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食後高血糖の害、高インスリン血症の害。
こんにちは。
今回は、食後高血糖の害高インスリン血症の害について、検討してみます。

<食後高血糖の害>
食後高血糖が良くないことは、
2007年と2011年の国際糖尿病連合「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
において、エビデンスが明示されています。

以下、国際糖尿病連合・2011年発表 「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
の内容の抜粋を紹介します。
2007年の国際糖尿病連合「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
から、4年ぶりの改訂です。

まずは
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)2007年
「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
から抜粋です。

• 食後および負荷後高血糖は大血管疾患の独立した危険因子である。
• 糖負荷(GL*)の低い食事は食後血糖値のコントロールに有益である。
• 食後血糖値をコントロールするためには、食事療法および薬物療法を考慮すべきである。
• 食後高血糖は糖尿病網膜症と関係する。
• 食後高血糖はIMT肥厚と関係する。
• 食後高血糖は、酸化ストレスを生じ、血管内皮を障害する。
• 食後高血糖は認知障害にも関係する。
• 食後高血糖は癌発症リスク上昇と関連する。
• 食後血糖と空腹時血糖を共にターゲットにすることは、血糖コントロール達成の最善の戦略である。
• HbA1cは6.5%未満が目標。
• 空腹時血糖値は100mg/dl未満をめざす。
• 食後2時間血糖値は140mg/dLを超えないようにする。


*GL(glycemic lord)
GI値を100で割り、その食品1食分に含まれる糖質のグラム数をかけた数値。
GIよりGLのほうが、実際に食事をするときの参考になりやすい。
GL値10以下の食品が、低GL食品。 

国際糖尿病連合2007年発表の「食後血糖値の管理に関するガイドライン」と比べて、
2011年のガイドラインはそれほど大きな変化はないように思います。
いずれも食後高血糖のリスクを、列挙して明示しています。
違いですが、私の発見したところでは、

*SMBG(血糖自己測定)を、食後高血糖チェックに一押しで推奨。
*食後血糖値は、食後1~2時間で測定されるべきで、
 160mg/dl未満が目標というのが追加。
*食後高血糖は心筋の血液量と血流を減らすと新たに言及。
*CGMが普及してきて、薬、食事、ストレス、運動など
 様々な要素が血糖に影響を与えるのをチェックできる。


これらが、2007年版に追加で、加わりました。

<他のエビデンス>
エビデンスですが

日本の熊本スタディー。Kumamoto Study。
<細小血管合併症予防>のための目標
HbA1c:6.9%未満・・・DCCTとUKPDSと合わせて、7.0%未満
空腹時血糖値:110mg/dl未満
食後2時間血糖値:180mg/dl未満
改訂第7版
糖尿病専門医研修ガイドブック
19、20ページ



以下は、 国際肥満研究連合のシステマティックレビューなので、信頼度は高いです。

体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。
13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。
Systematic review of randomized controlled trials of low-carbohydrate vs. low-fat/low-calorie diets in the management of obesity and its comorbidities M. Hession,et all
Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)
Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009


以下も有名な、RCT研究論文です。
アトキンス、ゾーン、ラーン、オーニッシュダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果などをみた。
311人の女性を上記4グループに分けて追跡。
これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなものである。
アトキンスは低炭水化物食(スーパー糖質制限食)、ラーンとオーニッシュは高炭水化物、低脂肪食、ゾーンは炭水化物40%
低炭水化物食が体重を最も減少させて、HDL-CとTGを改善。
Comparison of the Atkins, Zone, Ornish, and LEARN Diets for Change in Weight and Related Risk Factors Among Overweight Premenopausal Women
The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial ,JAMA297:969-977


①②③のエビデンス以外に、
高血糖により糖化蛋白生成が亢進し、糖化蛋白は SOD などの抗酸化酵素と反応して劣化させ、活性酸素の除去が困難となり活性酸素が増え、酸化ストレスとなります。
酸化ストレスが、糖尿病合併症・動脈硬化・老化・癌・アルツハイマー・パーキンソン等の元凶とされています。


<高インスリン血症の害>

次に、食後高血糖と共に
過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。
たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。
また、高インスリン血症は、活性酸素を発生させて、酸化ストレスを増加させます。

酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・その他多くの生活習慣病の元凶とされていて、パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにも酸化ストレスの関与の可能性があります。

ロッテルダム研究によれば、インスリン使用中の糖尿人ではアルツハイマー病の相対危険度は4.3倍です。
Rotterdam研究(Neurology1999:53:1937-1942)
「高齢者糖尿病における、脳血管性痴呆(VD)の相対危険度は2.0倍。
アルツハイマー型痴呆(AD)の相対危険度は1.9倍。
インスリン使用者の相対危険度は4.3倍」


