2022年07月16日 (土)
こんにちは。
2022年7月3日(日)、毎日新聞のサイトに
以下の青字の記事が掲載されました。
https://mainichi.jp/articles/20220703/ddm/012/040/082000c
アニサキス食中毒増加 胃腸に激痛
魚に寄生/年7000人被害推定も
どうやら、アニサキス食中毒が増えているようです。
カンピロバクターやノロウイルスによる食中毒を抑え、
2018年から最多の発生件数を占めています。
食中毒が発生したら営業停止処分を受けるので、飲食店は要注意です。
以前、プーさんにご教示頂きましたが、アニサキス食中毒には、
「アニサキス症」と「アニサキスアレルギー」の二つがあります。
プーさんがご指摘のように、まず最初にアニサキス症となり、
その後アニサキスアレルギーを発症する人もいれば発症しない人もいます。
<アニサキスとアニサキス症>
アニサキスの幼虫(白くて2~3mm×0.5mm)が寄生している魚を
人が生で食べてアニサキス症を発症します。
アニサキスの本来の寄生宿主は、クジラ、イルカ、アザラシなどで、
これらの胃に寄生して卵を産みます。
この卵が海中に糞便とともに排泄され、それをオキアミなどが取りこみ、
そこで幼虫になります。
幼虫の感染しているオキアミを魚が食べると、
魚の内臓に幼虫のまま寄生します。
オキアミは地球の海洋生態系のエンジンを動かす燃料のようなもので、
いろんな魚がオキアミを食べます。
そして、アニサキスが寄生している魚をヒトが食べると、アニサキス症を発症します。
アニサキスにとっては、ヒトの胃は、本来の寄生環境ではないので、
胃壁に頭を突っ込んで(刺入して)、脱出しようとします。
胃壁に頭を突っ込まれたら痛そうですが、実は胃の粘膜を生検しても痛みはなく、
胃粘膜そのものには疼痛センサーはありませんので、これだけでは痛みません。
しかし、アニサキスアレルギーがあると、刺入によりアレルギー反応が出現し
疼痛物質が作られるので激しく痛むのです。
治療は胃カメラでアニサキスを取り出すことです。
胃、腸、腸管外にアニサキスが刺入しますが、9割は胃アニサキス症です。
なお、故森繁久彌さんは、昭和62年に名古屋で公演中に
腹部の激痛を訴えて緊急手術を受けました。
サバの押しずしを食べて腸管アニサキス症を発症したのです。
アニサキスは、魚の内臓に寄生していますが、
魚が死ぬとすぐに筋肉に移行します。
その筋肉を食べてアニサキス症になるわけなので、
速やかに内臓を処理した魚なら、ほぼ安全です。
アニサキス症の元となる魚は、
サバ、イワシ、アジ、カツオ、キンメダイ、タラ、ホッケ、サケ、イカなどですが、
一番多いのはサバです。
養殖魚では冷凍オキアミなどを食料として使用するので、
養殖魚にはアニサキスの寄生は大変少ないです。
以下は、
厚生労働省のサイトhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html
より引用です
消費者の皆さまへ
◆ 魚を購入する際は、新鮮な魚を選びましょう。また、丸ごと1匹で購入した際は、速やかに内臓を取り除いてください。
◆ 内臓を生で食べないでください。
◆ 目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。
※ 一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。
事業者の皆さまへ
◆ 新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除いてください。
◆ 魚の内臓を生で提供しないでください。
◆ 目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。
◆ 冷凍してください。 (-20℃で24時間以上冷凍)
◆ 加熱してください。(70℃以上、または60℃なら1分)
※ 一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。
続く。
江部康二
2022年7月3日(日)、毎日新聞のサイトに
以下の青字の記事が掲載されました。
https://mainichi.jp/articles/20220703/ddm/012/040/082000c
アニサキス食中毒増加 胃腸に激痛
魚に寄生/年7000人被害推定も
どうやら、アニサキス食中毒が増えているようです。
