2009年02月26日 (木)
おはようございます。
今回は、久山町研究の続きです。
久山町で、1988年と2002年に40~79才の年齢層の80%近い住民を対象とした、75g経口血糖負荷試験を用いた糖尿病の有病率調査が以下です。*
IGTとIFG合わせて糖尿病予備軍です。**
男性
1988 2002
糖尿病 15.0 23.6%
IGT 19.2 21.6%
IFG 8.0 14.7%
合計 42.2 59.9%
女性
1988 2002
糖尿病 9.9 13.4%
IGT 18.8 21.3%
IFG 4.9 6.6%
合計 33.6 41.3%
2007年7月27日(金)毎日新聞朝刊
研究責任者の九州大学・清原裕教授も
「88年以後、運動や食事指導など手を尽くしたのに糖尿病は増える一方。どうすれば減るのか、最初からやり直したい」
とのコメントを述べておられます。
実際14年間の努力にも関わらず、糖尿病の確定診断がついた人が
男性15.0→23.6%
女性9.9→13.4%
と著明に増加しています。
また男性では、40歳以上の久山町住人の約6割が、予備軍を含めた耐糖能異常という、とんでもない数字に増えています。
厚生労働省の国民・健康栄養調査によれば
2002年の40才以上の日本男性の15.6%が糖尿病、
2002年の40才以上の日本女性の8.1%が糖尿病でした。
厚生労働省の調査では、糖尿病が強く疑われる人の定義は
<HbA1c6.1%以上、または質問票で「現在糖尿病の治療を受けている」と答えた人>
であり、75g経口ブドウ糖負荷試験をしているわけではありませんので、全く同列に比べることはできませんが、久山町で実施された14年間の食事指導・運動指導にも関わらず、糖尿病が増えたのは紛れもない事実です。
下記は厚生労働省の調査データ 1997→2002年の5年間を比較したものですが、驚くべきことにあまり増えていません。
日本全体男性 1997 2002
糖尿病 40才代 5.4 4.4%
50才代 14.2 14.0%
60才代 17.5 17.9%
70才代 11.3 21.3%
日本全体女性 1997 2002
糖尿病 40才代 5.3 3.6%
50才代 7.1 4.6%
60才代 10.6 11.5%
70才代 15.5 11.6%
単純比較はできないところはありますが、日本全体のデータより、食事療法・運動療法を徹底指導した久山町のデータの方が、増加率も有病率も圧倒的に高いというパラドックスが起こっています。ヾ(゜▽゜)
久山町で指導された食事療法・運動療法は、当然、日本糖尿病学会推奨のものです。
即ち、食事療法は、カロリー制限の高糖質食(糖質60%、脂質20%、タンパク質20%)です。
運動は本来、糖尿病発症予防に悪いわけが無いですね。
しかし日本糖尿病学会推奨の「糖質60%、脂質20%、タンパク質20%」で食事指導を行う限りは、運動療法***を少々頑張っても糖尿病の増加をくい止めることはできないということが、久山町研究ではっきり証明されたわけです。
さらに、食事指導をしていない日本全体のデータより、厳格な食事指導を実施した久山町住民の方が、糖尿病の増加率・有病率がはるかに高いということは、どういうことなのか?
