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糖新生と肝臓
こんばんは。

昨夜は、九州から、はもしゃぶを送って頂いたのを食べました。赤ワインと焼酎もそれなりに飲みました。菓子職人さんのフォンダン・ショコラもいただきました。完全無欠の糖質制限な夕餉とデザートを美味しく楽しく賞味しました。

今朝の血糖値は89mg/dlと好調でした。 (^_^)

14日間の平均早朝空腹時血糖値は107mg/dlでした。

さて今回は、うさぎさんから、糖新生と肝臓についてコメント・質問をいただきました。


糖新生と肝臓

江部先生はじめまして。
いつも、ブログの更新を楽しみに拝見させていただいております。

昨年の初夏に主人が糖尿病と診断され、従来の治療法に疑問を持っていた中で糖質制限食のことを知りました。
糖質制限食に理解のある主治医の先生に診ていただきながら。糖質制限食と運動を取り入れたことで、主人の検査データは2~3ヶ月ですっかり良くなりました。薬は一切使用していません。
私も10年で体重が8キロほど増えてしまったので減量のために糖質制限食にして、すっかり昔の体型に戻りました。うれしいことに、金属アレルギーが出なくなり歯周病もよくなってきました。

糖尿病にも減量にも良い結果が出たので、知り合いの医師(外科医ですが)に、糖質制限食のことを話したところ、数週間後に『ハーパーの生化学』を見せながら「確かに、減量効果は大きいと思うけど、そんなことをしていては身体を壊すよ」と言われました。理由は、糖新生のときに、肝臓に負担がかかるからとのことでした。また、脂肪の比率が多くなることもよくないと、否定的な意見でした。

私も主人も、糖質制限食を始めて半年以上になりますが、肝機能はむしろ良くなっています。私は少し肝臓が弱いのですが、まったくの正常値になっています。
「肝臓に負担がかかって、身体を壊す」という感じはまったくしませんし、むしろ疲れにくくなり体調が良くなっているので、これからも糖質制限食を続けていくつもりなのですが、肝臓への負担についてはどのように考えたらよいでしょうか。

うさぎ | 2009.03.22(日)】


うさぎさん。コメントありがとうございます。

「糖質制限食に理解のある主治医の先生に診ていただきながら。糖質制限食と運動を取り入れたことで、主人の検査データは2~3ヶ月ですっかり良くなりました。薬は一切使用していません。
私も10年で体重が8キロほど増えてしまったので減量のために糖質制限食にして、すっかり昔の体型に戻りました。うれしいことに、金属アレルギーが出なくなり歯周病もよくなってきました。」


糖質制限食に理解のある主治医の先生でよかったですね。ヾ(^▽^)

薬一切使用せずに、血糖コントロール正常化、まあ糖質制限食なら当然と言えば当然なのですが、やっぱり嬉しいですね。うさぎさんも、減量成功、金属アレルギー・歯周病改善、素晴らしいです。(^-^)v(^-^)v

糖質制限食実践により、代謝全てが改善し、毛細血管にいたるまで血液サラサラになりますから、自然治癒力がおおいに高まり、ほとんどの症状が良い方に向かうようです。

「私も主人も、糖質制限食を始めて半年以上になりますが、肝機能はむしろ良くなっています。私は少し肝臓が弱いのですが、まったくの正常値になっています。」

上述の如く自然治癒力は高まるし、脂肪肝も治りますので、肝機能もウィルス性肝炎など以外は良くなることが多いです。

「知り合いの医師(外科医ですが)に、糖質制限食のことを話したところ、数週間後に『ハーパーの生化学』を見せながら『確かに、減量効果は大きいと思うけど、そんなことをしていては身体を壊すよ』と言われました。理由は、糖新生のときに、肝臓に負担がかかるからとのことでした。」

ハーパー生化学は私も参考にしています。英語苦手なので勿論訳本ですよ。(-_-;)
知り合いのドクター、従来の常識からのアドバイスですね。

従来の(誤った)常識はさておいて、歴史的経過と生理学的事実を素直に考えてみましょう。

組織的農耕が始まったのは、約1万年~1万4千年前ですが、世界的に広がり定着したのは、約4000年前です。人類が、ゴリラやチンパンジーと分かれたのが400~500万年前です。

