2022年12月18日 (日)
【日付 名前
22/12/18 倉田
マグネシウムと糖尿病及び高血圧
いつもお世話になっています。
江部先生の考えをお聞きしたいと思い、連絡させていただきました。
マグネシウム不足で、糖尿病や高血圧になるということを最近知ったのですが、
その点についてお尋ねします。
まず、糖尿病との関係ですが、
糖質制限療法が効果的ということは証明されていますが、
マグネシウムも要因として関係があるとすると、
糖尿病治療も、マグネシウムをサプリで補充することで、
さらに効果があるということになるのでしょうか。
次に、糖尿病と血圧の関係ですが、糖尿病は必ず高血圧を伴うものでしょうか。
もしそうだとすると、糖尿病が改善されると同時に高血圧も改善されるでしょうか。
あるいは、糖尿病は必ずしも高血圧を伴うものではなく、
それぞれ別な要因があり、高血圧は別な治療が必要でしょうか。
その場合、降圧剤ではなく、
サプリのマグネシウム補充により血圧を下げることができるでしょうか。
先生は、実際にそのような指導又は治療をされたことがおありでしょうか。】
こんばんは。
マグネシウムと糖尿病及び高血圧について
倉田さんから、コメント・質問を頂きました。
【糖尿病との関係ですが、
糖質制限療法が効果的ということは証明されていますが、
マグネシウムも要因として関係があるとすると、
糖尿病治療も、マグネシウムをサプリで補充することで、
さらに効果があるということになるのでしょうか。】
マグネシウムは、インスリンの働きを良くし糖の代謝を改善することが示唆されており、
マグネシウム摂取により糖尿病のリスクが低くなることが欧米の研究で報告されています。
しかし、以下の国立がん研究センターの日本人の研究(☆)においては、
「マグネシウム摂取と糖尿病発症との関連なし」
と結論されています。
一方、厚生労働省の「e-ヘルスネット」(☆☆)によれば、
マグネシウムは以下の如く人体にとって様々な役割を果たしているので
必要なミネラルです。
マグネシウムは通常は食品から摂取でいているので不足することは
あまりないと思います。
あおさ、あおのり、てんぐさ、ひじきなど海藻に豊富に含まれています。
米糠、干しエビ、コーヒー、ココア、ブラジルナッツ、アーモンドもいいです。
マグネシウムが足りているなら、サプリで補充する意味はありません。
まれにマグネシウムを摂取していても、
他の成分によって吸収が阻害されることがあります。
例えばリン酸塩により吸収が阻害されます。
リン酸塩は、加工食品や清涼飲料水、カップ麺などに含まれているので
摂らないか、少量摂取とするのが無難です。
(☆☆)
「e-ヘルスネット」
マグネシウム
人体に必要なミネラルの一種で、リンやカルシウムとともに骨を形成するほか、体内のさまざまな代謝を助ける機能を持つ。
人体に必要なミネラルの一種です。成人では、体内に約20g~30gが存在し、その約6割はリン酸マグネシウムや炭酸水素マグネシウムとして骨や歯に含まれ、残りは筋肉や脳・神経に存在しています。300種類以上の酵素を活性化する働きがあり、筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温・血圧の調整にも役立っています。
マグネシウムが不足すると骨の形成に影響が出るほか、不整脈や虚血性心疾患、高血圧、筋肉のけいれんを引き起こします。また神経過敏や抑うつ感などが生じることもあります。
健康な人の場合、余分なマグネシウムは腎臓で排出されますが、腎臓に疾患があると血液中のマグネシウム濃度が高くなることがあります。通常の食事では摂り過ぎることはありませんが、それ以外にサプリメントや薬でマグネシウムを摂り過ぎると下痢を起こすことがあります。
【糖尿病と血圧の関係ですが、糖尿病は必ず高血圧を伴うものでしょうか。
もしそうだとすると、
糖尿病が改善されると同時に高血圧も改善されるでしょうか。
あるいは、糖尿病は必ずしも高血圧を伴うものではなく、
それぞれ別な要因があり、高血圧は別な治療が必要でしょうか。
その場合、降圧剤ではなく、
サプリのマグネシウム補充により血圧を下げることができるでしょうか。
先生は、実際にそのような指導又は治療をされたことがおありでしょうか。】
糖尿病患者さんが高血圧を合併していることは多いですが、
高血圧なしの単独の糖尿病の人もおられます。
糖尿病と高血圧と発症要因は別なので、それぞれ別の治療が必要です。
マグネシウムが不足すると高血圧を生じることがあるので
その場合はマグネシウム摂取が有効です。
しかしほとんどの場合はマグネシウム不足はないので
サプリで摂る意味はありません。
私自身は、サプリは飲みませんし、患者さんに奨めることもありません。
