2023年01月12日 (木)
【23/01/11 はま
低糖質・高タンパク質食生活で作業記憶能が低下
あけましておめでとうございます。
私は2年ほど前に糖尿病であることが発覚し、
それ以来、江部先生のブログを励みに、
薬には頼らず糖質制限で血糖値を管理しています。
体質が変わりましてとても体調が良くなりました。
ところが、最近、「大学ジャーナルオンライン」というサイトで
以下のような論文が紹介されています。
「低糖質・高タンパク質食生活で作業記憶能が低下、群馬大学が検証」
なんと「海馬での神経の新生や成長・生存に関係するタンパク質のmRNA量を低下させることを見出した。」というのです。
ケトン体質で脳を働かせることは認知症予防にもなると考えていましたので、
真逆の研究結果が発表されたので少し不安になっています。
先生のお考えをお聞かせいただけたら幸いです。】
こんばんは。
はまさんから、
「低糖質・高タンパク質食生活で作業記憶能が低下、群馬大学が検証」
という論文が「大学ジャーナルオンライン」というサイトに掲載されたということで
コメント・質問を頂きました。
まず重要なポイントは、これはマウスでの実験ということです。
マウスの実験結果をそのままヒトにあてはめることは、できません。
<ヒトと糖質制限食>に関しては、米国糖尿病学会の見解がわかりやすいです。
米国糖尿病学会と糖質制限食、見解の変遷
『2007年まで糖尿病の食事療法において糖質制限食は推奨せず。
2008年、「食事療法に関する声明2008」において、
「減量が望まれる糖尿病患者には低カロリー食、もしくは低炭水化物食によるダイ エットが推奨される」
と1年の期限付きで糖質制限食の有効性を認める見解を記載。
2011年、肥満を伴う糖尿病患者に2年間の期限付きで糖質制限食の有効性を容認。
2013年10月、 「食事療法に関する声明2013」において期限や限定なしで、
糖質制限食を容認。
2019年4月、コンセンサスレポートにおいて、
糖質制限食が最もエビデンスが豊富であると明言。
2020年、2021年、2022年のガイドラインでもコンセンサスレポートを引用し、
同様の見解。』
2007年までは糖質制限食を全面否定していた、ADA(米国糖尿病学会)ですが、
6年間のの歳月を経て、肯定も批判も含めて多数の研究論文を検証して、
2013年、糖質制限食を正式に容認しました。
すなわち糖質制限食の有効性に関しては、
ADAにおいては、エビデンスレベルで担保されたと考えられます。
このように、2013年10月の時点で、糖質制限食の是非については、
米国においては、すでに決着はついているということです。
さらに、2019年4月のコンセンサスレポートで、
『糖質制限食が最もエビデンスが豊富』と明言し、その後も同様の見解です。
現時点で、糖質制限食の有効性と安全性は米国糖尿病学会により担保されていると言えます。
2021年まで米国糖尿病学会のCEOを務めたトレーシー・ブラウン氏は、
自身がスーパー糖質制限食を実践されており、
それによりインスリン注射から離脱されています。
また、<ケトン食とマウス> に関する実験でも、
セル・メタボリズムやサイエンスという極めて信頼度の高い科学雑誌において
以下の如く、ポジティブな成果がでています。
ケトン食でマウスの「死亡率減少、記憶力向上、健康寿命延長」というのは
信頼度の高い論文(セル・メタボリズム)の結論です。
論文には、BHB(βヒドロキシ酪酸)はシグナル作用を有し、
脳内の分子レベルの経路を調整して、炎症やフリーラジカルによる損傷を抑制することが記載してあります。
これにより、BHBに抗老化作用があることも示唆されていて、
ケトン食でマウスの「死亡率減少、記憶力向上、健康寿命延長」という
本論文の結論も説明できます。
BHB(βヒドロキシ酪酸)はケトン基を持っていないので、厳密にはケトン体ではないのですが、
一般にケトン体として扱われています。
このように考察してくると
血中ケトン体高値そのものが、一定の代謝の不利を乗り越えて
「死亡率減少、記憶力向上、健康寿命延長」をもたらしたと考えられます。
スーパー糖質制限食でもケトン体高値となりますが、
ケトン食だと非常に高値となります。
なお、以前ブログ記事にもしましたが、
「βヒドロキシ酪酸は内在性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として酸化ストレスの抑制に寄与する」
という大変興味深いScience の論文がありました。(☆)
サイエンスですから、インパクトファクター30前後と高いです。
興味がある人は、著者による日本語訳
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6286
を見ていただけばいいですが、難しいです。
専門的過ぎて、私にもよくわからない部分が多いです。
ともあれ、マウスの実験ではありますが、
「ケトン体が酸化ストレスの抑制に寄与する」という糖質セイゲニストにとって、
大変ありがたい結論であることは確認できました。
酸化ストレスは、動脈硬化や老化やがん、パーキンソン病やアルツハイマー病や認知症にも深く関わっています。
酸化ストレスが抑制できればこれらの病気のリスクが減ることにつながります。
βヒドロキシ酪酸(ケトン体の一種)なかなかの優れものですね。
(☆)
Suppression of oxidative stress by β-hydroxybutyrate, an endogenous histone deacetylase inhibitor.
