2022年12月02日 (金)
こんにちは。
血清尿酸値と糖質制限食との関連について
ホリさんから、コメント・質問を頂きました。
【22/11/30 ホリ
尿酸値の事でお聞きしたい事があります。
はじめまして。いつもブログを見て勉強させていただいております。私は、4ヶ月前に糖尿病がわかり、その後すぐに江部先生の本で勉強し、スーパー糖質制限を実践しております。
お陰様で、HbA1cも12から5.5まで下がり、ひとまず寛解レベルにまでなりました。
ただ、一つ新たな心配事が出てきまして…
先日の血液検査の結果、尿酸値が10まで上がっていて、指摘された事が気になっています。
自分としては、食生活や運動に気を付けており、糖尿病になる前と今とでは、180度違うような生活を続けているのに…本当に不思議で理解できませんでした。
担当の先生も、詳しい原因はよくわかっておらず
、とりあえず様子をみましょうと曖昧な対応でしたので、余計不安になりまして…
私としては、原因がよくわからずスッキリしないのは嫌だったので、帰ってネットで調べてみました。
すると、断食とかカロリー不足が原因で、尿酸値が上がる事があるという事を知りました。
実は、最近になり減量を急ぐあまり、少しハード目の食生活にシフトしていた事が思い当たりました。
ちなみにその食生活は、朝、バターコーヒー、昼バターコーヒー、夜スーパー糖質制限食(タンパク多め)というものになります。
以前は、スーパー糖質制限食を3食食べていたのですが…ある頃から、体重が思うように体重が落ちず停滞するようになりまして…
今のバターコーヒーを組み合わせるスタイルに変えました。それが尿酸値を上げる原因になってしまったのでは?と思っています。
そこで、江部先生にお聞きしたいのですが、
私の尿酸値が急に高くなった原因は、やはりこの食生活にあると思われますか?
糖質制限と尿酸値との関係事や、理想的な糖質制限ダイエットのやり方(どこまで制限していいのか?)等のアドバイスをいただけるとありがたいです。
よろしくお願いいたします。】
22/12/01 ドクター江部
Re: 尿酸値の事でお聞きしたい事があります。
ホリ さん
拙著のご購入、ありがとうございます。
HbA1cの改善、良かったです。
①年齢と性別は?
②糖質制限前の身長・体重はどのくらいでしょう。
③糖質制限後HbA1c5.5%のときの体重はどのくらいでしょう。
おそらく、摂取エネルギー不足で、尿酸値が上昇したものと思われます。
【22/12/02 ホリ
きのう尿酸値の件で質問した者です。
江部先生
コメントいただき、ありがとうございました。
追加で私の情報を書かせていただきます。
①年齢 ・性別 41歳 男
②糖質制限前の身長・体重、180㎝・115kg
③糖質制限後HbA1c 5.3%のときの体重、95kg
ちなみに、4ヶ月前の糖尿病がわかった時は、
HbA1c 11 、尿酸値4.9でした。
それが今では、HbA1c 5.3、尿酸値10.5でかなり高い数値になってしまいした。
やはり、摂取エネルギー不足が原因で、尿酸値が高くなった可能性が高いのでしょうか?
朝・昼バターコーヒー、夜スーパー糖質制限食というスタイルが体にとって良くなかったんでしょうかね? 江部先生も、確か朝はコーヒーのみで
食事は抜いてらっしゃいますよね?
朝の1食だけなら、食事を抜いてバターコーヒーだけでも問題無さそうですか?
今後、どういった食生活を続けるのがいいのか悩んでいます。具体的な解決策を教えていただけると大変ありがたいです。よろしくお願いいたします。】
この経過だと、やはり摂取エネルギー不足で、尿酸値が上昇したものと思われます。
1日1食でも2食でもいいので、
厚生労働省のいう<推定エネルギー必要量>を確保しましょう。
②糖質制限前の身長・体重、180㎝・115kg・・・BMI:35.5
③糖質制限後HbA1c 5.3%のときの体重、95kg・・・BMI:29.3
20kg減量成功ですが、実はこのあたりに、一つの壁があるケースが多いようです。
これには理由があるのですが、以下を質問させて下さい。
a)子供の頃、肥満はありましたか?
b)20歳の頃は、何キロでしたか?
c)30歳の頃は、何キロでしたか?