カンピロバクターやノロウイルスによる食中毒を抑え、
2018年から最多の発生件数を占めています。
食中毒が発生したら営業停止処分を受けるので、飲食店は要注意です。
以前、プーさんにご教示頂きましたが、アニサキス食中毒には、
「アニサキス症」と「アニサキスアレルギー」の二つがあります。
プーさんがご指摘のように、まず最初にアニサキス症となり、
その後アニサキスアレルギーを発症する人もいれば発症しない人もいます。
<アニサキスとアニサキス症>
アニサキスの幼虫(白くて2~3mm×0.5mm)が寄生している魚を
人が生で食べてアニサキス症を発症します。
アニサキスの本来の寄生宿主は、クジラ、イルカ、アザラシなどで、
これらの胃に寄生して卵を産みます。
この卵が海中に糞便とともに排泄され、それをオキアミなどが取りこみ、
そこで幼虫になります。
幼虫の感染しているオキアミを魚が食べると、
魚の内臓に幼虫のまま寄生します。
オキアミは地球の海洋生態系のエンジンを動かす燃料のようなもので、
いろんな魚がオキアミを食べます。
そして、アニサキスが寄生している魚をヒトが食べると、アニサキス症を発症します。
アニサキスにとっては、ヒトの胃は、本来の寄生環境ではないので、
胃壁に頭を突っ込んで(刺入して)、脱出しようとします。
胃壁に頭を突っ込まれたら痛そうですが、実は胃の粘膜を生検しても痛みはなく、
胃粘膜そのものには疼痛センサーはありませんので、これだけでは痛みません。
しかし、アニサキスアレルギーがあると、刺入によりアレルギー反応が出現し
疼痛物質が作られるので激しく痛むのです。
治療は胃カメラでアニサキスを取り出すことです。
胃、腸、腸管外にアニサキスが刺入しますが、9割は胃アニサキス症です。
なお、故森繁久彌さんは、昭和62年に名古屋で公演中に
腹部の激痛を訴えて緊急手術を受けました。
サバの押しずしを食べて腸管アニサキス症を発症したのです。
アニサキスは、魚の内臓に寄生していますが、
魚が死ぬとすぐに筋肉に移行します。
その筋肉を食べてアニサキス症になるわけなので、
速やかに内臓を処理した魚なら、ほぼ安全です。
アニサキス症の元となる魚は、
サバ、イワシ、アジ、カツオ、キンメダイ、タラ、ホッケ、サケ、イカなどですが、
一番多いのはサバです。
養殖魚では冷凍オキアミなどを食料として使用するので、
養殖魚にはアニサキスの寄生は大変少ないです。
以下は、
厚生労働省のサイトhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html
より引用です
消費者の皆さまへ
◆ 魚を購入する際は、新鮮な魚を選びましょう。また、丸ごと1匹で購入した際は、速やかに内臓を取り除いてください。
◆ 内臓を生で食べないでください。
◆ 目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。
※ 一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。
事業者の皆さまへ
◆ 新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除いてください。
◆ 魚の内臓を生で提供しないでください。
◆ 目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。
◆ 冷凍してください。 (-20℃で24時間以上冷凍)
◆ 加熱してください。(70℃以上、または60℃なら1分)
※ 一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。
続く。
江部康二
私も10年ほど前にアニサキス症になりました。
この時は自宅で調理した夕食のしめ鯖が原因でしたが、症状が出たのは翌日の夕方くらいでかなり時間が経ってからでした。胃に周期的な激痛があり、胃腸科のクリニックで内視鏡にて除去してもらいました。
超音波の映像で胃壁が腫れて通常の2倍くらいの厚みになっており、動いておらず、アレルギー反応によるものと言う事で、食べたものを聞かれました。
しめ鯖を食べたことを伝えると即答でアニサキスだと言われて、除去してもらいました。余談ですが、胃腸科でもアニサキスの除去をしたことがない医師は結構多いようです。
生でなければ大丈夫と言う風に思っていたのですが、酢でしめたくらいでは死滅しないそうです。胃酸でも死なないので言われてみれば当然ですね。
死滅には冷凍する事が一般的なようです。
