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「世界腎臓デー」。腎機能検査は、血清シスタチンCを調べよう。
こんにちは。
3月第2木曜日(2023年3月9日)は「世界腎臓デー」です。


【慢性腎臓病(CKD)とは
慢性腎臓病(CKD)患者数は日本国内に1,330万人(成人の8人に1人)*¹、
世界で9.1%*²が罹患しているとされ、
年々増加傾向にある注意が必要な病気です。
慢性腎臓病(CKD)は腎臓の機能が低下したり、
たんぱく尿などの腎臓の異常が続いたりする病気ですが、
初期はあまり症状が現れず、自覚しにくいことが特徴です。
気づかず症状が進むと、透析治療や腎移植が必要となるリスクが高まり、
心臓病や脳卒中を発症する危険性も高まると言われています。
※1 日本腎臓学会 CKD診療ガイド2012
※2 Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2017】



慢性腎臓病(CKD)患者数が、日本国内に1330万人ですから、12.5%です。
世界平均が9.1%なので、日本はCKD患者数が多い国と言えます。

慢性腎臓病(CKD)は、勿論、早期発見して早期治療する方がよいに決まっています。
CKDの特効薬はないのが現状ですが、原因疾患で一番多いのは糖尿病です。
糖尿病を早期からキッチリ治療して、CKD発症を予防するのが、正解の治療と言えますが、
それには糖質制限食が最適です。
腎機能検査ですが、血清クレアチニン値ではなく、
血清シスタチンCを調べるのがベストです。


高齢者の腎機能はクレアチニンで評価してはいけません。
高齢者の腎機能はシスタチンCで評価しなくてはなりません。
ブログ読者の医師・看護師の方々は、是非同僚や知り合いの医師・看護師の方々に
この情報を拡散するようよろしくお願い申し上げます。

例えば、75歳男性Aさんの血清クレアチニン値は0.76mg/dlで基準値内で、
eGFRは75.9mL/min/1.73m2と正常でした。

しかし、同時に血清シスタチンCを調べたら、1.76mg/dlで基準値を超えていて
eGFRは30.61 mL/min/1.73m2としっかり腎機能障害でした。


同様に、77歳女性Aさんのクレアチニン値は0.58mg/dlで基準値内で
eGFRは73.89 mL/min/1.73m2で正常でした。
しかし、同時に血清シスタチンCを調べたら、1.48mg/dlで基準値を超えていて
eGFRは39.59 mL/min/1.73m2で腎機能障害が認められました。


つまり、AさんもBさんも、本当は腎機能障害があるけれど、
血清クレアチニン検査は正常であり、
見逃してしまうということになります。

クレアチニンは筋肉量や運動が結果に影響します。
高齢者は筋肉量が少ないので、
本当は腎機能障害があるのに見かけ上、正常にでてしまうのです。
血清シスタチンCが、それらに影響を受けない
最も、信頼度の高い腎機能検査です。

高齢者の場合は、ほとんどの人において、筋肉量が少ないです。
そうすると、一般によく用いられる腎機能検査の「血清クレアチニン値」だと、
筋肉量が少ない分、低値になります。
つまり、本当は腎機能障害があるのに、「血清クレアチニン値」だと
正常範囲になってしまうケースがかなりあると
思われます。
このような時、「血清シスタチンC」だと、筋肉量に影響されずに
正確な腎機能を評価することができ、とても有用です。

血清クレアチニンの基準値は、男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下です。
血清シスタチンCの基準値は、男性0.63~0.95mg/L、女性0.56~0.87mg/L です。


国連の世界保健機関(WHO)の定義では、65歳以上の人が高齢者です。
65-74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と呼びます。
総務省によれば、日本の65歳以上の高齢者は、
2020年は3617万人・総人口の28.7%で、過去最高の更新が続いています。


筋肉量
20歳を基準。
30歳で、6%低下
40歳で、12%低下。
50歳で、18%低下。
60歳で、24%低下。
70歳で、30%低下。


筋肉量に関しては
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/undoukei-rouka.html
健康長寿ネット
を参考にさせて頂きました。
ありがとうございます。

