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日本列島人類(日本人)の「狩猟採集時代」と「農耕時代」
こんにちは。

よく「日本人は昔から農耕民族であり・・・」といった話をされる医師や栄養士がおられるのですが、
これは事実とは全く異なっています。
すなわち、明白な事実誤認です。
日本列島人類(日本人)は、「狩猟採集時代」のほうが「農耕時代」よりはるかに長い
というのが、論争の余地のない歴史的事実です。

日本人の始まりは、約38000年前からの旧石器時代(約22000年間続いた)です。
その後、約16000年前から縄文時代が始まります。
縄文時代が、約13500年間続いた後、
約2500年前から弥生時代が始まります。
 つまり、日本人は、約35500年間の狩猟・採集時代を経て、約2500年前から稲作時代に移行したこととなります。

<狩猟・採集時代:農耕時代>は<35500年:2500年>で<14:1>です。
従って、日本人は狩猟・採集時代に比べると農耕民族の歴史は、極めて浅いと言えます。
それでは、日本人の「狩猟採集時代」と「農耕時代」を振り返って検討してみます。


<旧石器時代>
日本列島に初めて人類が移住してきたのが約38000年前で、旧石器時代と呼ばれています。
縄文以前の38000年前頃から16000年前までの旧石器時代の日本列島では、
マンモスやナウマンゾウやニホンシカ、イノシシなど狩猟が生業だったようです。
旧石器時代の人々は、大型哺乳動物を追い、
キャンプ生活・遊動生活を営みながら頻繁に移動生活を繰り返してきました。


<旧石器から縄文へ>
最終氷期(ウルム氷期)は、約2万年前の最盛期が過ぎると地球規模で温暖化に向かいました。
そして温暖化により海位が徐々に上昇していきました。
約13000年前には海位は100m以上上昇して、中国大陸と陸続きであったところに現在の日本海が出現し、
1万年前に氷期が終わります。
ウルム氷期は7万年前に始まり、1万年前に終了です。

そして、針葉樹林が日本列島全体に生えていたのが、
西南日本から太平洋沿岸伝いに落葉広葉樹林が拡がり、
北海道を除いて列島のほとんどが落葉広葉樹林と照葉樹林におきかわりました。
コナラ亜属やブナ属、クリ属など堅果類が繁茂するようになりました。

また、温暖化による植生の変化は、
マンモスやトナカイ、あるいはナウマンゾウやオオツノジカなどの大型哺乳動物の生息環境を悪化させ
、約1万年前までには、日本列島から、これらの大型哺乳動物がほぼ絶滅してしまいました。

なお、津軽海峡は最大水深が約450mと深かったので、氷期でも陸続きとならずに
海峡として存在していましたので、
マンモスは北海道までしか来ることができませんでした。

<縄文時代>

縄文時代は、年代でいうと今から約1万6000年前から約2500年前まであり、
世界史では中石器時代ないし新石器時代に相当する時代です。

縄文時代で最も古い定住集落が発見されているのが九州南部で、およそ1万1000年前に季節的な定住が始まり、
1万年ほど前に通年の定住も開始されたと推測されています。
縄文時代ミズナラ、コナラ、クルミ、クリ、トチノキといった堅果類の採集が盛んに行われるようになりました。
狩猟・植物採取・漁労の3つの新たな生業体系が、縄文時代の生産力を発展させました。


<弥生時代>

一般に約2500年前から約1700年前(西暦300年)までの800年間が
弥生時代とされています。
稲作を中心とする農耕社会が成立し、
北部九州から本州最北端以北を除く日本列島各地へ急速に広まりました。
 
紀元(西暦0年)前後には100くらいの「国」が中国と通交していたとされています。
当時の日本列島は中国から倭・倭国と呼ばれていました。
2世紀後半に倭国大乱と呼ばれる内乱が生じ、その後邪馬台国の卑弥呼が倭国王となりました。
卑弥呼は魏との通交により倭国連合の安定を図りました。
弥生時代のあとは、古墳時代、飛鳥時代、奈良時代・・・と続いていきます。


<日本における稲作の歴史>
日本では、弥生時代以降が、稲作中心の農耕時代です。
一方、縄文後期、現在から約4000~5000年前に、陸稲の栽培されていた可能性が有力となっています。
水田の開始は弥生時代で約2500年前です。

すなわち、本格的な稲作・農耕社会が始まるのは弥生時代ですが、
縄文後期には一部地域で陸稲の栽培が行われていたようです。
縄文時代の陸稲は、<狩猟・植物採取・漁労>の3つの主たる生業体系に、
プラスαといった位置づけです。

従いまして、「日本人は農耕民族」といったお話は、
「弥生時代」(約2500年前~約1700年前)以降だけにに言えることです。
そして、「旧石器時代」(約38000年前頃~約16000年前)は
もっぱら狩猟が主たる生業です。
「縄文時代」(約1万6000年前~約2500年前)は
<狩猟・植物採取・漁労>の3つが主たる生業となります。


