2009年01月09日 (金)
おはようございます。
「アトキンス式ダイエット(低炭水化物ダイエット)と糖質制限食は同じなのか、違うのか?」
という質問をよく受けますので説明したいと思います。
まずは言葉の定義からですが、「炭水化物=糖質+食物繊維」です。
食物繊維は、人体に吸収されず血糖値も上げません。即ち、血糖値を上昇させるのは糖質ですので、本ブログではもっぱら糖質を使用します。
糖質を摂取すると、消化管から吸収されたブドウ糖は、門脈血からまず肝臓に約50%取り込まれて、それ以外が血液の大循環に回ります。
また、糖質を摂食して血糖値が上昇すれば、正常人では速やかにインスリンが追加分泌されます。肝臓に取り込まれなかったブドウ糖は、肝静脈から血中に入り、動脈血中に入ったブドウ糖は、インスリン追加分泌により骨格筋や脂肪細胞に取り込まれます。
肝に取り込まれたブドウ糖は、インスリンによりグリコーゲンとして蓄えられます。筋肉細胞などに取り込まれたブドウ糖は、エネルギー源として利用されたあとグリコーゲンとして蓄えられます。
しかし、余った血糖は中性脂肪に変えられ、脂肪組織に貯蔵され肥満につながりますので、インスリンは、肥満ホルモンと呼ばれるわけです。
ここで大切なのは、血糖値を急速に上昇させるのは、糖質・タンパク質・脂質の3大栄養素のうち、糖質だけという生理学的事実です。
糖質を摂取しなければ、血糖値はあまり上昇せず、インスリンの分泌も少量ですむので、肥満もしません。
この基本的な考えは、アトキンス式ダイエット(低炭水化物ダイエット)と糖質制限食の理論は同一であり、両者共に、糖尿病治療にもダイエットにも、著明な効果があります。
違う点で言うと、糖質制限食は、糖尿病治療のために考え出されたものです。現在まで高雄病院で400人以上の入院患者さん、1000人以上の外来患者さんのデータを検証し積み重ね、学術的な立場で糖質制限食の治療効果を確立させました。
従って、糖尿病患者さんと糖質制限食という観点においては、高雄病院には、世界で最も多くのデータが揃っていると思います。
アトキンス式低炭水化物ダイエットの場合は、文字通りダイエットを目的に考え出されたもので、外来通院患者さんのデータや、肥満改善のデータは豊富にありますが、高雄病院のように、糖尿病入院患者さんの詳細な学術的データはありません。
1999年に私の兄、江部洋一郎が高雄病院で初めて糖質制限食を開始した時は、「シュガーバスター」「砂糖病―甘い麻薬の正体」といった本や、探検家の植村直己さんのイヌイットの村での食生活体験記、愛媛の同級生釜池豊秋先生との会談・・・、などを参考にして出発したようです。
その後しばらくして、私が「アトキンス博士のローカーボダイエット」同朋舎 (2000/10)のことを知り、2002年頃に手に入れて読んでみました。その結果、サプリメントや病原性イースト菌の話など、一部内容は、高雄病院の糖質制限食とは乖離していますが、基本線は同じであると思いましたし、参考にもなりました。
さらに「バーンスタイン医師の糖尿病の解決」メディカル トリビューン(2005/12)が出て、こちらは著者が1型糖尿病ということもあり、糖尿病治療食としての糖質制限食という意味で、非常に参考になりました。バーンスタイン医師は、1972年頃から糖質制限食を始められて、1999年に米国で原本を出版されています。
糖質制限食を実践していく中で、糖尿病のみならず、肥満、メタボリックシンドローム、脂質異常症、アレルギー疾患など、生活習慣病全般に効果があることがわかりました。
糖質制限食により、代謝全てが改善するので、人体の自然治癒力が高まると考えられます。また血糖値、脂質がコントロール良好となるので、血流が毛細血管にいたるまで改善すると考えられます。
江部康二
