2022年09月02日 (金)
こんにちは。
EBMが現在、医学界を席巻しています。
<EBMとは>
イービーエム(EBM)とは、『Evidence-Based Medicine』の頭文字をとったもので、
『(科学的)根拠に基づいた医療』と訳されています。
科学的根拠(エビデンス)とは、
これまでに行われてきた医学・医療に関する研究成果を指します。
1991年に登場した言葉で、北米を中心にして広まり、日本にも90年代後半より浸透してきました。
確かに浸透してきていますが、EBMだけに頼る医療には、明確に限界があります。
一方、EBMを無視する医療にも、明確に限界があります。
ともあれ今回の記事は、EBMについて考察してみます。
医学界において、evidence(エビデンス、証拠、根拠)となるのは、
基本的に医学雑誌に掲載された論文です。
ニューイングランド・ジャーナル、ランセット、米国医師会雑誌など、
定評ある医学専門誌に掲載された論文であることも、
evidence(エビデンス、証拠)の大きな要素となります。
その論文も
①無作為割り付け臨床試験(RCT)
②前向きコホート研究
の二つが信頼度の高いものとなります。
その論文も「糖尿病診療ガイドライン2016」によれば、
・レベル1+: 質の高いランダム化比較試験(RCT)およびそれらの
メタアナリシス(MA)/ システマティック・レビュー(SR)
・レベル1:それ以外のRCTおよびそれらのMA / SR
・レベル2:前向きコホート研究およびそれらのMA / SR
(事前に定めた)RCTサブ解析
・レベル3:非ランダム化比較試験 前後比較試験
後ろ向きコホート研究
ケースコントロール研究およびそれらのMA / SR
RCT後付けサブ解析
・レベル4:横断研究 症例集積
*質の高いRCTとは
(1)多数例
(2)二重盲検、独立判定
(3)高追跡率
(4)ランダム割り付け法が明確
などをさす。
といった順番で、信頼度に差をつけられています。
これを研究デザインのヒエラルキーと呼ぶそうです。
他にコンセンサスがありますが、コンセンサスは、
実証的研究に基づかない権威者の意見や合意なので、エビデンスとは言えません。
一般にエビデンスレベルが高い研究論文と言うときは、
(1) レベル1+ / レベル1
(2) レベル2
に基づく論文のことをさします。
症例報告も大切な医学研究の一つなのですが、
ことEBMというときは、「無作為割り付け臨床試験(RCT)」と「前向きコホート研究」
だけ考慮すればいいということです。
かつて、医学界では
実証的研究に基づかない権威者の意見や合意(コンセンサス)が幅を利かしていて、
学会発表などでも、有名大教授で権威者の先生が「私はこう思う」といったら、
水戸黄門の印籠みたいなもので「ヘヘー、恐れ入りました」という事で
一件落着という世界だったのです。
権威者が、何人か寄り集まって、ガイドラインの内容を決めると、
コンセンサスによる決定となります。
これは、上述のヒエラルキーからみると、エビデンスレベルは最低、
エビデンスなしということです。
権威者の意見や、コンセンサスに基づく見解などに頼っているのは、
非科学的であるという批判が、世界中の医学界で続出して、
それではよろしくないということで、
evidence based medhicine(証拠に基づく医学)→略してEBMが登場したわけです。
<従来の糖尿病食にはエビデンスがない>
前振りが長かったですが、
「糖尿病診療ガイドライン2016」の食事療法の部分、 37ページに
Q3-1 糖尿病における食事療法の意義と最適な栄養素のバランスは
どのようなものか?
