2009年01月06日 (火)
おはようございます。
今日は昨日の続き、人類の食生活3段階と血糖値シリーズの3回目で最終回です。
組織的農耕が始まったのは、約1万年~1万4千年前ですが、世界的に広がり定着したのは、約4000年前と考えられます。
<精製炭水化物以後>
さらに18世紀に欧米で、小麦の精製技術が発明されます。白いパンの登場です。日本では、江戸中期には白米の習慣が定着していきます。
すなわち、ここ200年~300年間、世界で精製された炭水化物が摂取されるようになりました。現代では、世界中の多くの国で、主食は白いパンか白米などの精製された穀物です。
精製された炭水化物は、未精製のものに比して、さらに急峻に血糖値を上昇させます。
これらを食べると、空腹時血糖値が100mgとして、食後血糖値は160~170mgまで上昇します。
血糖値上昇の幅は60~70mgもあります。これほど急激に血糖値を上昇させる食品は、400万年の人類史上、類をみないものです。
追加分泌のインスリンは、未精製穀物摂取時に比し、さらに大量に分泌せざるを得ません。特に近年のジャンクフード(*)の増加がインスリン過剰分泌を生じさせています。
インスリンを大量に分泌し続けて40~50年、膵臓が疲弊すれば糖尿病になります。インスリン分泌能力が高い人は、さらに出し続けて肥満・メタボリックシンドロームになります。
人体にはホメオスタシス(恒常性)というものがあり、できるだけ変化が少なく体内を一定の状態に保とうとします。
食後血糖値の変化をみたとき、農耕が始まる前(糖質制限食)だと恒常性が保たれ、玄米や全粒粉のパンだとボチボチで、白米や白パンだとかなり乱れることがわかります。
人類の血糖値の恒常性は、399万年間保たれていましたが、その変動幅は、農耕開始後3800年間2倍程度となり、精製炭水化物摂取が始まったここ200年はその幅は3倍となり、インスリンを大量・頻回に分泌せざるを得なくなったのです。
糖尿病の人が糖質を摂取すると、未精製の穀物でさえも、食後血糖値は軽く200mgを超えてきます。この急峻な食後高血糖のことを「ブドウ糖スパイク」とよび、糖尿病の人で動脈硬化が生じる元凶となります。
精製炭水化物を摂取した時に正常の人でも生じる食後血糖値が160mg、170mgという状態を、私は「ブドウ糖ミニスパイク」と名付けました。
このブドウ糖ミニスパイクが、生体の恒常性をかく乱してアレルギー疾患を悪化させたり、将来の生活習慣病のもととなります。
過去世界中にいろんな食事療法がありましたが、経験的に有効とされているものは、玄米菜食、ゲルソン療法、甲田療法など基本的にブドウ糖ミニスパイクが少ないという一点で一致しています。
私は現在、世界に氾濫する生活習慣病の元凶は、精製炭水化物やジャンクフードによるグルコースミニスパイクとインスリン過剰分泌と考えています。
江部康二
(*)ジャンクフード
ジャンクフード(junk food)とは、エネルギー(カロリー)は高いが、他の栄養素であるビタミンやミネラルや食物繊維があまり含まれない食品のこと。「ジャンク」とは、「がらくた」・「屑」の意。
ファーストフードのハンバーガーやドーナツ、ポテトチップス・ポップコーンなどのスナック菓子全般に多い。 清涼飲料水には砂糖が重量の10%と大量に添加された飲み物も多く、こういった食品も典型的なジャンクフードである。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から一部引用)
今日は昨日の続き、人類の食生活3段階と血糖値シリーズの3回目で最終回です。
組織的農耕が始まったのは、約1万年~1万4千年前ですが、世界的に広がり定着したのは、約4000年前と考えられます。
<精製炭水化物以後>
さらに18世紀に欧米で、小麦の精製技術が発明されます。白いパンの登場です。日本では、江戸中期には白米の習慣が定着していきます。
すなわち、ここ200年~300年間、世界で精製された炭水化物が摂取されるようになりました。現代では、世界中の多くの国で、主食は白いパンか白米などの精製された穀物です。
精製された炭水化物は、未精製のものに比して、さらに急峻に血糖値を上昇させます。
これらを食べると、空腹時血糖値が100mgとして、食後血糖値は160~170mgまで上昇します。
