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鉄欠乏性貧血、未治療ならHbA1cは上昇し、鉄剤投与時は下降する。
こんばんは。
貧血があるとHbA1cの値は上がるのでしょうか?
それとも下がるのでしょうか?

貧血とHbA1cの関係を説明する前に、
HbA1c(ヘモグロビンA1c)とは何かを考えてみましょう。

赤血球の中に含まれているヘモグロビンは、鉄を含む赤色の色素部分のヘムと、
蛋白部分のグロビンでできています。
ヘモグロビンはグロビン部分の違いによりHbA、HbA2、HbFの3種類に分けられます。
成人では、HbAが97%を占めています。
血液中には、赤血球や糖類やその代謝産物が流れていて、
お互いに結合する傾向があります。
赤血球中のヘモグロビンと、血中のブドウ糖など単糖類が結合したものが、
グリケーティッドヘモグロビンです。
これを略してグリコヘモグロビンですが、
HbA1とほぼ同義語として使用されています。
グリコヘモグロビンは、元のヘモグロビンとは電気的性質が異なるため、
検査により識別することができます。
HbA1は、さらにHbA1a、HbA1b、HbA1cなどに分けることができます。

このうち糖尿病の検査の指標として汎用されているHbA1cは、
ヘモグロビンA(HbA)にグルコース(ブドウ糖)が結合したものです。
当然、血糖値が高値であるほど、ヘモグロビンと結合しやすいのです。

HbA1cの生産量は、Hb(ヘモグロビン)の寿命と血糖値に依存します。
赤血球は骨髄で作られて血液中を循環し、寿命は約120日間ですから、
HbA1cは過去4ヶ月(120日間)の血糖値の動きを示しています。

より詳しく分析すると、HbA1c値の約50%は過去1ヶ月間の間に作られ、
約25%が過去2ヶ月、残りの約25%が過去3~4ヶ月で作られます。
従いまして、HbA1cの値は通常は過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映していると、
考えればよいことになります。

さて、溶血性貧血、腎性貧血など、
赤血球の寿命が短縮するような病態のときは、
HbA1cの生産量がその分蓄積されずに減りますので、
実際の値よりも低くなります。
肝硬変に伴う脾機能亢進による貧血も赤血球の寿命が短縮します。

鉄欠乏性貧血の場合、鉄不足で貧血で未治療のときは、
代償性に赤血球の寿命が延びるので、
HbA1cは寿命が延びた分蓄積して、高値にシフトします。

鉄剤投与を開始して、鉄欠乏性貧血が回復している時期は、
幼弱赤血球が増えて、赤血球の寿命が短くなり、HbA1cは低値となります。

従いまして、糖尿病腎症から透析になった糖尿人の場合は、
腎性貧血で赤血球の寿命が短くなっているので、
見かけ上はHbA1cが改善して、低下したようにみえますが、
実態を反映していないことになります。
それで日本透析医学会では透析患者の血糖指標としては、グリコアルブミン(GA)を推奨しています。

血液中のタンパク質の一種であるアルブミンにブドウ糖がくっついたものをグリコアルブミン(GA)といいます。

GAは、過去約2週間の血糖状態をもっとも鋭敏に反映すると言われています。
そして、アルブミンは赤血球の寿命とは無関係なので、貧血にも影響されないので、
日本透析医学会が推奨しているわけですね。


【22/11/19 もも
Hba1cと貧血の関係について。
いつもブログを拝読させて頂いています。

今年の5月から貧血の治療で鉄剤を1日1回服用し、
8月の貧血検査で数値がHbは10→12.5に改善しました。

9月からは1日おきに鉄剤を服用し、
現在はほぼ服用していません。(医師の指示による)

10月初めの特定健診でHbA1cが5.9で高値でした。(空腹時血糖値90)

最近、薬局で血糖検査が出来ると聞き、
検査した所、HbA1cは5.3でした。

1ヶ月でこの様に下がる事はあるのでしょうか?
体重は変わりません。

貧血が改善し、HbA1cが基準値になったと考えて良いのでしょうか?