に対し、
「摂取エネルギーのうち、炭水化物を50-60%、たんぱく質20%以下
を目安とし、残りを脂質とする。」
と記載しています。
しかし、推奨グレードの表示はなしです。
以前の、「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2010」の食事療法、
31ページでは、「炭水化物は指示エネルギー量の50~60%」と、
グレードAで推奨してありますが、根拠はなんとコンセンサスで、
科学的根拠に基づいていないことが明示されていました。
2010年に比べれば2016年は、エビデンスのないことを
グレードAで推奨するという暴挙がなくなった分よしとしましょう。
ちなみに「2型糖尿病患者に運動療法は有効か?」に対しては、
血糖コントロールに有効で、推奨グレードAです。
結局、糖尿病の食事療法に関しては、
日本糖尿病学会が推奨する糖尿病食(カロリー制限高糖質食)には
エビデンスはないのです。
<糖質制限食にはエビデンスがある>
一方、ひいき目と言われるかもしれませんが
糖質制限食においては、一定のエビデンスがあります。
以下に、EBMとして信頼度の高い長期の研究を列挙します。
いずれも、糖質制限食の『長期的有効性・安全性』を保証する論文です。
なおこれらの論文は、スーパー糖質制限食に関するものではありません。
普通に食事をしている集団(糖質も食べている)において、
糖質を多く食べている群と比較的少ない群を比較したものです。
1年間の研究ならスーパー糖質制限食のRCTが少なくとも2つあります。
1)はRCT論文で8年間であり、信頼度はトップランクの研究です。
2)3)4)5)6)は前向きコホート研究であり、信頼度は上から二番目です。
糖質制限食の長期的安全性の肯定に関しては、
EBMに基づき少なくとも6つの信頼度の高い研究論文が存在するわけです。
例えば
2)は
炭水化物摂取比率36.8±6.1%グループと58.8±7.0%のグループの比較です。
炭水化物摂取の多いグループは冠動脈疾患リスクが増加です。
4)は
糖質摂取比率51.5%のグループと糖質摂取比率72.7%のグループの比較です。
糖質摂取比率が一番少ない51.5%のグループは一番多い72.7%のグループに比較すると
心血管死のリスクが59%しかありません。
いずれも糖質大量摂取の弊害(心血管リスク)を如実に示しています。
結果として糖質摂取が少ないほど心血管リスク軽減において有利になることも示しています。
6)は2017年8月にランセットに発表されました。
「炭水化物の摂取比率が多いほど、総死亡率が上昇し
脂質の摂取比率が多いほど、雄死亡率が低下」
ですから、まさに夏井睦先生の言う「炭水化物が人類を滅ぼす」ですね。
長期の研究
1)RCT論文
低糖質地中海食(LCMD)。8年間RCT論文。
糖質50%未満のLCMD群と低脂肪群の比較。
女性は1800kcal/日。男性は1800kcal/日。
新たに診断された2型糖尿病患者では、LCMDは低脂肪食と比較して、
HbA1cレベルの大きな減少、糖尿病の寛解率が高く、糖尿病治療薬の導入を遅らせた。
Diabetes Care. 2014 Jul;37(7):1824-30.
The effects of a Mediterranean diet on the need for diabetes drugs and remission of newly diagnosed type 2 diabetes: follow-up of a randomized trial.
2)前向きコホート研究
低炭水化物・高脂肪・高タンパク食に冠動脈疾患のリスクなし
一方総炭水化物摂取量は冠動脈疾患リスクの中等度増加に関連していた。
高GLは冠動脈疾患リスク増加と強く関連していた。
ニューイングランドジャーナルのコホート研究
82802人 20年間 2006年掲載 ハーバード大学
炭水化物摂取比率36.8±6.1%グループと58.8±7.0%のグループの比較。
Halton TL, et al. Low-carbohydrate-diet score and the risk of coronary heart disease in women. New England Journal of Medicine 2006;355:1991-2002.
3)前向きコホート研究
21論文、約35万人をメタアナリシスして、
5~23年追跡して1.1万人の脳心血管イベントが発生。
飽和脂肪摂取量と脳心血管イベントハザード比を検証してみると、
飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は、関係がないことが判明。
Siri-Tarino, P.W., et al., Meta-analysis of prospective cohort studies evaluating the association of saturated fat with cardiovascular disease. Am J Clin Nutr, 2010. 91(3): p. 535-46.
