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脂質・蛋白質・炭水化物の消化・吸収時間について
【23/05/24 佐々木カルフ
食物の吸収タイミングと血糖値について
江部先生
お世話になっております。
食物の消化の時間や吸収のタイミングについて確認していたのですが、
一般的に口から胃までは10秒程度、その後胃の中で2〜3時間滞留するとありました。
つまり、炭水化物を口に入れた場合に、
実際に小腸で吸収されるまでは数時間かかることになるため、
食後に血糖値が上がるには摂取した糖質がそのまま血液中に流れ込むわけではなく、
肝臓におけるグリコーゲン分解や糖新生の亢進によるものなのかな(グルカゴンやら何やらホルモンの影響)、
と考えましたが、それで正しいでしょうか?
また、糖質制限食においては概ね血糖値に変化がないことは存じておりますが、
そもそも摂取したものを吸収していない段階で、
糖質のあるなしを身体は認識しているのでしょうか
(口腔内で認識しているのでしょうか)?
吸収していないのに糖質を摂れば血糖値が上がり、
摂らなければ上がらないという点が不思議だな、と、素人の疑問なのですが、
よろしければご教示いただけないでしょうか。
よろしくお願いいたします。 】



こんばんは。
佐々木カルフ さんから、
【食物の吸収タイミングと血糖値】
について、コメント・質問を頂きました。

【炭水化物を口に入れた場合に、
実際に小腸で吸収されるまでは数時間かかることになるため、
食後に血糖値が上がるには摂取した糖質がそのまま血液中に流れ込むわけではなく、
肝臓におけるグリコーゲン分解や糖新生の亢進によるものなのかな(グルカゴンやら何やらホルモンの影響)、
と考えましたが、それで正しいでしょうか?】


以下の、☆☆☆の記載でも説明しますが、
炭水化物摂取直後から胃の分泌液と混合され、
胃の内容物が持続的に小腸に送り込まれるので
速やかに血糖値が上昇し始めると考えられます。
つまり、実際に小腸で吸収されるまで数時間もかかりません。
例えば炭水化物を食べたら、直後から血糖値が上昇して
90分間で吸収が終了します。
この、速やかな血糖値の上昇には、糖新生は関与していません。



☆☆☆
<脂質・蛋白質・炭水化物の消化・吸収時間について>

脂質・蛋白質・炭水化物の消化・吸収時間について検討してみました。
「胃内の停滞時間は、炭水化物→タンパク質→脂質の順に長くなります。」
などとしれっと根拠なしに記載してあるサイトもあるのですが、
これは、間違っていると思います。
GI(グリセミック・インデックス)でみると、確かに、単独で摂取したブドウ糖や白米の 消化・吸収速度は速いです。
しかし、食材として、デンプンを摂取したときの消化・吸収は、場合により、脂質・蛋白質より長くなることがありえます。


<脂質と蛋白質>
食事後の胃内滞留時間は脂質と蛋白質が30分から1時間程度です。
そこから小腸で吸収されて代謝される時間ですが、
蛋白質は胃でほとんどがペプチドというアミノ酸数個の分子に分解されるため吸収速度は一定しています。
脂質も小腸に行く前に、十二指腸で胆汁などにより一連の変化を受けるのでこれも吸収速度が一定しています。
小腸では、15~30分以内に全て吸収されれると思われます。
普通の食物(魚介類や肉類)の脂質と蛋白質は、上記でよいと思います。

なお牛乳から作られるホエイプロテインは1~2時間で消化・吸収されますが、
カゼインプロテインが完全に消化・分解されるまでには7~8時間もかかるとされています。
大豆から作られるソイプロテインも完全に消化・分解されるまでには5~6時間とされています。

<炭水化物>

炭水化物の消化・吸収については
2018年11月18日(日)の本ブログを、以下一部修正して再掲します。

炭水化物の消化・吸収について
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4740.html
2018年11月18日 (日)
blog95.fc2.com/blog-entry-4740.html
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4740.html

【18/11/17 オスティナート
Re:Re: Re: ???
≪「デンプンは、胃で、45~60分かけていの分泌液と混合され、その糜粥(ビジュク)が胃から十二指腸に移動する。
十二指腸では糜粥(ビジュク)は膵液と混合して、15~30分以内に全て吸収されれる。」
ということですね。≫