<糖質制限食と血清尿酸値>
今回の記事は、糖質制限食と血清尿酸値についての考察です。
尿酸値に関しては、糖質制限食実践で、
減少する人、不変の人、増加する人と個人差が大きいです。
もともと尿酸が高値だったのが糖質制限食で基準値になる人がいますが、
これは問題ないですね。
肥満がある人が糖質制限食で減量に成功したら、
尿酸値が基準値になることは考えられます。
もともと尿酸値は正常だったのに、糖質制限食実践後にで高値となる人が時々おられます。
尿酸高値の一番多い原因は、糖質を制限したことではなく、
結果として低カロリー過ぎた場合です。
糖質制限食開始後、急に尿酸値が上昇したときは、栄養指導で確認したところ、
ほとんどの人において、摂取エネルギー不足でした。
通常、糖質制限食開始後に、一旦、尿酸値が上昇した人も、
摂取エネルギー不足を解消すれば
速やかに元の値に戻ることが多いので経過をみて良いと思います。
<体内での尿酸の生成と排泄>
尿酸は尿から排泄されるだけでなく、消化液や汗からも排泄されます。
腎臓からの排泄は約3/4を占め一番多いですが、 消化液や汗からの排泄機能も、
血清尿酸値の個人差にある程度関係しているのでしょう。
体内で尿酸をつくり過ぎるか尿からの排泄が悪いため、
高尿酸血症になると考えられてきましたが、
これらに腸からの排泄障害や皮膚の汗からの排泄障害も加わることとなりました。
あくまでも私見ですが、この腸や皮膚からの尿酸排泄は、
生活習慣やストレスの影響を一番受けやすいような気がします。
<高尿酸血症と服薬基準>
過去痛風発作を起こしたことがない場合は、
尿酸8~9mg/dlとかでも、食事療法と生活習慣の改善で経過をみてよいと思います。
『すでに痛風発作を起こしたことがある場合』、
『尿酸値8.0mg/dl以上ですでに腎障害・結石・高血圧などの合併症のある場合』、
『無症状であっても尿酸値が9.0mg/dl以上の場合』
は、薬物療法の適応になります
高尿酸血症は、
狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化の危険因子の一つですので注意が必要です。
男女ともに尿酸値が7.0mg/dLまでは基準値内です。
これを超えると異常で、高尿酸血症と呼ばれます。
(公益財団法人 痛風・尿酸財団)
https://www.tufu.or.jp/gout/gout2/61
<食事療法>
過去尿路結石のあった人や家系的に腎臓結石持の方々は、
尿酸が高値となったときは、梅干しを食べるとか、
わかめ・ほうれん草・大根・キャベツ・茄子・しいたけなど摂取で、
尿をアルカリに保って尿酸が結晶化しにくいようして、
尿酸値が基準値にもどるのを待つのが安全と思います。
尿路結石の予防になります。
ただ、低カロリーすぎると、どんな内容の食事でも、
尿酸値が上昇するので注意が必要です。
例えば断食(絶食)をすると、尿酸値は急激に上昇します。
断食前6mg/dlが、断食中は9~10mg/dlに急上昇したりします。
さて糖質制限食を実践すれば、相対的に高タンパク・高脂質食となります。
尿酸値は、従来、肉の摂りすぎや、
ビールの飲み過ぎで高値となるということが常識だったのですが、
食事由来のプリン体は総量の約20%に過ぎず、
体内で生合成するプリン体80%に比し、かなり少ないということが判明しました。
例えば、江部康二は、2002年以来18年間、
スーパー糖質制限食実践で130g~150g/日のタンパク質を摂取していて、
かなりの高タンパク食です。
しかしながら、尿酸値は、
一貫して2.4~3.5mg/dl(基準値は3.4~7.0)程度と低い方です。
尿酸は体内の酸化ストレスに対抗する物質という説があります。
私はスーパー糖質制限食で体内の酸化ストレスが少ないので、
尿酸も少なくてすんでいるというポジティブな仮説もありかと考えています。