血糖値上昇の幅は60~70mgもあります。これほど急激に血糖値を上昇させる食品は、400万年の人類史上、類をみないものです。
追加分泌のインスリンは、未精製穀物摂取時に比し、さらに大量に分泌せざるを得ません。特に近年のジャンクフード(*)の増加がインスリン過剰分泌を生じさせています。
インスリンを大量に分泌し続けて40~50年、膵臓が疲弊すれば糖尿病になります。インスリン分泌能力が高い人は、さらに出し続けて肥満・メタボリックシンドロームになります。
人体にはホメオスタシス(恒常性)というものがあり、できるだけ変化が少なく体内を一定の状態に保とうとします。
食後血糖値の変化をみたとき、農耕が始まる前(糖質制限食)だと恒常性が保たれ、玄米や全粒粉のパンだとボチボチで、白米や白パンだとかなり乱れることがわかります。
人類の血糖値の恒常性は、399万年間保たれていましたが、その変動幅は、農耕開始後3800年間2倍程度となり、精製炭水化物摂取が始まったここ200年はその幅は3倍となり、インスリンを大量・頻回に分泌せざるを得なくなったのです。
糖尿病の人が糖質を摂取すると、未精製の穀物でさえも、食後血糖値は軽く200mgを超えてきます。この急峻な食後高血糖のことを「ブドウ糖スパイク」とよび、糖尿病の人で動脈硬化が生じる元凶となります。
精製炭水化物を摂取した時に正常の人でも生じる食後血糖値が160mg、170mgという状態を、私は「ブドウ糖ミニスパイク」と名付けました。
このブドウ糖ミニスパイクが、生体の恒常性をかく乱してアレルギー疾患を悪化させたり、将来の生活習慣病のもととなります。
過去世界中にいろんな食事療法がありましたが、経験的に有効とされているものは、玄米菜食、ゲルソン療法、甲田療法など基本的にブドウ糖ミニスパイクが少ないという一点で一致しています。
私は現在、世界に氾濫する生活習慣病の元凶は、精製炭水化物やジャンクフードによるグルコースミニスパイクとインスリン過剰分泌と考えています。
江部康二
(*)ジャンクフード
ジャンクフード(junk food)とは、エネルギー(カロリー)は高いが、他の栄養素であるビタミンやミネラルや食物繊維があまり含まれない食品のこと。「ジャンク」とは、「がらくた」・「屑」の意。
ファーストフードのハンバーガーやドーナツ、ポテトチップス・ポップコーンなどのスナック菓子全般に多い。 清涼飲料水には砂糖が重量の10%と大量に添加された飲み物も多く、こういった食品も典型的なジャンクフードである。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から一部引用)
昨日、発熱、体の痛みの為、受診。インフルエンザでした。糖尿病であることを伝えましたが、ケトン体がかなり高いので 「食事はとれてますか?」ときかれました。糖分は」ひかえてるが、食事は取れてることを伝えたのですが、「今は糖尿病よりインフルエンザを先に治しましょう」と言われ、血糖値を測ったら90だったので、点滴をしましょうと言われ、1時間点滴をしました。食後のみの高血糖であることも伝えたのですが・・・。ケトン体については、先生の本でも読んでいたのですが、すぐ自分のこととは結びつかず、さらっと読んでしまってました。
点滴を受けながら、「あ~あ」という気持ちでした。
まだ、糖質制限1か月ですが・・・必要ない点滴をうけてしまったのでしょうか。断ることもできず、知識不足でした。早速、布団の中でケトン体の項目をじっくり読み直しました。
点滴を受けながら、「あ~あ」という気持ちでした。
まだ、糖質制限1か月ですが・・・必要ない点滴をうけてしまったのでしょうか。断ることもできず、知識不足でした。早速、布団の中でケトン体の項目をじっくり読み直しました。
2009/01/06(Tue) 18:17 | URL | かずよ | 【編集】
先生 お忙しいとは思いますが 今年もよろしくおねがいします。本当に心から感謝しております。そして 先生のご健康とお幸せをお祈りしています。
災害時の事前準備について教えてください。
例として、神戸の震災を考えてみました。
血糖値をあげる大きな2つの要因について
・避難所生活、悲劇 等からくるストレス
->血糖値自己測定により、薬の量を増やすことで対応するしかない???