についてですが、
ガイトンによりますと、
【時として1時間も継続する】とあります。
「継続」ですので、炭水化物を食べた直後から胃の分泌液と混合され、
糜粥(ビジュク)がその都度、胃から十二指腸に送り込まれ、
小腸では短時間で単糖まで分解され、吸収されるのだと思います。
(食べた全ての食物が胃の分泌液と混合されるまで、
胃から十二指腸に送り込まれないのではない。)

そのためブドウ糖の吸収には遅れますが、炭水化物を食べた場合にも、
直後から血糖値上昇があるのだと思います。

追記
※【時として1時間も継続する】について、、
●「場合によって(食べた食物の量や、食べ合わせ、又状態(製粉や、液状)によって異なる)すべて胃の分泌液と混合されるまでに1時間も継続する。」
と読み替えてみるとわかりやすいかと思います。】


なるほど。
オスティナートさん、ありがとうございます。
おかげさまで、やっと整合性をもって理解できました。
炭水化物の主成分はデンプンです。

①デンプンは、唾液中のα-アミラーゼにより加水分解される。
②食道は、消化吸収の働きはなく、蠕動運動で食物を通過させる。
③胃内でも、胃液と混和しない部分では、消化が進行して約70%が加水分解される。
④大量の胃液(粘液、塩酸、ペプシン)が分泌され、撹拌運動により食物と胃液が混ぜ合わされる。
⑤胃内で混ぜ合わされて糜粥(ビジュク)となり、蠕動運動によりその都度、チビチビ小刻みに十二指腸に移動していく。
⑥胃の内部の糜粥(ビジュク)は、時として1時間くらいかけて継続的に消化されて十二指腸に移送される。すなわち胃には貯留の働きもある。
⑦糜粥(ビジュク)は、小腸(十二指腸・空腸・回腸)で単糖に分解されて吸収される。


胃の消化物(糜粥)の十二指腸への移動は、
基本的にブドウ糖と同じメカニズム(胃の蠕動運動)と思われます。
胃の蠕動運動には、撹拌・粉砕・移送があります。
従って、炭水化物摂取後、
ブドウ糖の吸収速度にはおよびませんが、
あるていど速やかに血糖値が上昇し始めると考えられます。
しかし、胃内に1時間以上、停留している場合もあり、
その時は全て消化・吸収されるには、一定以上の時間がかかるので、
脂質・蛋白質より消化・吸収時間は長くなります。

なお、水分、塩分、アルコールも、ほとんどは小腸で吸収され、
胃では一部しか吸収されません。


江部康二
コメント
ありがとうございました
 奈良県香芝市の松岡です。今日は非常に貴重なお話をきかせていただき、ありがとうございました。実のところ、これまで「食事療法」の内容にまで考え及ばなかったことがなんとも恥ずかしいです。
 帰宅後、ちょうどZOOM会議を友人としたのですが、シンガポール在住の友人が
「そういえば、うちの主治医は俺を見るなり『とりあえず米を半分にしろ』と言われた。なんじゃいと思ったけれども、言われたとおりにしてその後採血に言ったら確かに血糖がえらく下がていた」と教えてくれました。
 東南アジアなんでとりあえず米が主食のようですが、まさに先生のおっしゃった効果かと驚きました。
 ブログのほうもさかのぼって読ませていただきます。
2023/05/28(Sun) 01:59 | URL | 松岡秀治 | 【編集
Re: ありがとうございました
松岡秀治 先生

昨日は、香芝市医師会糖質制限食講演会、懇親会と
とても有意義で楽しい時間を過ごすことができました。
質問もたくさんあって、良かったです。
ありがとうございました。
懇親会では福寿館の山形牛のステーキを、堪能いたしました。
大変、美味しかったです。
また、松岡秀治先生とは漫画の話で盛り上がりとても面白かったです。
なかなか医師どうしで、漫画の話が通じることはめったにないので、僥倖でした。

シンガポールのお話も興味深いです。
東南アジアでも、徐々に「糖質制限食」が広がりつつあるようですね。
2023/05/28(Sun) 12:54 | URL | ドクター江部 | 【編集
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