インスリン注射をしている糖尿人は、メトグルコで治療している糖尿人に比べてガンのリスクが1.9倍というカナダの研究もあります。
2005年の第65回米国糖尿病学会、
カナダのSamantha博士等が、10309名の糖尿病患者の研究成果を報告、
その後論文化。コホート研究。
 「メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、インスリンを注射しているグループは、癌死亡率が1.9倍高まる。SU剤(インスリン分泌促進剤)を内服しているグループは癌死亡率が1.3倍高まる。」 
その後、Diabetes Care February 2006 vol. 29 no. 2 254-258 、に論文掲載。


このようにインスリンの弊害を見てみると、「インスリンは血糖コントロールができている限り少なければ少ないほど、身体には好ましい」ことがわかります。

別の言い方をすれば、農耕開始後、精製炭水化物開始後、特に第二次大戦後に世界の食糧事情が良くなってからの糖質の頻回・過剰摂取が、食後高血糖、
インスリンの頻回・過剰分泌を招き、様々な生活習慣病の元凶となった構造が見えてきます。
<生活習慣病=糖質過剰病>です。


<結論>
<食後高血糖の害><高インスリン血症の害> を考察してみました。
「糖質摂取⇒食後高血糖⇒高インスリン血症」の悪循環パターンを生じるのは、
糖質摂取時のみであり、脂質・タンパク質摂取時には、この悪循環は起こりません。

スーパー糖質制限食を実践すれば、上記の悪循環は生じず、
インスリンの分泌は必要最小限で済むようになり、
様々な生活習慣病の予防・改善が期待できます。

ブログ読者の皆さんも、スーパー糖質制限食実践で、
必要最低限のインスリンで血糖こントロールを維持して、健康ライフを送ってくださいね。


江部康二
コメント
インスリン値
タンパク質は血糖をほぼ上げませんがインスリン値は糖質並みに上がりますよね。これは大丈夫なのでしょうか。
2023/05/30(Tue) 18:15 | URL | ユウキ | 【編集
本日記事の私は証明者かなと、考えます!!
都内河北 鈴木です。

本日記事の証明者かなと思える、私の医療改善データ、
<<『糖尿病・21年間が、3ヵ月足らずで、
  11錠の服用薬+インスリン3年余りが、自主離脱して、生還!!

  眼科・2度の覚醒!!

  脳梗塞・7度の再覚醒!!』>>

この改善データに疑問有る医療者は、公然の場で、会話しましょう!!!

江部先生には、感謝尽きません!!
ありがとうございます。
敬具
2023/05/30(Tue) 18:31 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
Re: インスリン値
ユウキ さん


タンパク質は、直接血糖値を上げることはありません。


タンパク質は、インスリンとグルカゴンを共に分泌させます。
健常人では、効果が相殺されるので、血糖値は上昇しません。


1型糖尿病で、インスリンが分泌できない場合は、
タンパク質摂取でグルカゴンだけが分泌されるので
糖新生により、間接的に血糖値が上昇し:ます。
2023/05/30(Tue) 22:58 | URL | ドクター江部 | 【編集
暁現象について(62歳男性です)
去年の健康診断で、早朝空腹時血糖値が126ありまして役場が煩く病院に行けと言ってきてますが、うまく説明できず困ってます。ちなみにHBA!Cはjここ五年間平均4.8です。一日推定糖質摂取量15g目標の糖質制限15年目です。まぁ、その前年から108あったもんで。。。おかしいなと思ってました。今年の健康診断が怖いです。OGTTはもってのほかですしね。他に前視野緑内障もあるらしいのですが今のところ全く発症していません。長々とお書きし失礼しました。
2023/06/04(Sun) 06:26 | URL | 甘いミカン | 【編集
Re: 暁現象について(62歳男性です)
甘いミカン さん

「早朝空腹時血糖値が126mg/dl」

126mg/dlだと、一応、糖尿病型ですが、一回、だけでは、なんとも言えません。
血糖自己測定器を購入されて、しばらく、毎朝、早朝空腹時血糖値を測定されると実体がわかると思います。

気になるなら、「頸動脈エコー」「心エコー」「心電図」など
循環器的検査を実施しておけば、安心です。
2023/06/04(Sun) 08:55 | URL | ドクター江部 | 【編集
お返事
ありがとうございました。
2023/06/04(Sun) 11:39 | URL | 甘いミカン | 【編集
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