2022年07月14日 (木)
こんばんは。
昨夜の京都は、夜は25℃くらいで、
エアコンなしで眠れました。
さて、暑くなってくるとペットボトルを持ち歩いたりして、
清涼飲料水を1日2~3リットル毎日飲み続ける人がいます。
もともと軽症2型糖尿病であったり境界型糖尿病レベルの人が、
液体の糖質(清涼飲料水)のような吸収されやすい糖質を、
多量に毎日のように摂取していると、飲む度に血糖値が急上昇するので、
高血糖にならないようにインスリンが大量に追加分泌されます。
このようなペットボトル生活を、1~2週間から1ヶ月近く続けていると、
ついには膵臓のβ細胞(インスリンを作る細胞)が疲弊してしまい、
インスリンの生産が追いつかなくなり血糖値が高くなり、
一日を通して、200mg/dlを超えるようになってしまいます。
一旦血糖値が高くなると糖毒状態となります。(*)
糖毒の悪循環が続けばインスリン作用は遂に欠落してしまい、
糖尿病性ケトアシドーシスという重篤な病態になり、
血糖値は300~1000mg/dlにもなり、
ものの1~2週間で意識の混濁や昏睡に陥るケースもあります。
治療が遅れたら、死亡することもあり得ます。
この状態を俗にペットボトル症候群と呼びますが、正式名称は清涼飲料水ケトアシドーシスです。
この様なときは、緊急入院して生理的食塩水の点滴で脱水を補正し、
インスリン注射をして、血糖値をコントロールします。
血糖がコントロールできれば糖毒状態は急速に改善し、
インスリン分泌能力も回復することがほとんどです。
従って、退院後はもとの状態に戻るので、インスリン注射も勿論必要ありません。
清涼飲料水ケトアシドーシスの特徴
①清涼飲料水を大量に摂取する(一日平均約2リットル)
②青年期から中年にかけての男性に多い
③発症時に肥満があるが肥満歴を有する人が大半
④血縁者に糖尿病患者がいるケースが半分以上
⑤患者に病識がないか乏しい
大量の液体の糖質を摂取することが、ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)の元凶です。
液体糖質大量摂取以外には起こりえない病態ですが、
今でも時々見かけますので、注意が必要です。
2型糖尿病で、糖尿病ケトアシドーシスを発症する場合、ほとんどがペットボトル症候群です。
液体糖質摂取によるペットボトル症候群は、
日本人に多い病態で、欧米人にはほとんど見られません。
このことには、インスリン分泌能力の差が関係していると思われます。
日本人は、生来、インスリン分泌能力が、欧米人に比べると低いので、
β細胞が疲弊しやすく、ペットボトル症候群を生じやすいものと思われます。
これに対して欧米人は、、清涼飲料水を大量に飲んでも、
元々インスリン分泌能力が高いので、β細胞が疲弊することがなく、
200mg/dlを超える高血糖にもなりにくいにくいものと思われます。
そのかわり、肥満ホルモンであるインスリンを長期にわたり大量に分泌し続ける能力により、
欧米人においては、150kgを超える巨大な肥満患者が多数存在することになります。
いずれにせよ、ブドウ糖や砂糖入りの清涼飲料水は、危険な飲み物という認識が必要と思います。
コーラやファンタやスポーツ飲料など、糖質を含有しているものは、
全てペットボトル症候群の元凶となり得ます。
アクエリアスゼロだけは、カロリーゼロで糖質ゼロなので、飲んでも大丈夫です。
糖尿人や境界人の方々は、
水分補給はお水や麦茶やルイボスティーなど、糖質ゼロでカフェインゼロのものが好ましいです。
ちなみに米国飲料協会(ABA)は、
公立小中学校でのエネルギー量(糖質)の多い清涼飲料水の発売を2009年、全面停止しています。
(*)糖毒
① 高血糖の持続→膵臓のランゲルハンス島のβ細胞にダメージ→インスリン分泌低下
② 高血糖の持続→細胞レベルでのインスリン抵抗性増大
高血糖があると①と②が体内で生じます。
インスリン分泌低下と抵抗性増大が生じれば、ますます高血糖となります。
≪高血糖の持続→インスリン分泌低下とインスリン抵抗性増大→高血糖の持続→≫
この悪循環パターンを、臨床的には「糖毒」 と呼びます。
なぜ、高血糖自体がインスリン分泌を低下させるのか、インスリン抵抗性を増大させるのか、
最先端の研究で調べられてはいるのですが、はっきり言ってまだよくわからないのが現状です。
江部康二
昨夜の京都は、夜は25℃くらいで、
エアコンなしで眠れました。
さて、暑くなってくるとペットボトルを持ち歩いたりして、
清涼飲料水を1日2~3リットル毎日飲み続ける人がいます。
もともと軽症2型糖尿病であったり境界型糖尿病レベルの人が、