<納光弘先生の見解>
自らが痛風患者であり、痛風専門医でもある、
元鹿児島大学病院内科教授、納(おさめ)光弘先生によれば、
食事よりストレスや肥満の方が、尿酸値への影響が多いことがわかってきました。
<尿酸を上昇させる要因>
尿酸を確実に上昇させるのは、重要なものから順番に
1、ストレス
2、肥満
3、大量の飲酒
4、激しい運動
5、プリン体の摂りすぎ
だそうです。
尿酸値に影響を与える5つの要素について、詳しく見ていきましょう。
1 ストレス
実はストレスが一番尿酸値を上昇させます。
鹿児島大学の納光弘先生もご自身が痛風でして、
徹底的に自分で人体実験をされて、
ビールより何よりストレスが高尿酸血症の原因と断定しておられます。
納先生ご自身は、学会の会頭を引き受けて忙しくてプレッシャーが高かった時期が
最も尿酸値が上昇したそうです。
学会が終了したら、ビールを飲んでも下がったそうです。
これは、もっぱら心理的ストレスですね。
一方、断食は究極の肉体的ストレスという見方もできます。
2 肥満
体重増加も尿酸を増加させる要因なので、糖質制限食で減量すると、
尿酸値も低下すると思います。
肥満が改善すれば、尿酸値も改善する可能性があります。
3 飲酒
アルコールを大量に(日本酒1日3合程度以上)飲めば尿酸値は上昇し、
断酒すれば下降します。
アルコールが尿酸値に影響を与える要因は二つあります。
一つは、アルコールが代謝の途中で乳酸になり、
乳酸が腎臓からの尿酸排泄を抑制すること。
もう一つは、継続的に多量にアルコールを摂取したときに(日本酒1日4合以上を毎日)、
アルコールが尿酸の代謝を促進させて尿酸値が上がることです。
なお、お酒に含まれているプリン体自身の量は、
体内の尿酸プールの量に比べて少ないのでほとんど影響はありません。
例えばビール大瓶633㏄中のプリン体はたったの32.4㎎に過ぎません。
適量のアルコールならストレスが解消され尿酸値を下げます。
適量の目安は、日本酒1.5合、ビール約750㏄、
ワイングラス2杯、焼酎のお湯割りコップ2杯程度です。
4 激しい運動
激しい運動は尿酸を上昇させますが、軽い有酸素運動は大丈夫です。
筋トレなどの無酸素運動も尿酸値を上げます。
5 プリン体の摂りすぎ
プリン体が非常に多い食品はさすがに大量にはとらない方がいいでしょう。
しかし、日常的な食生活の中では、プリン体を気にするほどのことはなさそうです。
何故ならプリン体は約80%が体内で生合成され、
食事由来のプリン体は約20%に過ぎないからです。
☆プリン体の多い食品
(1)きわめて多い(100g中300㎎以上):鶏レバー、白子など
(2)多い(100g中200-300㎎):豚レバー、牛レバー、かつお、
まいわし、大正えびなど
<尿酸の生成と排泄、尿酸プール>
☆尿酸の生成
プリン体の代謝産物として、尿酸が作られます。
一日で産生される尿酸の総量:約700㎎
☆尿酸の排泄
一日で排出される尿酸の量:約700㎎
・ 尿から排泄:約525㎎(3/4)
・ 汗や消化液から排泄:約175㎎(1/4)
☆尿酸の体内プール
・ 健康な人の体内には常に1200㎎程度の尿酸がプールされています。
尿酸は、このように毎日生産と排泄を繰り返しながら一定量を保っています。
しかし、尿酸の排泄がうまくいかなくなったり、尿酸が体内で作られすぎると、尿酸値が上がります。
<痛風発作の誘因>
・アルコールの多飲
・激しい運動
・ストレス
・尿酸値を上げる薬物(利尿剤など)
・早食い・大食い
なお、尿酸は、温度が下がるほど結晶化しやすくなります。
だから、人体で一番温度の低い足指の関節で痛風発作を生じやすいのですね。
*参考
「痛風はビールを飲みながらでも治る」(小学館文庫)2004年
鹿児島大学病院内科教授、納(おさめ)光弘先生 著
**プリン体
プリン体は核酸(DNAおよびRNA)の構成要素として体内で遺伝情報を保存しています。