これだと、
少なくとも60歳以上はクレアチニンは当てにならないのでシスタチンCで評価すべきです。
基本40歳以上はシスタチンCがいいです。

しかし、1/3ヶ月でないと保険適応となりません。
つまり、1月に検査したら、次は4月となります。


腎臓には血液をろ過して、体の中に溜まった老廃物や水分、
取り過ぎた塩分などを尿と一緒に
体の外へ出してくれる働きがあります
腎臓はいらなくなった余分なものを体から排出して、
必要なものだけをしっかり体の中に残してくれるので、
体内の環境を正常に保つことができるのです。

糸球体での濾過量(GFR)は、正常では一定に維持され、
腎機能を知るうえで最も重要な指標となります。

血清シスタチンCの数値や血清クレアチニンの数値から、
年齢と性別を考慮して、腎臓の働きを推測した値を、
eGFR(推定糸球体濾過量)と言います。

<血清シスタチンC GFR>
<血清クレアチニン GFR>

で、ネットで検索すれば、
eGFR(推定糸球体濾過量)を計算するサイトが見つかります。
便利なので、利用しましょう。
そこで計算して、eGFRが60以上なら心配ないです。


腎機能検査として、一般的な血清クレアチニンや尿素窒素は食事や筋肉量、
運動などの影響を受けますが、
血清シスタチンC値はそれらの影響を受けないため、
小児・老人・妊産婦・アスリートなどでも問題なく測定できます。

また、クレアチニン値はGFRが30mL/分(腎不全)前後まで低下した頃から上昇するのに対し、
シスタチンC値はGFRが70mL/分前後の軽度~中等度の腎機能障害でも上昇するので、
腎機能障害の早期診断にたいへん有用です。

したがって、血清クレアチニンや尿素窒素が正常であっても、
尿検査で蛋白あるいは潜血反応に異常が認められた場合には、
早期腎症の可能性がありえるので、血清シスタチンCを調べるのが有用です。

血清クレアチニン値が既に高値(2mg/dL以上)であれば、
シスタチンCを測定する意義はありません。
一方、ごく軽度上昇例で評価が困難な場合、
シスタチンC測定で腎機能を検査するのがお奨めです。


江部康二
コメント
先生のブログ、いつも楽しみに拝見しております。
夫婦で糖質制限、お陰様で毎日大変元気に快適に過ごせております。

今回の内容と関係ないのですが…
先日、毎年の健康診断の結果が返ってきました。
今回はオプションで、超悪玉コレステロールの測定を申し込みましたが結果ビックリ、高値で要精密検査のD判定となりました。

その超悪玉コレステロールの測定の仕組みも分からずに申し込んでしまって、かえって不安になるだけだったのかな?

46歳女性

LDL 263
HDL 66
TG 33
BMI 20.3

私の認識では、上記の様な場合はいわゆる超悪玉は少ない、というつもりでおりましたが恐怖を感じてしまいましたので、日本糖質制限医療推進協会の提携医を検索し、先日受診して参りました。

数値を見た医師「こりゃ、飲まなきゃダメだな…」
と仰いました。
遺伝的なものだろう、とも。
糖質制限は続けて良い、との事。

同時に頸動脈エコーをしてもらいましたがこれも恐怖、右1.4㎜ 左0.7㎜…素人なので1.1㎜以上は…くらいの知識しかありませんのでこの年齢だし、ただただ恐怖を感じて、もう震えるばかりで何も考えられず。

いつからそうなっていたのか今更わかりません。

どうにかゼチーアをお願いして、処方していただきました。効かないよ、との事でしたが。

そこでいくつか疑問が湧いてきました。
私としては、糖質制限を始めてから(5、6年になります。)コレステロールが爆上がりしたと思っていますが
その少し前から、徐々にですが健康診断に引っかからない程度に上がっていました。
ちなみに20代の頃は健康診断で低コレステロールという指摘もあったくらいなんです。

その状況で遺伝的なもの、恐らくこの医師が疑っているのは家族性高コレステロール血症のことなのかと思われますが、この歳になってからそんなことってあるのでしょうか?若年のうちに発症するものと思っていましたので。
私には、アキレス腱肥厚も黄色腫?もありません。