「アトキンス式ダイエット(低炭水化物ダイエット)と糖質制限食は同じなのか、違うのか?」
という質問をよく受けますので説明したいと思います。
まずは言葉の定義からですが、「炭水化物=糖質+食物繊維」です。
食物繊維は、人体に吸収されず血糖値も上げません。即ち、血糖値を上昇させるのは糖質ですので、本ブログではもっぱら糖質を使用します。
糖質を摂取すると、消化管から吸収されたブドウ糖は、門脈血からまず肝臓に約50%取り込まれて、それ以外が血液の大循環に回ります。
また、糖質を摂食して血糖値が上昇すれば、正常人では速やかにインスリンが追加分泌されます。肝臓に取り込まれなかったブドウ糖は、肝静脈から血中に入り、動脈血中に入ったブドウ糖は、インスリン追加分泌により骨格筋や脂肪細胞に取り込まれます。
肝に取り込まれたブドウ糖は、インスリンによりグリコーゲンとして蓄えられます。筋肉細胞などに取り込まれたブドウ糖は、エネルギー源として利用されたあとグリコーゲンとして蓄えられます。
しかし、余った血糖は中性脂肪に変えられ、脂肪組織に貯蔵され肥満につながりますので、インスリンは、肥満ホルモンと呼ばれるわけです。
ここで大切なのは、血糖値を急速に上昇させるのは、糖質・タンパク質・脂質の3大栄養素のうち、糖質だけという生理学的事実です。
糖質を摂取しなければ、血糖値はあまり上昇せず、インスリンの分泌も少量ですむので、肥満もしません。
この基本的な考えは、アトキンス式ダイエット(低炭水化物ダイエット)と糖質制限食の理論は同一であり、両者共に、糖尿病治療にもダイエットにも、著明な効果があります。
違う点で言うと、糖質制限食は、糖尿病治療のために考え出されたものです。現在まで高雄病院で400人以上の入院患者さん、1000人以上の外来患者さんのデータを検証し積み重ね、学術的な立場で糖質制限食の治療効果を確立させました。
従って、糖尿病患者さんと糖質制限食という観点においては、高雄病院には、世界で最も多くのデータが揃っていると思います。
アトキンス式低炭水化物ダイエットの場合は、文字通りダイエットを目的に考え出されたもので、外来通院患者さんのデータや、肥満改善のデータは豊富にありますが、高雄病院のように、糖尿病入院患者さんの詳細な学術的データはありません。
1999年に私の兄、江部洋一郎が高雄病院で初めて糖質制限食を開始した時は、「シュガーバスター」「砂糖病―甘い麻薬の正体」といった本や、探検家の植村直己さんのイヌイットの村での食生活体験記、愛媛の同級生釜池豊秋先生との会談・・・、などを参考にして出発したようです。
その後しばらくして、私が「アトキンス博士のローカーボダイエット」同朋舎 (2000/10)のことを知り、2002年頃に手に入れて読んでみました。その結果、サプリメントや病原性イースト菌の話など、一部内容は、高雄病院の糖質制限食とは乖離していますが、基本線は同じであると思いましたし、参考にもなりました。
さらに「バーンスタイン医師の糖尿病の解決」メディカル トリビューン(2005/12)が出て、こちらは著者が1型糖尿病ということもあり、糖尿病治療食としての糖質制限食という意味で、非常に参考になりました。バーンスタイン医師は、1972年頃から糖質制限食を始められて、1999年に米国で原本を出版されています。
糖質制限食を実践していく中で、糖尿病のみならず、肥満、メタボリックシンドローム、脂質異常症、アレルギー疾患など、生活習慣病全般に効果があることがわかりました。
糖質制限食により、代謝全てが改善するので、人体の自然治癒力が高まると考えられます。また血糖値、脂質がコントロール良好となるので、血流が毛細血管にいたるまで改善すると考えられます。
江部康二
お聞きしたいことがあります。
朝バナナは糖尿の人にはいいのですか?
悪いのですか?
朝バナナは糖尿の人にはいいのですか?
悪いのですか?
