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乳児てんかんとケトン体と母乳。乳糖、グルコース、ガラクソース、ヒトミルクオリゴ糖。
【 23/06/08 田中
どこにコンタクトを取ればよいか分からずでしたので
こちらに書き込みをお許しください。
娘乳児がてんかんで母乳にケトンを出すため母体をケトン食にしている者です。
導入は2週間ほど前からで、
母体は順調にケトンが出ているものの(尿検査)フラフラが改善されず、
力がでません。
かなりカロリーは摂っていると思います。
計算したことがないですが、
朝昼晩女性にしてはかなり多めに、
糖質を抜いて(タンパク質はそれほどこだわって抜いてません)
mctオイルをバシャバシャとかけています。

フラつきをなくさないと、
もう直ぐ来る娘の入院付き添いが私しかできないので
なんとか体力を戻したいと思っています。
この症状は低血糖?血を採れば理由がわかるでしょうか?
ケトンは尿検査のキットで一番色が濃い紫になっています。

また、母乳もリトマス紙で中程度のケトンが検出されましたが、
それを飲ませると娘がケトン食をできているという解釈で良いのでしょうか?
哺乳瓶がだめなのでケトンミルクが飲めず母乳をケトンに改造してみた次第です。】



こんにちは。
田中さんから『乳児てんかんとケトン体と母乳』
についてコメント・質問を頂きました。

田中 さん
ケトン食でケトン体が尿にしっかり陽性なら、
血中ケトン体も高値なのでとても良いです。
血中ケトン体が高値なら、母乳のケトン体も高値となると思います。

【母乳もリトマス紙で中程度のケトンが検出されましたが、
それを飲ませると娘がケトン食をできているという解釈で良いのでしょうか?】


それで良いと思います。

さて、フラフラが改善されないとのことですが、
やはり摂取エネルギー不足が一番可能性があります。

授乳婦で、18-29歳なら、
2050kcalの基本に加えて450kcalが追加必要エネルギーとなり、
合計2500kcal/日が必要です。
まずは、ご自分の摂取エネルギーを計算してみましょう。

また貧血などの可能性もあるので、
血液検査(血糖値、ケトン体値、貧血の検査、肝機能、腎機能、膵機能など)を
調べてみましょう。

次に、母乳(人乳)とその成分について、考察してみます。
それぞれの成分が役割を分担して、
赤ちゃんの身体を守り育てるように精妙な工夫が成されており
おおいに感心します。

日本食品標準成分表2015(七訂)によれば、

人乳は100gで、65kcal、炭水化物が7.2g、
利用可能炭水化物(単糖当量)6.7g、脂質が3.5gくらいです。
糖質が総カロリーの44.9%
脂質が総カロリーの48.46%


です。

日本食品標準成分表には、具体的な記載はありませんが、
ヒトミルクオリゴ糖(HMO)は、
乳糖および脂肪に次いでヒトの乳の3番目に豊富な固体成分を形成
しています。

さて1デシリットル(dl)は100ml です。
血糖値が100mg/dlくらいと仮定すると
循環血液量4000ml中に、ブドウ糖は合計で4gしかありません。
100g中に100mg(0.1g)のブドウ糖しか含まれていない血液から
母乳(100g中に6.7gの糖質)を作るのですから、
乳房内でかなり濃縮していることとなります。

『おっぱい先生の母乳育児「超」入門』 平田喜代美/著  東洋経済新報社  2010年
  P96~98 「母乳育児で生まれるふたつの『愛情ホルモン』」に、
   「赤ちゃんが唇と舌を使って乳頭に与えた刺激が、お母さんの脊髄を通って脳に伝わると、脳の脳下垂体前葉というところから、母乳をつくる『プロラクチン』という物質が分泌されます。このプロラクチンの作用によって、お母さんの乳房の中の毛細血管にたくさんの血液が流れ、その血液が母乳となって乳房の中に蓄えられます。このとき、約1ミリリットルの母乳をつくるのに、500ミリリットルの血液が乳房を通過するといわれています。」と記載あり。