これは普通に考えて、久山町で指導された高糖質食が、かえって糖尿病を増やしたとしか言いようがありません。
「カロリー制限重視の高糖質食で糖尿病が増えた。」ということが久山町研究における紛れもない事実です。
2002年の久山町のデータでは、40歳以上の成人男性の過半数が耐糖能異常という病気です。
これは、「健康人とは何か」という定義を見直さなくてはならないほどの異常事態です。
つまり久山町では、40歳以上の成人男性では、耐糖能異常があるほうが普通なので、それがない人は異常?ということにもなりかねません。
「高糖質食の危険性ここに極まれり」という感じです。(+_+)
特に精製炭水化物の摂取は、正常人でもブドウ糖ミニスパイクを生じ、膵臓のβ細胞に過大な負担をかけます。精製炭水化物の過剰摂取こそが、久山町で糖尿病を増加させた根本要因ではないかと私は考えています。
臨床医、糖尿病専門医、栄養師、看護師、保健婦・・・皆さん、久山町研究の結果をしっかり検討していただき高糖質食(特に精製炭水化物)の危険性、糖質制限食の有用性を認識して頂きたいものです。
*
清原裕,危険因子としての糖尿病
分子脳血管病 vol.6 no.1 2007 19-24
(清原裕教授 九州大学大学院医学研究院環境医学)
**
IGT:食後2時間血糖値が140mg/dl以上200mg/dl未満のもので
IFG:空腹時血糖値が110mg/dl以上で126mg/dl未満のもの。
***
運動療法の目安として1回15~30分間、1日2回。
1日の運動量として約1万歩、消費エネルギーとして160~240キロカロリーが、日本糖尿病学会推奨です。運動の慢性効果を期待するには、週3日以上の頻度で実施するのが望ましいそうです。
江部康二
今回は、久山町研究の続きです。
久山町で、1988年と2002年に40~79才の年齢層の80%近い住民を対象とした、75g経口血糖負荷試験を用いた糖尿病の有病率調査が以下です。*
IGTとIFG合わせて糖尿病予備軍です。**
男性
1988 2002
糖尿病 15.0 23.6%
IGT 19.2 21.6%
IFG 8.0 14.7%
合計 42.2 59.9%
女性
1988 2002
糖尿病 9.9 13.4%
IGT 18.8 21.3%
IFG 4.9 6.6%
合計 33.6 41.3%
2007年7月27日(金)毎日新聞朝刊
研究責任者の九州大学・清原裕教授も
「88年以後、運動や食事指導など手を尽くしたのに糖尿病は増える一方。どうすれば減るのか、最初からやり直したい」
とのコメントを述べておられます。
実際14年間の努力にも関わらず、糖尿病の確定診断がついた人が
男性15.0→23.6%
女性9.9→13.4%
と著明に増加しています。
また男性では、40歳以上の久山町住人の約6割が、予備軍を含めた耐糖能異常という、とんでもない数字に増えています。
厚生労働省の国民・健康栄養調査によれば
2002年の40才以上の日本男性の15.6%が糖尿病、
2002年の40才以上の日本女性の8.1%が糖尿病でした。
厚生労働省の調査では、糖尿病が強く疑われる人の定義は
<HbA1c6.1%以上、または質問票で「現在糖尿病の治療を受けている」と答えた人>
であり、75g経口ブドウ糖負荷試験をしているわけではありませんので、全く同列に比べることはできませんが、久山町で実施された14年間の食事指導・運動指導にも関わらず、糖尿病が増えたのは紛れもない事実です。
下記は厚生労働省の調査データ 1997→2002年の5年間を比較したものですが、驚くべきことにあまり増えていません。
日本全体男性 1997 2002
糖尿病 40才代 5.4 4.4%
50才代 14.2 14.0%
60才代 17.5 17.9%
70才代 11.3 21.3%
日本全体女性 1997 2002
糖尿病 40才代 5.3 3.6%
50才代 7.1 4.6%
60才代 10.6 11.5%
70才代 15.5 11.6%
単純比較はできないところはありますが、日本全体のデータより、食事療法・運動療法を徹底指導した久山町のデータの方が、増加率も有病率も圧倒的に高いというパラドックスが起こっています。ヾ(゜▽゜)
久山町で指導された食事療法・運動療法は、当然、日本糖尿病学会推奨のものです。
即ち、食事療法は、カロリー制限の高糖質食(糖質60%、脂質20%、タンパク質20%)です。
運動は本来、糖尿病発症予防に悪いわけが無いですね。
しかし日本糖尿病学会推奨の「糖質60%、脂質20%、タンパク質20%」で食事指導を行う限りは、運動療法***を少々頑張っても糖尿病の増加をくい止めることはできないということが、久山町研究ではっきり証明されたわけです。
さらに、食事指導をしていない日本全体のデータより、厳格な食事指導を実施した久山町住民の方が、糖尿病の増加率・有病率がはるかに高いということは、どういうことなのか?
