2022年01月30日 (日)
こんにちは。
今回は、糖尿病経口薬のなかでメトホルミンのお話です。
ビグアナイド系薬剤のメトグルコ(メトホルミン塩酸塩)が
2010年5月に発売されました。。
メトホルミンは、糖尿病の内服薬の中で、ビグアナイド系薬剤に属します。
2型糖尿病治療において、長い間、第一選択薬となっています。
ビグアナイド系薬剤は、その中の一つのフェンホルミンという薬が
乳酸アシドーシス(*)という副作用を起こしやすかったため、
一時期他の薬も含めてほとんど使われていませんでした。
しかし乳酸アシドーシスを起こしにくい
塩酸メトホルミン(メルビン、グリコランなど)塩酸ブホルミン(ジベトスB、ジベトンSなど)などが近年見直されてきました。
これは、英国の大規模臨床試験(UKPDS:1998年報告)で、
「塩酸メトホルミン投与により肥満のある2型糖尿病患者で死亡率を減少させた」
という結果がでたことによる影響が大きいと思います。
ビグアナイド剤の作用は、肝臓での糖新生の抑制が主で、
その他消化管からの糖吸収の抑制、末梢組織でのインスリン抵抗性の改善などがあります。
従ってSU剤とは違って、膵臓に直接作用するのではなく、
膵外作用で血糖値を下げますので、
膵臓には優しい薬といえます。
また体重増加を生じないのも長所ですね。 (^_^)
単独使用では、低血糖を起こす危険は極めて低いです。
糖質制限食的にも、問題の少ない良い薬です。
しかし、肝腎の効きがそれほど良くなかったのです。
理論的にはいい感じなのになぜでしょう?
実は、欧米における1日使用量は1500~2250mgくらいで、最大量2550mg/日までOKなのですが、
日本では1日、750mg以下となっていたのです。
私も、膵臓に負担をかけない糖質制限食にぴったりの薬ということで、
大勢の患者さんに処方してみたのですが、
量が少なすぎるためなのか、「効いた!」という印象がやや薄かったのです。
しかし、2010年5月20日、メトグルコ(メトホルミン塩酸塩)錠が、新薬として発売され、許可用量が増えました。
維持量が750~1500mg/日で、最大量が2250mg/日までOKとなりました。
1000mg/日くらいから、手応えを感じて、1500mg/日くらい投与するようになり、効果が確認できるようになりました。
日本人の場合は、1500mg/日以上の量だと、下痢をする人が多いです。
750mg/日以下だと、あまり効いた印象のないメトホルミンですが、1000mg/日以上だと効くように思います。
なお、肝障害や腎障害がある人は、
乳酸アシドーシスを起こしやすいので注意が必要です。
また、心肺機能に障害のある人や高齢者も、
腎予備力の低下がありえるので慎重投与です。
上記以外の人には、副作用は少ない薬です。
作用機序から考えて、服用するなら、
1日2~3回定期的に飲むほうが効果がでると思います。
ただ、早朝空腹時血糖値が高値の場合は、
夕食後と寝る前に内服して夜間の糖新生をブロックするのもありと思います。
血糖値が180~200mg/dlを超えてくると、
それだけでインスリン抵抗性が増します。
<糖質制限食+メトホルミン>で、1日24時間を通して、
血糖値が180mgを超えなくなると、
インスリン抵抗性が速やかに改善し、
同じ食事をしていても血糖コントロールがとても良くなります。
(*)
乳酸アシドーシス
ビグアナイド系薬剤は、肝における乳酸からの糖新生を抑制することで血糖を下げるので、
相対的に乳酸が増加します。
通常は乳酸が増加すればその代謝が活発となり、乳酸値のバランスは保たれます。
しかし、肝での乳酸の代謝能が低下している場合や、腎機能障害があるときは、
乳酸が増加した時に処理しきれずに高乳酸血症となり、乳酸アシドーシスを発症する危険性があります。
乳酸アシドーシスの初期症状として悪心、嘔吐、腹痛、下痢等や、倦怠感、筋肉痛などがあります。