また生物が生命活動を行う際に必要とするエネルギーは、
プリン体の一種であるアデノシン三リン酸(ATP)から供給されます。
***帝人ファーマ株式会社のサイトを参考にさせて頂きました。
ありがとうございます。
https://medical.teijin-pharma.co.jp/materials/iyaku/detail/skhk4v0000000xuk-att/skhk4v0000000xv1.pdf
江部康二
血清尿酸値と糖質制限食との関連について
ホリさんから、コメント・質問を頂きました。
【22/11/30 ホリ
尿酸値の事でお聞きしたい事があります。
はじめまして。いつもブログを見て勉強させていただいております。私は、4ヶ月前に糖尿病がわかり、その後すぐに江部先生の本で勉強し、スーパー糖質制限を実践しております。
お陰様で、HbA1cも12から5.5まで下がり、ひとまず寛解レベルにまでなりました。
ただ、一つ新たな心配事が出てきまして…
先日の血液検査の結果、尿酸値が10まで上がっていて、指摘された事が気になっています。
自分としては、食生活や運動に気を付けており、糖尿病になる前と今とでは、180度違うような生活を続けているのに…本当に不思議で理解できませんでした。
担当の先生も、詳しい原因はよくわかっておらず
、とりあえず様子をみましょうと曖昧な対応でしたので、余計不安になりまして…
私としては、原因がよくわからずスッキリしないのは嫌だったので、帰ってネットで調べてみました。
すると、断食とかカロリー不足が原因で、尿酸値が上がる事があるという事を知りました。
実は、最近になり減量を急ぐあまり、少しハード目の食生活にシフトしていた事が思い当たりました。
ちなみにその食生活は、朝、バターコーヒー、昼バターコーヒー、夜スーパー糖質制限食(タンパク多め)というものになります。
以前は、スーパー糖質制限食を3食食べていたのですが…ある頃から、体重が思うように体重が落ちず停滞するようになりまして…
今のバターコーヒーを組み合わせるスタイルに変えました。それが尿酸値を上げる原因になってしまったのでは?と思っています。
そこで、江部先生にお聞きしたいのですが、
私の尿酸値が急に高くなった原因は、やはりこの食生活にあると思われますか?
糖質制限と尿酸値との関係事や、理想的な糖質制限ダイエットのやり方(どこまで制限していいのか?)等のアドバイスをいただけるとありがたいです。
よろしくお願いいたします。】
22/12/01 ドクター江部
Re: 尿酸値の事でお聞きしたい事があります。
ホリ さん
拙著のご購入、ありがとうございます。
HbA1cの改善、良かったです。
①年齢と性別は?
②糖質制限前の身長・体重はどのくらいでしょう。
③糖質制限後HbA1c5.5%のときの体重はどのくらいでしょう。
おそらく、摂取エネルギー不足で、尿酸値が上昇したものと思われます。
【22/12/02 ホリ
きのう尿酸値の件で質問した者です。
江部先生
コメントいただき、ありがとうございました。
追加で私の情報を書かせていただきます。
①年齢 ・性別 41歳 男
②糖質制限前の身長・体重、180㎝・115kg
③糖質制限後HbA1c 5.3%のときの体重、95kg
ちなみに、4ヶ月前の糖尿病がわかった時は、
HbA1c 11 、尿酸値4.9でした。
それが今では、HbA1c 5.3、尿酸値10.5でかなり高い数値になってしまいした。
やはり、摂取エネルギー不足が原因で、尿酸値が高くなった可能性が高いのでしょうか?
朝・昼バターコーヒー、夜スーパー糖質制限食というスタイルが体にとって良くなかったんでしょうかね? 江部先生も、確か朝はコーヒーのみで
食事は抜いてらっしゃいますよね?
朝の1食だけなら、食事を抜いてバターコーヒーだけでも問題無さそうですか?
