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糖尿病ケトアシドーシス。インスリン作用の欠落。
【24/02/04 倉田
糖尿病ケトアシドーシスについての質問です
江部先生は著書で「スーパー糖質制限を実践している場合、血中ケトン体濃度が高くなるが、インスリン作用が保たれている限り、生理的なものであり安全です。一方、糖尿病などでインスリン作用が欠落しているときに限定して起こりうる糖尿病ケトアシドーシスは、病的であり重篤で危険なものです」と説明されています。

この説明に関する疑問点の第一は、「インスリン作用が保たれている限り」とか「インスリン作用が欠落しているとき」という場合の、インスリン作用の程度についてです。
1型糖尿病はインスリン作用が完全に欠落しているが、2型糖尿病はインスリン作用が完全に欠落しているのではなく何割か残存していると理解しています。

しかし2型糖尿病の場合も、インスリン作用の欠落または残存はどの程度なら良いのか、というインスリン作用の限度についてはどのように理解したら良いのでしょうか。
あるいは、2型でもインスリン作用が完全に欠落することがあるのかどうか、
ということでもあります。

疑問点の第二は、1型、2型に関わらず、インスリン作用不足のためブドウ糖を細胞に取り込めなくても、ブドウ糖の代わりにケトン体がエネルギー源になるとすると、ケトン体濃度が高くなっても、危険な糖尿病ケトアシドーシスにはならないのではないでしょうか。
糖尿病ケトアシドーシスになるのはどのような場合なのか、
正確なところがよく分かりません。
江部先生のお考えをお聞かせ願えれば幸いです。】



こんばんは。
倉田さんから、糖尿病ケトアシドーシスに関してコメント・質問を頂きました。

【この説明に関する疑問点の第一は、「インスリン作用が保たれている限り」とか「インスリン作用が欠落しているとき」という場合の、インスリン作用の程度についてです。
1型糖尿病はインスリン作用が完全に欠落しているが、2型糖尿病はインスリン作用が完全に欠落しているのではなく何割か残存していると理解しています。
しかし2型糖尿病の場合も、インスリン作用の欠落または残存はどの程度なら良いのか、というインスリン作用の限度についてはどのように理解したら良いのでしょうか。
あるいは、2型でもインスリン作用が完全に欠落することがあるのかどうか、
ということでもあります。】


糖尿病ケトアシドーシスの発症機序は、以下の如くです。
「インスリン作用の欠落或いは極端な不足→拮抗ホルモンの過剰→全身の代謝障害→糖利用の低下・脂肪分解の亢進→高血糖・高遊離脂肪酸血症→ケトン体の産生亢進→ケトアシドーシス」
即ち、ケトン体高値は、始まりではなくあくまでも結果です。
つまり、糖尿病ケトアシドーシスの始まりは、
<インスリン作用の欠落或いは極端な不足>であり、それ以外にはないです。

なお、1型糖尿病でも緩徐進行型1型糖尿病の場合は、
当分の間インスリン作用が保たれる場合もあります。
  
2型糖尿病の人は基本的にインスリン作用不足がありますが、
ほとんどの場合インスリン分泌欠落まではいっていません。(*)
従って、2型糖尿病の人が、『糖尿病ケトアシドーシス』を発症することはめったにないのです。
 
例えば、正常人のインスリン分泌能力が10あるとすれば、
2型糖尿病を発症した時点で、糖尿人の分泌能力は7くらいに減っています。
 
これが糖尿病歴10年、20年、30年と続き、血糖コントロールが良くなければ、
7→6→5→4→3→2→1→0 とインスリン分泌能力が低下していきます。
 
従って、2型糖尿病の人でも、血糖コントロールが不良で、
じり貧でインスリン分泌が減少して、なくなるような病態までいけば、
インスリン注射が絶対に必要でインスリン依存状態になりえるわけです。
高血糖が確実にβ細胞を障害するので、コントロール不良の糖尿病は
インスリン分泌能力が、経時的に減っていくわけです。
 