2009/01/09(Fri) 10:57 | URL | 玲 | 【編集】
玲さん。
バナナは数ある果物の中でも、最も
糖質含有量が多いです。
バナナ1本が約170gで糖質が36.4g入ってます。
1gの糖質が3mg血糖値を上昇させます。
従ってバナナは穀物に次いで血糖値を上げやすい食品なので、糖尿病にはよくありません。
バナナは数ある果物の中でも、最も
糖質含有量が多いです。
バナナ1本が約170gで糖質が36.4g入ってます。
1gの糖質が3mg血糖値を上昇させます。
従ってバナナは穀物に次いで血糖値を上げやすい食品なので、糖尿病にはよくありません。
2009/01/09(Fri) 15:09 | URL | 江部康二 | 【編集】
本日、Botanicaに食事へいってきました。
あのコースであの糖質量、、、ちょっと信じられませんよねw
江部先生とあらてつさんのお名前をお借りして予約したからなのかシェフが挨拶に来てくれて最後に記念撮影までしてもらいました。
あんなに美味いもの食えるなんてなんか糖尿病になってよかったなぁって最近物騒なことを思ってしまいます。
ちょっとこの記事には関係ないかもしれないですね。
すいません。
では、これからも勉強させていただきますのでよろしくお願いします。
あのコースであの糖質量、、、ちょっと信じられませんよねw
江部先生とあらてつさんのお名前をお借りして予約したからなのかシェフが挨拶に来てくれて最後に記念撮影までしてもらいました。
あんなに美味いもの食えるなんてなんか糖尿病になってよかったなぁって最近物騒なことを思ってしまいます。
ちょっとこの記事には関係ないかもしれないですね。
すいません。
では、これからも勉強させていただきますのでよろしくお願いします。
初めまして。もう何年もブログを読ませて頂いていますが、書き込みは初めてです。
アトキンス式を含む「ローカーボダイエット」ですが、日本ではあれは「食物繊維」を摂らないから駄目だという方がいらっしゃるのに気が付きました。
先生が書かれているように日本では「炭水化物=糖質+食物繊維」ですが、(私の在住している)オーストラリアでは「炭水化物=糖類(糖質ではない)+澱粉」という考え方で、食物繊維(Dietary Fibre)は炭水化物(Carbohydrate)とは別項目で成分表も表示されています。
つまり、日本で言う「糖質制限」は少なくともオーストラリアにおいては「炭水化物制限」と全く同じであることを意味します。
すでにご存知だとは思いますし、こんな古いエントリーに今頃コメントを入れて申し訳ありません。
ただ、この表記基準の違いを知らずに海外の「炭水化物制限」を議論する方がネットの中には多いようですので、是非、先生のお時間があります時にでも、周知徹底していただけたらいらぬ議論も減るのではないかと思い、書かせて頂きました。
アトキンス式を含む「ローカーボダイエット」ですが、日本ではあれは「食物繊維」を摂らないから駄目だという方がいらっしゃるのに気が付きました。
先生が書かれているように日本では「炭水化物=糖質+食物繊維」ですが、(私の在住している)オーストラリアでは「炭水化物=糖類(糖質ではない)+澱粉」という考え方で、食物繊維(Dietary Fibre)は炭水化物(Carbohydrate)とは別項目で成分表も表示されています。
つまり、日本で言う「糖質制限」は少なくともオーストラリアにおいては「炭水化物制限」と全く同じであることを意味します。
すでにご存知だとは思いますし、こんな古いエントリーに今頃コメントを入れて申し訳ありません。
ただ、この表記基準の違いを知らずに海外の「炭水化物制限」を議論する方がネットの中には多いようですので、是非、先生のお時間があります時にでも、周知徹底していただけたらいらぬ議論も減るのではないかと思い、書かせて頂きました。
2015/04/09(Thu) 17:55 | URL | dabo_gc | 【編集】
dabo_gc さん
私も、よく知りませんでした。
貴重な情報をありがとうございます。
私も、よく知りませんでした。
貴重な情報をありがとうございます。
2015/04/10(Fri) 08:19 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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