4)前向きコホート研究
「糖質制限食の安全性にエビデンス」
前向きコホート試験NIPPON DATA80 29年間 中村保幸
第10分位(糖質摂取比率51.5%)のグループは、第1分位(糖質摂取比率72.7%)のグループに比べて女性においては心血管死のリスクが、
59%しかないという素晴らしい結論で、糖質制限食の圧勝。
Br J Nutr 2014; 112: 916-924
5)前向きコホート研究
上海コホート研究
「糖質摂取量により4群に分けて、糖質摂取量が多いほど心血管疾患の発症リスクが高い」
11万7366人を対象に、調べた研究。
女性が6万4,854人で、平均追跡期間が9.8年。
男性が5万2,512人で、平均追跡期間が5.4年。
女性 心血管発症リスク
1、糖質摂取量264g/日未満 ---------- 1.00
2、糖質摂取量264g~282g/日未満-------- 1.19
3、糖質摂取量282g~299g/日未満-------- 1.76
4、糖質摂取量299g/日以上 ----------- 2.41
男性 心血管発症リスク
1、糖質摂取量296g/日未満 ------------ 1.00
2、糖質摂取量296g~319g/日未満 ---------- 1.50
3、糖質摂取量319g~339g/日未満 ---------- 2.22
4、糖質摂取量339g/日以上
Am J Epidemiol. 2013 Nov 15;178(10):1542-9.
Dietary carbohydrates, refined grains, glycemic load, and risk of coronary heart disease in Chinese adults.
6)前向きコホート研究
『炭水化物の摂取増加で死亡リスク上昇』
ランセット誌のオンライン版(2017/8/29)で、
カナダ・マックマスター大学のMahshid Dehghan博士らが報告。
5大陸18カ国で全死亡および心血管疾患への食事の影響を検証した大規模疫学前向きコホート研究(Prospective Urban Rural Epidemiology:PURE)の結果。
2003年1月1日時点で35~70歳の13万5335例を登録し、
2013年3月31日まで中央値で7.4年間も追跡調査。
論文の内容を要約
1)炭水化物摂取量の多さは全死亡リスク上昇と関連。
2)総脂質および脂質の種類別の摂取は全死亡リスクの低下と関連。
3)総脂質および脂質の種類は、心血管疾患(CVD)、心筋梗塞、CVD死と関連しない。
4)飽和脂質は脳卒中と逆相関している。
炭水化物摂取比率 総死亡率
1群 46.4% 4.1%
2群 54.6% 4.2%
3群 60.8% 4.5%
4群 67.7% 4.9%
5群 77.2% 7.2%
脂肪の摂取比率 総死亡率
1群 10.6% 6.7%
2群 18.0% 5.1%
3群 24.2% 4.6%
4群 29.1% 4.3%
5群 35.3% 4.1%
<生理学的事実>
さらに、生理学的事実として、糖尿人が糖質を摂取した場合、
糖質制限食なら、食後高血糖は生じませんが、
従来の糖尿病食なら、食後高血糖が必ず生じるということは明白です。
そして、
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)2007年
「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)2011年
「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
によれば、
食後高血糖は、
大血管合併症の独立した危険因子であり、
酸化ストレスを生じ血管内皮を障害し、
