fc2ブログ
タンパク質摂取時の糖の産生量について。インスリン。グルカゴン。
【23/05/22 西村典彦
タンパク質摂取時の糖の産生量について
タンパク質摂取による糖新生は、
どの程度の糖をどの程度の時間で産生するのでしょうか?
私はインスリン初期分泌が遅く、糖質摂取では血糖値が急上昇しますが、
タンパク質摂取ではほとんど変動はありません。
要するにタンパク質摂取時に産生される糖の量とスピードであれば
インスリンの自己分泌で対応できていると考えられます。
また、宴会などで2時間ほどかけてゆっくりと食事をした最後に締めのご飯などを少し食べた場合も
血糖値は正常範囲の変動です。
これらの事から私の血糖値がジェットコースターにならないためには、
時間をかけて食事をする事でインスリンの分泌が間に合うようにすれば良い事はわかりますが、
タンパク質摂取時には血糖変動がない事から
その時の糖新生の量とスピードが目安になるのではないかと考えています。】


こんにちは。
西村典彦さんから、
「タンパク質摂取時の糖の産生量」
について、コメント・質問を頂きました。

正常人や軽症2型糖尿病の場合は、蛋白質摂取で
インスリンとグルカゴンが同程度分泌されて、効果が相殺されるので
結果として、血糖値は上昇しません。
タンパク質摂取による血糖値上昇に関しては、
以下の本ブログ記事が参考になるので、再掲します。

2019年11月15日 (金)の本ブログ記事
蛋白質、脂質、糖質と血糖値。1型糖尿病、2型糖尿病。



江部康二


☆☆☆
2019年11月15日 (金)の本ブログ記事
蛋白質、脂質、糖質と血糖値。1型糖尿病、2型糖尿病。


【19/11/14 もーりー
初めまして!
江部先生の事は何年も前から知ってますが、初めてコメントさせて頂きます。
私は1型糖尿病です。
CGMを見ながら、色々な事をやるのが好きです。
例えば、朝昼晩全く同じ物を食べた時の血糖変動です。
今回は「脂質でどれくらい血糖変動があるか?」を見てみたくなりました。
(私の通院している病院では脂質での上昇に注目しているからです。)

本日、朝昼晩に各マカダミアナッツ100gを摂りました。
1回の食事で糖質7g、脂質76gです。
結果は、血糖変動はなく、CGMのグラフは横ばいでした。
ステーキや焼肉を食べると長時間血糖値の上昇を引っ張るイメージがあります。
この長時間引っ張る原因が脂質だと思っていたのですが、違うのでしょうか?

ふと思ったのが、ある程度の糖質と脂質が合わさると引っ張るのかな?と思いました。
もしそうだとしたら、スーパー糖質制限を実施している1型の方は、CGMも横ばいなグラフなのでしょうか?

教えて頂けるのであれば宜しく御願いします。】



こんばんは。
1型糖尿病のモーリーさんから、蛋白質・脂質・糖質と血糖値上昇に関して
コメント・質問を頂きました。

まず、米国糖尿病学会によれば、
血糖値に直接影響を与えるのは糖質だけで、蛋白質・脂質は影響を与えません。
直接という言葉を使用しているのは、
1型糖尿病や2型でもインスリン分泌能が一定以上低下している場合には
蛋白質が間接的に血糖値を上げるからです。

【朝昼晩に各マカダミアナッツ100gを摂りました。
1回の食事で糖質7g、脂質76gです。
結果は、血糖変動はなく、CGMのグラフは横ばいでした。】


脂質は直接的にも、間接的にも、
血糖値をあげませんし、インスリンも分泌させません。

蛋白質はインスリンとグルカゴンを両方分泌させるので
摂取しても、健常人や軽症糖尿人では血糖値を上昇させません。

【ステーキや焼肉を食べると長時間血糖値の上昇を引っ張るイメージがあります。】

1型糖尿病で、内因性インスリン分泌がなくて、グルカゴン分泌能が普通に
残っている場合は、グルカゴンによる糖新生で、
蛋白質が間接的に血糖値を上昇させますが、数時間以上持続します。
また2型糖尿病でも『 グルカゴン分泌 > インスリン分泌』の場合は
蛋白質が間接的に血糖値を上昇させます。


江部康二



以下のブログ記事も参考になりますので再掲します。

蛋白質と血糖値
2019年02月10日 (日)


【19/02/09 しらねのぞるば
蛋白質だけを食べた場合の血糖値
すぱ郎さんが面白い実験をされてますね.