江部康二
(☆)国立研究開発法人 国立がん研究センター
がん対策研究所
予防関連プロジェクト
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2119.html
マグネシウム摂取と糖尿病との関連について
-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-
私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、
日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。
平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2009年現在)管内にお住まいだった方々のうち、ベースラインおよび研究開始から5年後に行った調査時に糖尿病やがん、循環器疾患になっていなかった40~69歳の男女約6万人を、5年間追跡した調査結果にもとづいて、マグネシウム摂取と糖尿病発症との関連を調べた結果を、専門誌で論文発表しましたので紹介します(European Journal of Clinical Nutrition 2010年64巻1244-1247頁)。
マグネシウムは、インスリンの働きを良くし糖の代謝を改善することが示唆されており、
マグネシウム摂取により糖尿病のリスクが低くなることが欧米の研究で報告されています。
しかし、日本を含むアジアで行なった研究は少なく、一致した結果は得られていません。
そこで、マグネシウム摂取と糖尿病発症との関連について検討しました。
全体としては、糖尿病発症との関連なし
研究開始から5年後に行なったアンケート調査の結果を用いて、マグネシウムの摂取量により5つのグループに分類し、
その後5年間の糖尿病発症(男性634人、女性480人)との関連を調べました。
糖尿病の発症は、研究開始10年後に行った自記式調査で、上記追跡期間内に糖尿病と診断されたことがある場合としました。
その結果、男女ともにマグネシウム摂取と糖尿病発症との有意な関連はみられませんでしたが、
男性において、マグネシウムの摂取が多くなるほど糖尿病発症のリスクが若干低くなる傾向がみられました(図1)。
さらに、糖尿病発症のリスクが高い肥満群(BMI25kg/m²以上)において同様の解析を行いましたが、
マグネシウム摂取と糖尿病発症との有意な関連は認めませんでした。
今回の研究では、男性において、わずかではありますがマグネシウム摂取による糖尿病予防の可能性が示唆されますが、
全体としてはマグネシウム摂取と糖尿病発症との関連は認めませんでした。
欧米の研究では、マグネシウム摂取により糖尿病のリスクが低くなることが報告されていますが、
今回の研究を含むアジアの研究では一致した結果は得られていません。
その理由として、日本を含むアジアは欧米に比べ肥満者の割合が少ないことや、
日本人のマグネシウムの供給源は欧米人とは異なること(日本人のマグネシウムの主な供給源:穀類、野菜類、豆類;欧米人:乳製品、動物性食品)が考えられますが、
この点についてはさらなる検討が必要です。
今回の研究では、全対象者に実施された食物摂取頻度アンケート調査から、
各グループの摂取量(中央値)を算出すると、
最も少ないグループは男女ともに213mg、最も多いグループは男性では348mg、女性では333mgでした。
それらの値は、対象者の一部に実施されたより直接的な食事記録調査から算出された値と対比すると、
男性では7~16%低く、女性では4~5%多く(コホートI)または低く(コホートII)見積もっています。
多目的コホート研究などで用いられる食物摂取頻度アンケート調査は、
摂取量による相対的なグループ分けには適していますが、
それだけで実際の摂取量を正確に推定するのは難しく、
また年齢や時代・居住地域などが限定された対象集団の値を一般化することは適当とは言えませんので、
ここに示した摂取量はあくまで参考値にすぎません。
22/12/18 倉田
マグネシウムと糖尿病及び高血圧
いつもお世話になっています。
江部先生の考えをお聞きしたいと思い、連絡させていただきました。
マグネシウム不足で、糖尿病や高血圧になるということを最近知ったのですが、
その点についてお尋ねします。
まず、糖尿病との関係ですが、
糖質制限療法が効果的ということは証明されていますが、
マグネシウムも要因として関係があるとすると、
糖尿病治療も、マグネシウムをサプリで補充することで、
さらに効果があるということになるのでしょうか。
次に、糖尿病と血圧の関係ですが、糖尿病は必ず高血圧を伴うものでしょうか。