液体の糖質(清涼飲料水)のような吸収されやすい糖質を、
多量に毎日のように摂取していると、飲む度に血糖値が急上昇するので、
高血糖にならないようにインスリンが大量に追加分泌されます。
このようなペットボトル生活を、1~2週間から1ヶ月近く続けていると、
ついには膵臓のβ細胞(インスリンを作る細胞)が疲弊してしまい、
インスリンの生産が追いつかなくなり血糖値が高くなり、
一日を通して、200mg/dlを超えるようになってしまいます。
一旦血糖値が高くなると糖毒状態となります。(*)
糖毒の悪循環が続けばインスリン作用は遂に欠落してしまい、
糖尿病性ケトアシドーシスという重篤な病態になり、
血糖値は300~1000mg/dlにもなり、
ものの1~2週間で意識の混濁や昏睡に陥るケースもあります。
治療が遅れたら、死亡することもあり得ます。
この状態を俗にペットボトル症候群と呼びますが、正式名称は清涼飲料水ケトアシドーシスです。
この様なときは、緊急入院して生理的食塩水の点滴で脱水を補正し、
インスリン注射をして、血糖値をコントロールします。
血糖がコントロールできれば糖毒状態は急速に改善し、
インスリン分泌能力も回復することがほとんどです。
従って、退院後はもとの状態に戻るので、インスリン注射も勿論必要ありません。
清涼飲料水ケトアシドーシスの特徴
①清涼飲料水を大量に摂取する(一日平均約2リットル)
②青年期から中年にかけての男性に多い
③発症時に肥満があるが肥満歴を有する人が大半
④血縁者に糖尿病患者がいるケースが半分以上
⑤患者に病識がないか乏しい
大量の液体の糖質を摂取することが、ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)の元凶です。
液体糖質大量摂取以外には起こりえない病態ですが、
今でも時々見かけますので、注意が必要です。
2型糖尿病で、糖尿病ケトアシドーシスを発症する場合、ほとんどがペットボトル症候群です。
液体糖質摂取によるペットボトル症候群は、
日本人に多い病態で、欧米人にはほとんど見られません。
このことには、インスリン分泌能力の差が関係していると思われます。
日本人は、生来、インスリン分泌能力が、欧米人に比べると低いので、
β細胞が疲弊しやすく、ペットボトル症候群を生じやすいものと思われます。
これに対して欧米人は、、清涼飲料水を大量に飲んでも、
元々インスリン分泌能力が高いので、β細胞が疲弊することがなく、
200mg/dlを超える高血糖にもなりにくいにくいものと思われます。
そのかわり、肥満ホルモンであるインスリンを長期にわたり大量に分泌し続ける能力により、
欧米人においては、150kgを超える巨大な肥満患者が多数存在することになります。
いずれにせよ、ブドウ糖や砂糖入りの清涼飲料水は、危険な飲み物という認識が必要と思います。
コーラやファンタやスポーツ飲料など、糖質を含有しているものは、
全てペットボトル症候群の元凶となり得ます。
アクエリアスゼロだけは、カロリーゼロで糖質ゼロなので、飲んでも大丈夫です。
糖尿人や境界人の方々は、
水分補給はお水や麦茶やルイボスティーなど、糖質ゼロでカフェインゼロのものが好ましいです。
ちなみに米国飲料協会(ABA)は、
公立小中学校でのエネルギー量(糖質)の多い清涼飲料水の発売を2009年、全面停止しています。
(*)糖毒
① 高血糖の持続→膵臓のランゲルハンス島のβ細胞にダメージ→インスリン分泌低下
② 高血糖の持続→細胞レベルでのインスリン抵抗性増大
高血糖があると①と②が体内で生じます。
インスリン分泌低下と抵抗性増大が生じれば、ますます高血糖となります。
≪高血糖の持続→インスリン分泌低下とインスリン抵抗性増大→高血糖の持続→≫
この悪循環パターンを、臨床的には「糖毒」 と呼びます。
なぜ、高血糖自体がインスリン分泌を低下させるのか、インスリン抵抗性を増大させるのか、
最先端の研究で調べられてはいるのですが、はっきり言ってまだよくわからないのが現状です。
江部康二
こんにちは。5年前に境界型糖尿病と診断され必至に糖質制限に励んでいます!
現在Hba1cは5.2〜5.3を行ったりきたりで、江部先生には感謝しかありません。
さて、先日の検査でCrが0.84→eGFRが59.8で再検査を依頼しました。41歳女性、痩せ型筋肉なしです。
結果、クレアチニンは同じで0.84でeGFRは59.8。しかし、シスタチンCは0.70でした。これをクレアチニンに置き換えて計算するとeGFRは73くらいになります。
私はこのまま糖質制限を続けても大丈夫でしょうか?
