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非ステロイド系抗炎症薬と腎障害、胃潰瘍。アセトアミノフェンは比較的OK。
こんばんは。

新型コロナがやっと減少傾向となりましたが、今度はインフルエンザが流行してきました。
冬場は感冒やインフルエンザなどに罹る機会が多く、
医療機関に受診すると、結構安易に、解熱剤が処方されるので注意が必要です。
処方される解熱剤のほとんどが、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)です。

 2019年11月20日 (水)の記事で
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)に関して、
脳症になるリスクがあるので、
インフルエンザに使用してはいけない
ということを、記事にしました。

より正確には、ウィルス、細菌、原虫などの感染症が存在しての発熱には、
NSAIDsは使用してはいけないということです。

つまり普通の感冒でもNSAIDsは使わないほうがいいのです。

また、この薬(NSAIDs)は、プロスタグランジンという物質の産生を抑えるために
腎臓への血液の流れが悪くなり、急性腎不全を起こすことがあります。
結構頻度が高く、薬を飲んだ後に尿量が減るようでしたら、要注意です。

実際に、私の糖尿病のご高齢の患者さんで、帯状疱疹になり、
受診した医療機関で、抗ウィルス薬と共に、ロキソニン3錠/日、
一日3回食後に内服となった方がおられました。
 7日分の薬を処方されて、
すでに5日間内服した時点で、高雄病院を受診されました。
血液検査したところ、すでにクレアチニン値が悪化していて、
腎不全の状態でした。
軽症でしたので、すぐにロキソニンを中止して、幸いクレアチニン値は改善しました。

プロスタグランジンは全身の様々な組織や器官の細胞に存在します。
結局、NSAIDsは単純に熱を下げるだけではなく、全身の細胞において、
プロスタグランジンという物質の生合成を抑制するのです。

プロスタグランジンは、血圧低下作用や筋肉の収縮作用、黄体退行作用、
血管拡張作用など色々な役割をもつホルモンです。
NSAIDsは、プロスタグランジンの生合成を抑制するのですから、
様々な副作用が出て当たり前なのです。

さらに、痛みや炎症や、解熱の目的で長期に飲み続けると、
胃炎や胃潰瘍の副作用が起こることがあります。
NSAIDsは痛みの元となる物質を作り出す酵素(シクロオキシゲナーゼ:COX:コックス)の働きを妨げて、
解熱や鎮痛、抗炎症作用を発揮する薬です。

COXには2つの種類があり、COX-1は胃粘膜や血管にあって生体の恒常性の維持に、
COX-2は主に刺激があった時に作られ、痛みや炎症に関係しています。

NSAIDsは、COX-2の働きを抑えて、解熱、鎮痛、抗炎症作用を示しますが、
ほとんどのNSAIDsは、COX-2だけでなく、COX-1の働きも抑えるため、
胃酸の分泌が増えたり、胃粘膜の血流が悪くなったりして、
胃炎や胃潰瘍を起こす原因になるのです。

 胃炎や胃潰瘍が起こると胃の痛み、吐き気などの症状が起こりますが、
ピロリ菌が元凶の一般的な胃潰瘍に比べ、
NSAIDsによる潰瘍は症状が出にくいのです。
そのため何も症状を感じないうちに、
突然、胃から出血して吐血や下血することがあります。
調査によれば、リウマチなどでNSAIDsを4週間以上内服している場合、
胃粘膜保護剤を内服していても、6割以上の人で、
胃粘膜障害が認められたということです。
 
このように考察してくると、
ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、アスピリン・・・
これらのごく一般的なNSAIDsは、有害事象が非常に多いので、
使用は極めて慎重にということです。

長期投与は勿論、基本的には不可です。
例えば、ロキソニン3錠/日とかは、長期投与だと
非常に副作用リスクが高いです。
ロキソニン3錠/日を連日だと、
特に高齢者では、1週間くらいでも腎症害のリスクとなります。

 ロキソニン1~2錠/日は、リウマチなど、症例により、
やむをえず投与することもあると思います。
私は、生理痛とか、頭痛に頓用でなら、許容範囲と思って、
処方することもあります。
 
結局、
比較的安全に使用できる、解熱剤、鎮痛剤は、アセトアミノフェンだけということです。
アセトアミノフェンは鎮痛・解熱作用を有しており、
NSAIDsと同様にCOXを阻害しますが、
その作用は弱く抗炎症作用はほとんどありません。
そのためアセトアミノフェンはNSAIDsには分類されていません。
アセトアミノフェンの作用機序は、中枢神経におけるCOX阻害と考えられていますが、
詳細な機序は未だに解明されていません。
商品名はカロナール、コカール、アンヒバなどです。

 発熱には、アセトアミノフェンを、
成人なら、1回に300~500~600mg、1日2回なら安全です。
年齢、症状により適宜増減で、原則として1日最大1,500mgです。

なお、本剤により重篤な肝障害が発現するおそれがあることに注意し、
1日総量1,500mgを超す高用量で長期投与する場合には、
定期的に肝機能等を確認するなど慎重に投与することも必要です。。

腰痛や生理痛なら、 成人はアセトアミノフェンとして、
1回300~1000mgを経口服用し、服用間隔は4~6時間以上とし、
年齢、症状により適宜増減しますが、1日総量として4000mgが限度です。

禁忌として以下があります。
消化性潰瘍のある患者
重篤な血液の異常のある患者
重篤な肝障害のある患者
重篤な腎障害のある患者
重篤な心機能不全のある患者
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
アスピリン喘息


しかし、アセトアミノフェン禁忌の患者において、
通常のNSAIDsは、勿論禁忌です。

 あと、痛みが強いときは、
トラムセット(トラマドール+アセトアミノフェン)が有効です。
トラマドールは非麻薬性オピオイド受容体刺激薬です。
トラムセットには、NSAIDsのような副作用はありませんが、
吐き気がすることがあります。
それで、初期の1~2週間は、吐き気止めと一緒に内服します。

 
江部康二

コメント
クレアチニン
先生、ご無沙汰いたしております。
思わず「クレアチニン」に反応してしまいました。

HbA1c 5.5
クレアチニン 0.87
です。
56歳で糖尿病発症。
58歳で狭心症でカテーテル治療。
60歳で胆のう摘出。
現在62歳となります。
60歳からクレアチニンの値も見るようになったのですが、その時にはすでに数値が標準より上がっておりました。
エコー他の検査をしても異常が見つからず、元から高いのではないかと言われておりますが、何か注意すべきことはありますでしょうか?
よろしかったらご指導お願いいたします。
2023/11/08(Wed) 15:26 | URL | れいくたうん | 【編集
Re: クレアチニン
れいくたうん さん

血清シスタチンCを検査しましょう。
この検査で、本当の腎機能が評価できます。
クレアチニンは、筋肉量が減る、50~60歳以上では、信頼度の低い検査です。
以下の記事が参考になります。
医師でも、シスタチンCを知らない人がいるようです。

NHK総合「あしたが変わるトリセツショー」腎機能の話題。
2023年07月14日 (金)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-6323.html
さあん
2023/11/08(Wed) 16:23 | URL | ドクター江部 | 【編集
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