり、この間は人類皆糖質制限食だったわけです。このことも反論の余地のない歴史的事実です。

組織的農耕が始まったのは約1万年~1万4千年前ですが、世界的に広がり定着したのは、約4000年前と考えられます。

人類の歴史400万年ですが、ゴリラやチンパンジーと分かれたのが400~500万年前ということです。その後、アウストラロピテクス属、パラントロプス属、ヒト属の3属・17種の人類が栄枯盛衰を繰り返し、結局約20万年前に東アフリカで誕生したホモ・サピエンス(現世人類)だけが現存しているわけです。

ここで大切なこと、そして本質的なことは、3属・17種の人類は、全て狩猟・採集が生業だったということです。

従って、現世人類の行動や生理・代謝を決める遺伝子セット(DNA)は、狩猟・採集の生活条件に適応するようにプログラムされていると考えるのが自然です。

「狩猟採集対農耕=399万年間対4000年間=1000対1」ですので勝負になりません。

即ち人体は本来、穀物に摂取カロリーの60%も依存して生きるような遺伝的システムは、持っていないということになります。このことは、糖質制限食の理論的根拠として、大きなアドバンテージですね。ヾ(^▽^)


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
ありがとうございます
江部先生、

お忙しいところ早速のコメントありがとうございます。

先生の理論、理解いたしました。HPの過去ログを拝見したのですが、その中に今回私がした質問の答えになるものが相当ちらばっており、お手数をお掛けしました。

しかし、クロワッサン「なんでもあり」ですねぇ。人の身体に関する、大切なことなので慎重に対応して欲しいと思いました。

今、スーパー糖質制限を始めて6日目になります。体重は(怖くて)測っていませんが、ダイエットでも、激しい運動でもピクともしなかった胴回りに変化が出始めてきました。また、私は痩せ始めると指がまず細くなってくるのですが、指が明らかに細く、軽くなってきました!!それに、何よりも、森先生のおっしゃっていた「頭がパニくる、脳が疲弊する、基礎代謝が落ちる」という症状は全く出ていません。。。


炭水化物を摂らない食事に辛さは覚えませんが、おやつのバリエーションが非常に少なく、苦労します。もっぱら、「くるみ⇒煮干⇒松の実⇒カボチャの種⇒豆乳」のローテーションです。

今日は週末なので赤ワイン飲んできます!
明日からまた真面目に制限します。

これからも、たまにコメントさせていただきます。

あやぴん
2009/05/29(Fri) 13:16 | URL | あやぴん | 【編集
Re: どうか助けて下さい!どうしていいか、わかりません
TNさん。

糖質制限食で血糖コントロールが改善し、減量もできます。
糖質制限食を実践するとリアルタイムに高血糖が改善しますが、低血糖になるわけではありません。
肝臓でアミノ酸やグリセロールからブドウ糖を新生するからです。

幸い薬を、内服しておられませんので、安心して糖質制限食をすることができます。

人類の進化400万年のうち、農耕前の399万年間は、人類皆糖質制限食ですので
安全性に関して全く問題ないと考えられます。


2009年01月31日 (土) のブログ「糖質制限食とは」をご参照ください。
2009/06/04(Thu) 17:49 | URL | 江部康二 | 【編集
低血糖とケトン体
 突然のご質問お許しください。たまたま見つけたホームページ、興味深く読ませていただいております。私は20年前に糖尿病と言われ、つい最近経過が悪いためインシュリン注射をはじめました。

 当初、インシュリン注射と薬で時折、低血糖になっていることがありました。赤血球以外はケトン体をエネルギーとして代謝できるとのお話なので、低血糖になっても手足のしびれや、脳機能の低下(少し眠く感じました)は、ないように思うのですが、そうはいかないのでしょうか?もしくは、赤血球が利用できる糖質が減って酸素供給が減るなど別の要因のために急激な低血糖状態が危険なのでしょうか?本来の代謝以外に薬やインシュリンの投与によって無理矢理変化を起こさせているので、ここでの脂質から生成されるケトン体がエネルギーとして利用されるというのがあてはまらない、つまり間に合わないということなんでしょうか?もし、既に他の場所にコメントされていたら、ごめんなさい。なかなかすべてを読むには時間がかかるものですから。^^ 失礼いたしました。
2010/03/12(Fri) 17:14 | URL | Pon | 【編集
Re: 低血糖とケトン体
Ponさん。

低血糖にケトン体、この問題は興味深いので、その内記事にさせていただきます。
とりあえず、血中ケトン体濃度の違いが鍵になりますね。
2010/03/12(Fri) 21:45 | URL | ドクター江部 | 【編集
混乱しています
楽しく読ませていただいています。糖尿病ではありませんがダイエットのためにまた、健康のために糖質を制限しています。ところで、糖質制限食についてはいろいろな流派(?)があるようで、少し混乱しています。質問をさせていただいてもよろしいでしょうか? 
以下のようなことは正しいのでしょうか?
① 甘いものを見るだけでインスリンが分泌される。
② アドレナリンなどによるバックアップシステムで血糖値を上昇させた場合、それでもインスリンが分泌されて体脂肪蓄積になる
③ 空腹時の運動は体脂肪を使われなくて、筋肉を消費させる。
④ カフェインによる血糖値の上昇はインスリンを分泌させて体脂肪の蓄積となる
2010/05/31(Mon) 14:31 | URL | みほ | 【編集
探していました
検索してきました。

糖尿病でダイエットがなかなかできなかった ひかりです
さっそく 糖質を少なく少なくに挑戦しています

森谷さんの本をかなり前に読んでいて、
別の方の( 糖尿病はご飯よりステーキを食べなさい)を2週間前にしり
体重がさがりつつあります

江部さんの本は昨日読み始めました。

クロワッサンは読んでいませんが森谷さんの考えとの差に
疑問があり探していました。

森谷さんは「ためしてガッテン」に出演しているようです(著書より)

ただ「糖尿病のため」に糖質を少なくするという 療法を知らないだけでは無いでしょうか?

 また、本日(H23-2-26) 日本TV系列 「所さんの目がテン!」で
糖質ぬきダイエットの実験していました 
途中でボーっとして課題のゲームが出来ないところも紹介していましたが、

 あくまでもダイエット であって 血糖値については紹介していません。


江部さんが「ためしてガッテン」に出演する時をお待ちしています。
2011/02/26(Sat) 19:15 | URL | ひかり | 【編集
ケトン体で酸性
でも、ケトン体が出ると血液が酸性になるなどの影響はないですか?
2011/10/13(Thu) 10:08 | URL | まま | 【編集
Re: ケトン体で酸性
まま さん。

インスリン作用が働いていれば、人体の緩衝作用で
補正されます。

例えば、私のケトン体値は300、400、800(基準値26~122)
と基準値よりはるかに高値ですが、PHは7.45です。
2011/10/13(Thu) 21:30 | URL | ドクター江部 | 【編集
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