または、病院と薬局との検査方法による誤差でしょうか?

母親が糖尿なので、心配です。】



ももさんの場合は、上述した<鉄欠乏性貧血とHbA1c>
一般的なパターンとは異なるパターンです。
2022年5月は貧血(Hb:10g/dl)でしたが、
2022年8月は貧血が治って、Hb:12.5g/dlと正常値になっています。

そして
2022年10月の検査で、HbA1cが5.9%、
2022年11月の検査で、HbA1cが5.3%
貧血はすでに治っているので、HbA1cへの影響はありません。

10月から、新たに糖質制限食を開始したということなら
11月に、HbA1c5.9 ⇒ 5.3% はあり得ます。
食生活がとくに変わりないなら、
病院と薬局との検査機器による差と思います。


江部康二
コメント
Hba1cと貧血の関係について。ご回答ありがとうございました。
お忙しい中、詳しいご回答有り難く思います。

先生の本やブログを参考に、緩いですが糖質制限を数年前から行っております。

最近、活動力が増えた為、体重が少し落ちました。

引き続き、生活習慣に気を付けて、元気に過ごしていきたいです。

ありがとうございました。
2022/11/19(Sat) 18:20 | URL | もも | 【編集
よろしくお願いします。
和田秀樹医師の本を読んでいて、気になる箇所があったので、江部先生はどう考えられるか、お聞きできないかと思い連絡してみました。

それは、「米国国立衛生研究所が2001年に開始したアコード(ACCORD)試験で、計1万人の糖尿病患者に対して調査が行われた。HA1cを正常値6%に抑える<強化療法>と、それよりも緩い7.0~7.9%に抑える<標準療法群>に分けて調査したところ、わずか3年半の観察期間で死亡率に有意な差がでた。正常値が6%に抑えた<強化療法群>のほうが、死亡率が高かいという結果がでた。」という箇所です。

これだけでは情報が不十分かもしれませんが、A1cが6%ということ自体は、適正な数値なので良いのではないかと思います。それなのに、そのほうが、死亡率が高いというのはどういうことでしょうか。

この試験の場合、血糖値を抑えたのは糖質制限によるのではなく、インスリン投与によるものではないかと思われますが、とすると、インスリンで血糖値を無理に下げたら、死亡率が高くなるということを示していると理解できるのでしょうか。
2022/11/21(Mon) 08:53 | URL | 倉田 | 【編集
Re: よろしくお願いします。
倉田 さん

インスリン注射やSU薬を使用して、血糖値を厳格に管理してHbA1cを低下させようとすると、
結果として、低血糖発作が、通常治療群に比較すると頻回に生じます。
厳格治療群の死能率増加の一番の要因は低血糖の増加とされています。

低血糖頻発だと、血糖平均値の指標であるHbA1cは低下しますが、極めて質の悪いHbA1cと言えます。


結論としては、ご指摘通りです。
『ACCORD』試験は、糖質を摂取して、インスリンやSU薬で血糖値を厳格に下げようとすると
死亡率が高くなることを証明した信頼度の高い研究と言えます。
2022/11/21(Mon) 17:44 | URL | ドクター江部 | 【編集
HbA1cの偽値?と運動について
江部 先生

先生に是非教えて頂きたく、書き込みをしてます。
私は、江部先生の糖質制限食を実践して長くなります ( 10年?近く )。
「スーパ制限食」( のつもりで、自分なりにやってます。米飯類、パン類、芋類、お菓子類、糖類、
酒類は一切なし ) で自分なりに、鶏肉、豚肉、野菜類、大豆・豆腐類を主に調理して、
一日2食 ( 先生の真似 ) 食しています。
( 調味料に、主にマヨネーズを使ってましたが・・今週から止めてます ( LDL 対策 )。)
また、「トウレス、エンレス、タンフル、センフル」を食事原則としてます。
  ・「トウレス」:糖質レスで、糖質を減らすこと
  ・「エンレス」:塩分レスで、塩分を減らすこと
  ・「タンフル」:タンパク質フルで、蛋白質を多く摂取すること
  ・「センフル」:センイフルで、繊維を多く摂取すること ( 主として野菜 )

