2023年09月22日 (金)
こんにちは。
外来診察で、血糖自己測定器(SMBG)を所有している糖尿病患者さんから、
「食後血糖値はいつ測定したら良いですか?」という質問が、よくあります。
これに対しては、
「自分の食後血糖値のピーク時間に検査したら良いです。」と答えます。
日曜日や休日に
<朝食前・60分後・90分後・120分後・150分後・180分後>
の血糖値を測定して、自分の食後血糖値のピーク上昇の時間帯を知っておくと便利です。
それでは、
健常者および糖尿人における食後血糖値のピーク時間は、
どのくらいなのでしょうか?
答えは、
1)耐糖能正常者24名の食後血糖値のピークは、40分から50分
2)HbA1c8%未満の患者はおおむね1時間から90分の間にピーク
3)HbA1cが8%を超える患者では2時間後にピーク
です。
ピークが、後にずれるほど、耐糖能が良くないと言えるようです。
上記データは慈恵医科大学の西村理明氏の研究結果です。(*)
西村氏はCGMを駆使して血糖の変動を研究しています。
例えば、耐糖能正常者の24人を調べたところ、
朝食後、昼食後、夕食後ともに血糖のピークは、40分から50分の時間帯に収まっていました。
西村氏は、
「スクリーニングの観点では、食後1時間の血糖値を見るのが重要なのは明らか」
とこれまでの検討から述べています。
さらに、治療目標の観点から、糖尿病患者の血糖変化も検証しています。
その結果、HbA1cが8%を超える患者では2時間後にピークがあったものの、
8%未満の患者はおおむね1時間から90分の間にピークがありました。
西村氏は、「管理目標として考える場合にも食後1時間をめどに血糖を測定するのが重要」としています。
現在、75g経口ブドウ糖負荷試験では、
糖尿病の診断としては、負荷後1時間値ではなく、
負荷後2時間値で評価しています。
一方、IDF(国際糖尿病連合)の指針は2011年に改訂され、
「食後高血糖の目標値は食後の時間にかかわらず、160mg/dL未満にする」
と変更されました。
つまり糖尿病合併症予防のためには、食後1時間値と2時間値も含めて
160mg/dl未満が目標となります。
糖尿病の早期発見には、食後2時間血糖値ではなく、
食後1時間血糖値による評価が、有用と考えられます。
私も、糖質制限食を推進する立場としては、
食後1時間血糖値を、IDFの目標のように、160mg/dl未満を目指すのが良いと思います。
スーパー糖質制限食なら、ほとんどの2型糖尿病患者においてそれが可能となります。
なお、自分の食後血糖値のピークは、休みの日などに、一度でよいので、
<食前、食後30分、食後60分、食後90分、食後120分、食後150分、食後180分>
などを測定して、知っておくと便利です。
ピークがわかれば、今後は食後血糖値のピーク時だけ測定すればよいです。
(*)
m3.com
https://www.m3.com/clinical/sanpiryoron/152762
食後血糖値、1時間か2時間か?
江部康二
外来診察で、血糖自己測定器(SMBG)を所有している糖尿病患者さんから、
「食後血糖値はいつ測定したら良いですか?」という質問が、よくあります。
これに対しては、
「自分の食後血糖値のピーク時間に検査したら良いです。」と答えます。
日曜日や休日に
<朝食前・60分後・90分後・120分後・150分後・180分後>
の血糖値を測定して、自分の食後血糖値のピーク上昇の時間帯を知っておくと便利です。
それでは、
健常者および糖尿人における食後血糖値のピーク時間は、
どのくらいなのでしょうか?
答えは、
1)耐糖能正常者24名の食後血糖値のピークは、40分から50分
2)HbA1c8%未満の患者はおおむね1時間から90分の間にピーク
3)HbA1cが8%を超える患者では2時間後にピーク
です。
ピークが、後にずれるほど、耐糖能が良くないと言えるようです。
上記データは慈恵医科大学の西村理明氏の研究結果です。(*)
西村氏はCGMを駆使して血糖の変動を研究しています。
例えば、耐糖能正常者の24人を調べたところ、
朝食後、昼食後、夕食後ともに血糖のピークは、40分から50分の時間帯に収まっていました。
西村氏は、
「スクリーニングの観点では、食後1時間の血糖値を見るのが重要なのは明らか」
とこれまでの検討から述べています。
さらに、治療目標の観点から、糖尿病患者の血糖変化も検証しています。
その結果、HbA1cが8%を超える患者では2時間後にピークがあったものの、
8%未満の患者はおおむね1時間から90分の間にピークがありました。
西村氏は、「管理目標として考える場合にも食後1時間をめどに血糖を測定するのが重要」としています。
現在、75g経口ブドウ糖負荷試験では、
糖尿病の診断としては、負荷後1時間値ではなく、
負荷後2時間値で評価しています。
一方、IDF(国際糖尿病連合)の指針は2011年に改訂され、
「食後高血糖の目標値は食後の時間にかかわらず、160mg/dL未満にする」
と変更されました。
つまり糖尿病合併症予防のためには、食後1時間値と2時間値も含めて
160mg/dl未満が目標となります。
糖尿病の早期発見には、食後2時間血糖値ではなく、
食後1時間血糖値による評価が、有用と考えられます。
私も、糖質制限食を推進する立場としては、
食後1時間血糖値を、IDFの目標のように、160mg/dl未満を目指すのが良いと思います。
スーパー糖質制限食なら、ほとんどの2型糖尿病患者においてそれが可能となります。
なお、自分の食後血糖値のピークは、休みの日などに、一度でよいので、
<食前、食後30分、食後60分、食後90分、食後120分、食後150分、食後180分>
などを測定して、知っておくと便利です。
ピークがわかれば、今後は食後血糖値のピーク時だけ測定すればよいです。
(*)
m3.com
https://www.m3.com/clinical/sanpiryoron/152762
食後血糖値、1時間か2時間か?
