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脂肪悪玉説は間違いだった!①
こんばんは。

月曜日の朝は、高雄病院京都駅前診療所で外来です。修学旅行生の団体で京都駅前、すごいことになってます。ヾ(゜▽゜)

大型バスは駐まるわ、タクシーは数珠繋ぎになるわ、駐車場は満員だわ・・・。お気に入りの隣のホテルの昼食バイキングも、修学旅行生貸し切りでなしです。

観光都市京都とは言いながら、えらい迷惑でございます。σ(=_=;)ヾ

新型インフルエンザ騒ぎでも、修学旅行自粛とはならないんですねえ。大量のタクシーのために駐車場から出るのに、なんと10分もかかってしまいました。

さて本日の本題です。

世の中、相変わらず、「糖尿病も肥満もメタボも心筋梗塞も全て脂肪の摂りすぎが原因である」という
「脂肪悪玉説」がまかり通っていますね。

当然、糖質制限食(低炭水化物食)は、相対的に高脂肪・高タンパク食になるから、常識的に考えて体に良くないという流れになりますね。

戦後、60年以上、世界中の文明国で常識として語られてきた「脂肪悪玉説」、この神話を今でも信じ込んでいる医師・栄養士がとても多いです。

勿論一般には、ほとんどの日本人が、この神話を信じておられることでしょう。しかしこの神話、根拠はあるのでしょうか?本当に正しいのでしょうか? (∵)?

で、まずは結論です。

「脂肪悪玉説神話」は、米国の大規模臨床試験で根底から覆されました。以下に示していく如く、信頼度の高いデータがすでに文献として報告されていますので、この事実を見つめて認める勇気があるか否かだけという段階です。

①米国の大規模介入試験
5万人弱の閉経女性を対象に、対照群を置き、平均8年間にわたって追跡。
「脂質熱量比率20%で強力に指導したグループは、対照群に比較して心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクを下げない」ことが、アメリカ医師会雑誌2006年2月8日号で報告されました。
JAMA. 2006;295:629-642. 643-654. 655-666.

アメリカ医師会雑誌は、権威ある医学雑誌の一つです。5万人、対照群を置いて8年間、というのはとても権威と価値のある研究です。

大変なお金と時間が必要であり、今後これほどの規模の研究は二度と行われないでしょう。従って最終結論といっても過言ではないと考えられますが、「脂肪を強力に制限しても、心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクは減らなかった」ということで、脂肪悪玉説は根底から否定されました。

②米国の大規模疫学研究
「米国の女性看護師82,802人を20年間追跡したところ、炭水化物が少なく脂肪とたんぱく質が多い食事でも、冠動脈疾患のリスクは上昇しなかった。」
このような内容の研究が、New England Journal of Medicine、2006年11月9日号に、ハーバード大学のグループにより報告されました。
Halton TL, et al. Low-carbohydrate-diet score and the risk of coronary heart disease in women. New England Journal of Medicine 2006;355:1991-2002.

ニューイングランド・ジャーナルも、権威ある医学雑誌の一つです。8万人、20年間という大規模な価値ある研究で、こちらも今後二度とできないでしょう。

論文を要約すると
『1980年、米国の女性看護師82,802人に対して、質問票を使った食事調査を行い、研究を開始した。
1980年から1998年までのあいだに、2~4年間隔で食事調査を6回実施し、一人一人の低炭水化物食の度合を得点化。
2000年まで20年間の追跡調査を行ったところ、1994人が心筋梗塞などの冠動脈疾患に罹患した。
解析の結果、「低炭水化物食得点」が上位10%のグループの冠動脈疾患の発生率は、下位10%のグループの0.94倍で有意差なし。
つまり、脂肪とたんぱく質が多く炭水化物が少ない食事をしているグループでも、心臓病のリスクは上昇しなかった。』