もしそうだとすると、糖尿病が改善されると同時に高血圧も改善されるでしょうか。
あるいは、糖尿病は必ずしも高血圧を伴うものではなく、
それぞれ別な要因があり、高血圧は別な治療が必要でしょうか。
その場合、降圧剤ではなく、
サプリのマグネシウム補充により血圧を下げることができるでしょうか。
先生は、実際にそのような指導又は治療をされたことがおありでしょうか。】
こんばんは。
マグネシウムと糖尿病及び高血圧について
倉田さんから、コメント・質問を頂きました。
【糖尿病との関係ですが、
糖質制限療法が効果的ということは証明されていますが、
マグネシウムも要因として関係があるとすると、
糖尿病治療も、マグネシウムをサプリで補充することで、
さらに効果があるということになるのでしょうか。】
マグネシウムは、インスリンの働きを良くし糖の代謝を改善することが示唆されており、
マグネシウム摂取により糖尿病のリスクが低くなることが欧米の研究で報告されています。
しかし、以下の国立がん研究センターの日本人の研究(☆)においては、
「マグネシウム摂取と糖尿病発症との関連なし」
と結論されています。
一方、厚生労働省の「e-ヘルスネット」(☆☆)によれば、
マグネシウムは以下の如く人体にとって様々な役割を果たしているので
必要なミネラルです。
マグネシウムは通常は食品から摂取でいているので不足することは
あまりないと思います。
あおさ、あおのり、てんぐさ、ひじきなど海藻に豊富に含まれています。
米糠、干しエビ、コーヒー、ココア、ブラジルナッツ、アーモンドもいいです。
マグネシウムが足りているなら、サプリで補充する意味はありません。
まれにマグネシウムを摂取していても、
他の成分によって吸収が阻害されることがあります。
例えばリン酸塩により吸収が阻害されます。
リン酸塩は、加工食品や清涼飲料水、カップ麺などに含まれているので
摂らないか、少量摂取とするのが無難です。
(☆☆)
「e-ヘルスネット」
マグネシウム
人体に必要なミネラルの一種で、リンやカルシウムとともに骨を形成するほか、体内のさまざまな代謝を助ける機能を持つ。
人体に必要なミネラルの一種です。成人では、体内に約20g~30gが存在し、その約6割はリン酸マグネシウムや炭酸水素マグネシウムとして骨や歯に含まれ、残りは筋肉や脳・神経に存在しています。300種類以上の酵素を活性化する働きがあり、筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温・血圧の調整にも役立っています。
マグネシウムが不足すると骨の形成に影響が出るほか、不整脈や虚血性心疾患、高血圧、筋肉のけいれんを引き起こします。また神経過敏や抑うつ感などが生じることもあります。
健康な人の場合、余分なマグネシウムは腎臓で排出されますが、腎臓に疾患があると血液中のマグネシウム濃度が高くなることがあります。通常の食事では摂り過ぎることはありませんが、それ以外にサプリメントや薬でマグネシウムを摂り過ぎると下痢を起こすことがあります。
【糖尿病と血圧の関係ですが、糖尿病は必ず高血圧を伴うものでしょうか。
もしそうだとすると、
糖尿病が改善されると同時に高血圧も改善されるでしょうか。
あるいは、糖尿病は必ずしも高血圧を伴うものではなく、
それぞれ別な要因があり、高血圧は別な治療が必要でしょうか。
その場合、降圧剤ではなく、
サプリのマグネシウム補充により血圧を下げることができるでしょうか。
先生は、実際にそのような指導又は治療をされたことがおありでしょうか。】
糖尿病患者さんが高血圧を合併していることは多いですが、
高血圧なしの単独の糖尿病の人もおられます。
糖尿病と高血圧と発症要因は別なので、それぞれ別の治療が必要です。
マグネシウムが不足すると高血圧を生じることがあるので
その場合はマグネシウム摂取が有効です。
しかしほとんどの場合はマグネシウム不足はないので
サプリで摂る意味はありません。
私自身は、サプリは飲みませんし、患者さんに奨めることもありません。
江部康二
(☆)国立研究開発法人 国立がん研究センター
がん対策研究所
予防関連プロジェクト
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2119.html
マグネシウム摂取と糖尿病との関連について
-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-
私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、
日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。