[血糖値386からの挑戦状]
https://suparou386.blogspot.com/2019/02/blog-post_4.html
https://suparou386.blogspot.com/2019/02/blog-post_7.html

低脂肪の牛ランプ肉だけを,調味料など一切使わず,
つまりほぼ蛋白質だけを食べた場合,食後血糖値がどうなるのか,という実験です.
この実験の貴重なのは,すぱ郎さん(糖尿人)と奥様(健常人)とで,
まったく同じものを同じ時間で食べている点です.
めったにこういうケースはありません.

その結果は,糖尿人では食後1~4時間にかけて,血糖値が30mg/dlほど上昇したが,
健常人はまったく変化なし,というものでした.
やはり糖尿人は,蛋白摂取でも血糖値が応答してしまうようです.

そこで,自分の過去のデータとも比較してみたところ,
私の場合は純粋に牛肉だけに近い食事をした場合(2例あり)は,
食後1時間で20ほど上昇,しかし食後2時間ではほぼ食前に復帰,というものでした.
すぱ郎さんのようにランプ肉ではないので直接の比較はできないのですが,
同じ糖尿人でも微妙な差がありそうです.

更に考えてみると,これは自分の糖尿病の程度が測定できる(糖負荷試験以外の)「もう一つの指標」になるのではないかな,
と思いました.
牛肉だけでなく他の蛋白質でも実験されているので,
皆様ご覧になると興味深いと思います.

実験にご協力いただいた,すぱ郎さんの奥様,
トウシツセイゲニストを代表してお礼申し上げます.】


こんにちは。
しらねのぞるばさんから
蛋白質摂取と血糖値に関して、とても興味深い情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。

血糖値386からの挑戦状
すぱ郎さん(糖尿人)と奥様(健常人)が比較してあり、とても参考になります。
https://suparou386.blogspot.com/search/label/%E8%A1%80%E7%B3%96%E5%80%A4%E6%B8%AC%E5%AE%9A%E5%AE%9F%E9%A8%93


牛ランプ肉100g中に、蛋白質21.6g、脂質3g、炭水化物0.5gですので、
糖質はほとんどなしですね。
脂質は、血糖値にもインスリン分泌にも、影響を与えません。


以下の緑文字の記載は、高雄病院で検査した、蛋白質摂取と血糖値の変化の
2型糖尿人と1型糖尿人のデータです。

2型糖尿病のAさん。60代男性。
2017/2/23(木)
          血糖値    インスリン     グルカゴン
8:30      139       8.0                         151
ささみ200g摂取 210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
30分後       140    7.7                         190
60分後       151    23.3                      257
2時間後       147    26.2                     195
3時間後       137    7.5                         144
4時間後       127    5.7                         100


1型糖尿病のBさん。インスリン強化療法中。10代男性。
ささみ。200g。210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。

2017/2/17(金)
          血糖値     CPR         グルカゴン
8:30      115   0.6(1.5~3.5ng/ml)   128(70~174pg/ml)
ささみ200g摂取。210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
30分後       160    1.0         229
60分後       176    1.3         186
2時間後       193    1.3        154
3時間後       167    1.2         173
4時間後       159    0.9         122


2型糖尿人Aさんは、内因性インスリンはある程度分泌されていますが、グルカゴンの方が優性です。
そのため蛋白質摂取60分後がピークで、12mg血糖値上昇ですので、1gの蛋白質が、0.26mg血糖値を上昇させています。
HbA1cは、5.7%~5.9%くらいで、コントロール良好です。