その後はアレルギーにならず、不幸中の幸いでした。最悪の場合は、胃にとどまらず、腸まで達すると薄い腸壁を貫通して腹膜炎を起こすこともあると言われました。
因みにアニサキスは、最初はサバなどの内臓にいるのですが、鮮度が落ちると内臓を食い破って身の中に食い込んでしまうそうです。したがって新鮮なものであれば、内臓と一緒に取り除くことができ、アニサキス症になる確率は下がるようです。あくまでも確立の問題ですが。
イカもアニサキスが寄生しますが、糸づくりにするとアニサキスを切断することによって死滅させる事ができるようです。
また、ルイベと言う鮭を凍らせた料理がありますが、冷凍することによって死滅させることができます。
調理方法にも味だけではなく、理由があるのですね。
ホタルイカは7割くらいの確率で寄生していると聞いたことがあります。最近は、ボイルしたものか冷凍した生での流通がほとんどになっています。
一度アニサキス症になった後、残念ながらアニサキスアレルギーになってしまった方は、アニサキスを死滅させてもアレルギー物質があるのでアニサキスアレルギーの症状が出てしまうとの事でした。
この時は自宅で調理した夕食のしめ鯖が原因でしたが、症状が出たのは翌日の夕方くらいでかなり時間が経ってからでした。胃に周期的な激痛があり、胃腸科のクリニックで内視鏡にて除去してもらいました。
超音波の映像で胃壁が腫れて通常の2倍くらいの厚みになっており、動いておらず、アレルギー反応によるものと言う事で、食べたものを聞かれました。
しめ鯖を食べたことを伝えると即答でアニサキスだと言われて、除去してもらいました。余談ですが、胃腸科でもアニサキスの除去をしたことがない医師は結構多いようです。
生でなければ大丈夫と言う風に思っていたのですが、酢でしめたくらいでは死滅しないそうです。胃酸でも死なないので言われてみれば当然ですね。
死滅には冷凍する事が一般的なようです。
その後はアレルギーにならず、不幸中の幸いでした。最悪の場合は、胃にとどまらず、腸まで達すると薄い腸壁を貫通して腹膜炎を起こすこともあると言われました。
因みにアニサキスは、最初はサバなどの内臓にいるのですが、鮮度が落ちると内臓を食い破って身の中に食い込んでしまうそうです。したがって新鮮なものであれば、内臓と一緒に取り除くことができ、アニサキス症になる確率は下がるようです。あくまでも確立の問題ですが。
イカもアニサキスが寄生しますが、糸づくりにするとアニサキスを切断することによって死滅させる事ができるようです。
また、ルイベと言う鮭を凍らせた料理がありますが、冷凍することによって死滅させることができます。
調理方法にも味だけではなく、理由があるのですね。
ホタルイカは7割くらいの確率で寄生していると聞いたことがあります。最近は、ボイルしたものか冷凍した生での流通がほとんどになっています。
一度アニサキス症になった後、残念ながらアニサキスアレルギーになってしまった方は、アニサキスを死滅させてもアレルギー物質があるのでアニサキスアレルギーの症状が出てしまうとの事でした。
2022/07/17(Sun) 09:33 | URL | 西村 典彦 | 【編集】
先生のブログ、いつも楽しみです。
十割蕎麦についてご教示ください。
メタボリックシンドロームの方に、十割蕎麦はいかがでしょうか?
十割蕎麦についてご教示ください。
メタボリックシンドロームの方に、十割蕎麦はいかがでしょうか?
2022/07/17(Sun) 10:40 | URL | ゆーゆ | 【編集】
西村 典彦 さん
コメント、ありがとうございます。
私は、幸いアニサキス症には、なったことがありません。
ノロウイルスは、1回なりました。
コメント、ありがとうございます。
私は、幸いアニサキス症には、なったことがありません。
ノロウイルスは、1回なりました。
2022/07/17(Sun) 14:26 | URL | ドクター江部 | 【編集】
ゆーゆ さん
十割蕎麦も、デンプンなので、血糖値が上昇してインスリン(肥満ホルモン)が
分泌されます。
糖質制限食的には、NG食品です。
十割蕎麦も、デンプンなので、血糖値が上昇してインスリン(肥満ホルモン)が
分泌されます。
糖質制限食的には、NG食品です。
2022/07/17(Sun) 14:29 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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