腎臓内科医はクレアチニンによるeGFRをみて、炭水化物を50%とりなさい、塩分控えてタンパクも人並みにはとりなさい、エコーでは少し腎臓が小さいかな、他には異常見られないです。体質による腎機能低下ですと言われました。
確かにクレアチニンは年々上がってきています。0.73→0.75→0.78→0.84。
私としては、糖質制限でとても調子が良いのでこのまま炭水化物抑えめにいきたいのですが、いかがでしょうか?
ちなみに尿蛋白潜血はマイナス、その他血液検査は異常なしです。
アドバイスよろしくお願いします。
現在Hba1cは5.2〜5.3を行ったりきたりで、江部先生には感謝しかありません。
さて、先日の検査でCrが0.84→eGFRが59.8で再検査を依頼しました。41歳女性、痩せ型筋肉なしです。
結果、クレアチニンは同じで0.84でeGFRは59.8。しかし、シスタチンCは0.70でした。これをクレアチニンに置き換えて計算するとeGFRは73くらいになります。
私はこのまま糖質制限を続けても大丈夫でしょうか?
腎臓内科医はクレアチニンによるeGFRをみて、炭水化物を50%とりなさい、塩分控えてタンパクも人並みにはとりなさい、エコーでは少し腎臓が小さいかな、他には異常見られないです。体質による腎機能低下ですと言われました。
確かにクレアチニンは年々上がってきています。0.73→0.75→0.78→0.84。
私としては、糖質制限でとても調子が良いのでこのまま炭水化物抑えめにいきたいのですが、いかがでしょうか?
ちなみに尿蛋白潜血はマイナス、その他血液検査は異常なしです。
アドバイスよろしくお願いします。
糖質制限により、体内のケトン体が糖質食をとってる人より生成され、身体が酸性(アシドーシス)に傾き、疲れやすくなると聞いたのですが、先生のお身体は疲れはありませんでしょうか?
お忙しい中質問して申し訳ありません。ご返答いただけたら幸いです。
お忙しい中質問して申し訳ありません。ご返答いただけたら幸いです。
2022/07/15(Fri) 14:24 | URL | | 【編集】
のぞみん さん
<シスタチンCは0.70でした。これをクレアチニンに置き換えて計算するとeGFRは73くらいになります。>
シスタチンCのほうが、クレアチニンより信頼度の高い腎機能検査です。
従ってシスタチンCで計算したeGFRが73あれば、60を超えているのでほとんど心配ないです。
「シスタチンC GFR」でグーグルで検索して、計算サイトを探して、、
0.7 41歳女性、体重とかをいれて、計算してみましょう。
eGFRは、100以上あるように思います。
<シスタチンCは0.70でした。これをクレアチニンに置き換えて計算するとeGFRは73くらいになります。>
シスタチンCのほうが、クレアチニンより信頼度の高い腎機能検査です。
従ってシスタチンCで計算したeGFRが73あれば、60を超えているのでほとんど心配ないです。
「シスタチンC GFR」でグーグルで検索して、計算サイトを探して、、
0.7 41歳女性、体重とかをいれて、計算してみましょう。
eGFRは、100以上あるように思います。
2022/07/15(Fri) 15:29 | URL | ドクター江部 | 【編集】
私は、月~土まで、毎日外来診療をし、
入院患者さんも普通に担当しています。
ほぼ毎日ブログ記事を書いて、本も書いています。
コロナ前は、年間30回くらい講演をしていました。
普通の人の倍以上働いていますが、元気です。
そして、常に脂肪分解しているので、血中ケトン体は高値ですが、
人体の緩衝作用で、PHは正常に保たれています。
そもそも人類700万年の歴史において、穀物はわずか1万年前からの生産です。
つまり人類の歴史のうち699万年は糖質制限食が普通であったということです。
2022/07/15(Fri) 15:38 | URL | ドクター江部 | 【編集】
お忙しい中ありがとうございました。
クレアチニンとシスタチンc のGFRに乖離がありすぎて驚きました。何事も、知る、ということは本当に大切なことだと改めて実感しております。検査結果を鵜呑みにし、生活習慣一つを誤って選択するだけで将来も随分と違ってくると思います。
大切な情報提供やアドバイスを本当にありがとうございました。
クレアチニンとシスタチンc のGFRに乖離がありすぎて驚きました。何事も、知る、ということは本当に大切なことだと改めて実感しております。検査結果を鵜呑みにし、生活習慣一つを誤って選択するだけで将来も随分と違ってくると思います。
大切な情報提供やアドバイスを本当にありがとうございました。
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