これは普通に考えて、久山町で指導された高糖質食が、かえって糖尿病を増やしたとしか言いようがありません。
「カロリー制限重視の高糖質食で糖尿病が増えた。」ということが久山町研究における紛れもない事実です。
2002年の久山町のデータでは、40歳以上の成人男性の過半数が耐糖能異常という病気です。
これは、「健康人とは何か」という定義を見直さなくてはならないほどの異常事態です。
つまり久山町では、40歳以上の成人男性では、耐糖能異常があるほうが普通なので、それがない人は異常?ということにもなりかねません。
「高糖質食の危険性ここに極まれり」という感じです。(+_+)
特に精製炭水化物の摂取は、正常人でもブドウ糖ミニスパイクを生じ、膵臓のβ細胞に過大な負担をかけます。精製炭水化物の過剰摂取こそが、久山町で糖尿病を増加させた根本要因ではないかと私は考えています。
臨床医、糖尿病専門医、栄養師、看護師、保健婦・・・皆さん、久山町研究の結果をしっかり検討していただき高糖質食(特に精製炭水化物)の危険性、糖質制限食の有用性を認識して頂きたいものです。
*
清原裕,危険因子としての糖尿病
分子脳血管病 vol.6 no.1 2007 19-24
(清原裕教授 九州大学大学院医学研究院環境医学)
**
IGT:食後2時間血糖値が140mg/dl以上200mg/dl未満のもので
IFG:空腹時血糖値が110mg/dl以上で126mg/dl未満のもの。
***
運動療法の目安として1回15~30分間、1日2回。
1日の運動量として約1万歩、消費エネルギーとして160~240キロカロリーが、日本糖尿病学会推奨です。運動の慢性効果を期待するには、週3日以上の頻度で実施するのが望ましいそうです。
江部康二
地元の旧帝国大学の研究とあらば協力して当たり前というのが町民のみなさんの心情だろうと思います。
しかし、研究に協力したばかりに、、、
糖質制限的には有意義な研究結果ではありますが、「最初からやり直したい」のあと、現在はどうやり直されたのかが気にかかるところであります。
この結果から「糖質(精製炭水化物)の過剰摂食が原因」という仮説をたてていただければ、町民のみなさんの健康のためにも、また社会的にもさらに有意義な研究となるのですが。
しかし、研究に協力したばかりに、、、
糖質制限的には有意義な研究結果ではありますが、「最初からやり直したい」のあと、現在はどうやり直されたのかが気にかかるところであります。
この結果から「糖質(精製炭水化物)の過剰摂食が原因」という仮説をたてていただければ、町民のみなさんの健康のためにも、また社会的にもさらに有意義な研究となるのですが。
糖質ポリスさん。
私も全く同感です。
私も全く同感です。
2009/02/26(Thu) 16:47 | URL | 江部康二 | 【編集】
こんばんは。
先日は丁寧なメールの返信、ありがとうございます!!
早速、また質問させてください_(._.)_
カロリーゼロ飲料について質問です。
こちらのブログで血糖値を上げない甘味料は勉強させてもらいました。なのでたまにペプシネックスなどを飲んでいます。
最近知ったカルピスゼロがとてもおいしかったのですが、
カロリーゼロなのに栄養成分では
(100mlあたり)エネルギー0kcal、たんぱく質0.27g、脂質0g、炭水化物1.9g、ナトリウム28mg、糖類0g
でした。
甘味料は、エリストール、アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物、アセスルファムカリウム、スクラロースと、すべて
血糖値を上げないものばかりですよね。
原材料には脱脂粉乳、乳酸菌飲料が入っているので
これが炭水化物の原因と思うのですが、これらは血糖に影響しますよね?