その後、3属・17種の人類が栄枯盛衰を繰り返し、結局約20万年前に東アフリカで誕生したホモ・サピエンス(現世人類)だけが現存しているわけです。

ここで大切なこと、そして本質的なことは、3属・17種の人類は、全て狩猟・採集が生業だったということです。つまり、農耕が始まるまでの399万年間は、人類皆糖質制限食であり、ヒトは進化に要した時間の大部分で、狩猟・採集生活をしていたということです。

従って、現世人類の行動や生理・代謝を決める遺伝子セットは、狩猟・採集の生活条件に適応するようにプログラムされていると考えるのが自然です。

400万年の人類の進化の過程で、
<狩猟・採集期間>:<農耕期間>=1000対1で、
圧倒的に狩猟・採集期間のほうが長いのです。

即ち、人類は、本来穀物に依存して生きるような遺伝的システムは持っていなかったのに、人口増加を支えるため、やむを得ず穀物摂取が主食となっていったものと考えられます。まるで原罪を背負ったようなものですね。 (*_*)

食生活ならば、糖質制限食の方が人体の生理・代謝に適合するのは、進化の歴史からみて当然の結果なのです。 (^_^)

ご質問の件ですが、糖質を摂取したときは、血糖値が上昇し追加分泌のインスリンが出て、筋肉でブドウ糖を利用させます。食物吸収が終了した直後には、肝臓のグリコーゲン分解が、循環血液中に入るブドウ糖の主要な供給源です。

食後数時間が経過し、絶食状態が持続すると、ブドウ糖の供給源は、肝のグリコーゲン分解から糖新生に切り替わります。

糖質制限食の場合は、食事中でもある程度、肝臓の糖新生は行われています。

上述の歴史で考えると、399万年間全ての人類において肝臓の糖新生は毎日、日常的に行われていたことがわかります。

399万年間の人類の歴史では糖質制限食を摂取しているか、空腹や絶食や飢餓が日常的でしたので、肝臓は毎日糖新生を行い、よく働いてきたしそれだけのキャパシティーを持っているということです。

一方、膵臓β細胞は、399万年間、基礎分泌のインスリンは作ってましたが、追加分泌のインスリンが必要となることはまれでした。

実りの秋に、果物や栗など、比較的糖質含有量が多い食物を得たときだけ血糖値が上昇して、追加分泌のインスリンがでて、ブドウ糖を中性脂肪に変えて、来るべき冬に備えていたのです。

追加分泌が必要なことはまれでしたから、β細胞インスリン分泌能力は、それなりにしかありません。従って、農耕開始後、特に精製炭水化物以後は、毎日大量のインスリンを頻回に分泌し続けることとなり、おおいに負担となりました。

過剰のインスリンを分泌し続けたら、メタボリックシンドロームや肥満になります。β細胞が疲れ果ててインスリン分泌不足になれば、糖尿病を発症します。

結論です。

肝臓は、もともと能力がたっぷりあるし、399万年間適応してきたわけですが、膵臓β細胞は、農耕後4000年、特に精製炭水化物後の200年、能力をはるかに超える重労働を強いられてきたわけです。

肝臓と膵臓どちらも大切ですが、現在可哀想なのは、膵臓β細胞なのです。

「また、脂肪の比率が多くなることもよくないと、否定的な意見でした。」

米国の大規模介入試験の結果がアメリカ医学会雑誌2006年2月8日号で報告されました。
(JAMA. 2006;295:629-642. 643-654. 655-666.)
5万人弱の閉経女性を対象に、対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した極めて信頼度の高い研究において、「脂質熱量比率20%で強力に指導したグループは、対照群に比較して心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクを下げない」ことが明らかとなりました。

つまり、従来の「脂質を制限するとヘルシーという常識」が、根底から覆ったのです。

また、「米国の女性看護師82,802人を20年間追跡したところ、炭水化物が少なく脂肪とたんぱく質が多い食事でも、冠動脈疾患のリスクは上昇しなかった。」
このような内容の研究が、New England Journal of Medicine、2006年11月9日号にハーバード大学のグループにより報告されました。
(Halton TL, et al. Low-carbohydrate-diet score and the risk of coronary heart disease in women. New England Journal of Medicine 2006;355:1991-2002. )

