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イヌイットと癌
おはようございます。道の水溜まりに氷がはっています。今日もまたまた寒い京都です。

お正月はずっと家にいたので、以前からずっと興味があったけど、なかなか解らなかった、「イヌイットと癌」について、ネットで調べてみました。

それまでも日本語のサイトをいろいろ検索していたのですが、めぼしいものは見つからずあきらめかけていたのですが…(-_-;)、

意を決して苦手の英文サイトを覗いて見ました。そしたら、結構沢山の文献の要約が見つかりました。(⌒o⌒)v

中でも、ランセットという英国の権威ある医学雑誌に、興味深い論文が掲載されたのを見つけました。(*)PubMed(米国国立生物工学情報センターが公開する医学文献データベース)で探してやっとその要約に辿り着きました。今は、論文本体を手に入れようとしているところです。

が、生来のせっかちなので、とりあえず以下要約の訳を記事にしてみました。

<ランセット論文 要約>

「イヌイットは、アラスカ、カナダ北西、グリーンランドの極地に住んでいる。20世紀初頭までは、イヌイットには、悪性腫瘍はほとんど存在しないと信じられていたが、平均余命がのびてきて異なるパターンを呈してきた。

EBウィルスによる鼻咽頭と唾液腺の癌のハイリスク、白人に多い癌(前立腺癌、精巣癌、造血系癌)のロウリスクである。遺伝的・環境的要因が共にこのパターンに関わっている。

20世紀の後半、 イヌイット社会でライフスタイル、生活状況に大きな変化があった。そして喫煙、食事、生殖性因子の変化のあと、ライフスタイルに相関する腫瘍、特に肺癌、大腸癌、乳癌がかなり増加した。

この論文は、イヌイット集団における癌の疫学の最近の知識を、イヌイットタイプの癌の特性を強調して簡単に要約している。」


20世紀初頭までは、伝統的食生活(糖質制限食)が守られており、癌はかなり少なかったようです。
この頃までは小麦など穀物は皆無で、糖質摂取はほとんどなしの食生活です。

その後欧米人との交流が徐々に頻回となり、EBウィルスも外部からイヌイット社会に持ち込まれたのでしょう。免疫がなかった分と民族的特性で、EBウィルスによる鼻咽頭と唾液腺の癌が急速に増えたのでしょう。

1910年代にハドソン湾会社などの交易会社がカナダの東部極北地帯へと進出し、1920年代に北ケベックの各地に毛皮交易所が設置されました。しかし、この時点(1950年頃まで)では欧米白人型の癌はまだ少なかったようです。

食生活も徐々に欧米的なもの(例えばバノクと呼ばれる無発酵パン)が入ってきます。バノクが日常食として定着していったのは、1920年代と思われます。

交流が活発になり約40~50年が経過した1950年代からは、欧米型の癌(肺癌、大腸癌、乳癌)が増加しています。

「イヌイットと癌」というテーマに関して、少ないという説や欧米と変わらないという説が入り乱れていて、私も困っていたのですが、ランセットの論文の要約のように歴史的に整理するととても解りやすくなりました。

結論です。
①イヌイットが伝統的食生活(糖質制限食)を守っている時は、癌は少なかった。
②EBウィルス初感染以後、鼻咽頭と唾液腺の癌が急速に増加し、他民族より多い。
②食生活や社会生活などライフスタイルの変化と共に、徐々に欧米型の癌が増えていった。

何だかとってもスッキリしました。お正月に仕事した甲斐がありました。
「糖質制限食による癌予防」おおいに可能性がでてきましたね。(^-^)v(^-^)v

江部康二



Lancet Oncol. 2008 Sep;9(9):892-900.
Cancer patterns in Inuit populations.Friborg JT, Melbye M.
Department of Epidemiology Research, Statens Serum Institut, Copenhagen, Denmark.