Tadahiro Shimazu, Matthew D. Hirschey, John Newman, Wenjuan He, Kotaro Shirakawa, Natacha Le Moan, Carrie A. Grueter, Hyungwook Lim, Laura R. Saunders, Robert D. Stevens, Christopher B. Newgard, Robert V. Farese Jr., Rafael de Cabo, Scott Ulrich, Katerina Akassoglou, Eric Verdin
Science, 339, 211-214 (2013)
江部康二
低糖質・高タンパク質食生活で作業記憶能が低下
あけましておめでとうございます。
私は2年ほど前に糖尿病であることが発覚し、
それ以来、江部先生のブログを励みに、
薬には頼らず糖質制限で血糖値を管理しています。
体質が変わりましてとても体調が良くなりました。
ところが、最近、「大学ジャーナルオンライン」というサイトで
以下のような論文が紹介されています。
「低糖質・高タンパク質食生活で作業記憶能が低下、群馬大学が検証」
なんと「海馬での神経の新生や成長・生存に関係するタンパク質のmRNA量を低下させることを見出した。」というのです。
ケトン体質で脳を働かせることは認知症予防にもなると考えていましたので、
真逆の研究結果が発表されたので少し不安になっています。
先生のお考えをお聞かせいただけたら幸いです。】
こんばんは。
はまさんから、
「低糖質・高タンパク質食生活で作業記憶能が低下、群馬大学が検証」
という論文が「大学ジャーナルオンライン」というサイトに掲載されたということで
コメント・質問を頂きました。
まず重要なポイントは、これはマウスでの実験ということです。
マウスの実験結果をそのままヒトにあてはめることは、できません。
<ヒトと糖質制限食>に関しては、米国糖尿病学会の見解がわかりやすいです。
米国糖尿病学会と糖質制限食、見解の変遷
『2007年まで糖尿病の食事療法において糖質制限食は推奨せず。
2008年、「食事療法に関する声明2008」において、
「減量が望まれる糖尿病患者には低カロリー食、もしくは低炭水化物食によるダイ エットが推奨される」
と1年の期限付きで糖質制限食の有効性を認める見解を記載。
2011年、肥満を伴う糖尿病患者に2年間の期限付きで糖質制限食の有効性を容認。
2013年10月、 「食事療法に関する声明2013」において期限や限定なしで、
糖質制限食を容認。
2019年4月、コンセンサスレポートにおいて、
糖質制限食が最もエビデンスが豊富であると明言。
2020年、2021年、2022年のガイドラインでもコンセンサスレポートを引用し、
同様の見解。』
2007年までは糖質制限食を全面否定していた、ADA(米国糖尿病学会)ですが、
6年間のの歳月を経て、肯定も批判も含めて多数の研究論文を検証して、
2013年、糖質制限食を正式に容認しました。
すなわち糖質制限食の有効性に関しては、
ADAにおいては、エビデンスレベルで担保されたと考えられます。
このように、2013年10月の時点で、糖質制限食の是非については、
米国においては、すでに決着はついているということです。
さらに、2019年4月のコンセンサスレポートで、
『糖質制限食が最もエビデンスが豊富』と明言し、その後も同様の見解です。
現時点で、糖質制限食の有効性と安全性は米国糖尿病学会により担保されていると言えます。
2021年まで米国糖尿病学会のCEOを務めたトレーシー・ブラウン氏は、
自身がスーパー糖質制限食を実践されており、
それによりインスリン注射から離脱されています。
また、<ケトン食とマウス> に関する実験でも、
セル・メタボリズムやサイエンスという極めて信頼度の高い科学雑誌において
以下の如く、ポジティブな成果がでています。
ケトン食でマウスの「死亡率減少、記憶力向上、健康寿命延長」というのは
信頼度の高い論文(セル・メタボリズム)の結論です。
論文には、BHB(βヒドロキシ酪酸)はシグナル作用を有し、
脳内の分子レベルの経路を調整して、炎症やフリーラジカルによる損傷を抑制することが記載してあります。
これにより、BHBに抗老化作用があることも示唆されていて、
ケトン食でマウスの「死亡率減少、記憶力向上、健康寿命延長」という
本論文の結論も説明できます。
BHB(βヒドロキシ酪酸)はケトン基を持っていないので、厳密にはケトン体ではないのですが、
一般にケトン体として扱われています。
このように考察してくると
血中ケトン体高値そのものが、一定の代謝の不利を乗り越えて
「死亡率減少、記憶力向上、健康寿命延長」をもたらしたと考えられます。
スーパー糖質制限食でもケトン体高値となりますが、
ケトン食だと非常に高値となります。
