2021年12月15日 (水)
こんばんは。
今回は、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)について考えてみます。
実は、HbA1cは食後高血糖を見逃しやすい欠陥のある検査です。
健康診断では、「空腹時血糖値」と「HbA1c」で
糖尿病の有無や状態を評価していますが、
これでは食後高血糖を見逃すリスクがあるのです。
現実に<カロリー制限・高糖質食 + 薬物療法> という
日本糖尿病学会推奨の標準治療を実践していても、
毎年新たに、糖尿病腎症からの人工透析が16000人以上、
糖尿病網膜症からの失明が3000人以上、
糖尿病足病変からの足切断が3000人以上という合併症が生じています。
これは現行の糖尿病治療が決して上手くいっていない動かぬ証拠と言えます。
<質の良いHbA1cと質の悪いHbA1c>
従来の糖尿病食(カロリー制限・高糖質食)を摂取しつつ、
インスリン注射やSU剤で治療していて<HbA1c:6.5%>で、
一見コントロール良好に見えても、
これは食後高血糖と平均血糖変動幅増大を伴う「質の悪いHbA1c」なのです。
これでは、糖尿病合併症を予防することは困難です。
上述のように日本では、糖尿病合併症が減っていないのですが、
ほとんどの病院で、この「質の悪いHbA1c」でコントロール良好と錯覚して評価しているためと思われます。
一方、糖質制限食を実践していて、<HbA1c:6.5%>なら
食後高血糖や平均血糖変動幅増大のない「質の良いHbA1c」です。
こちらなら、糖尿病合併症を予防できることは言うまでもありません。
<HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)>
HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)
赤血球の中に含まれているヘモグロビンは、鉄を含む赤色の色素部分のヘムと、
蛋白部分のグロビンでできています。
ヘモグロビンはグロビン部分の違いによりHbA、HbA2、HbFの3種類に分けられます。
成人では、HbAが97%を占めています。
血液中には、赤血球や糖類やその代謝産物が流れていて、
お互いに結合する傾向があります。
赤血球中のヘモグロビンと、血中のブドウ糖など単糖類が結合したものが、
グリケーティッドヘモグロビンです。
これを略してグリコヘモグロビンですが、HbA1とほぼ同義語として使用されています。
グリコヘモグロビンは、元のヘモグロビンとは電気的性質が異なるため、
検査により識別することができます。
HbA1は、さらにHbA1a、HbA1b、HbA1cなどに分けることができます。
このうち糖尿病の検査の指標として汎用されているHbA1cは、
ヘモグロビンA(HbA)にグルコース(ブドウ糖)が結合したものです。
当然、血糖値が高値であるほど、ヘモグロビンと結合しやすいのです。
HbA1cの生産量は、Hb(ヘモグロビン)の寿命と血糖値に依存します。
赤血球は骨髄で作られ、血液中を循環し寿命は約120日間ですから、
HbA1cは過去4ヶ月(120日間)の血糖値の動きを示しています。
より詳しく分析すると、HbA1c値の約50%は過去1ヶ月間の間に作られ、
約25%が過去2ヶ月、残りの約25%が過去3、4ヶ月で作られます。
従いまして、HbA1cの値は通常は、
過去1、2ヶ月の平均血糖値を反映していると考えればよいことになります。
血糖値は、空腹時や食後で変動するのに対し、
HbA1cはそれらにほとんど影響を受けないという特徴があります。
すなわち、血糖値は常に変化していますが、HbA1cは血中濃度が安定しています。
<HbA1cが実態より低値を示す場合>
溶血性貧血、腎性貧血など、赤血球の寿命が短縮するような病態のときは、
HbA1cの生産量がその分蓄積されずに減りますので、実際の値よりも低くなります。
肝硬変に伴う脾機能亢進による貧血も赤血球の寿命が短縮します。
鉄欠乏性貧血が鉄剤投与により急速に回復している時期も、
幼弱赤血球が増えて、赤血球の寿命が短くなり、HbA1cは低値となります。
糖尿病腎症から透析になった糖尿人の場合は、
腎性貧血で赤血球の寿命が短くなっているので、
見かけ上はHbA1cが改善して、低下したようにみえますが、
実態を反映していないことになります。
それで日本透析医学会では透析患者の血糖指標としては、
グリコアルブミン(GA)を推奨しています。
血液中のタンパク質の一種であるアルブミンに
ブドウ糖がくっついたものをグリコアルブミン(GA)といい、
GAは、約2週間の血糖状態をもっとも鋭敏に反映すると言われています。
そして、アルブミンは赤血球の寿命とは無関係なので、
貧血にも影響されないので、日本透析医学会が推奨しているわけですね。
<HbA1cが実態より高値を示す場合>
鉄欠乏性貧血の場合、鉄不足で貧血があり未治療のときは、
代償性に赤血球の寿命が延びるので、
HbA1cは寿命が延びた分蓄積して、高値にシフトします。
妊婦においては、妊娠の進行とともに胎児の鉄需要が増加しますが、