糖尿病網膜症と関係し、
IMT肥厚と関係し、
認知障害にも関係し、
癌発症リスク上昇と関連するとのことです。
糖質制限食により、食後高血糖を防ぐことの意味は、大変大きいと思います。
江部康二
EBMが現在、医学界を席巻しています。
<EBMとは>
イービーエム(EBM)とは、『Evidence-Based Medicine』の頭文字をとったもので、
『(科学的)根拠に基づいた医療』と訳されています。
科学的根拠(エビデンス)とは、
これまでに行われてきた医学・医療に関する研究成果を指します。
1991年に登場した言葉で、北米を中心にして広まり、日本にも90年代後半より浸透してきました。
確かに浸透してきていますが、EBMだけに頼る医療には、明確に限界があります。
一方、EBMを無視する医療にも、明確に限界があります。
ともあれ今回の記事は、EBMについて考察してみます。
医学界において、evidence(エビデンス、証拠、根拠)となるのは、
基本的に医学雑誌に掲載された論文です。
ニューイングランド・ジャーナル、ランセット、米国医師会雑誌など、
定評ある医学専門誌に掲載された論文であることも、
evidence(エビデンス、証拠)の大きな要素となります。
その論文も
①無作為割り付け臨床試験(RCT)
②前向きコホート研究
の二つが信頼度の高いものとなります。
その論文も「糖尿病診療ガイドライン2016」によれば、
・レベル1+: 質の高いランダム化比較試験(RCT)およびそれらの
メタアナリシス(MA)/ システマティック・レビュー(SR)
・レベル1:それ以外のRCTおよびそれらのMA / SR
・レベル2:前向きコホート研究およびそれらのMA / SR
(事前に定めた)RCTサブ解析
・レベル3:非ランダム化比較試験 前後比較試験
後ろ向きコホート研究
ケースコントロール研究およびそれらのMA / SR
RCT後付けサブ解析
・レベル4:横断研究 症例集積
*質の高いRCTとは
(1)多数例
(2)二重盲検、独立判定
(3)高追跡率
(4)ランダム割り付け法が明確
などをさす。
といった順番で、信頼度に差をつけられています。
これを研究デザインのヒエラルキーと呼ぶそうです。
他にコンセンサスがありますが、コンセンサスは、
実証的研究に基づかない権威者の意見や合意なので、エビデンスとは言えません。
一般にエビデンスレベルが高い研究論文と言うときは、
(1) レベル1+ / レベル1
(2) レベル2
に基づく論文のことをさします。
症例報告も大切な医学研究の一つなのですが、
ことEBMというときは、「無作為割り付け臨床試験(RCT)」と「前向きコホート研究」
だけ考慮すればいいということです。
かつて、医学界では
実証的研究に基づかない権威者の意見や合意(コンセンサス)が幅を利かしていて、
学会発表などでも、有名大教授で権威者の先生が「私はこう思う」といったら、
水戸黄門の印籠みたいなもので「ヘヘー、恐れ入りました」という事で
一件落着という世界だったのです。
権威者が、何人か寄り集まって、ガイドラインの内容を決めると、
コンセンサスによる決定となります。
これは、上述のヒエラルキーからみると、エビデンスレベルは最低、
エビデンスなしということです。
権威者の意見や、コンセンサスに基づく見解などに頼っているのは、
非科学的であるという批判が、世界中の医学界で続出して、
それではよろしくないということで、
evidence based medhicine(証拠に基づく医学)→略してEBMが登場したわけです。
<従来の糖尿病食にはエビデンスがない>
前振りが長かったですが、
「糖尿病診療ガイドライン2016」の食事療法の部分、 37ページに
Q3-1 糖尿病における食事療法の意義と最適な栄養素のバランスは
どのようなものか?