なお、以前ブログ記事にもしましたが、
「βヒドロキシ酪酸は内在性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として酸化ストレスの抑制に寄与する」
という大変興味深いScience の論文がありました。(☆)
サイエンスですから、インパクトファクター30前後と高いです。
興味がある人は、著者による日本語訳
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6286
を見ていただけばいいですが、難しいです。
専門的過ぎて、私にもよくわからない部分が多いです。
ともあれ、マウスの実験ではありますが、
「ケトン体が酸化ストレスの抑制に寄与する」という糖質セイゲニストにとって、
大変ありがたい結論であることは確認できました。
酸化ストレスは、動脈硬化や老化やがん、パーキンソン病やアルツハイマー病や認知症にも深く関わっています。
酸化ストレスが抑制できればこれらの病気のリスクが減ることにつながります。
βヒドロキシ酪酸(ケトン体の一種)なかなかの優れものですね。
(☆)
Suppression of oxidative stress by β-hydroxybutyrate, an endogenous histone deacetylase inhibitor.
Tadahiro Shimazu, Matthew D. Hirschey, John Newman, Wenjuan He, Kotaro Shirakawa, Natacha Le Moan, Carrie A. Grueter, Hyungwook Lim, Laura R. Saunders, Robert D. Stevens, Christopher B. Newgard, Robert V. Farese Jr., Rafael de Cabo, Scott Ulrich, Katerina Akassoglou, Eric Verdin
Science, 339, 211-214 (2013)
江部康二
都内河北 鈴木です。
本日記事の質問は、<<否定します!!>>
私は、日本医療界に殺されかけましたが、
<<『生還、覚醒+α、5度の再覚醒、』>>しています、
医療改善データ存在しています!!
横から失礼いたしました!!
江部先生には、感謝尽きません!!
現在も更なる改善が予測できる生活状況かなとかんがえます!!
ありがとうございます。
敬具
本日記事の質問は、<<否定します!!>>
私は、日本医療界に殺されかけましたが、
<<『生還、覚醒+α、5度の再覚醒、』>>しています、
医療改善データ存在しています!!
横から失礼いたしました!!
江部先生には、感謝尽きません!!
現在も更なる改善が予測できる生活状況かなとかんがえます!!
ありがとうございます。
敬具
2023/01/13(Fri) 15:48 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集】
マウスの実験例がヒトには当てはまらないのであれば、この実験はカネのむだ遣い、もし当てはまると思ってやったとすればあまりにも愚か
群馬大学の人はなんといって弁明、釈明するのだろうか
群馬大学の人はなんといって弁明、釈明するのだろうか
2023/01/14(Sat) 14:13 | URL | こうとく | 【編集】
こうとく さん
マウスの本来の主食は、草の実(穀物)です。
そのマウスに「低糖質・高タンパク質食」を食べさせるのは、出発点で間違っています。
どれくらい間違っているかを言えば、例えは、「葉っぱが主食のゴリラにステーキを食べさせる。」ようなものですが、これなら、イメージしやすいですね。
様々な、代謝障害が出現することでしょう。
薬物の毒性や安全性をマウスで実験するのは、人にも役に立つ研究と思います。
しかし、食事の実験をするなら、マウスの本来の主食のことを考慮しないと
話になりません。
マウスの本来の主食は、草の実(穀物)です。
そのマウスに「低糖質・高タンパク質食」を食べさせるのは、出発点で間違っています。
どれくらい間違っているかを言えば、例えは、「葉っぱが主食のゴリラにステーキを食べさせる。」ようなものですが、これなら、イメージしやすいですね。
様々な、代謝障害が出現することでしょう。
薬物の毒性や安全性をマウスで実験するのは、人にも役に立つ研究と思います。
しかし、食事の実験をするなら、マウスの本来の主食のことを考慮しないと
話になりません。
2023/01/14(Sat) 17:02 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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