それに供給が追いつかず、しばしば鉄欠乏性貧血が生じます。
そのとき、代償的に赤血球寿命が延びて、
血糖と結合するヘモグロビンの量が相対的に増えます。
結果として、妊娠中、特に妊娠後期には、
HbA1cが偽高値をとることが知られています。
従って妊娠中の血糖コントロールの指標は
HbA1cではなく、グリコアルブミン(GA)が推奨されています。
「GA15.8%未満」をめざして妊娠中の血糖管理をします。
<HbA1cが異常値な場合に疑われる病気>
高値…糖尿病、異常ヘモグロビン血症、未治療の鉄欠乏性貧血など
低値…溶血性貧血、、腎不全、肝硬変、インスリノーマ(膵島線種)など
江部康二
今回は、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)について考えてみます。
実は、HbA1cは食後高血糖を見逃しやすい欠陥のある検査です。
健康診断では、「空腹時血糖値」と「HbA1c」で
糖尿病の有無や状態を評価していますが、
これでは食後高血糖を見逃すリスクがあるのです。
現実に<カロリー制限・高糖質食 + 薬物療法> という
日本糖尿病学会推奨の標準治療を実践していても、
毎年新たに、糖尿病腎症からの人工透析が16000人以上、
糖尿病網膜症からの失明が3000人以上、
糖尿病足病変からの足切断が3000人以上という合併症が生じています。
これは現行の糖尿病治療が決して上手くいっていない動かぬ証拠と言えます。
<質の良いHbA1cと質の悪いHbA1c>
従来の糖尿病食(カロリー制限・高糖質食)を摂取しつつ、
インスリン注射やSU剤で治療していて<HbA1c:6.5%>で、
一見コントロール良好に見えても、
これは食後高血糖と平均血糖変動幅増大を伴う「質の悪いHbA1c」なのです。
これでは、糖尿病合併症を予防することは困難です。
上述のように日本では、糖尿病合併症が減っていないのですが、
ほとんどの病院で、この「質の悪いHbA1c」でコントロール良好と錯覚して評価しているためと思われます。
一方、糖質制限食を実践していて、<HbA1c:6.5%>なら
食後高血糖や平均血糖変動幅増大のない「質の良いHbA1c」です。
こちらなら、糖尿病合併症を予防できることは言うまでもありません。
<HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)>
HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)
赤血球の中に含まれているヘモグロビンは、鉄を含む赤色の色素部分のヘムと、
蛋白部分のグロビンでできています。
ヘモグロビンはグロビン部分の違いによりHbA、HbA2、HbFの3種類に分けられます。
成人では、HbAが97%を占めています。
血液中には、赤血球や糖類やその代謝産物が流れていて、
お互いに結合する傾向があります。
赤血球中のヘモグロビンと、血中のブドウ糖など単糖類が結合したものが、
グリケーティッドヘモグロビンです。
これを略してグリコヘモグロビンですが、HbA1とほぼ同義語として使用されています。
グリコヘモグロビンは、元のヘモグロビンとは電気的性質が異なるため、
検査により識別することができます。
HbA1は、さらにHbA1a、HbA1b、HbA1cなどに分けることができます。
このうち糖尿病の検査の指標として汎用されているHbA1cは、
ヘモグロビンA(HbA)にグルコース(ブドウ糖)が結合したものです。
当然、血糖値が高値であるほど、ヘモグロビンと結合しやすいのです。
HbA1cの生産量は、Hb(ヘモグロビン)の寿命と血糖値に依存します。
赤血球は骨髄で作られ、血液中を循環し寿命は約120日間ですから、
HbA1cは過去4ヶ月(120日間)の血糖値の動きを示しています。
より詳しく分析すると、HbA1c値の約50%は過去1ヶ月間の間に作られ、
約25%が過去2ヶ月、残りの約25%が過去3、4ヶ月で作られます。
従いまして、HbA1cの値は通常は、
過去1、2ヶ月の平均血糖値を反映していると考えればよいことになります。
血糖値は、空腹時や食後で変動するのに対し、
HbA1cはそれらにほとんど影響を受けないという特徴があります。
すなわち、血糖値は常に変化していますが、HbA1cは血中濃度が安定しています。
<HbA1cが実態より低値を示す場合>
溶血性貧血、腎性貧血など、赤血球の寿命が短縮するような病態のときは、
HbA1cの生産量がその分蓄積されずに減りますので、実際の値よりも低くなります。
肝硬変に伴う脾機能亢進による貧血も赤血球の寿命が短縮します。
鉄欠乏性貧血が鉄剤投与により急速に回復している時期も、
幼弱赤血球が増えて、赤血球の寿命が短くなり、HbA1cは低値となります。
糖尿病腎症から透析になった糖尿人の場合は、
腎性貧血で赤血球の寿命が短くなっているので、
見かけ上はHbA1cが改善して、低下したようにみえますが、
実態を反映していないことになります。
それで日本透析医学会では透析患者の血糖指標としては、
