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ケトン体も脂肪酸も血液脳関門(BBB)を通過できる。
こんにちは。

血液脳関門(BBB)はとても大事なシステムですが、諸刃の剣でもあります。
BBBは、脳の血管と脳細胞の間での物質交換を制限する機構で、
神経機能に最適な環境を常に維持するのに役立っています。
一方、BBBがあることでほとんどの薬剤が血流から脳内へ移行できないため、
脳を対象とする治療において大きな障壁となっているのです。

さて一般には長い間、
「脂肪酸は血液脳関門(BBB)を通過できないがケトン体は通過できる」
とされていましたが、近年の研究で、
脂肪酸も血液脳関門を通過できることが明らかとなりました。

夏井睦医師著「炭水化物が人類を滅ぼす」(光文社新書、2013年)の231、232ページにも記載してあるように、
少なくともEPAやDHAという有名な脂肪酸が、血液脳関門を通過していることは確実です。

1)脂肪酸は血液脳関門を通過する。
2)脂肪酸はアストロサイトのミトコンドリア内でβ酸化されてエネルギー源となる。
3)神経細胞(ニューロン)では細胞膜の原料となるがエネルギー源としては使われない。


現時点で、1)2)3)が正解と考えられます。

アストロサイト(astrocyte)とは、中枢神経系に存在するグリア細胞の1つです。

グリア細胞 ( glial cell)は神経系を構成する神経細胞ではない細胞の総称であり、
ヒトの脳では細胞数で神経細胞の50倍ほど存在しているとされています。

アストロサイトは神経細胞を支えて支持している細胞です。

毛細血管の周囲はアストロサイトの足突起に覆われていて、
神経細胞と毛細血管の間には常にアストロサイトが介在しています。

『毛細血管-アストロサイト-神経細胞』を一つの構成単位として捉えるとわかりやすいです。

脂肪酸は神経細胞の細胞膜の原料となりますが、
エネルギー源としてはほとんど使われません。

これは、エネルギー源として利用するとき、
酸素消費が一番少ないのがケトン体で次がブドウ糖であり、
脂肪酸は酸素消費が多いからと思われます。

仮説ではありますが、進化の過程で脳が酸素不足にならないように、
神経細胞のミトコンドリアは脂肪酸をエネルギー源としないように
脂肪酸を分解する酵素を減らしたと考えられます。

アストロサイトは脂肪酸を分解してケトン体を産生します。
ケトン体は神経細胞に輸送されてミトコンドリアで代謝されてエネルギー源になります。


江部康二
コメント
いつも、貴重な知識をありがとうございます。先日、中学の友人3人で飲んだとき、医師をやっているやつだけが、ケトン体がエネルギー源だということを知らなくて、やはり、現在の世の中はこうなっているんだなとあらためて思いました。
こういう人に理解を深めてもらうには、もし、論文や生理学・生化学のテキストの新しい版などのここに書いてあるという出典情報があると、とても説得力があると思います。大変ご面倒ではあるかと思いますが、一度ご検討いただきますと、世の中への貢献もさらに深まるかなと思います。
2023/09/27(Wed) 17:06 | URL | uragasumi | 【編集
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