そしてもう一つの疑問が、例えばこのままゼチーアを服用しても数値が下がらなかった場合、原因は食べ物ではないと考えて良いのかと思いますが、そうなるとLDLコレステロールが上がる原因って、何なのでしょうか?単なる更年期にしては高すぎます。
もちろん糖質制限前提です。

ちなみに私の母は昔も今も糖質を普通に摂取、いつの頃からかリピトール服用しています。若い頃からの服用ではありません。
肉も卵も出来る限り避ける食生活です。私とは真逆の食生活です。

ニュートラルなお立場の江部先生に、可能な範囲でご教示頂ければ幸いです。


 






2023/03/07(Tue) 21:48 | URL | ゆり | 【編集
Re: タイトルなし
ゆり さん


ゆりさんのデータは
HDL 66・・・60以上です。
TG 33
・・・60以下です。

従って、LDL-コレステロールは、263と多いですが、
理論上は、全て標準の大きさの善玉のLDLコレステロールです。


20代の頃は健康診断で低コレステロールという指摘もあったくらいなんです。
そうすると遺伝性の家族性高コレステロール血症ということはありません。


糖質制限食(高コレステロール食となります。)を開始してから、LDLコレステロールが上昇しているので
ゼチーアが、劇的に有効となります。
普通の食事の人は、ゼチーアは、LDLコレステロールを10~20mg/dlくらいしか下げませんが
スーパー糖質制限食で上昇した場合は、100mg/dlくらい、あるいはそれ以上下げます。


頸動脈プラークがないのなら、一安心です。
血管壁は3層になっています。
このうち第1層と第2層を内中膜複合体(IMC)といいます。
これは、1mm未満が正常なので、右1.4㎜は少し気になります。


あとは、心エコーや、心電図も検査して、どうもなければ、さらに安心です。


要するに、LDLコレステロールが高値でも
頸動脈プラークがなくて、心臓の冠動脈狭窄もなければ、動脈硬化になっていないので、安心です。



2023/03/08(Wed) 13:45 | URL | ドクター江部 | 【編集
シスタチンC 健保適用
シスタチンC は3ヶ月に1回健保適用です。

3/1に適用になると、90日薬処方だと
5/29までで薬切れます。
5/30血液検査時に健保適用になるのでしょうか?
2023/03/08(Wed) 14:25 | URL | らこ | 【編集
Re: シスタチンC 健保適用
らこ さん

1/月、1/2か月とかの通院の糖尿病患者さんにおいて、
毎月、健康保険で、HbA1cは検査します。

シスタチンCは、1/3ヶ月、一番詳しい腎機能検査として、健康保険で検査できるということです。

3月にシスタチンCを検査したら、
次に健康保険で検査できるのは、6月になります。
2023/03/08(Wed) 15:57 | URL | ドクター江部 | 【編集
早速のご返答ありがとうございます
6月ですか!
2023/03/08(Wed) 21:54 | URL | らこ | 【編集
空腹時血糖値の変動について
江部先生
はじめまして
先生の著書を拝読しスーパー糖質制限を実践している50代の主婦です。
空腹時血糖値98
HbA1c5.7
BMI19.7
1ヶ月前
食後高血糖が確認されて境界型と診断されました。
それ以来江部先生の著書をAmazonですべて手に入れ熟読しました。
もともと太っていませんが体重も3キロ落ち、リブレで計測を続けています
リブレで計測していると
夜中や寝起きはグルコース70〜90なのに
起きて動き出しただけで120とかに跳ね上がったりします。
起きている間.立って活動していると100を切ることはありません。
座って仕事をしていると90台に落ち着きます。
これは先生がテニスをした後は150台になったとおっしゃられているように自律神経やアドレナリンなどの関係で気にしなくてもいいのでしょうか?
そもそも動いただけで血糖値が20も30も跳ね上がる体質というのは問題があるのでしょうか?
かかりつけ医は糖質制限は自律神経が狂いやすくなるからそのせいだと言います。
しかし私は血糖値スパイクが糖質の3倍くらいになることもあるのがわかっているのに炭水化物をとるのは嫌だなと恐れています。
スーパー糖質制限をしているので
10分おきに3時間はかっていますが、食後血糖値は高くて150です。
このまま糖質制限していていいのかご教示いただけたら心置きなく続けられます。