グリコアルブミン(GA)を推奨しています。
血液中のタンパク質の一種であるアルブミンに
ブドウ糖がくっついたものをグリコアルブミン(GA)といい、
GAは、約2週間の血糖状態をもっとも鋭敏に反映すると言われています。
そして、アルブミンは赤血球の寿命とは無関係なので、
貧血にも影響されないので、日本透析医学会が推奨しているわけですね。
<HbA1cが実態より高値を示す場合>
鉄欠乏性貧血の場合、鉄不足で貧血があり未治療のときは、
代償性に赤血球の寿命が延びるので、
HbA1cは寿命が延びた分蓄積して、高値にシフトします。
妊婦においては、妊娠の進行とともに胎児の鉄需要が増加しますが、
それに供給が追いつかず、しばしば鉄欠乏性貧血が生じます。
そのとき、代償的に赤血球寿命が延びて、
血糖と結合するヘモグロビンの量が相対的に増えます。
結果として、妊娠中、特に妊娠後期には、
HbA1cが偽高値をとることが知られています。
従って妊娠中の血糖コントロールの指標は
HbA1cではなく、グリコアルブミン(GA)が推奨されています。
「GA15.8%未満」をめざして妊娠中の血糖管理をします。
<HbA1cが異常値な場合に疑われる病気>
高値…糖尿病、異常ヘモグロビン血症、未治療の鉄欠乏性貧血など
低値…溶血性貧血、、腎不全、肝硬変、インスリノーマ(膵島線種)など
江部康二
江部先生、いつも貴重な情報をありがとうございます。お陰様で、私たち夫婦も糖質制限し不摂生な生活から脱する事が出来そうなのですが、困った事が起こりました。
夫は20年ほど前出会った頃H a1c が10台で検診で指導を受けたり、受診を勧められたけれど通院拒否をしておりました。数年前、江部先生のブログを拝見したのがきっかけで糖質制限を行い、Hb a1c が3ヶ月ほどで8台なったのがきっかけで糖質制限をするようになり、もっとa1c を下げなければと考え通院もするようになりました。経口薬を飲んで、Hb a1c は、7.2から7.5で、極たまに6.8位の月もあります。膵臓に嚢胞が見つかり、半年に一度大きな病院でMRIを撮っています。今の主治医は、この病院と繋がりのある先生のようです。
困った事とは、ずっと検査結果はa1c 以外は問題なかったのですが、最近主治医が尿のケトンに注目し始め、今は+2との事ですが、血中のケトンを検査に出してみたり(異常なし)、糖尿病に詳しい先生に相談してみたりして、今度尿ケトンに対して薬で治療しましょうと提案してきたらしいのです。夫は糖質制限をしていますと初めから申告しており、糖質制限をやりすぎないようにと言われていたそうです。
質問なのですが、糖質制限で尿ケトンは正常なのでは無いかと思うのですが、これで何か治療をされたら体の調子がおかしくなってしまうのでは無いかと心配です。また、尿ケトンがプラスなら、血中ケトンもプラスだと思っていたのに正常とは、糖質制限が検査の前は多少緩くなるので、、医師から厳しい制限をしてはダメと言われてるから、、そのせいなのでしょうか。調べてもよくわからなくて、質問させていただきました。ここにきている皆さんには今更のことなのかもしれませんが、薬?でケトン体を調整されるのが怖いです。どのようにしたら良いか教えていただけますか。
夫は20年ほど前出会った頃H a1c が10台で検診で指導を受けたり、受診を勧められたけれど通院拒否をしておりました。数年前、江部先生のブログを拝見したのがきっかけで糖質制限を行い、Hb a1c が3ヶ月ほどで8台なったのがきっかけで糖質制限をするようになり、もっとa1c を下げなければと考え通院もするようになりました。経口薬を飲んで、Hb a1c は、7.2から7.5で、極たまに6.8位の月もあります。膵臓に嚢胞が見つかり、半年に一度大きな病院でMRIを撮っています。今の主治医は、この病院と繋がりのある先生のようです。
困った事とは、ずっと検査結果はa1c 以外は問題なかったのですが、最近主治医が尿のケトンに注目し始め、今は+2との事ですが、血中のケトンを検査に出してみたり(異常なし)、糖尿病に詳しい先生に相談してみたりして、今度尿ケトンに対して薬で治療しましょうと提案してきたらしいのです。夫は糖質制限をしていますと初めから申告しており、糖質制限をやりすぎないようにと言われていたそうです。
質問なのですが、糖質制限で尿ケトンは正常なのでは無いかと思うのですが、これで何か治療をされたら体の調子がおかしくなってしまうのでは無いかと心配です。また、尿ケトンがプラスなら、血中ケトンもプラスだと思っていたのに正常とは、糖質制限が検査の前は多少緩くなるので、、医師から厳しい制限をしてはダメと言われてるから、、そのせいなのでしょうか。調べてもよくわからなくて、質問させていただきました。ここにきている皆さんには今更のことなのかもしれませんが、薬?でケトン体を調整されるのが怖いです。どのようにしたら良いか教えていただけますか。
2021/12/19(Sun) 07:50 | URL | 葵 | 【編集】
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