事前準備としては、半月程度の余分に薬を確保する???
・食事
市販されている保存食は、米食、パン 等の糖質食
配給される備蓄食も、米食、パン 等の糖質食
炊き出しと称する提供食も、米食 等の糖質食
と思われます。
で、お聞きしたいのは、備蓄食としてどういったものがあり、何食分必要なのでしょうか?
->一般では、3日分備蓄すれば、ライフラインが復旧すると言われていますが、復旧しても入手できるのは糖質食ではないかと思ってしまうのです...
また、病院としては、どのような災害対応時の食事体制をとっておられるのでしょうか?
地震大国日本に住んでいるものとして、日頃疑問に思っていることを書いてみました。
以 上
例として、神戸の震災を考えてみました。
血糖値をあげる大きな2つの要因について
・避難所生活、悲劇 等からくるストレス
->血糖値自己測定により、薬の量を増やすことで対応するしかない???
事前準備としては、半月程度の余分に薬を確保する???
・食事
市販されている保存食は、米食、パン 等の糖質食
配給される備蓄食も、米食、パン 等の糖質食
炊き出しと称する提供食も、米食 等の糖質食
と思われます。
で、お聞きしたいのは、備蓄食としてどういったものがあり、何食分必要なのでしょうか?
->一般では、3日分備蓄すれば、ライフラインが復旧すると言われていますが、復旧しても入手できるのは糖質食ではないかと思ってしまうのです...
また、病院としては、どのような災害対応時の食事体制をとっておられるのでしょうか?
地震大国日本に住んでいるものとして、日頃疑問に思っていることを書いてみました。
以 上
かずよさん。
担当医は食事摂取量が少ないためケトン体が出たと思われたようですね。血糖値90mgはシックデイなのに良好です。
糖尿病と告げてあるので、脱水予防に
点滴は生理的食塩水とビタミン剤くらいでしょうか。
とくに問題はないと思いますよ。
担当医は食事摂取量が少ないためケトン体が出たと思われたようですね。血糖値90mgはシックデイなのに良好です。
糖尿病と告げてあるので、脱水予防に
点滴は生理的食塩水とビタミン剤くらいでしょうか。
とくに問題はないと思いますよ。
2009/01/07(Wed) 09:05 | URL | 江部康二 | 【編集】
ymakunさん。
急性のストレスは数日間は耐えてやり過ごすことでしょうか。
数日間血糖値が上昇したぐらいでは、動脈硬化への影響はありませんので。
食料は3日間、しのぐとして
その分の糖質制限OKな缶詰の備蓄が一番いいと思います。
缶詰は賞味期限が長いですので。
災害時には病院の栄養部も機能しませんので
やはり缶詰の備蓄くらいしかないですね。
急性のストレスは数日間は耐えてやり過ごすことでしょうか。
数日間血糖値が上昇したぐらいでは、動脈硬化への影響はありませんので。
食料は3日間、しのぐとして
その分の糖質制限OKな缶詰の備蓄が一番いいと思います。
缶詰は賞味期限が長いですので。
災害時には病院の栄養部も機能しませんので
やはり缶詰の備蓄くらいしかないですね。
2009/01/07(Wed) 15:05 | URL | 江部康二 | 【編集】
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