今後、どういった食生活を続けるのがいいのか悩んでいます。具体的な解決策を教えていただけると大変ありがたいです。よろしくお願いいたします。】
この経過だと、やはり摂取エネルギー不足で、尿酸値が上昇したものと思われます。
1日1食でも2食でもいいので、
厚生労働省のいう<推定エネルギー必要量>を確保しましょう。
②糖質制限前の身長・体重、180㎝・115kg・・・BMI:35.5
③糖質制限後HbA1c 5.3%のときの体重、95kg・・・BMI:29.3
20kg減量成功ですが、実はこのあたりに、一つの壁があるケースが多いようです。
これには理由があるのですが、以下を質問させて下さい。
a)子供の頃、肥満はありましたか?
b)20歳の頃は、何キロでしたか?
c)30歳の頃は、何キロでしたか?
<糖質制限食と血清尿酸値>
今回の記事は、糖質制限食と血清尿酸値についての考察です。
尿酸値に関しては、糖質制限食実践で、
減少する人、不変の人、増加する人と個人差が大きいです。
もともと尿酸が高値だったのが糖質制限食で基準値になる人がいますが、
これは問題ないですね。
肥満がある人が糖質制限食で減量に成功したら、
尿酸値が基準値になることは考えられます。
もともと尿酸値は正常だったのに、糖質制限食実践後にで高値となる人が時々おられます。
尿酸高値の一番多い原因は、糖質を制限したことではなく、
結果として低カロリー過ぎた場合です。
糖質制限食開始後、急に尿酸値が上昇したときは、栄養指導で確認したところ、
ほとんどの人において、摂取エネルギー不足でした。
通常、糖質制限食開始後に、一旦、尿酸値が上昇した人も、
摂取エネルギー不足を解消すれば
速やかに元の値に戻ることが多いので経過をみて良いと思います。
<体内での尿酸の生成と排泄>
尿酸は尿から排泄されるだけでなく、消化液や汗からも排泄されます。
腎臓からの排泄は約3/4を占め一番多いですが、 消化液や汗からの排泄機能も、
血清尿酸値の個人差にある程度関係しているのでしょう。
体内で尿酸をつくり過ぎるか尿からの排泄が悪いため、
高尿酸血症になると考えられてきましたが、
これらに腸からの排泄障害や皮膚の汗からの排泄障害も加わることとなりました。
あくまでも私見ですが、この腸や皮膚からの尿酸排泄は、
生活習慣やストレスの影響を一番受けやすいような気がします。
<高尿酸血症と服薬基準>
過去痛風発作を起こしたことがない場合は、
尿酸8~9mg/dlとかでも、食事療法と生活習慣の改善で経過をみてよいと思います。
『すでに痛風発作を起こしたことがある場合』、
『尿酸値8.0mg/dl以上ですでに腎障害・結石・高血圧などの合併症のある場合』、
『無症状であっても尿酸値が9.0mg/dl以上の場合』
は、薬物療法の適応になります
高尿酸血症は、
狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化の危険因子の一つですので注意が必要です。
男女ともに尿酸値が7.0mg/dLまでは基準値内です。
これを超えると異常で、高尿酸血症と呼ばれます。
(公益財団法人 痛風・尿酸財団)
https://www.tufu.or.jp/gout/gout2/61
<食事療法>
過去尿路結石のあった人や家系的に腎臓結石持の方々は、
尿酸が高値となったときは、梅干しを食べるとか、
わかめ・ほうれん草・大根・キャベツ・茄子・しいたけなど摂取で、
尿をアルカリに保って尿酸が結晶化しにくいようして、
尿酸値が基準値にもどるのを待つのが安全と思います。
尿路結石の予防になります。
ただ、低カロリーすぎると、どんな内容の食事でも、
尿酸値が上昇するので注意が必要です。
例えば断食(絶食)をすると、尿酸値は急激に上昇します。
断食前6mg/dlが、断食中は9~10mg/dlに急上昇したりします。
さて糖質制限食を実践すれば、相対的に高タンパク・高脂質食となります。
尿酸値は、従来、肉の摂りすぎや、
ビールの飲み過ぎで高値となるということが常識だったのですが、
食事由来のプリン体は総量の約20%に過ぎず、
