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新型コロナ、インフルエンザの同時流行は?インフルワクチンの効果は?
こんにちは。
季節性のインフルエンザは、日本では
例年11~12月頃に流行が始まり、1~3月にピークを迎えます。
つまり冬の感染症です。
インフルエンザの感染力は非常に強く、日本では毎年約1千万人、約10人に1人が感染しています。
インフルエンザは流行性があり、いったん流行が始まると短期間に多くの人へ感染が拡がります。

2021年11月30日の本ブログ記事で、
新型コロナウイルスとのウイルス間干渉により、
2020年11月~2021年3月期と
2021年11月~2022年3月期の
二つの期間は、インフルエンザ感染者は極めて少数であったと述べました。

しかしながら、反省です。
「ウイルス間干渉で、同時に2つのウイルスは流行しない」
というのは、あくまでも仮説に過ぎませんでした。

現実にオーストラリアでは2022年4月後半(冬です)から、
まだ新型コロナが流行している最中にインフルエンザの流行が始まり

7月中旬には急速に感染者数が減少し、8月中旬に終息しています。
つまり、ウイルス間干渉仮説は、脆くも崩れ去ったのです。

ただ日本では、オミクロン株は、弱毒化して、ほとんど普通の感冒となった感があり、
2022年10月6日(木)現在で、感染者数はかなり終息に近づいた状況です。

おそらく冬に再び新型コロナウイルスが復活して、インフルエンザとの同時流行があったとしても
オミクロン株が変異して別の株になって再び強毒化するというのはウイルスの戦略として考えにくいので
インフルエンザ対策に集中していればよいと思います。


さて、インフルエンザワクチンを接種した人も接種してない人もいると思います。
インフルエンザ予防にワクチンを打つのなら、種類が多いA型と、感染力が弱くはないB型に備えておきたいです。
国内で広く用いられている「4価ワクチン」は、A型とB型両方への効果が期待されています。
しかし是非、知っておいて欲しいことは、
インフルエンザワクチンは万能ではないということです。

すなわち感染防御力は基本的になくて、
重症化を防ぐことが期待されるていどの効能です。
ワクチンを打っている人も打っていない人も、
『手洗い、うがい、マスク、三密を避ける』がインフルエンザ予防の基本ですね。
これは、新型コロナ予防策と一緒です。
特に、手洗いが思った以上に有効です。
ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、 
自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。
外出先から帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。
咳やくしゃみで飛んだ飛沫が服についても、数時間で感染力を失うとされています。
外出から帰宅したら着替えすることも予防に役立ちます。

以下の青字は、厚生労働省サイトの記載です。
インフルエンザの予防にはみんなの「かからない」、「うつさない」という気持ちが大切です。
手洗いでインフルエンザを予防して、かかったら、マスク等せきエチケットも忘れないでください。


インフルエンザにかかった人は、必ずマスクをして他人にうつさないように配慮が必要です。


<インフルエンザワクチンの有効性>
インフルエンザワクチンは、A型にもB型にも対応しています。
しかし、実は現行のインフルエンザワクチンには、
水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。
感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので、過信するのは禁物です。

理論的に考えても、ワクチンを接種することにより
IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
従って、インフルエンザウィルスが、
咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。
欧米では、鼻への噴霧ワクチンで、粘膜面のIgA抗体をつくる試みもされていますが
あまり上手くいっていません。
IgA抗体を充分量増やす技術が難しいようです。

下記の青字は国立感染研究所のホームページ(2018年度)からの抜粋です。


【7.インフルエンザワクチンの問題点
(2)「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、
ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、
この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。
従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を
完全に阻止することは難しいと考えられます。」

(6)「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。
しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、
インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる
気道の粘膜免疫や、
回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。
これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では
大きな短所であると考えられています。
しかし、この様な欠点を持ちながらも、先に述べたように、
ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。
また、ワクチンの皮下接種でも血中の抗体産生は十分に刺激できるので、
インフルエンザに続発する肺炎などの合併症や
最近問題となっているインフルエンザ脳炎・脳症の発生を抑えることには
期待出来ると考えられています。」



<集団感染>

 東京・練馬区の特別養護老人ホームで、
入所者49人が年末から年始(2017/2018)にかけて相次いでインフルエンザに感染していることがわかりました。
このうち、症状が重かった6人が医療機関に入院したということですが、
現在は回復しているということです。
 前橋市は2017年12月28日、
同市内の病院の入院棟にいた入院患者26人と職員4人の計30人がインフルエンザに集団感染し、
このうち80代の女性が死亡したと発表しました。
これらの集団感染において、ほとんどの人はインフルエンザワクチンを接種していました。
このように、感染防御にはワクチンは、
実際にまったく無力だったことが明らかとなりました。

