2022年04月04日 (月)
【22/04/04 Maroyamama
先生こんにちは。お世話になります。
お伺いしたいことがあります。
先日、息子(40歳)が会社で健康診断を受け、結果を持ち帰りました。
「総コレステロールがやや高めで動脈硬化が起こりやすくなります、
また軽度の糖代謝異常を認めます、糖尿病に進行しないために生活習慣の改善が必要」
との所見でした。検査項目を見ますと、
BMI 19.7
HDL 93
LDL 102
TG 42
空腹時血糖 97
HbA1c 5.6
となっていて、これのどこが問題なのかよくわかりません。
息子は普段は、朝昼は糖質制限食ですが、
夜はどうしてもご飯を食べたいということで、
小さめのお茶椀に軽く一杯の白御飯を食べています。
お酒はシングルモルトウイスキーをワンショット、
赤ワインを軽く一杯で、肝機能は問題無しです。
先生はどう思われますか?
改善すべき点をご教授頂ければ幸いです。】
Maroyamamaさん。
HDL-Cが60mg/l以上、
TGが60MG/DL以下、
そうすると、脂質データはLDL-Cも全て善玉となり良好です。
HbA1c5.6%・・・こいつがくせ者です。
いわゆるメタボ検診では、
HbA1c5.6%以上を対象に「75g経口ブドウ糖負荷試験」を推奨しています。
これだと、境界型の食後高血糖や軽症の糖尿病の段階で
診断できるという意図です。
意図はわかるのですが、HbA1c5.6%以上の人全てに、
75g経口ブドウ糖負荷試験を実施するというのは、
大変な手間と費用が必要であり、現実的ではありません。
そんな莫大な医療費をかけるよりは、
普通に糖質摂取後1~2時間の尿糖を調べれば、
かなりの確率で食後高血糖を拾い上げることができますし、
金も手間も随分楽だと思います。
すなわち、血糖値が170~180mg/dlを超えていると、尿糖が陽性になるのです。
これでひっかかった人だけが、75gOGTTを受ければいいと思います。
さらにメタボ健診で日本糖尿病学会は、
今までの空腹時血糖値の基準に、「正常高値」を追加しました。
正常型:100mg/dL未満
正常高値:100mg/dL~110mg/dL未満
境界型糖尿病:110mg/dL~126mg/dL未満
糖尿病型:126mg/dL以上
この正常高値という新しい概念の100mg/dL~110mg/dL未満が追加になった理由として、
日本糖尿病学会は次のように説明しています。
「正常高値である100mg/dL~110mg/dL未満の人を対象に経口ブドウ糖負荷試験を行ったところ、
25%~45%の人が境界型か糖尿病に属していた。」
「空腹時血糖値の正常高値の追加によって、上記の25%~45%の境界型か糖尿病型の方を、
健康診断などで早期発見出来る。」
こちらも、全員に75gOGTTをするのでは無くて、
上記と同様に、普通に糖質摂取後1~2時間の尿糖を調べれば、
スクリーニングできます。
「空腹時血糖値」「空腹時インスリン値」「食後1時間血糖値」「食後2時間血糖値」
「HbA1c」「糖質摂取後1~2時間の尿糖」
の中で、いわゆる食後高血糖(境界型、IGT)を早期診断するのに
一番いいのは、上記の尿糖検査か
「食後1時間血糖値」「食後2時間血糖値」です。
食後1時間血糖値が180mg/dlを超えていると将来糖尿病になりやすいです。
食後2時間血糖値が140mg/dlを超えていれば、境界型です。
HbA1cは、過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映していますが、
食後高血糖を見逃す可能性があるので、欠陥のある検査です。
江部康二
☆☆☆75g経口ブドウ糖負荷試験の意義
メタボ検診で推奨の75g経口ブドウ糖負荷試験は、
今まで糖尿病と診断されたことがない人に行う検査です。
既に、糖尿病と診断がついている場合は、この検査を実施すれば、
必ず高血糖(ブドウ糖スパイク)を生じるので倫理的にみても、適応となりません。
HbA1cの値などが、正常範囲内でやや高めで
軽症の糖尿病が隠れていないかというときになどに行う検査です。
HbA1cの基準値は、6.2%未満です。
なお75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)実施前の3日間は
150g/日以上の糖質を摂取することが推奨されています。
糖質制限をしたまま、75g経口ブドウ糖負荷試験を受けると
糖質に対する人体の準備ができていないので、
一見耐糖能が低下しているようなデータになることがあるからです。
先生こんにちは。お世話になります。
お伺いしたいことがあります。
先日、息子(40歳)が会社で健康診断を受け、結果を持ち帰りました。
「総コレステロールがやや高めで動脈硬化が起こりやすくなります、
また軽度の糖代謝異常を認めます、糖尿病に進行しないために生活習慣の改善が必要」
との所見でした。検査項目を見ますと、
BMI 19.7
HDL 93
LDL 102
TG 42
空腹時血糖 97
HbA1c 5.6
となっていて、これのどこが問題なのかよくわかりません。
息子は普段は、朝昼は糖質制限食ですが、
夜はどうしてもご飯を食べたいということで、
小さめのお茶椀に軽く一杯の白御飯を食べています。
お酒はシングルモルトウイスキーをワンショット、
赤ワインを軽く一杯で、肝機能は問題無しです。
先生はどう思われますか?