に対し、
「摂取エネルギーのうち、炭水化物を50-60%、たんぱく質20%以下
を目安とし、残りを脂質とする。」
と記載しています。
しかし、推奨グレードの表示はなしです。
以前の、「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2010」の食事療法、
31ページでは、「炭水化物は指示エネルギー量の50~60%」と、
グレードAで推奨してありますが、根拠はなんとコンセンサスで、
科学的根拠に基づいていないことが明示されていました。
2010年に比べれば2016年は、エビデンスのないことを
グレードAで推奨するという暴挙がなくなった分よしとしましょう。
ちなみに「2型糖尿病患者に運動療法は有効か?」に対しては、
血糖コントロールに有効で、推奨グレードAです。
結局、糖尿病の食事療法に関しては、
日本糖尿病学会が推奨する糖尿病食(カロリー制限高糖質食)には
エビデンスはないのです。
<糖質制限食にはエビデンスがある>
一方、ひいき目と言われるかもしれませんが
糖質制限食においては、一定のエビデンスがあります。
以下に、EBMとして信頼度の高い長期の研究を列挙します。
いずれも、糖質制限食の『長期的有効性・安全性』を保証する論文です。
なおこれらの論文は、スーパー糖質制限食に関するものではありません。
普通に食事をしている集団(糖質も食べている)において、
糖質を多く食べている群と比較的少ない群を比較したものです。
1年間の研究ならスーパー糖質制限食のRCTが少なくとも2つあります。
1)はRCT論文で8年間であり、信頼度はトップランクの研究です。
2)3)4)5)6)は前向きコホート研究であり、信頼度は上から二番目です。
糖質制限食の長期的安全性の肯定に関しては、
EBMに基づき少なくとも6つの信頼度の高い研究論文が存在するわけです。
例えば
2)は
炭水化物摂取比率36.8±6.1%グループと58.8±7.0%のグループの比較です。
炭水化物摂取の多いグループは冠動脈疾患リスクが増加です。
4)は
糖質摂取比率51.5%のグループと糖質摂取比率72.7%のグループの比較です。
糖質摂取比率が一番少ない51.5%のグループは一番多い72.7%のグループに比較すると
心血管死のリスクが59%しかありません。
いずれも糖質大量摂取の弊害(心血管リスク)を如実に示しています。
結果として糖質摂取が少ないほど心血管リスク軽減において有利になることも示しています。
6)は2017年8月にランセットに発表されました。
「炭水化物の摂取比率が多いほど、総死亡率が上昇し
脂質の摂取比率が多いほど、雄死亡率が低下」
ですから、まさに夏井睦先生の言う「炭水化物が人類を滅ぼす」ですね。
長期の研究
1)RCT論文
低糖質地中海食(LCMD)。8年間RCT論文。
糖質50%未満のLCMD群と低脂肪群の比較。
女性は1800kcal/日。男性は1800kcal/日。
新たに診断された2型糖尿病患者では、LCMDは低脂肪食と比較して、
HbA1cレベルの大きな減少、糖尿病の寛解率が高く、糖尿病治療薬の導入を遅らせた。
Diabetes Care. 2014 Jul;37(7):1824-30.
The effects of a Mediterranean diet on the need for diabetes drugs and remission of newly diagnosed type 2 diabetes: follow-up of a randomized trial.
2)前向きコホート研究
低炭水化物・高脂肪・高タンパク食に冠動脈疾患のリスクなし
一方総炭水化物摂取量は冠動脈疾患リスクの中等度増加に関連していた。
高GLは冠動脈疾患リスク増加と強く関連していた。
ニューイングランドジャーナルのコホート研究
82802人 20年間 2006年掲載 ハーバード大学
炭水化物摂取比率36.8±6.1%グループと58.8±7.0%のグループの比較。
Halton TL, et al. Low-carbohydrate-diet score and the risk of coronary heart disease in women. New England Journal of Medicine 2006;355:1991-2002.
3)前向きコホート研究
21論文、約35万人をメタアナリシスして、
5~23年追跡して1.1万人の脳心血管イベントが発生。
飽和脂肪摂取量と脳心血管イベントハザード比を検証してみると、
飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は、関係がないことが判明。
Siri-Tarino, P.W., et al., Meta-analysis of prospective cohort studies evaluating the association of saturated fat with cardiovascular disease. Am J Clin Nutr, 2010. 91(3): p. 535-46.