<旧石器時代・縄文時代・弥生時代と虫歯率>
旧石器時代人:虫歯率0%
縄文人:12000~2300年前 狩猟採集 虫歯率8.2%
弥生人(土井ヶ浜):2000年前 農耕 虫歯率19.7%
弥生人(三津):2000年前 農耕 虫歯率16.2%
現代日本人:1993年 虫歯率31.3%
アメリカ先住民:7600年前 狩猟採集 虫歯率0.4%
アメリカ先住民:3000年前 狩猟採集 虫歯率2.4%
オーストラリア先住民:近代 狩猟採集 虫歯率4.6%
イヌイット(グリーンランド):近代 狩猟採集 虫歯率2.2%
イヌイット(アラスカ):近代 狩猟採集 虫歯率1.9%


狩猟が生業だった旧石器時代人は、虫歯率ゼロ、
どんぐりや栗を食べていた縄文人は、虫歯率8%、
米を食べていた弥生人は、虫歯率16%です。
糖質摂取が増えるほど、確実に虫歯率が増えています。
「げに、糖質、恐るべし」ですね。


最後にもう一度「日本人は昔から農耕民族であり・・・」といった話は、
明白な事実誤認であることを強調しておきたいと思います。


本日の原稿は
①アフリカで誕生した人類が日本人になるまで 溝口優司著 ソフトバンク新書
②古病理学辞典 藤田尚編、同成社

を参考にさせて頂きました。


江部康二
コメント
「日本人は昔から米を食べてきた...」というのも、合わせて語られますね。一般庶民が白米を食べだしたてまだ100年程度なのに...
2022/04/17(Sun) 14:41 | URL | wu | 【編集
Re: タイトルなし
wu さん

仰る通りです。
日本の一般庶民が、日常的に白米を食べ始めたのは、
明治時代になって、陸軍ができて以降です。

農家の次男・三男が、「陸軍に入隊すれば、毎日銀シャリ(白米)を食べることができる。」という
キャッチコピーで、勧誘されたのが始まりとされています。

それ以降、一般庶民も、白米を食べるようになりました。
2022/04/17(Sun) 14:54 | URL | ドクター江部 | 【編集
『日本医療界』は、何故時代進化しないのか??
都内河北 鈴木です。

本日最後の言葉、『陸軍に入隊すれば、毎日銀シャリ(白米)を食べる事ができる。』とありますが、
私の父親は、戦時中、志那からガダルカナルへ行き、
玉砕した日本の静岡連隊の兵隊です!!

父親の話から、ガダルカナルでは、食生活には、
昆虫を食べていたと聴きました!!

父親は、私が20歳位まで食生活では、『御飯、麺類、菓子類、』等は
食べませんでしたが、
過去の写真を見ても肉体労働をしていたわけではないですが、
『腹は出ていなく、筋肉粒々の身体でした!!』

当時私は空手一途で、ブロックも割れるほどでしたが、
父親の身体を見た時の感動を記憶してます!!

<<江部先生『糖質制限理論』>>は、時代進化した理論だと、
私は<<『生還、覚醒、5度の再覚醒。』>>した医療デ~タをもって
証明いたします!!

感謝尽きません!!
ありがとうございます。
敬具


2022/04/17(Sun) 17:13 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
有酸素運動と筋力低下について
いつも貴重な情報をありがとうございます。

以前、運動について江部先生に質問させて頂いたのですが、その時に「狩猟採集民の運動は歩行がメインでたまに走る程度」と教えて頂きました。

運動に関しては筋トレのような無酸素運動よりも有酸素運動の方が人類には適しているとのことでしたが、有酸素運動のみの運動ですと将来的に筋力が低下したりしないのでしょうか?

スーパー糖質制限をしていれば、有酸素のみの運動でも筋量を維持できるのでしょうか?
2022/04/18(Mon) 03:26 | URL | 光一 | 【編集
Re: 有酸素運動と筋力低下について
光一 さん

野生動物の運動は歩行がメインでたまに走るていどです。
筋トレはしていません。
それで筋力低下はありません。

①ライオン:たいてい寝ていて、狩りのときだけ全力で数秒くらい走る
②シマウマ:通常は寝ているか、歩いていて、ライオンに追われた時だけ全力で10~20秒走る
③狩猟民:ジョギング程度の速度で、数時間、獲物が疲れるまで追い続けて仕留める。
     ヒトは、長距離走に最も向いている動物です。
     ライオンに追われたら、10秒くらいは全力で走るでしょう。

