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糖尿病は治る?治らない?  
こんばんは。
よくある質問の一つに
「糖尿病は治るのでしょうか?治らないのでしょうか?」というのがあります。
一般には、「一旦糖尿病になったら決して治らない。」というのが定説ですが、
本当のところはどうなのでしょう。
それではまず、どのようにして糖尿病が発症するのかを考えてみます。

日本人の糖尿病発症は、食後高血糖が数年間続いているのを見逃しているうちに、
遂に空腹時血糖値が上昇してきて、健康診断で発見されたというパターンが多いです。
即ち、当初は食後高血糖にならないように、
膵臓のβ細胞がインスリン追加分泌を頑張って沢山出し続けていくのですが、
ある日とうとう疲弊して追いつかなくなってきて、食後高血糖の段階に至ります。

この段階では、インスリン追加分泌の軽度の不足があり、
食後2時間値が140~199mgの境界型レベルになりますが、
まだ基礎分泌は保たれていて早朝空腹時血糖値は、
110mg/dl未満で正常範囲を保つことがほとんどです。
食後高血糖の段階になると、高血糖そのものが膵臓のβ細胞を障害します。
食後高血糖が180mgを超えてくると、
β細胞への直接のダメージでインスリン分泌不足を悪化させ、
また筋肉細胞のインスリン抵抗性も増してきて、糖毒と呼ばれる悪循環を生じます。

食後高血糖が数年間続くと、膵臓はさらに疲弊していき、
インスリン追加分泌の不足に加えて、インスリン基礎分泌不足となり、
とうとう早朝空腹時血糖値が高値となるのです。
空腹時血糖値が126mg/dl以上、
随時血糖値が200mg/dl以上で糖尿病型と診断されます。
糖毒状態が1日の中でも長時間続くようになれば、
急速に糖尿病が悪化していきます。

糖尿病は、インスリン分泌不足とインスリン抵抗性が合わさって発症しますが、
日本人は、インスリン分泌不足が主で、欧米人は、インスリン抵抗性が主とされています。
インスリン分泌不足とインスリン抵抗性を合わせて、インスリン作用不足と言います。

インスリン分泌不足が主の場合、糖尿病と診断された時点で
インスリンを作っている膵臓のランゲルハンス島のβ細胞の2~3割が壊れていて、
2~3割が疲弊していて、健常なのは、残りの半分くらい
と考えられます。
一般に、糖尿病が治らないと言われるのは、
「インスリン分泌不足が主の糖尿病」であり、
既に壊れてしまったβ細胞は、元に戻らないと言う意味です。

しかし、糖質制限食を実践して、膵臓が充分休養できれば、
疲弊していたβ細胞が、正常に回復することが期待できます。
実際、入院時の空腹時血糖値が200mg/dl近かった方が、
糖質制限食実践数日で、110mgを切ってくることもあります。
この場合、β細胞数の一定の不足はあるけれども、
<残っているβ細胞の作用 + スーパー糖質制限食実践>により
血糖コントロールが正常レベルを保てているということになります。
例えば、糖尿人・江部康二がそのパターンです。

食後高血糖の期間・年数が長いほど、
β細胞がダメージを受けている割合が徐々に増えていき、
ダメージが大きい細胞は、回復しにくくなっていくということになります。


次に「インスリン抵抗性が主の糖尿病」を考えてみます。
この場合、インスリン分泌能力は、まだ比較的保たれていることが多いのです。
日本人でもこのタイプが少し増えてきています。
例えば、肥満や脂肪肝がありインスリン抵抗性が高まれば、
インスリンは分泌されていても、糖尿病を発症することがあります。
このとき何らかの方法で肥満や脂肪肝が改善すればインスリン抵抗性も減少します。
そうすると、適量のインスリンで、
筋肉細胞や脂肪細胞内にブドウ糖を取り込むことが可能となり、
インスリン分泌不足はないので血糖値は正常化し、
糖尿病が治ったような状態になります。
治るという言い方に語弊があるなら、
インスリン作用不足が改善し健常のパターンに戻るということです。

実際、そういう患者さんを数名以上経験しました。
例えば、初診時、
空腹時血糖値218mg/dl、HbA1c11.7%、163cm、72kgだった人が、
内服薬なしでスーパー糖質制限食を1年間続けて、60kgと肥満が解消し、
HbA1cは5%前後で維持できていました。
そうすると、糖質を普通に摂取しても、
食後2時間血糖値は140mg/dl未満となりました。
勿論空腹時血糖値も正常範囲内です。
血液検査のデータでは、診断基準上は正常人としかいいようがありませんので、
糖尿病のレッテルも消えました。ヾ(゜▽゜)
この患者さんが糖尿病専門医を受診して、いろいろ血液検査をされたとしても
「糖尿病ではありません。診断基準からみて正常です。」
という診断となるでしょう。

一方、江部康二の場合は、2002年、52歳の時に糖尿病を発症しました。身長167cm、体重57kgを、2024年現在まで、22年間維持していますが、
「インスリン分泌不足が主でインスリン抵抗性が従の糖尿病」です。
スーパー 糖質制限食を続けているかぎりは正常人ですが、糖質を一人前摂取すれば残念ながら食後時間血糖値は軽く200mg/dlを超えて、
立派な糖尿人です。
β細胞が既に2~3割壊れていて、決して治らないパターンです。(×_×)