しかし、それにも拘わらず、”HbA1c” の値が高くて、下がりません。

体調については、自覚症状としては不調な点は全く何も感じておりません。快食・快便です。
市の健康検査以外は病院に通っていませんし、薬も飲んでいません。
( ただ、鉄分が足りないような気がして、鉄分補給に市販のサプリメントを飲んでいますが。)

お忙しいところ大変恐縮ですが、このように「スーパ糖質制限食」を実践しているにもかかわらず、
”HbA1c” の値が高いことについて、
何か原因・理由とか対策の情報がありましたらご教示・ご指導して頂けないでしょうか。

私としては、全く訳が分からず、”赤血球の寿命” の素人考えで、何とか毎日を納めています。
私の赤血球の寿命 ( 通常 120日といわれている・・ ) が延びていて ( 160日とか・・ )、
”HbA1c” の値が高くなっているのではないか・・、
その赤血球寿命が延びる要因は、”運動” によるのではないか・・、などと。
”運動” は、数年前から、毎日、朝の食事後、マンションの階段上りをやっています。
最初の数年は千段以上、やってましたが、一年ほど前からは足腰のストレッチを20分ほどと
階段700段ほどにしています。

最近の私の血液分析結果は次の通りです ( 残念ながら「GA」のデータはありません・・。)。
( 分析医療機関は定まってません。4か所の病院へ行きました。 )
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
検査年 2017 2018 2019 2020 2021 2021 2022 2023
                     (10月) (12月)
・BMI 22.6 22.7 22.1 23.0 22.5 * 21.9 22.8
・HbA1c 6.5 6.8 7.0 7.2 8.2 7.9 7.7 9.7
・中性脂肪 266 215 157 229 216 307 158 66
 HDL 64 66 70 68 72 63 66 60
 LDL 147 152 135 125 153 187 126 174
・AST GOT  18 16 17 18 17 21 24 23
 ALT GPT 9 8 10 11 12 17 15 19
 ɤーGT 16 16 17 20 19 17 17 18
・赤血球数 432 429 397 403 411 * 409 451
 血色素量 15.0 15.0 13.7 13.8 14.1 * 12.9 13.8
 ヘマトクリット値 44.2 43.8 41.3 42.0 41.7 * 39.6 42.1
・クレアチニン 0.9 1.2 1.0 0.9 1.0 0.89 0.89 0.97
 eGFR * 48.4 56.8 63.0 55.8 63.3 * 57.2
 尿酸 * * * 8.8 9.7 7.2 * 7.1
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お手数かと思いますが、是非とも、よろしくお願いいたします。

                    迷える子羊  サヌカイト
2023/11/06(Mon) 12:44 | URL | サヌカイト | 【編集
Re: HbA1cの偽値?と運動について
サヌカイト さん

・HbA1c 6.5 6.8 7.0 7.2 8.2 7.9 7.7 9.7

確かに2021年あたりから、急に上昇していますね。

①念のため、膵臓癌の検査をしましょう。
②念のため、抗GAD抗体を調べて、1型か否かを確認しましょう。
2023/11/06(Mon) 14:48 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: HbA1cの偽値?と運動について
江部先生
早速の対応助言、ありがとうございます。
そうなんですね・・膵臓ですか・・。
抗GAD抗体というのは知りませんでしたので、
調査して対応します。
今後ともよろしくお願いいたします。
              サヌカイト
2023/11/06(Mon) 19:05 | URL | サヌカイト | 【編集
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