先生のセミナーなどあれば参加したいとずっと調べているので一般参加が出来る公開講座などありましたらブログでお知らせお待ちしています
読んでいただいてありがとうございます
2023/03/09(Thu) 12:20 | URL | あやな | 【編集
Re: 空腹時血糖値の変動について
あやな さん


空腹時血糖値98
HbA1c5.7
BMI19.7

コントロール良好です。
動物性脂肪や動物性タンパク質はしっかり摂取して、これ以上体重が減らないよう気をつけましょう。


リブレで計測していると
夜中や寝起きはグルコース70〜90なのに
起きて動き出しただけで120とかに跳ね上がったりします。

ご指摘通り、アドレナリン分泌などによる現象と思われます。
これは、糖質制限とは無関係であり、全人類共通の現象と思います。


米国糖尿病学会は、2019年4月の『コンセンサス・レポート』発表以後
「エビデンスが最も豊富なのは糖質制限食である」と明言しています。
2020年、2021年、2022年、2023年のガイドラインでも同様の見解です。
つまり糖質制限食の有効性と安全性に関しては、米国糖尿病学会のお墨付きがあるということですね。
かかりつけ医が、このことをご存じないならば、勉強不足と言えると思います。


2023/03/09(Thu) 16:35 | URL | ドクター江部 | 【編集
このたびはご返答ありがとうございました。

心電図は先日の健康診断で正常、という判定でした。
心エコーはやっておりません。
今回受診したクリニックで伺ってみようとおもいます。

ひとまずゼチーアで様子を見てみようと思いますが、数値が下がらなかった場合は食事が原因ではないということになるかと思います。
かなりの大食いなので、コレステロール高値というのは、食べ過ぎが原因…などということはあるのでしょうか?

糖質制限だし、この歳の女性にしてはよく食べるし、結構本気で悩んでおります。




2023/03/09(Thu) 22:07 | URL | ゆり | 【編集
Re: タイトルなし

ゆり さん


BMI 20.3
ですので、正常やや痩せ型です。
従って、食事量はまったく問題ないので、しっかり動物性脂肪、動物性蛋白質を摂取しましょう。


LDL 263
HDL 66
TG 33

HDL-Cが60以上で、TGが60以下なので
LDL-Cも、理論的には、全て標準の大きさの、コレステロールという細胞膜の原料を末梢組織まで
運んでいく重要な役割を果たしている善玉です。
問題ないです。
LDL-Cはゼチーアで、劇的に下がると思います。
2023/03/10(Fri) 07:38 | URL | ドクター江部 | 【編集
リブレでの計測
あやなさま

割り込み失礼します。
一型糖尿病のむーです。
私もリブレでの計測で起床直後上がっています。
私の場合は一型なのでインスリン打たないと上がりっぱなしで、起床時すぐに打ち朝食準備しています(^^♪
2023/03/10(Fri) 09:31 | URL | むー | 【編集
お礼
先生にお返事いただき
感激して眠れませんでした
本当にありがとうございます
前向きにこのまま動物性脂肪やタンパク質を摂りながら糖質制限続けます
主治医の先生を糖質制限に理解のある先生に変えようと思います
先生のブログ毎日楽しみにしています
遡って読んでいます
新しい記事から遡ることしかできない仕様が残念です
いつかこのブログが一冊の書籍になればいいなと思いながら読んでます
先生、本当にありがとうございました
2023/03/10(Fri) 09:55 | URL | あやな | 【編集
江部先生

度々のご返答ありがとうございます。
今後も自分の体の声を聞きながら美味しく楽しく糖質制限をしていきたいと思います。

もう少し、日本糖質制限医療推進協会のお医者様が増えて、受診の選択肢が増えます様に!!
どうしてあまり増えないのでしょうね?
江部先生のさらなるご活躍を期待しております。
よろしくお願いします。
2023/03/10(Fri) 17:57 | URL | ゆり | 【編集
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