平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2009年現在)管内にお住まいだった方々のうち、ベースラインおよび研究開始から5年後に行った調査時に糖尿病やがん、循環器疾患になっていなかった40~69歳の男女約6万人を、5年間追跡した調査結果にもとづいて、マグネシウム摂取と糖尿病発症との関連を調べた結果を、専門誌で論文発表しましたので紹介します(European Journal of Clinical Nutrition 2010年64巻1244-1247頁)。
マグネシウムは、インスリンの働きを良くし糖の代謝を改善することが示唆されており、
マグネシウム摂取により糖尿病のリスクが低くなることが欧米の研究で報告されています。
しかし、日本を含むアジアで行なった研究は少なく、一致した結果は得られていません。
そこで、マグネシウム摂取と糖尿病発症との関連について検討しました。
全体としては、糖尿病発症との関連なし
研究開始から5年後に行なったアンケート調査の結果を用いて、マグネシウムの摂取量により5つのグループに分類し、
その後5年間の糖尿病発症(男性634人、女性480人)との関連を調べました。
糖尿病の発症は、研究開始10年後に行った自記式調査で、上記追跡期間内に糖尿病と診断されたことがある場合としました。
その結果、男女ともにマグネシウム摂取と糖尿病発症との有意な関連はみられませんでしたが、
男性において、マグネシウムの摂取が多くなるほど糖尿病発症のリスクが若干低くなる傾向がみられました(図1)。
さらに、糖尿病発症のリスクが高い肥満群(BMI25kg/m²以上)において同様の解析を行いましたが、
マグネシウム摂取と糖尿病発症との有意な関連は認めませんでした。
今回の研究では、男性において、わずかではありますがマグネシウム摂取による糖尿病予防の可能性が示唆されますが、
全体としてはマグネシウム摂取と糖尿病発症との関連は認めませんでした。
欧米の研究では、マグネシウム摂取により糖尿病のリスクが低くなることが報告されていますが、
今回の研究を含むアジアの研究では一致した結果は得られていません。
その理由として、日本を含むアジアは欧米に比べ肥満者の割合が少ないことや、
日本人のマグネシウムの供給源は欧米人とは異なること(日本人のマグネシウムの主な供給源:穀類、野菜類、豆類;欧米人:乳製品、動物性食品)が考えられますが、
この点についてはさらなる検討が必要です。
今回の研究では、全対象者に実施された食物摂取頻度アンケート調査から、
各グループの摂取量(中央値)を算出すると、
最も少ないグループは男女ともに213mg、最も多いグループは男性では348mg、女性では333mgでした。
それらの値は、対象者の一部に実施されたより直接的な食事記録調査から算出された値と対比すると、
男性では7~16%低く、女性では4~5%多く(コホートI)または低く(コホートII)見積もっています。
多目的コホート研究などで用いられる食物摂取頻度アンケート調査は、
摂取量による相対的なグループ分けには適していますが、
それだけで実際の摂取量を正確に推定するのは難しく、
また年齢や時代・居住地域などが限定された対象集団の値を一般化することは適当とは言えませんので、
ここに示した摂取量はあくまで参考値にすぎません。
江部先生
お世話になっています
以前便秘の件あったと思います
対策としていろいろあったと思います
僕も試行錯誤しています
セロリの件書きました それも良いとは思うの
ですが 整腸剤もすごく良いきがします
ビヲフェ ・・・・・
このページを読んでいる方糖質制限の方が
ほとんどだとおもいますが意見をきてみたいのですが。。。。
お世話になっています
以前便秘の件あったと思います
対策としていろいろあったと思います
僕も試行錯誤しています
セロリの件書きました それも良いとは思うの
ですが 整腸剤もすごく良いきがします
ビヲフェ ・・・・・
このページを読んでいる方糖質制限の方が
ほとんどだとおもいますが意見をきてみたいのですが。。。。
糖尿人 さん
私は、患者さんの希望があれば、
「ビオフェルミン」や「ミヤBM」を処方します。
それなりに有効と思います。
私は、患者さんの希望があれば、
「ビオフェルミン」や「ミヤBM」を処方します。
それなりに有効と思います。
2022/12/19(Mon) 17:01 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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