江部康二
江部先生、こんにちは。かなり微妙な質問になるのですが、薬の効果について、良く理解できない点があるので、先生の見解をお聞きしたい思い連絡させて頂きました。
例えば、SDLG阻害剤のスーグラは朝食後に服用するとされています。私は朝食抜きですので、12時頃の昼食後に飲んだ場合は、翌日朝6時の早朝空腹時血糖値は110mgくらいになります。しかし、就寝前の23時時頃に飲んだ場合は、翌日朝6時の早朝空腹時血糖値が100mg未満になることがあります。
頻繁に実験しているわけではないので、その数値がどの程度普遍的な数値といえるかどうかは分かりませんが、これをどう理解すればよいのかよくわかりません。
内服薬スーグラは、服用後30分くらいから効いてくるというご説明でしたが、それは、食後30分後には急速に効果が現れ、その効果が落ちることなく、例えば24時間続くということでしょうか。
私の実験例では、服用後18時間後に血糖値が110mg、服用後7時間後に100mg未満という結果になっています。
ただ、これだけでは、心身の様々な条件が分からないので、正確なことは言えないとは思いますが、薬の効果というものが、どうもよく理解できません。つまり、薬を飲むとしたら、どのタイミングで飲むのが最も効果的なのでしょうか、という質問です。
例えば、SDLG阻害剤のスーグラは朝食後に服用するとされています。私は朝食抜きですので、12時頃の昼食後に飲んだ場合は、翌日朝6時の早朝空腹時血糖値は110mgくらいになります。しかし、就寝前の23時時頃に飲んだ場合は、翌日朝6時の早朝空腹時血糖値が100mg未満になることがあります。
頻繁に実験しているわけではないので、その数値がどの程度普遍的な数値といえるかどうかは分かりませんが、これをどう理解すればよいのかよくわかりません。
内服薬スーグラは、服用後30分くらいから効いてくるというご説明でしたが、それは、食後30分後には急速に効果が現れ、その効果が落ちることなく、例えば24時間続くということでしょうか。
私の実験例では、服用後18時間後に血糖値が110mg、服用後7時間後に100mg未満という結果になっています。
ただ、これだけでは、心身の様々な条件が分からないので、正確なことは言えないとは思いますが、薬の効果というものが、どうもよく理解できません。つまり、薬を飲むとしたら、どのタイミングで飲むのが最も効果的なのでしょうか、という質問です。
2023/09/23(Sat) 08:36 | URL | 倉田 | 【編集】
倉田 さん
SDLG阻害剤のスーグラは
「1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する」
と添付文書に記載されています。
これは、臨床試験のときにそのような、デザインで試験が行われたからです。
従って、23時に内服しても、問題はないです。
「私の実験例では、服用後18時間後に血糖値が110mg、服用後7時間後に100mg未満という結果」
早朝空腹時血糖値が、100未満というほうが、好ましい数値なので、
23時に内服で良いです。
血中濃度が、服用後7時間のほうが、少し高値である可能性があり
それで、やや血糖値が低いものと考えられます。
SDLG阻害剤のスーグラは
「1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する」
と添付文書に記載されています。
これは、臨床試験のときにそのような、デザインで試験が行われたからです。
従って、23時に内服しても、問題はないです。
「私の実験例では、服用後18時間後に血糖値が110mg、服用後7時間後に100mg未満という結果」
早朝空腹時血糖値が、100未満というほうが、好ましい数値なので、
23時に内服で良いです。
血中濃度が、服用後7時間のほうが、少し高値である可能性があり
それで、やや血糖値が低いものと考えられます。
2023/09/23(Sat) 09:22 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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