ということで、1mlの母乳をつくるのに、500mlの血液が必要なのですね。
私も、全く知らなかったので、調べてとても勉強になりました。

上記のように母乳には、糖質もかなり含まれていますが、
それ以上の高脂質食でもありますね。

母乳が高脂質食なので、母乳育児中の乳児の血中ケトン体値は、
成人基準値よりはかなり高値となります。

ヒトが吸収できる単糖には、ブドウ糖、果糖、ガラクトースがあります。

人乳あるいは哺乳類のお乳に、
乳糖が含まれていることの意味は何か考えてみました。

乳糖は「ガラクトース+ブドウ糖」で構成されています。

エネルギー補給だけならブドウ糖だけでもいいようなものなのに、
ガラクトースが必要なのには、理由があるようです。

乳糖が母乳の糖質の 80% 以上で、
全エネルギーの 約38%を占めます。

乳糖以外には微量のグルコース、ガラクトース、
種々のオリゴ糖などを含有しています。
ヒトミルクオリゴ糖(HMO)は、母乳で三番目に多い成分ですが、
そのほとんどは口腔や上部消化管で分解されずに大腸まで到達し、
ビフィズス菌など善玉腸内細菌の栄養源として利用されます。

善玉のビフィズス菌が栄養源を得れば、
酢酸や酪酸といった短鎖脂肪酸を生成して、大腸粘膜のエネルギー源となり、また腸内を酸性に保つことで、
腸内の悪玉の大腸菌群などが減少することが明らかとなっています。

ガラクトースで構成されるガラクトオリゴ糖も、同様に
糞便中のビフィズス菌数増加や腸内細菌叢の改善と、
これに伴う糞便中の酢酸濃度の上昇により腸内の酸性濃度を維持してくれます。

また、ガラクトースは、急速に発達する乳児の中枢神経系の完成に
重要な役割を果たす
とされています。
そしてガラクトースは自然免疫反応のブレーキ役を担っていますが、
病原体に感染した時には、ガラクトース糖鎖の量が減少して
ブレーキが解除される仕組みになっています。


江部康二



コメント
お返事ありがとうございました。
江部先生
忙しいお時間を割いていただき、私のコメントへのお返事を感謝します。
ケトンを生成する母体から母乳を通じて高脂質かつケトン体を娘に提供できているとわかりましたので、このまま私はケトン食を続けようと思います。
母乳を作るのにすごくエネルギーと素材が必要なんですね。びっくりしました。
色んな糖質の種類が学べましたが、母乳の成分は素晴らしいですね。。
カロリーも足りてないように思いました。
特にケトン食になってからは甘いものも食べなくなりましたし、とりあえず沢山カロリーを摂れるよう食べることにします!
この2日でだいぶフラつきが取れてきたので体が楽になりました。

また、赤ちゃんにmctオイルを経口で朝昼晩とそれぞれ1.5ml飲ませております。ケトンブーストしてほしいなと思って飲ませていますが意味はありそうですか?また何か副作用は懸念されますか?

2023/06/10(Sat) 01:17 | URL | 田中 | 【編集
Re: お返事ありがとうございました。
田中さん

「特にケトン食になってからは甘いものも食べなくなりました」


シャトレーゼとか、糖質制限OKなスイーツが、いろいろ販売されているので
上手に利用しましょう。


中鎖脂肪酸 MCTオイル
中鎖脂肪酸はそのまま吸収されるので、
吸収不良の病態時にも効率よく利用されます。
薬というより食品なので、副作用はまずないと思います。


2023/06/10(Sat) 09:48 | URL | ドクター江部 | 【編集
C-ペプチド精密と空腹時IRI
お世話になります。
73歳を迎えた伸之介です。糖尿病初発症は1997年で、2012年に糖質制限食生活開始で、継続11年目です。今回は基礎分泌能力に関してご指導ください。

①背景:「とうとうメトグルコのお世話に」

順調なるセイゲニストでしたが、糖質制限生活10年目の昨年頃から暁現象がとても顕著となり、一日のスタートである朝食前の血糖値が随分高く(150~240)なりました。緊急事態と認識して、近所の糖尿病専門内科医の診察を受け、メトグルコ(一日2~3錠)服薬開始して2か月が経過、暁現象は解消しつつあり、今朝も朝食前血糖値110でした。軽い家事や歩行だけで、昼食や夕食直前の血糖値も同程度となり、お薬の効果は凄いものだと感激しています。しかし、課題はこれからであり、今後どうやって服薬を卒業するのか、或いは出来るのか?と不安を抱えております。この不安の相談については別の機会に譲らせて頂くことと致しまして、インシュリン分泌能力についての質問です。