この論文により、低炭水化物食(糖質制限食)の長期間の安全性が確認されたと言えるでしょう。


続く


江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
初めてコメントします
この度 先生の本を購入し 糖質制限食を始めて 1週間経ちます。とても体調も良く 特に 悩まされていた下半身の痒みが殆どなくなり 驚いてみたり喜んでみたりしている最中です。本当にありがとうございます。

今のところ 食前の血糖値が 平均200ぐらいだったのが 現在 平均134
インスリンを打っていましたが 減らす事が出来ました。この調子で インスリンを打たなくても良くなるよう これからも精進したいと思います。

ところで先生に質問がありまして失礼ながらコメントに書かせて下さい。

大豆粉なのですが それを使用してパンを作って食べる事は良くないことなのでしょうか?
材料として 大豆粉(小麦粉の代わり) 塩 バター ラカントS(砂糖の代わり) イースト

上記の物しか使用しないのであれば 大豆粉パンは 口にしても良いように思うのですが・・・。

素人判断になりますので 先生の意見を是非 お聞きしたいと思います。

長文 失礼しました。
2009/05/18(Mon) 23:00 | URL | れき | 【編集
糖尿病ではない人の糖質の摂り方。
いつもブログ更新ありがとうございます。毎回楽しみにして、勉強させて頂いております。

私は糖尿病ではないのですが、アトピー性皮膚炎に悩まされていて、それを何とかしたいと模索していくなかで糖質制限食と出会いました。

江部先生や釜池先生の著書を読み、自分なりに糖質制限食を実施していました。

糖質制限を3ヶ月程続けた頃、血液検査を受ける機会があり結果を聞きに行った所、「重篤なタンパク質不足」と診断されてしまいました。担当医師のお話では糖質を控える事でエネルギーが足りなくなり、その足りないエネルギーをタンパク質を異化させることで賄っているという説明でした。併せてアドバイスとしてボディービルダーの方の例を挙げられ、「ボディビルをやっている人で晩御飯だけ糖質を摂るようにしている人がいます。タンパク質を温存して筋肉を維持するためです。」と教えてくれました。

私が糖質制限をしていた3ヶ月間は、結構果物を食べたりトマトなど糖質がある程度ある野菜を食べたり、そこまで厳しく制限していたつもりはないのですが、血液検査で出てしまっている以上ある程度炭水化物を摂るようにしようと計画しています。

今考えているのは米、パン、砂糖は
2009/05/19(Tue) 00:14 | URL | のらくろ | 【編集
すみません。途中で切れてしまいました…。
下のコメントで質問させてもらった、のらくろです。
…が、長すぎて途中で切れてしまいました。すみませんが続きをこちらに書かせて頂いきます…。


今考えているのは米、パン、砂糖は今まで通り控え、GI値の低い蕎麦やデュラムセモリナを主食とする方法です。

江部先生に質問したいのですが、この方法は代謝を改善して免疫力を高める上で妥当な方法と言えるでしょうか?

コメント2つにわたる程に長々と申し訳ありません。またお時間のある時にでもご回答頂けましたらありがたいです。
2009/05/19(Tue) 00:22 | URL | のらくろ | 【編集
大豆粉パン
れきさん。

自分で大豆粉パンを作って食べてる方は結構おられますよ。
大豆粉パンOKですのでれきさんもどうぞ。

2009/05/19(Tue) 08:18 | URL | 江部康二 | 【編集
たんぱく質
のらくろさん。

糖質制限食は高蛋白・高脂質食なので、
血液検査でたんぱく質不足という人は診たことがありません。
不思議ですね。

ともあれ、
のらくろさんは糖尿病ではないので、
仰有る通り、未精製の穀物を主食とされたらよいですね。

例えば「高雄病院食生活十箇条」です。い。

高雄病院食生活十箇条については
2009.4.22のブログ
「SNS糖質制限広場とNPO法人糖質制限食ネット・リボーン」をご参照ください。
2009/05/19(Tue) 08:26 | URL | 江部康二 | 【編集
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