4)前向きコホート研究
「糖質制限食の安全性にエビデンス」
前向きコホート試験NIPPON DATA80 29年間 中村保幸
第10分位(糖質摂取比率51.5%)のグループは、第1分位(糖質摂取比率72.7%)のグループに比べて女性においては心血管死のリスクが、
59%しかないという素晴らしい結論で、糖質制限食の圧勝。
Br J Nutr 2014; 112: 916-924
5)前向きコホート研究
上海コホート研究
「糖質摂取量により4群に分けて、糖質摂取量が多いほど心血管疾患の発症リスクが高い」
11万7366人を対象に、調べた研究。
女性が6万4,854人で、平均追跡期間が9.8年。
男性が5万2,512人で、平均追跡期間が5.4年。
女性 心血管発症リスク
1、糖質摂取量264g/日未満 ---------- 1.00
2、糖質摂取量264g~282g/日未満-------- 1.19
3、糖質摂取量282g~299g/日未満-------- 1.76
4、糖質摂取量299g/日以上 ----------- 2.41
男性 心血管発症リスク
1、糖質摂取量296g/日未満 ------------ 1.00
2、糖質摂取量296g~319g/日未満 ---------- 1.50
3、糖質摂取量319g~339g/日未満 ---------- 2.22
4、糖質摂取量339g/日以上
Am J Epidemiol. 2013 Nov 15;178(10):1542-9.
Dietary carbohydrates, refined grains, glycemic load, and risk of coronary heart disease in Chinese adults.
6)前向きコホート研究
『炭水化物の摂取増加で死亡リスク上昇』
ランセット誌のオンライン版(2017/8/29)で、
カナダ・マックマスター大学のMahshid Dehghan博士らが報告。
5大陸18カ国で全死亡および心血管疾患への食事の影響を検証した大規模疫学前向きコホート研究(Prospective Urban Rural Epidemiology:PURE)の結果。
2003年1月1日時点で35~70歳の13万5335例を登録し、
2013年3月31日まで中央値で7.4年間も追跡調査。
論文の内容を要約
1)炭水化物摂取量の多さは全死亡リスク上昇と関連。
2)総脂質および脂質の種類別の摂取は全死亡リスクの低下と関連。
3)総脂質および脂質の種類は、心血管疾患(CVD)、心筋梗塞、CVD死と関連しない。
4)飽和脂質は脳卒中と逆相関している。
炭水化物摂取比率 総死亡率
1群 46.4% 4.1%
2群 54.6% 4.2%
3群 60.8% 4.5%
4群 67.7% 4.9%
5群 77.2% 7.2%
脂肪の摂取比率 総死亡率
1群 10.6% 6.7%
2群 18.0% 5.1%
3群 24.2% 4.6%
4群 29.1% 4.3%
5群 35.3% 4.1%
<生理学的事実>
さらに、生理学的事実として、糖尿人が糖質を摂取した場合、
糖質制限食なら、食後高血糖は生じませんが、
従来の糖尿病食なら、食後高血糖が必ず生じるということは明白です。
そして、
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)2007年
「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)2011年
「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
によれば、
食後高血糖は、
大血管合併症の独立した危険因子であり、
酸化ストレスを生じ血管内皮を障害し、
糖尿病網膜症と関係し、
IMT肥厚と関係し、
認知障害にも関係し、
癌発症リスク上昇と関連するとのことです。
糖質制限食により、食後高血糖を防ぐことの意味は、大変大きいと思います。
江部康二
健康診断の各種項目の標準値(正常値)にエビデンスはあるのでしょうか。
多くの項目の正常値は病気と診断されていない人の平均値であって、数値そのものに「絶対的な健康」を表す根拠はあるのでしょうか。
では、一般的に健康とされる人(病気がない人)とはどのような人でしょうか。本当に健康なのでしょうか。
バランスの良い食事とはどういうものでしょうか。一般的に健康とされる人(本当はどうか分かりません)が摂取する食事の平均値であってそのバランスに科学的根拠はないと思います。
私は、糖質制限を始めて5年目(60歳)になりますが、糖質制限前と比べてはるかに健康になりました。瞬発力は年齢と共に少しずつ落ちてきますが、持久力においては20年ほど若返ったと言う自覚があります。ほかにも年齢のせい(要するに老化)だと思い込んでいた数々の不調もなくなりました。
要するに、それまでの糖質過多の食事が普通の食事であり、その普通の食事で維持している健康状態を「健康」と誤解していたわけです。