1型糖尿人Bさんも、内因性インスリンが少しだけ分泌されていますが、グルカゴンの方がはるかに優性です。
そのため蛋白質摂取120分後がピークで、78mg血糖値上昇ですので、1gの蛋白質が、1.7mg血糖値を上昇させています。
HbA1cは、6.0~6.5%くらいで、GAは18から19.5%くらいで、コントロール良好です。

このように、たんぱく質は、直接血糖値を上昇させることはありませんが、
グルカゴンによる糖新生によって、間接的に血糖値を上昇させることがあります。
その場合、以下のA)B)C)の3つのパターンがあると思います。
A)は確定ですし、B)C)はそれに準じると考えられます。

A)1型糖尿病で内因性インスリンがゼロレベルの人は、たんぱく質摂取でグルカゴンだけが分泌され、
インスリンは分泌できないので、グルカゴンによる糖新生で、間接的にかなり血糖値が上昇する。
高雄病院の1型の患者さん数人の検査で、個人差はあるが、
1gのたんぱく質で、1.0~3.6mg/dl上昇した。

B)2型糖尿病でも、内因性インスリン分泌能がかなり不足している場合は、
たんぱく質摂取で『グルカゴン分泌量 > インスリン分泌量』 となり、
血糖値が上昇することがあると考えられる。

C)ロイシン、アルギニン、リジンなどの摂取刺激によって、
体質的に、相対的にインスリン分泌量よりグルカゴン分泌量が多いタイプがあれば、
2型糖尿病でインスリン分泌能が残っていても、たんぱく質摂取で血糖値が上昇すると思われる。



今まで、2型糖尿病では、基本的にB)パターン以外には、
たんぱく質が間接的に血糖値を上昇させることはないと考えていましたが
C)パターンがあることが明らかとなりました。
頻度がどのくらいあるかは、まだよくわかりませんが、ブログコメントなどを参考にすると
結構おられるように思います。

なお正常人では、蛋白質摂取で
インスリンとグルカゴンが同程度分泌されて、効果が相殺されるので
すぱ郎さんの奥様のように、血糖値上昇がないと思われます。

日頃、摂取糖質量に比し、血糖値が上昇し過ぎるという2型糖尿人は、
上述の様な、
ささみ実験をして、「たんぱく質と血糖上昇」に関して調べてみては如何でしょう。


江部康二
コメント
食物の吸収タイミングと血糖値について
江部先生
お世話になっております。
食物の消化の時間や吸収のタイミングについて確認していたのですが、一般的に口から胃までは10秒程度、その後胃の中で2〜3時間滞留するとありました。
つまり、炭水化物を口に入れた場合に、実際に小腸で吸収されるまでは数時間かかることになるため、食後に血糖値が上がるには摂取した糖質がそのまま血液中に流れ込むわけではなく、肝臓におけるグリコーゲン分解や糖新生の亢進によるものなのかな(グルカゴンやら何やらホルモンの影響)、と考えましたが、それで正しいでしょうか?
また、糖質制限食においては概ね血糖値に変化がないことは存じておりますが、そもそも摂取したものを吸収していない段階で、糖質のあるなしを身体は認識しているのでしょうか(口腔内で認識しているのでしょうか)?
吸収していないのに糖質を摂れば血糖値が上がり、摂らなければ上がらないという点が不思議だな、と、素人の疑問なのですが、よろしければご教示いただけないでしょうか。
よろしくお願いいたします。
2023/05/24(Wed) 18:55 | URL | 佐々木カルフ | 【編集
Re: 食物の吸収タイミングと血糖値について
佐々木カルフ さん

以下の本ブログ記事をご参照頂ければ幸いです。

各栄養素の消化・吸収時間について。
2023年04月06日 (木)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-6248.html
2023/05/25(Thu) 17:24 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございます
拝読いたします。
ありがとうございます!!
2023/05/25(Thu) 21:53 | URL | 佐々木カルフ | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可