例えば、1998年に発表されたUKPDSというイギリスの大規模な疫学的研究では、
インスリン、経口血糖降下剤、従来の食事療法(カロリー制限・高糖質食)で徹底的に強化治療をしても、
10年たった時点では、HbA1cは基本的に悪化していて、
 
「2型糖尿病は慢性の進行性のインスリン分泌障害で不治の病である」
 
という、恐るべき結論になっています。(=_=;)  

いわゆる糖尿病食(カロリー制限・高糖質食)を食べる限りは、UKPDSと同じ結論にならざるをえません。
 
まあこの結論は、糖質制限食で変えることができて、進行は止まると考えられます。
 
 
私も2型糖尿病で、正常人に比べれば、インスリン分泌不足は、存在します。
しかし、私のインスリン、それなりに働いてくれてますので、
糖質制限食で生理的ケトン体上昇はありますが、血糖値はほぼ正常です。
52歳で糖尿病を発症して、今74歳ですが、スーパー糖質制限食を22年継続していて糖尿病合併症もなく、
HbA1cは、5.6~5.9%くらいで、経過していて、糖尿病の進行は止まっています。
インスリン分泌能力も、22年間、ほとんど変化はありません。


 病理的ケトン体上昇を伴う糖尿病性ケトアシドーシスは、
1型のシック・デイとか2型のペットボトル症候群(**)とか、
1型でいきなりインスリン注射を中止したとか、
インスリン作用欠落(10→0~1)か極端な不足の時にしか生じません。
血糖値は、通常は500mg/dl以上となります。
 
いきなり急速に発症した1型なら、病理的ケトン体上昇を伴う糖尿病性ケトアシドーシスになりえます。
しかし2型であれば医療機関に全く受診せず放置したとかよほどのことが無い限り、
病理的ケトン体上昇を伴う糖尿病性ケトアシドーシスはまずありません。
糖質制限食を実践中の糖尿病患者さんで、血中ケトン体が今の基準値より高くても、
血糖コントロールが比較的良好なら、インスリン作用も確保されていて、生理的なもので何の問題もありません。
 
(*)
インスリン分泌不足とインスリン抵抗性(効きが悪い)が合わさってインスリン作用不足となり、糖尿病を発症します。
日本人の場合はインスリン分泌不足が主で、欧米白人はインスリン抵抗性が主とされています。
 
(**)

ペットボトル症候群
ペットボトルを持ち歩いたりして、
清涼飲料水を1日2~3リットル毎日飲み続ける人がいます。
もともと糖尿病の素因を持っていたり、軽度の糖尿病の人が、このように吸収されやすい糖質を多量に摂取していると、飲む度に血糖値が上昇してインスリンが追加分泌されるのですが、ついにはインスリンの供給が追いつかなくなり血糖値が高くなります。
 
一旦血糖値が高くなると糖毒状態となり、β細胞がどんどん障害されていきます。
それが続けば、インスリンがほとんど分泌されなくなり、糖尿病性ケトアシドーシスという危険な状態になり、ものの1~2週間で意識の混濁や昏睡に陥るケースもあります。
 
≪高血糖の持続→インスリン分泌低下とインスリン抵抗性増大→高血糖の持続→≫
この悪循環パターンを、臨床的には「糖毒」 と呼びます。
ペットボトル症候群の場合は、β細胞が疲弊しているだけで、
死滅しているわけではないので、
生理的食塩水の大量輸液などの治療で回復すれば、
インスリン分泌能力も改善します。

 

長くなりましたので、
倉田さんの疑問点の第二については、明日のブログ記事とします。



江部康二


コメント
質問です
時々ブログを拝見させて頂き、以前は時に質問もした事もある江部先生(や夏井先生)のファンの1人です。腹が減っては戦ができぬ、なんて言いますが、腹が一杯でも戦はできぬ、と思います。そこで質問です。よく糖尿病専門の先生が、食べたらすぐ動きなさい、って言うのを聞きますが、正直消化を妨げ、非効率そのものの気がしてなりませんし、特に老人は腰が曲がって胸焼けなど来たす人も多い印象です。食べてすぐ動く行為は、単に血糖値を下げる為だから、っていうようなエビデンスがあるのでしょうか?。正直、例え血糖値を下げようと、一緒に蛋白質や脂質の吸収も妨げているとしか私には思えず、返って有害としか思えないんですが、糖尿病学会では私みたいな意見は無いんでしょうか?。私は、特に太っている人は、動いてから(糖質制限食を)食べる、というような習慣が良い気がしてなりませんが、以上まとまりなく大変恐縮ですが、先生の御見解をお伺いできたら幸いです。
2024/02/05(Mon) 22:56 | URL | ファンの1人 | 【編集
『食欲人』 高たんぱく低炭水化物だと老化・短命化するについて
はじめまして。はなと言います。