②医師の励まし:「基礎分泌は正常だよ。」

服薬前の「C-ペプチド精密=1.3ng/mL」の検査結果を見て、かかりつけ医師は「あなたは基礎分泌は正常(基準値:0.7~3.5ng/mL)なので、飲酒習慣を改善すれば薬無しでいけるよ。」と励まして下さいました。

③質問:「これらの指標の正体について」

この先生には過去何度も診察を受けていますが、このような分泌能力の検査の説明は初めてです。一方、1997年と2009年の人間ドックでの糖負荷検査で「空腹時IRI(インシュリン値)」が「各々、2.5及び1.7μU/ml」(当時の表記での基準値:5.0~10.0μU/ml)であったことから、私は「もうインシュリンは出ないのだ。」との諦めを抱いておりましたので、この度の医師のコメントについては嬉しいながらも、色々と考えてしまいます。十年超の糖質制限食生活が分泌能力を回復したのならばこれは嬉しい限りなのですが、果たして、「C-ペプチド精密と空腹時IRI」の時空を超えた検査値の比較は、何であり、何を語っている、或いは意味が無いのでありましょうか?
いつものことながら唐突な質問をご容赦願いまして、遠慮勝手ながら、アドバイスを宜しくお願い申し上げます。
2023/06/10(Sat) 17:46 | URL | 伸之介 | 【編集
ありがとうございました!
mctオイルを適宜適量これからも飲ませたいと思います☺️
シャトレーゼは行っては行けない!とおもってましたが、糖質オフのものがあるんですね。とても嬉しいです。

沢山お調べいただき、ご回答感謝いたします。
2023/06/10(Sat) 21:52 | URL | 田中 | 【編集
追伸:C-ペプチド精密と空腹時IRI
「過去の空腹時血糖値の具体的推移データ」追記

昨日「2023/06/10(Sat) 17:46 | URL | 伸之介 |」の投稿に関して説明不足分を追記申し上げます。

①の冒頭に「順調なるセイゲニストであった」と記載していますが、過去27年間の朝食前空腹時血糖値推移(mg/dl)です。

1996年:110前後
1997年:400弱に急騰、服薬一か月内で回復(初発症)、服薬停止
1998~2005年:125前後
2006~2007年:120~185 2007年から翌年にかけてメルビン4か月服用で回復、服薬停止
2008~2017年:100~130 但し2010年に一度168なるも、カロリー制限と運動で回服、服薬無し
注)2012年に糖質制限食生活開始継続
2018~2021年:120~155
2022年:140~190
2023年:180~240(1月~3月)この後メトグルコ服薬開始継続中、現在に至ります。
以上/伸之介
2023/06/11(Sun) 09:29 | URL | 伸之介 | 【編集
Re: ありがとうございました!
田中 さん

シャトレーゼの初代の社長さんは、糖尿人ですので
糖質制限ケーキ、信用できると思います。
2023/06/11(Sun) 10:21 | URL | ドクター江部 | 【編集
mctオイル併用に関して
追加で質問をお願いします。mctオイルは食品なので副作用がない、とのことでしたが、今バルプロ酸とゾニサミドを服薬しています。mctオイルと併用に問題ないでしょうか。
主治医にケトン食を聞いたところパッとしなかったようなので質問させていただきました。
2023/06/11(Sun) 22:12 | URL | 田中 | 【編集
Re: mctオイル併用に関して
田中 さん

抗てんかん薬である『バルプロ酸とゾニサミド』を内服中の人が
mctオイルを併用しても問題ないと思います。
2023/06/12(Mon) 08:33 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございました。
ありがとうございました。引き続き使用したいと思います。明日から1ヶ月入院です。頑張りたいと思います!
2023/06/12(Mon) 19:52 | URL | 田中ゆかり | 【編集
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