即ち、20年間の研究で高脂質食でも心筋梗塞のリスクは上昇しないことが明らかとなりました。

まあ生魚・生肉(高脂質・高蛋白食)が主食だったころのイヌイットに心筋梗塞や糖尿病や癌がほとんど無かったのは有名な歴史的事実ですよね。

ということで、糖質制限食は相対的に高脂質・高蛋白食となりますが、米国の大規模な疫学的研究によれば、リスクはないということになりますね。


江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
大昔と同じ食事で
寿命も同じって事は
ないですよね?

先生の本は、二冊買いました
2009/03/23(Mon) 20:38 | URL | あかも | 【編集
すっきりしました^^
江部先生

さっそく、詳しいご説明をいただき感激です。これからも、美味しく楽しく糖質制限食を続けてまいります。

主人の主治医の先生もそうですが、米国で糖尿病の研究をされていたようなドクターは糖質制限食にも理解のある方が多いようですが、まだまだ一般的には古い認識のドクターが多いのが残念です。

私にハーパーの生化学を見せながら説明をしたドクターにも知って欲しいのですが、説明してもなかなか素直には受け入れてもらえないかもしれません。

昨年末に旅行に行った際、「糖尿病で普段は思いっきり食べることができないけれど、年に一度だけはお酒も少し飲むしお肉も食べることにしています」という糖尿病患者さんがいました。

日本の医学界の認識(常識)が変わって、糖尿病の患者さんが食事の時間をもっと楽しめるようになることを祈ります。

余談ですが、先々週から1週間ほど出張でアメリカに滞在したのですが、思いのほか糖質制限食がしやすかったです。メインディッシュの量がたっぷりなので、日本のように一皿余分にオーダーしなくてもよいですし、サラダの上にお肉やエビなど、好きなものを焼いてのせてくれるようなオプションがありました。もちろん、糖質の少ない葉野菜もたっぷりです。

また、米国ではカーボカウントが定着しているためだと思いますが、ごく普通の薬局で様々な種類の血糖測定器が販売されていましたし、本屋には食品別にカーボの量が一覧になっている本や料理本がたくさんありました。

一番印象的なお話としては、妊娠糖尿病になった方が、直ちに炭水化物(糖質)を制限するように指導され、無事に元気な赤ちゃんを出産されてました。ごく一般的な病院で指導されたそうです。米国では妊婦さんでも腎臓などに問題が無ければ糖質制限食は安全という認識なのだと理解しました。

日・米で大きな差を感じた出張になりました。



2009/03/24(Tue) 11:29 | URL | うさぎ | 【編集
糖質制限食
初めまして。検索でやって来ました。
糖尿病患者でなく非常に健康な63歳の男子で
体脂肪率10%、BMI21.6%です。
朝夕2食と週5日昼に500カロリーの運動をする生活を
5年ほど続けています。
朝は日本食でご飯1膳と魚と野菜と漬物です。
夕食は食べたいだけ食べています。
糖質は意識して最低限度食べるようにしていますが、制限食に近いです。
結果夕食前は脂肪を減らして血糖値を維持していて、
その時は尿のケトン体検査は弱陽性です。
これが両親から貰ったDNAに一番相応しい
ライフスタイルだと思っています。
欠点は身体が省エネモードになり手足が冷えることです。


2009/03/25(Wed) 23:17 | URL | ayhk | 【編集
こんにちわ。
糖新生が普通食の人よりは活発に起こりやすい糖質制限者において、肝臓が疲弊するという調査やエビデンスは無いと思うんですよね。実際、私は肝機能の数値がかなり改善しましたし、普通に元気なのでw
もし疲弊するのであれば数値に現れるのが自然でしょうから、今後も血液検査はしますが。
2015/03/12(Thu) 03:58 | URL | ひで | 【編集
Re: タイトルなし
ひで さん

人類は700万年の進化の歴史の過程で、
飢餓との戦いは日常です。

つまり糖新生は700万年間、日常的に行われていたので
肝臓は疲弊しないと思います。
2015/03/12(Thu) 21:01 | URL | ドクター江部 | 【編集
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