しかし、一般的な食事を続けている人は、私が気づいた「誤解」に気づかないままなのではないでしょうか。本当は、もっと健康なのが本来の健康なのです。
その「誤解」に気づかない「質の悪い健康」な人の平均値が健康診断の各種項目の正常値なのだと思われます。
質の悪い食事や生活環境が一般的であれば、正常値の範囲も質の悪いものになるのは当然です。
これではいつまでたっても「卵が先か鶏が先か」と言うループに陥って、本当にバランスの良い食事とはどのようなものか、本当の健康とはどのようなものかは見えてきません。
正常値には、人種による差があるように、一般人と糖質セイゲニストの正常値はかなり異なっていると思います。
糖質セイゲニスト(に限らず、食事内容別)の標準値を作らないと、本当のバランスの良い食事は分からないし、当の健康状態も分からないでしょう。
多くの項目の正常値は病気と診断されていない人の平均値であって、数値そのものに「絶対的な健康」を表す根拠はあるのでしょうか。
では、一般的に健康とされる人(病気がない人)とはどのような人でしょうか。本当に健康なのでしょうか。
バランスの良い食事とはどういうものでしょうか。一般的に健康とされる人(本当はどうか分かりません)が摂取する食事の平均値であってそのバランスに科学的根拠はないと思います。
私は、糖質制限を始めて5年目(60歳)になりますが、糖質制限前と比べてはるかに健康になりました。瞬発力は年齢と共に少しずつ落ちてきますが、持久力においては20年ほど若返ったと言う自覚があります。ほかにも年齢のせい(要するに老化)だと思い込んでいた数々の不調もなくなりました。
要するに、それまでの糖質過多の食事が普通の食事であり、その普通の食事で維持している健康状態を「健康」と誤解していたわけです。
しかし、一般的な食事を続けている人は、私が気づいた「誤解」に気づかないままなのではないでしょうか。本当は、もっと健康なのが本来の健康なのです。
その「誤解」に気づかない「質の悪い健康」な人の平均値が健康診断の各種項目の正常値なのだと思われます。
質の悪い食事や生活環境が一般的であれば、正常値の範囲も質の悪いものになるのは当然です。
これではいつまでたっても「卵が先か鶏が先か」と言うループに陥って、本当にバランスの良い食事とはどのようなものか、本当の健康とはどのようなものかは見えてきません。
正常値には、人種による差があるように、一般人と糖質セイゲニストの正常値はかなり異なっていると思います。
糖質セイゲニスト(に限らず、食事内容別)の標準値を作らないと、本当のバランスの良い食事は分からないし、当の健康状態も分からないでしょう。
2022/09/03(Sat) 07:51 | URL | 西村 典彦 | 【編集】
江部先生、コメント失礼いたします。
私たち糖質セイゲニストは大胆な言い方をしますと定期健康診断はあまり意味がないと思っています。それぞれの血液検査の示す基準値も糖質セイゲニストには当てはまらないことが多いように思います。
私たちのご先祖様も定期健康診断等はしていなかったわけですから。
今のこの私たちの食生活で何不自由なく生きているのであるならば結果オーライで良いのではないでしょうか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
正常値には、人種による差があるように、一般人と糖質セイゲニストの正常値はかなり異なっていると思います。
糖質セイゲニスト(に限らず、食事内容別)の標準値を作らないと、本当のバランスの良い食事は分からないし、当の健康状態も分からないでしょう。
このように言われる方がいらっしゃいますがいかがでしょうか?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私が思うのは、標準値などを作る必要もありませんし作る意味もありません。神経質に捉えるのではなく今がよければそれでいいのですよ。いずれは何かの病気にかかりあるいは事故に遭い死んでしまうわけですから。
私たち糖質セイゲニストは大胆な言い方をしますと定期健康診断はあまり意味がないと思っています。それぞれの血液検査の示す基準値も糖質セイゲニストには当てはまらないことが多いように思います。
私たちのご先祖様も定期健康診断等はしていなかったわけですから。
今のこの私たちの食生活で何不自由なく生きているのであるならば結果オーライで良いのではないでしょうか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
正常値には、人種による差があるように、一般人と糖質セイゲニストの正常値はかなり異なっていると思います。
糖質セイゲニスト(に限らず、食事内容別)の標準値を作らないと、本当のバランスの良い食事は分からないし、当の健康状態も分からないでしょう。
このように言われる方がいらっしゃいますがいかがでしょうか?