改善すべき点をご教授頂ければ幸いです。】
Maroyamamaさん。
HDL-Cが60mg/l以上、
TGが60MG/DL以下、
そうすると、脂質データはLDL-Cも全て善玉となり良好です。
HbA1c5.6%・・・こいつがくせ者です。
いわゆるメタボ検診では、
HbA1c5.6%以上を対象に「75g経口ブドウ糖負荷試験」を推奨しています。
これだと、境界型の食後高血糖や軽症の糖尿病の段階で
診断できるという意図です。
意図はわかるのですが、HbA1c5.6%以上の人全てに、
75g経口ブドウ糖負荷試験を実施するというのは、
大変な手間と費用が必要であり、現実的ではありません。
そんな莫大な医療費をかけるよりは、
普通に糖質摂取後1~2時間の尿糖を調べれば、
かなりの確率で食後高血糖を拾い上げることができますし、
金も手間も随分楽だと思います。
すなわち、血糖値が170~180mg/dlを超えていると、尿糖が陽性になるのです。
これでひっかかった人だけが、75gOGTTを受ければいいと思います。
さらにメタボ健診で日本糖尿病学会は、
今までの空腹時血糖値の基準に、「正常高値」を追加しました。
正常型:100mg/dL未満
正常高値:100mg/dL~110mg/dL未満
境界型糖尿病:110mg/dL~126mg/dL未満
糖尿病型:126mg/dL以上
この正常高値という新しい概念の100mg/dL~110mg/dL未満が追加になった理由として、
日本糖尿病学会は次のように説明しています。
「正常高値である100mg/dL~110mg/dL未満の人を対象に経口ブドウ糖負荷試験を行ったところ、
25%~45%の人が境界型か糖尿病に属していた。」
「空腹時血糖値の正常高値の追加によって、上記の25%~45%の境界型か糖尿病型の方を、
健康診断などで早期発見出来る。」
こちらも、全員に75gOGTTをするのでは無くて、
上記と同様に、普通に糖質摂取後1~2時間の尿糖を調べれば、
スクリーニングできます。
「空腹時血糖値」「空腹時インスリン値」「食後1時間血糖値」「食後2時間血糖値」
「HbA1c」「糖質摂取後1~2時間の尿糖」
の中で、いわゆる食後高血糖(境界型、IGT)を早期診断するのに
一番いいのは、上記の尿糖検査か
「食後1時間血糖値」「食後2時間血糖値」です。
食後1時間血糖値が180mg/dlを超えていると将来糖尿病になりやすいです。
食後2時間血糖値が140mg/dlを超えていれば、境界型です。
HbA1cは、過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映していますが、
食後高血糖を見逃す可能性があるので、欠陥のある検査です。
江部康二
☆☆☆75g経口ブドウ糖負荷試験の意義
メタボ検診で推奨の75g経口ブドウ糖負荷試験は、
今まで糖尿病と診断されたことがない人に行う検査です。
既に、糖尿病と診断がついている場合は、この検査を実施すれば、
必ず高血糖(ブドウ糖スパイク)を生じるので倫理的にみても、適応となりません。
HbA1cの値などが、正常範囲内でやや高めで
軽症の糖尿病が隠れていないかというときになどに行う検査です。
HbA1cの基準値は、6.2%未満です。
なお75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)実施前の3日間は
150g/日以上の糖質を摂取することが推奨されています。
糖質制限をしたまま、75g経口ブドウ糖負荷試験を受けると
糖質に対する人体の準備ができていないので、
一見耐糖能が低下しているようなデータになることがあるからです。
早速に丁寧な解説をいただき感謝に堪えません。先生のお返事を息子に伝えたいと思います。ありがとうございました。
2022/04/05(Tue) 15:02 | URL | Maroyamama | 【編集】
江部先生
お世話になります。
今回のお題の糖質75g検査では私も引っかかると思います。
グリコアルブミン検査で規定値ないだと
セーフゾーンの見解ではだめなので
しょうか。(私はセーフゾーン)
ある程度私は糖質制限しています。
お世話になります。
今回のお題の糖質75g検査では私も引っかかると思います。
グリコアルブミン検査で規定値ないだと
セーフゾーンの見解ではだめなので
しょうか。(私はセーフゾーン)
ある程度私は糖質制限しています。
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