江部康二
今回は、糖尿病経口薬のなかでメトホルミンのお話です。
ビグアナイド系薬剤のメトグルコ(メトホルミン塩酸塩)が
2010年5月に発売されました。。
メトホルミンは、糖尿病の内服薬の中で、ビグアナイド系薬剤に属します。
2型糖尿病治療において、長い間、第一選択薬となっています。
ビグアナイド系薬剤は、その中の一つのフェンホルミンという薬が
乳酸アシドーシス(*)という副作用を起こしやすかったため、
一時期他の薬も含めてほとんど使われていませんでした。
しかし乳酸アシドーシスを起こしにくい
塩酸メトホルミン(メルビン、グリコランなど)塩酸ブホルミン(ジベトスB、ジベトンSなど)などが近年見直されてきました。
これは、英国の大規模臨床試験(UKPDS:1998年報告)で、
「塩酸メトホルミン投与により肥満のある2型糖尿病患者で死亡率を減少させた」
という結果がでたことによる影響が大きいと思います。
ビグアナイド剤の作用は、肝臓での糖新生の抑制が主で、
その他消化管からの糖吸収の抑制、末梢組織でのインスリン抵抗性の改善などがあります。
従ってSU剤とは違って、膵臓に直接作用するのではなく、
膵外作用で血糖値を下げますので、
膵臓には優しい薬といえます。
また体重増加を生じないのも長所ですね。 (^_^)
単独使用では、低血糖を起こす危険は極めて低いです。
糖質制限食的にも、問題の少ない良い薬です。
しかし、肝腎の効きがそれほど良くなかったのです。
理論的にはいい感じなのになぜでしょう?
実は、欧米における1日使用量は1500~2250mgくらいで、最大量2550mg/日までOKなのですが、
日本では1日、750mg以下となっていたのです。
私も、膵臓に負担をかけない糖質制限食にぴったりの薬ということで、
大勢の患者さんに処方してみたのですが、
量が少なすぎるためなのか、「効いた!」という印象がやや薄かったのです。
しかし、2010年5月20日、メトグルコ(メトホルミン塩酸塩)錠が、新薬として発売され、許可用量が増えました。
維持量が750~1500mg/日で、最大量が2250mg/日までOKとなりました。
1000mg/日くらいから、手応えを感じて、1500mg/日くらい投与するようになり、効果が確認できるようになりました。
日本人の場合は、1500mg/日以上の量だと、下痢をする人が多いです。
750mg/日以下だと、あまり効いた印象のないメトホルミンですが、1000mg/日以上だと効くように思います。
なお、肝障害や腎障害がある人は、
乳酸アシドーシスを起こしやすいので注意が必要です。
また、心肺機能に障害のある人や高齢者も、
腎予備力の低下がありえるので慎重投与です。
上記以外の人には、副作用は少ない薬です。
作用機序から考えて、服用するなら、
1日2~3回定期的に飲むほうが効果がでると思います。
ただ、早朝空腹時血糖値が高値の場合は、
夕食後と寝る前に内服して夜間の糖新生をブロックするのもありと思います。
血糖値が180~200mg/dlを超えてくると、
それだけでインスリン抵抗性が増します。
<糖質制限食+メトホルミン>で、1日24時間を通して、
血糖値が180mgを超えなくなると、
インスリン抵抗性が速やかに改善し、
同じ食事をしていても血糖コントロールがとても良くなります。
(*)
乳酸アシドーシス
ビグアナイド系薬剤は、肝における乳酸からの糖新生を抑制することで血糖を下げるので、
相対的に乳酸が増加します。
通常は乳酸が増加すればその代謝が活発となり、乳酸値のバランスは保たれます。
しかし、肝での乳酸の代謝能が低下している場合や、腎機能障害があるときは、
乳酸が増加した時に処理しきれずに高乳酸血症となり、乳酸アシドーシスを発症する危険性があります。
乳酸アシドーシスの初期症状として悪心、嘔吐、腹痛、下痢等や、倦怠感、筋肉痛などがあります。
江部康二
| ホーム |