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私が思うのは、標準値などを作る必要もありませんし作る意味もありません。神経質に捉えるのではなく今がよければそれでいいのですよ。いずれは何かの病気にかかりあるいは事故に遭い死んでしまうわけですから。
2022/09/03(Sat) 15:07 | URL | ジェームズ中野 | 【編集】
西村 典彦 さん
仰る通りと思います。
とても意義の深いコメントなので、明日、記事にしたいと思います。
仰る通りと思います。
とても意義の深いコメントなので、明日、記事にしたいと思います。
2022/09/03(Sat) 18:13 | URL | ドクター江部 | 【編集】
ジェームズ中野 さん
コメントをありがとうございます。
コメントをありがとうございます。
2022/09/03(Sat) 18:15 | URL | ドクター江部 | 【編集】
スーパー糖質制限と薬(スーグラ)の服用により、血糖値もA1 cもかなり低い水準で安定しているように思いますが、直近の血糖値の推移をお報せしますので、この状態で薬を一旦中止して、それでまた上昇すれば薬を服用すればよいということなのかどうか、
また、スーグラは内臓を保護する作用があると以前言われたと思いますが、血糖値が低い水準で安定しても服用する意味があるものかどうか(つまり、健康人でも服用する意味があるかどうか)、について先生のお考えを聞かせていただければ幸いです。
9月1日・・早朝6時血糖値88、7時朝軽食後8時血糖値128、19時S糖質制限夕食後スーグラ服用、21時血糖値127
9月2日・・早朝5時血糖値85、7時朝軽食後10時血糖値117、19時S糖質制限夕食後スーグラ服用、21時血糖値104
9月3日・・早朝5時血糖値96、7時朝軽食後9時血糖値112、19時S糖質制限夕食後薬服用無し、20時血糖値150
9月4日・・早朝5時血糖値117、
また、スーグラは内臓を保護する作用があると以前言われたと思いますが、血糖値が低い水準で安定しても服用する意味があるものかどうか(つまり、健康人でも服用する意味があるかどうか)、について先生のお考えを聞かせていただければ幸いです。
9月1日・・早朝6時血糖値88、7時朝軽食後8時血糖値128、19時S糖質制限夕食後スーグラ服用、21時血糖値127
9月2日・・早朝5時血糖値85、7時朝軽食後10時血糖値117、19時S糖質制限夕食後スーグラ服用、21時血糖値104
9月3日・・早朝5時血糖値96、7時朝軽食後9時血糖値112、19時S糖質制限夕食後薬服用無し、20時血糖値150
9月4日・・早朝5時血糖値117、
倉田 さん
この数値なら、一旦、スーグラを中止して、スーパー糖質制限食だけで、経過をみて良いと思います。
この数値なら、一旦、スーグラを中止して、スーパー糖質制限食だけで、経過をみて良いと思います。
2022/09/04(Sun) 09:05 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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