私は、アレルギーから低糖質を始め、10数年になります。
結果、アレルギー症状はかなり緩和され、人生で初めて食を楽しめるようになりました。

ですが、昨日『食欲人』という本に高たんぱく・低糖質だとテロメアが短く、老化がはやく、寿命が短くなるとありました。

同様のことがブルーゾーンの研究でも書かれていたことを思い出し、先生のご見解を伺いたいです。

ごくたまに外食では炭水化物を摂ることもあるのですが、油との組み合わせ、または食べる量により後でかなり具合が悪くなります。
できれば、このまま低炭水化物を続けたいのですが、不安なまま続けるのも辛いです。

ご見解伺えれば幸いです。
2024/02/06(Tue) 10:42 | URL | はな | 【編集
Re: 質問です

ファンの1人  さん

以下の本ブログ記事をご参照頂ければ幸いです。

食後の運動と血糖値
2011年10月24日 (月)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1859.html


1)基礎分泌インスリンがあるていど以上不足している段階の糖尿人には、運動療法の効果がほとんどない。
2)BMI25以上の糖尿人も運動効果はほとんど期待できない。色付きの文字
2024/02/06(Tue) 17:39 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 『食欲人』 高たんぱく低炭水化物だと老化・短命化するについて
はな さん

①糖質制限食にエビデンスあり。
ADA(米国糖尿病学会)は2013年10月、ガイドラインで糖質制限食を正式に容認しました。
2019年4月のコンセンサス・リコメンデーションで、
「糖質制限食は最も研究されている食事パターンの一つである」
と明言し、一推しで推奨しました。
2020年、2021年、2022年、2023年のガイドラインでも同様の見解です。
ADAは、糖質制限食肯定の論文も否定の論文も、網羅して、徹底的に検討して、
上記の結論を導き出しました。
老化が促進するような、食事療法をADAが一推しで推奨することはあり得ませんので
安心して、糖質制限食を実践して美味しく楽しく末永く健康長寿を目指しましょう。

一個人の本や1つの研究の見解とADAの見解を比べれば、エビデンスレベルは「月とスッポン」ですね。

②個人レベルでの江部康二の実態
私は現在、74歳ですが、52歳からスーパー糖質制限食を実践しています。
その結果、
1)歯は全部残っており、虫歯なし。
2)目は裸眼で広辞苑の文字が読め、車の運転もできます。
3)聴力低下なし。
4)夜間尿なし。
5)身長の縮みなし。
6)52歳で糖尿病発症ですが、一貫して、定期的内服薬なし。
7)糖尿病合併症なし。
8)整体師のかたに、70代としては、尻と足の筋肉量がかなり多いと褒められました。
9)1日8000歩、歩き、そのうち5~6割は速歩です。
10)テニスは日曜日しか行けませんが、朝11時から中級コースで90分間練習して、
  昼からダブルスを3~4試合して、15時半頃、帰路につきます。
明らかに、老化が比較的防げていると言えます。
<糖化 ⇒ 老化>
 が最小限で済んでいる結果だと考えられます。
2024/02/06(Tue) 18:02 | URL | ドクター江部 | 【編集
ご回答 お礼
江部先生
お忙しいところご回答いただきありがとうございます。

糖化も酸化と同じく老化の要因なのだから、
ブルーゾーンの高低炭水化物には、心理的にも抵抗がありました。

安心して、このまま低炭水化物食を続けていきます。
2024/02/11(Sun) 11:46 | URL | はな | 【編集
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