Abstract
Inuit people inhabit the circumpolar region, with most living in Alaska, northwest Canada, and Greenland. Although malignant diseases were believed to be almost non-existent in Inuit populations during the beginning of the 20th century, the increasing life expectancy within these populations showed a distinct pattern, characterised by a high risk of Epstein-Barr virus-associated carcinomas of the nasopharynx and salivary glands, and a low risk of tumours common in white populations, including cancer of the prostate, testis, and haemopoietic system. Both genetic and environmental factors seem to be responsible for this pattern. During the second half of the 20th century, Inuit societies underwent major changes in lifestyle and living conditions, and the risk of lifestyle-associated tumours, especially cancers of the lung, colon, and breast, increased considerably after changes in smoking, diet, and reproductive factors. This Review will briefly summarise the current knowledge on cancer epidemiology in Inuit populations, with emphasis on the characteristic Inuit types of cancer.


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
全粒粉パスタ
やっぱり 糖質制限食は、推奨されるべきですね。
人間の原点に戻った食事は身体にやさしいのですね。
12月のコメントで負荷試験の結果『正常人ですね』と 言って頂いて 気持ちが楽になったひまわりです。
今年も よろしくお願いします。
あれから 1日1食の主食を玄米にかえて 実行中です。お陰様で 体重7㎏ 体脂肪も9%落ちました。
日々食品成分表を見ながら 買い物しています。
結構 糖質って入っているのね~と 勉強の日々です。そこで 最近 《全粒粉パスタ》を よく見かけるようになりました。日本製では、ないようなのですが・・ これって どうなのでしょうか?
また 時間の空いた時にでも よろしくお願いします。 
2009/01/14(Wed) 11:17 | URL | ひまわり | 【編集
ファビノールについて
江部先生こんばんは。ゆうです。
遅くなりましたが今年もよろしくお願いいたします。

さて、最近「ファビノール」なる商品の広告をよく目にします。
なんでも白いんげん豆の抽出物で、アミラーゼを阻害し、でんぷんが分解されるのを止める働きがあるそうで、
・体脂肪が気になる方
・パン、ご飯などの炭水化物が好きな方
・食事制限が苦手な方
におすすめなのだそうです。

お尋ねしたいのは、この商品をあくまでも健康食品ととらえればよいのか、その割に医学的な作用も謳っている感じがするので薬ととらえればよいのかということです。
もしかしたらこの広告を見た糖尿人の中にはその点をあまり考えないでこれは糖尿にも良いこも!と飛びつく人もいるかと思うのですが。

お時間のある時でかまいませんのでよろしくお願いいたします。
失礼いたします。
2009/01/14(Wed) 18:14 | URL | ゆう | 【編集
訂正です
文中に
もしかしたらこの広告を見た糖尿人の中にはその点をあまり考えないでこれは糖尿にも良いこも!と飛びつく人もいるかと思うのですが。
とありますのは
もしかしたらこの広告を見た糖尿人の中にはその点をあまり考えないでこれは糖尿にも良いかも!と飛びつく人もいるかと思うのですが。
の間違いです。
お詫びして訂正いたします。
すみませんでした。
2009/01/14(Wed) 18:20 | URL | ゆう | 【編集
全粒粉パスタ
ひまわりさん。

全粒粉パスタもGIは低いので、
糖尿人には無理でも、正常人には良いと思いますよ。
2009/01/15(Thu) 18:23 | URL | 江部康二 | 【編集
白インゲン豆抽出物
ゆうさん。

 白いんげん豆抽出物は、αアミラーゼの働きを抑制することで、でんぷんの分解を遅らせ、吸収をゆっくりさせ食後の高血糖を防いでくれることをうたっています。
しかし所詮は健康食品のレベルです。

グルコバイやベイスンのような、医学的臨床試験を行った歴としたデータがあるわけではありませんので多くは期待できません。。
2009/01/15(Thu) 18:37 | URL | 江部康二 | 【編集
了解です
よく解りました。
お忙しいところ本当にありがとうございました。

失礼いたします。
2009/01/16(Fri) 00:54 | URL | ゆう | 【編集
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