体内で生合成するプリン体80%に比し、かなり少ないということが判明しました。
例えば、江部康二は、2002年以来18年間、
スーパー糖質制限食実践で130g~150g/日のタンパク質を摂取していて、
かなりの高タンパク食です。
しかしながら、尿酸値は、
一貫して2.4~3.5mg/dl(基準値は3.4~7.0)程度と低い方です。
尿酸は体内の酸化ストレスに対抗する物質という説があります。
私はスーパー糖質制限食で体内の酸化ストレスが少ないので、
尿酸も少なくてすんでいるというポジティブな仮説もありかと考えています。
<納光弘先生の見解>
自らが痛風患者であり、痛風専門医でもある、
元鹿児島大学病院内科教授、納(おさめ)光弘先生によれば、
食事よりストレスや肥満の方が、尿酸値への影響が多いことがわかってきました。
<尿酸を上昇させる要因>
尿酸を確実に上昇させるのは、重要なものから順番に
1、ストレス
2、肥満
3、大量の飲酒
4、激しい運動
5、プリン体の摂りすぎ
だそうです。
尿酸値に影響を与える5つの要素について、詳しく見ていきましょう。
1 ストレス
実はストレスが一番尿酸値を上昇させます。
鹿児島大学の納光弘先生もご自身が痛風でして、
徹底的に自分で人体実験をされて、
ビールより何よりストレスが高尿酸血症の原因と断定しておられます。
納先生ご自身は、学会の会頭を引き受けて忙しくてプレッシャーが高かった時期が
最も尿酸値が上昇したそうです。
学会が終了したら、ビールを飲んでも下がったそうです。
これは、もっぱら心理的ストレスですね。
一方、断食は究極の肉体的ストレスという見方もできます。
2 肥満
体重増加も尿酸を増加させる要因なので、糖質制限食で減量すると、
尿酸値も低下すると思います。
肥満が改善すれば、尿酸値も改善する可能性があります。
3 飲酒
アルコールを大量に(日本酒1日3合程度以上)飲めば尿酸値は上昇し、
断酒すれば下降します。
アルコールが尿酸値に影響を与える要因は二つあります。
一つは、アルコールが代謝の途中で乳酸になり、
乳酸が腎臓からの尿酸排泄を抑制すること。
もう一つは、継続的に多量にアルコールを摂取したときに(日本酒1日4合以上を毎日)、
アルコールが尿酸の代謝を促進させて尿酸値が上がることです。
なお、お酒に含まれているプリン体自身の量は、
体内の尿酸プールの量に比べて少ないのでほとんど影響はありません。
例えばビール大瓶633㏄中のプリン体はたったの32.4㎎に過ぎません。
適量のアルコールならストレスが解消され尿酸値を下げます。
適量の目安は、日本酒1.5合、ビール約750㏄、
ワイングラス2杯、焼酎のお湯割りコップ2杯程度です。
4 激しい運動
激しい運動は尿酸を上昇させますが、軽い有酸素運動は大丈夫です。
筋トレなどの無酸素運動も尿酸値を上げます。
5 プリン体の摂りすぎ
プリン体が非常に多い食品はさすがに大量にはとらない方がいいでしょう。
しかし、日常的な食生活の中では、プリン体を気にするほどのことはなさそうです。
何故ならプリン体は約80%が体内で生合成され、
食事由来のプリン体は約20%に過ぎないからです。
☆プリン体の多い食品
(1)きわめて多い(100g中300㎎以上):鶏レバー、白子など
(2)多い(100g中200-300㎎):豚レバー、牛レバー、かつお、
まいわし、大正えびなど
<尿酸の生成と排泄、尿酸プール>
☆尿酸の生成
プリン体の代謝産物として、尿酸が作られます。
一日で産生される尿酸の総量:約700㎎
☆尿酸の排泄
一日で排出される尿酸の量:約700㎎
・ 尿から排泄:約525㎎(3/4)
・ 汗や消化液から排泄:約175㎎(1/4)
☆尿酸の体内プール
・ 健康な人の体内には常に1200㎎程度の尿酸がプールされています。
尿酸は、このように毎日生産と排泄を繰り返しながら一定量を保っています。
しかし、尿酸の排泄がうまくいかなくなったり、尿酸が体内で作られすぎると、尿酸値が上がります。
<痛風発作の誘因>
・アルコールの多飲
・激しい運動
・ストレス
・尿酸値を上げる薬物(利尿剤など)
・早食い・大食い
なお、尿酸は、温度が下がるほど結晶化しやすくなります。