結論です。
「インスリン分泌不足が主の糖尿病は、決して治らない。」
「インスリン抵抗性が主の糖尿病なら、抵抗性が改善すれば、
糖代謝が正常人のパターンに戻る人も時にいる。」
ということですね。


江部康二
コメント
質問させていただきます。
インスリン分泌不足が主の糖尿病、インスリン抵抗性が主の糖尿病を見分ける方法が知りたいのですが、75g経口ブドウ糖負荷試験をやればわかりますでしょうか。
2024/03/02(Sat) 16:29 | URL | さくさくパンダ | 【編集
増殖性網膜症
先生こんにちは!
いつも勉強させて頂きありがとうございます。
内科医です。質問お願いします。
73歳女性。20年前から2型DMあり。70歳時に膵癌にて体尾部切除、以後インスリン強化療法中。Hba1c11.5%。
増殖性糖尿病網膜症、牽引性網膜剥離あり、硝子体手術が必要となり、入院の上血糖コントロール行いました。
低血糖は殆どなく1ヶ月で、Hba1c9.5%と急激に低下。幸い網膜症の悪化もなく数日後手術予定です。
さて質問ですが、網膜症の悪化は(血糖が急速に低下しても)低血糖が無ければ大丈夫、と先生がブログに書いていたような記憶があります、
そうなのでしょうか?
今回1ヶ月でH ba1cが2%も低下したため網膜症の悪化を危惧しました。
しかし低血糖がなかったから網膜症は悪化しなかったのか??とも考えています。
ご回答宜しくお願い申し上げます。
2024/03/02(Sat) 19:32 | URL | としの | 【編集
Re: タイトルなし
さくさくパンダ さん

75g経口ブドウ糖負荷試験でわかります。

前と30分の採血では、インスリン値も検査しましょう。
インスリン分泌指数やインスリン抵抗性の指数が、わかります。

2024/03/03(Sun) 18:23 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 増殖性網膜症
としの さん

糖質を摂取しながら、インスリン注射やSU剤で、Hba1cを下げようとすると
食後高血糖や血糖変動幅増大が生じて、活性酸素が発生し酸化ストレスとなり
網膜症悪化のリスクとなります。
この方は、運が良かったのだと思います。

スーパー糖質制限食で、HbA1cが改善した場合は
食後高血糖や血糖変動幅増大が最小限ですむので、活性酸素の発生も最小限となり
酸化ストレスリスクも最小限ですみます。
2024/03/03(Sun) 19:00 | URL | ドクター江部 | 【編集
網膜症
ご回答ありがとうございます!
糖尿病性網膜症がある場合、糖質制限にて急速に血糖コントロールした場合、網膜症の悪化はどうでしょうか?悪化する事もあるのでしょうか?

今回の私の症例は運の良い事に血糖値はほぼ90〜190(リブレ)であったため、重症の網膜症にも拘らず幸い悪化が避けられたのかなと思っています。
2024/03/03(Sun) 22:25 | URL | としの | 【編集
療養中の食事について
いつも有益な情報をありがとうございます。私は5年ほど前に糖尿病とわかり、4年くらい前から先生の御本に出会い、糖質制限スーパーを実行し、お陰様で数値も改善しています。
今日は私の事ではなく、つれあいのことでご相談があるのですが。
私が糖質制限を始めたとき、2種類の食事を作るのは大変だから、自分も糖質制限でいいよ、と言ってくれ、以来なんの不満もなく糖質制限をしていました。(彼は糖尿病ではありません。)
ところが、最近食道癌の第三ステージ、と言うことがわかりました。毎日欠かさずお酒を飲んでいたことが原因と思います。今は抗がん剤の治療中です。抗がん剤で癌を小さくしてから手術ということです。抗がん剤の副作用がひどく、一旦退院したものの、気持ち悪いのと、口内炎で何も食べられず、また入院して、点滴を受けています。そこでご相談したいのですが、彼が帰宅してからの食事のことです。一旦糖質制限をやめて、食べられるものを食べる方がいいでしょうか。柔らかいもの、喉と食道の通りが良いもの、と考えると、やはり、おかゆ、となると思うのですが、しばらくご飯を全く食べていないので、お米はやめた方がいいのか、迷っています。入院中最初のうち副作用がないけど食道の通りが悪いので、細かく刻んだおかずと、お粥を少し食べていたようです。これから、2度目の抗がん剤治療、手術、となると、糖質制限にはこだわらず、食べられるものを食べる、ということになると思うのですが、それでもなるべく糖質を減らすよう考えた方がいいでしょうか。アドバイスを頂けたら幸いです。よろしくお願いし申し上げます。
2024/03/04(Mon) 12:24 | URL | 佐野貴子 | 【編集
Re: 網膜症
としの さん

糖質制限食で、HbA1cが急速に改善した場合は
「食後高血糖」「血糖変動幅増大」がほとんどないので、酸化ストレスリスクとならず
網膜症の悪化もありません。
2024/03/04(Mon) 15:18 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 療養中の食事について
佐野貴子 さん

がん細胞のエネルギー源は「ブドウ糖」だけです。
正常細胞は、「ブドウ糖」「ケトン体」「脂肪酸」をエネルギー源とします。

兵糧攻めという意味でも、糖質制限食のほうが好ましいです。
糖質制限食OK食材を工夫して柔らかくして食べられては如何でしょう。
2024/03/04(Mon) 15:31 | URL | ドクター江部 | 【編集
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