せっかくゼロ飲料をみつけられたのに残念です。
カロリーゼロでも炭水化物がゼロではないものは血糖に影響すると考えていいでしょうか?
あと、おいしいあたりめを見つけたんです。セブンイレブンの辛口あたりめ!45kcalで炭水化物0.2g。しかし、原材料名にトレハロースと書いてあるんです。0.2gだからトレハロースの値は少ない?と思っているんですが。血糖値の上昇を考えると食塩のみのあたりめの方がいいでしょうか。。
大丈夫だったら結構おいしいので食べてみてほしいです。
先日は丁寧なメールの返信、ありがとうございます!!
早速、また質問させてください_(._.)_
カロリーゼロ飲料について質問です。
こちらのブログで血糖値を上げない甘味料は勉強させてもらいました。なのでたまにペプシネックスなどを飲んでいます。
最近知ったカルピスゼロがとてもおいしかったのですが、
カロリーゼロなのに栄養成分では
(100mlあたり)エネルギー0kcal、たんぱく質0.27g、脂質0g、炭水化物1.9g、ナトリウム28mg、糖類0g
でした。
甘味料は、エリストール、アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物、アセスルファムカリウム、スクラロースと、すべて
血糖値を上げないものばかりですよね。
原材料には脱脂粉乳、乳酸菌飲料が入っているので
これが炭水化物の原因と思うのですが、これらは血糖に影響しますよね?
せっかくゼロ飲料をみつけられたのに残念です。
カロリーゼロでも炭水化物がゼロではないものは血糖に影響すると考えていいでしょうか?
あと、おいしいあたりめを見つけたんです。セブンイレブンの辛口あたりめ!45kcalで炭水化物0.2g。しかし、原材料名にトレハロースと書いてあるんです。0.2gだからトレハロースの値は少ない?と思っているんですが。血糖値の上昇を考えると食塩のみのあたりめの方がいいでしょうか。。
大丈夫だったら結構おいしいので食べてみてほしいです。
2009/02/27(Fri) 01:14 | URL | 雫 | 【編集】
雫さん。
<炭水化物=糖質+食物繊維>
ですので
「 カルピスゼロ(100mlあたり)
エネルギー0kcal、たんぱく質0.27g、脂質0g、炭水化物1.9g、ナトリウム28mg、糖類0g」
炭水化物1.9gから食物繊維をひいたら微々たる糖質ですので、飲んで大丈夫です。
食物繊維はカロリーゼロで血糖値も上昇させません。
「セブンイレブンの辛口あたりめ!45kcalで炭水化物0.2g。」
これも同様に、糖質はごく微量ですので、問題ありませんよ。
<炭水化物=糖質+食物繊維>
ですので
「 カルピスゼロ(100mlあたり)
エネルギー0kcal、たんぱく質0.27g、脂質0g、炭水化物1.9g、ナトリウム28mg、糖類0g」
炭水化物1.9gから食物繊維をひいたら微々たる糖質ですので、飲んで大丈夫です。
食物繊維はカロリーゼロで血糖値も上昇させません。
「セブンイレブンの辛口あたりめ!45kcalで炭水化物0.2g。」
これも同様に、糖質はごく微量ですので、問題ありませんよ。
2009/02/27(Fri) 08:08 | URL | 江部康二 | 【編集】
ありがとうございます。
微々たる糖質なら、血糖に影響はないのですね。
炭水化物の中に食物繊維が入ってると知りませんでした^^;無知すぎですね。
よかったです。
小腹がすいた時に食べたかったので。
早速、セブンに行ってきます!!
いつも、ありがとうございます。
微々たる糖質なら、血糖に影響はないのですね。
炭水化物の中に食物繊維が入ってると知りませんでした^^;無知すぎですね。
よかったです。
小腹がすいた時に食べたかったので。
早速、セブンに行ってきます!!
いつも、ありがとうございます。
2009/02/27(Fri) 12:35 | URL | 雫 | 【編集】
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