江部康二:8000歩/日くらい歩いています。勤務中に5000歩くらいで、
     あとはテレビやユーチューブを見ながら「ながらジョギング」などです。
     8000歩中、5000~6000歩は「速歩+ジョギング」です。
     筋トレはしていませんが、いきなりスクワット10回とかも可能ですので、
     筋肉量は維持できていると思います。
     歩行速度は速いです。⇒歩行の場合、万歩計では「パワーウオーク」がほとんどです。

     

     
2022/04/18(Mon) 07:44 | URL | ドクター江部 | 【編集
炭水化物と健康寿命についての考察
 世界にはブルーゾーンと言われる長寿地域が存在し、例えば戦前の沖縄が含まれます。
戦前の沖縄ではカロリーの60%をさつまいもを主食として摂取しており、これを根拠に高炭水化物食が長寿(=健康)であると言う説を唱える人がいます。
多分、ある条件下では、間違ってはいない(と思います)。

「科学者たちが語る食欲 ―食べ過ぎてしまう人類に贈る食事の話― デイヴィッド・ローベンハイマ―他著」によると
(1)高タンパク食は繁殖力が高くなるが、寿命が短くなる。逆に高炭水化物食は繁殖力が低くなるが、長寿になる。
(2)多くの生物(菌類からヒトを含む哺乳類まで)はタンパク質を一定量摂取するように食欲が働くようにできている。だから低タンパク食を食べると一定量のタンパク質を摂取しようと過食し肥満する。
と言う事です。
要するに、生物は個の長寿よりも種の存続を選択するようにできているようです。
そうすると長寿=健康、短命=不健康と言う考えは成り立たない事になります。実際、70歳代で老衰で亡くなる人もいます。

ブルーゾーンの人々のように高炭水化物食で長生きするには条件が必要なのではなか、それは高炭水化物を適切に処理できる遺伝子と言う事ではないかと考えています。
ブルーゾーンの人々は高炭水化物でも肥満しない事を考えると、超低インスリン抵抗性なのではないかとも考えられます。
高炭水化物に適した遺伝子とは、例えば私の知人は、健康診断の1時間前にカツカレーを1人前食して検査したところ、血糖値は110mg/dLだったようです。糖炭水化物食に対して、こう言う血糖変化を示す遺伝子と言う事です。糖尿病である私が摂取すれば200mg/dLを軽く超えるだろうし、健常者でも多くは140mg/dLをはるかに超えるでしょう。

ブルーゾーンで食される炭水化物はいもや豆類であり、グルテンを含んいないので摂取する炭水化物にはグルテンを含まないものであると言う条件も必要でしょう。
グルテン過敏症やセリアック病と診断されなくてもグルテンは多少なりとも炎症を起こすことが「いつものパンがあなたを殺す デイビッド・パールマター他著」に記されています。

したがって、遺伝子レベルで高炭水化物に適用していない多くの人が、手軽に入手できる炭水化物食の多くはグルテンを含み、摂取すれば長生きはできないと思われるので、結局、一般的には低炭水化物が健康長寿という事になるんだろうと考えています。ただし、低炭水化物の場合は、ある程度のケトン体を産生する程度に制限されていないと単なる栄養不足となり、効果が得られない点にも留意すべきと考えています。

炭水化物と健康、寿命に関して、スーパー糖質制限を実践し、これまで読んだ多数の文献からの素人の考察ですが、如何でしょう。
2022/04/19(Tue) 13:35 | URL | 西村 典彦 | 【編集
Re: 炭水化物と健康寿命についての考察
西村 典彦 さん

コメントありがとうございます。


ブルーゾーンの人々は高炭水化物でも肥満しない事を考えると、
超低インスリン抵抗性なのではないかとも考えられます。


仰る通りと思います。
インスリン感受性が非常に良いので、高糖質食を摂取しても
インスリン分泌が少量ですんでいると考えられます。
インスリンがキーワードと言えます。
過剰のインスリンは、がん・老化・アルツハイマー病・動脈硬化の大きなリスクとなります。
ブルーゾーンの方々は、インスリン分泌量が少量ですむ体質と生活様式を持っていると考えられます。


低炭水化物が健康長寿という事になるんだろうと考えています。
ただし、低炭水化物の場合は、ある程度のケトン体を産生する程度に制限されていないと単なる栄養不足となり、
効果が得られない点にも留意すべきと考えています

その通りと思います。

SWITCH(スイッチ)
オートファジーで手に入れる究極の健康長寿
ジェームズ・W・クレメント、クリスティン・ロバーグ (著), 児島 修 (翻訳)

によれば、

P219
「修復」(オトファジー。)が寿命を延ばすのに有効です。
そして、カロリー制限、間欠的断食、超低糖質食がオートファジーを活性化させます。

超低糖質食は、すなわち『スーパー糖質制限食』『ケトン食』です。

2022/04/19(Tue) 14:24 | URL | ドクター江部 | 【編集
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