だから、人体で一番温度の低い足指の関節で痛風発作を生じやすいのですね。
*参考
「痛風はビールを飲みながらでも治る」(小学館文庫)2004年
鹿児島大学病院内科教授、納(おさめ)光弘先生 著
**プリン体
プリン体は核酸(DNAおよびRNA)の構成要素として体内で遺伝情報を保存しています。
また生物が生命活動を行う際に必要とするエネルギーは、
プリン体の一種であるアデノシン三リン酸(ATP)から供給されます。
***帝人ファーマ株式会社のサイトを参考にさせて頂きました。
ありがとうございます。
https://medical.teijin-pharma.co.jp/materials/iyaku/detail/skhk4v0000000xuk-att/skhk4v0000000xv1.pdf
江部康二
江部先生
やはり摂取エネルギー不足によって、尿酸値が上昇した可能性が高いのですね…。
朝、昼はバターコーヒーだけなので、夜はある程度しっかり食べていたつもりだったのですが、
思っていたより足りてなかったんでしょうね…。
反省して、今後はもっと摂取カロリーを意識したいと思います。
食事スタイルについてお聞きしたいのですが、
適度に断食すると、体重の減りも良く体調も良かったので、尿酸値さえ問題なければ続けたいと思っているのですが…朝・昼共バターコーヒー、夜にたっぷり食べるというスタイルはあまり体に良くないのでしょうか?せめて、朝だけバターコーヒーに置き換える程度にとどめておいた方がいいですかね?
質問についてお答えさせていただきます。
a)子供の頃、肥満はありましたか?
>小学生の高学年の時に肥満でした。
b)20歳の頃は、何キロでしたか?
>75kgぐらいでした。
c)30歳の頃は、何キロでしたか?
>115kgぐらいでした。
引き続き、アドバイスよろしくお願いいたします。
やはり摂取エネルギー不足によって、尿酸値が上昇した可能性が高いのですね…。
朝、昼はバターコーヒーだけなので、夜はある程度しっかり食べていたつもりだったのですが、
思っていたより足りてなかったんでしょうね…。
反省して、今後はもっと摂取カロリーを意識したいと思います。
食事スタイルについてお聞きしたいのですが、
適度に断食すると、体重の減りも良く体調も良かったので、尿酸値さえ問題なければ続けたいと思っているのですが…朝・昼共バターコーヒー、夜にたっぷり食べるというスタイルはあまり体に良くないのでしょうか?せめて、朝だけバターコーヒーに置き換える程度にとどめておいた方がいいですかね?
質問についてお答えさせていただきます。
a)子供の頃、肥満はありましたか?
>小学生の高学年の時に肥満でした。
b)20歳の頃は、何キロでしたか?
>75kgぐらいでした。
c)30歳の頃は、何キロでしたか?
>115kgぐらいでした。
引き続き、アドバイスよろしくお願いいたします。
ホリ さん
『適度に断食すると、体重の減りも良く体調も良かったので、尿酸値さえ問題なければ続けたいと思っているのですが…』
断食やスーパー糖質制限食などケトジェニックダイエットで、
オートファジーが活性化されて、アンチエイジングになるので良いことと思います。
1日1食でも、2食でも自分に合うほうで良いと思います。
私の場合は、
朝は<コーヒー+生クリーム10cc>
昼と夕は、スーパー糖質制限食です。
『適度に断食すると、体重の減りも良く体調も良かったので、尿酸値さえ問題なければ続けたいと思っているのですが…』
断食やスーパー糖質制限食などケトジェニックダイエットで、
オートファジーが活性化されて、アンチエイジングになるので良いことと思います。
1日1食でも、2食でも自分に合うほうで良いと思います。
私の場合は、
朝は<コーヒー+生クリーム10cc>
昼と夕は、スーパー糖質制限食です。
2022/12/03(Sat) 15:56 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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