そもそもインフルエンザワクチンは
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。
感染を防ぐためには、「手洗い、うがい、マスク」が必須です。


<誤解>

ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、ワクチンを接種していれば、
水際で感染防御できると誤解しておられるのです。
私は、過去10年間以上、友人の医師などに、
感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、
皆なかなか信じてもらえませんでした。
どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。
ここ数年、新聞などでもやっと、
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。
逆に言えば、過去10年以上、
あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、
そのことに関して自己批判も反省もないのは如何なものでしょう。

インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、
私はこのことを説明して、
「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、
ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」
と付け加えます。

<必要性>

別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。
65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、
糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、
インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、
生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。
若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、
接種する意味はありますね。

<感染防御>
①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
 診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
 マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクをして乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクをする。
  その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
 できればノンタッチごみ箱に廃棄すること

ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、
感染防御効果はないことをしっかり認識して、
上記①~⑦を励行してくださいね。

これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。

<終わりに>
インフルエンザワクチン接種に、賛成の人も反対の人もあると思います。
ブログ読者の皆さんには、
インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて今回記事にしました。

江部康二
コメント
インフルエンザワクチンのハイリスク群への効果は、明らかに認められていますか?
江部先生、国立感染研究所の記述に、「ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。」とありますが、それを示す研究結果を見ることができますか?
2022/10/09(Sun) 10:34 | URL | 利府俊裕 | 【編集
インフルエンザと新型コロナウィルス
江部先生、いつもありがとうございます。
新型コロナ感染症も全数把握を諦めてしまった政府の政策変更で、つらい人たちが表に出なくなってしまうことがあるのではと心配になります。またインフルエンザの流行でますます陰に隠れるのでしょうか。感染症としては同様の対策なのですね。これからも個々人で気を付けていこうと思います。
2022/10/09(Sun) 12:48 | URL | hanamizuki | 【編集
Re: インフルエンザワクチンのハイリスク群への効果は、明らかに認められていますか?
利府俊裕 さん

感染予防はそんなにできないけれど
重症化を予防するという研究はあるようです。


厚生労働省のサイト
インフルエンザQ&A

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html#:~:text=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B6%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%9C%80%E3%82%82%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%AA,%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E2%80%BB%EF%BC%91%E3%80%82

Q.21: ワクチンの効果、有効性について教えてください。
 インフルエンザにかかる時は、インフルエンザウイルスが口や鼻あるいは眼の粘膜から体の中に入ってくることから始まります。体の中に入ったウイルスは次に細胞に侵入して増殖します。この状態を「感染」といいますが、現行のワクチンはこれを完全に抑える働きはありません。
 ウイルスが増えると、数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛み等のインフルエンザの症状が出現します。この状態を「発病」といいます。インフルエンザワクチンには、この「発病」を抑える効果が一定程度認められていますが、麻しんや風しんワクチンで認められているような高い発病予防効果を期待することはできません。発病後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする方や死亡される方もいます。これをインフルエンザの「重症化」といいます。特に基礎疾患のある方や高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられています。インフルエンザワクチンの最も大きな効果は、「重症化」を予防することです。
 国内の研究によれば、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています※1。




2022/10/09(Sun) 14:12 | URL | ドクター江部 | 【編集
今年のインフルエンザ感染予想
オーストラリアのインフルエンザ流行の原因は、マスクをしなくなったからではないでしょうか
インフルエンザ予防のベストの手段はマスク使用となっています
日本人は、「コロナ怖い怖い病」に罹ってマスクを外さないので、今年もインフルエンザの流行はないのではないでしょうか
私は、これからの厚労省のインフルエンザ感染統計を見ながら、ワクチンを打つかどうか決めようと思います
2022/10/09(Sun) 18:21 | URL | KZ | 【編集
Re: 今年のインフルエンザ感染予想
KZ さん

私は、まだしばらくはマスクをするつもりです。
2022/10/10(Mon) 16:10 | URL | ドクター江部 | 【編集
子どものインフルエンザワクチン
いつもブログを拝見して、勉強させていただいています。
インフルエンザワクチンについて質問させてください。

先生は子どものインフルエンザワクチンは必要と考えられますか?
私はインフルエンザ脳症が怖くて毎年接種させていましたが、ワクチンを打つことで脳症になることを防げるのでしょうか?

二つ目です。インフルエンザワクチンもmRNAワクチンの治験が始まっているとニュースで見ました。日本でも今期、既にインフルエンザのmRNA
が使用している病院もあるのでしょうか?

以上、よろしくお願いします。
2022/10/12(Wed) 16:48 | URL | まるみ | 【編集
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